ビジネスパーソンインタビュー
ジェイク・ナップ、ジョン・ゼラツキー著『時間術大全』より
「意志力」も「生産性」も解決にならない。あなたの時間の9割を奪う2つの大きな力
新R25編集部
いくら仕事を頑張っても、時間がない…というのは、多くの社会人に当てはまる悩みだと思います。
決してサボっているわけではないのに、当日中に終わらない。自分の持っている仕事量を減らせれば解決するかもしれませんが、しかしそれも簡単ではないはず。
だったら、自分の時間の使い方を変えるしかありません。
著書『時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』には、Googleで働いていたジェイク・ナップさん、YouTubeで働いていたジョン・ゼラツキーさんの2人が見つけた「自分の時間をデザインする方法」がまとめられています。
起業家・けんすうさんも絶賛するこの時間術。
新R25では著書のなかから3記事を抜粋して、その内容をご紹介します。
人の時間を奪う、2つの大きな力
まず最初に、なぜ近ごろは毎日がこんなに忙しくバタバタしているのか、その理由を教えよう。
また、あなたがいつもストレスいっぱいで集中できないと感じているとしても、それがなぜあなたのせいじゃないのかについても説明しよう。
21世紀のいま、2つの大きな力があなたの時間の1分1分を得ようと競い合っている。
1つは「多忙中毒」と僕らが呼ぶ風潮。忙しいのをよしとする考え方だ。メールであふれんばかりの受信箱に、びっしり埋まった予定表、長い長いやることリスト。
この中毒にはまっていると、現代の職場の要求に応え、社会で務めを果たすために、つねに高い生産性を保ち続けることになる。
ほかのみんなが忙しくしているのだから、自分だけペースを落とせば、二度と遅れを取り戻せなくなってしまう…。
あなたの時間を奪っている2つめの要因は、僕らが「無限の泉」と呼ぶものだ。これはスマホのアプリなど、コンテンツがたえず補充されるものをいう。
引っ張って更新するものやストリーミング配信されるものは、全部これに入る。
こうしたいつでも利用可能な、常時更新されるエンタテインメントは、たえまない忙しさに疲れ果てているあなたへの“ごほうび”になっている。
あなたの時間の9割は「デフォルト」で決まっている
「多忙中毒」と「無限の泉」の2つの要因がなぜ強力かといえば、それらが生活の“デフォルト”になっているからだ。
技術用語でいうデフォルトとは、何かのデバイスを使い始めるときの「初期設定」のことだ。
使用者は自分で変更しない限り、そのままの設定で使い続けることになる。
たとえば新しいスマホを買うと、ホーム画面にはデフォルトでメールやブラウザのアプリが入っている。
デフォルトの設定だと、メッセージが着信するたびに通知が来る。壁紙や着信音もデフォルトのものが設定されている。
こういったオプションはどれもアップルやグーグルなどのスマホのメーカーによってあらかじめ選ばれたものだ。
変更したければ変更できるが、それには手間がかかるから、多くのデフォルト設定がそのまま定着する。
じつは、デフォルトは生活のほとんどの場面に入り込んでいる。
デバイスだけじゃなく、職場にも文化にも、「忙しい状態や注意散漫な状態が正常であたりまえ」というデフォルト設定が組み込まれているのだ。
本来なら、白紙の予定表を見て、「適当なミーティングで予定表を埋めるのがいちばんいい時間のすごし方だ!」なんて思う人はいないはずだ。「今日いちばん大事なことは、他人の気まぐれな要求に応えることだ!」なんて人もいない。
あたりまえだ。なのにデフォルトの考え方のせいで、誰もがまさにそういう行動をとっている。
本当なら立ち話で用が足りるような話でも、それが仕事なら、「ミーティングは30分か60分」となんとなく決めてしまっている。
予定表に何が入るかは、デフォルトで他人によって決められ、ミーティングでびっしり埋まってもかまわないと、デフォルトで考えてしまっている。
そしてデフォルトで残った時間を使ってメールやメッセージのやりとりをし、デフォルトで受信箱をつねにチェックして全員に即レスする。
目の前のものごとに反応せよ。迅速に対応せよ。予定を埋め、効率を高め、もっと仕事をこなせ──これが、多忙中毒のデフォルトルールだ。
多忙中毒からやっと抜け出したと思ったら、「無限の泉」が手ぐすねを引いて待っている。
たえまなく仕事をさせようとするのが多忙中毒のデフォルトなら、たえまなく気を散らそうとするのが無限の泉のデフォルトだ。
スマホやラップトップ、テレビは、ゲームやSNS、動画であふれている。何もかもが指先ひとつで操作でき、たまらなく魅力的で、依存性さえある。
ためらいを起こさせるような面倒な手間はどこにもない。
フェイスブックを更新する、YouTubeを視聴する、最新ニュースをチェックする、キャンディクラッシュをプレイする、ネットフリックスをイッキ見する──飢えた無限の泉のデフォルトは、多忙中毒のあとに残ったほんの少しの時間のかけらまで食い尽くす。
「意志力」は脱出口にならない。
僕ら自身、いま挙げたような誘惑に抵抗してきたから、それがどんなに手に負えないものかよくわかっている。また長年テクノロジー業界で働いた経験から、アプリやゲーム、デバイスにいくら抵抗しても、結局は根負けしてしまうことも知っている。
「生産性向上」も解決策にならない。実際、僕らは雑用にかける時間を減らし、やるべきことをもっとつめこもうとしてきた。
問題は、片づけても片づけても、すぐにまた別の仕事や要求がやってくることだ。ハムスターの回し車のように、速く走れば走るほど、ますます回転は速くなる。
だが気を散らすものから注意を引き離し、自分の時間の主導権を取り戻す方法はたしかにある。
「メイクタイム」は、何に集中したいかを決め、それを実行するためのエネルギーを蓄え、デフォルトの悪循環を断つことによって、自分の生き方に意識的に向き合うための枠組みだ。
「スプリント」をしてわかった4つの教訓
ジェイクはグーグルにいたとき、「スプリント(デザインスプリント)」という手法を生み出した。
スプリントは、緻密にデザインされた1週間の仕事術だ。チームで5日間の予定を全部キャンセルして、最初に決めた活動のチェックリストに沿って、毎日たった1つの問題に集中して取り組む。
この手法は僕らにとって、時間をデザインする初めての取り組みで、大いに成功した。スプリントはまたたく間にグーグル全社に広まった。
2012年にはグーグル・ベンチャーズの投資先のスタートアップとともにスプリントを行うようになり、その後の数年間で150回以上のスプリントを行った。
参加者はプログラマーから栄養士、CEO、バリスタ、農業生産者まで、1000人近くに上った。
僕ら時間オタクにとって、これは夢のような機会だった。何度も1週間をデザインし直し、スラックや23andMe、ウーバーといったそうそうたるスタートアップの優秀なチームから学ぶことができた。
1. 毎朝、最優先目標を決めると「魔法」が起きる
僕らがまず最初に学んだのは、「1日の初めに優先度の高い目標を1つ決めると、魔法が起きる」という教訓だ。
スプリントでは毎日、チームで1つの大きな問題に集中する。
月曜日に問題の「マップ」を作成し、火曜日に各メンバーは問題のソリューションを「スケッチ」する。
水曜日にはベストのソリューションを「選択」し、木曜日にその「プロトタイプ」(試作品)を作成し、金曜日に顧客に参加してもらい、「テスト」する。
各曜日の目標は手ごわいが、たった1つだ。この焦点のおかげで、やるべきことが明確になり、モチベーションが上がる。
手ごわいが頑張れば達成できる目標を1つ決めると、1日が終わるころにはやり遂げている。
目標をチェックしてリストから外し、仕事のことを頭から追い出して、充実した気持ちで家に帰れるというわけだ。
2. 「デバイス禁止」で仕事の質が変わる
スプリントで学んだ2つめの教訓は、「デバイス禁止にすると仕事がはかどる」ということだ。僕らはルールを決める側だったから、ラップトップやスマホなどのデバイスを禁止にして、めざましい成果を挙げた。
メールなどの無限の泉のたえまない誘惑を遠ざけると、全員が目の前の仕事に100%の注意を向け、デフォルトが「集中」に切り替わった。
3. 集中には「エネルギー」が必要
3つめの教訓は、「集中して仕事に取り組み、明晰な思考を保つには、エネルギーが重要」だということ。
スプリントを開始した当初、チームは甘いものでエネルギーを補給しながら長時間働いていたが、週も後半にさしかかるとエネルギーレベルが急低下した。
そこで僕らはやり方を試行錯誤し、ヘルシーなランチや短い散歩、頻繁な休憩、時間の短縮といった工夫が、エネルギーレベルを最大に保ち、その結果として優れた仕事を効率よく行うのに役立つことを学んだ。
4. 「実験」すればするほど時間が生まれる
4つめに、こうした実験を通して、そう、「実験の力」を知った。
「実験を通してプロセスを改善」し、いろいろな工夫の結果を自分の目で確認した結果、自分たちのやり方について、他人の実験結果をただ読むだけでは絶対に得られない、ゆるぎない確信を持つことができた。
「スプリント」はチームで1週間かけて行うが、個人も同様に毎日をデザインし直せるはずだと、僕らはすぐに気づいた。
こうして学んだ教訓が、メイクタイムの土台になった。もちろん、完成までには紆余曲折があった。
「多忙中毒」と「無限の泉」に呑まれることもまだあった。
僕らが開発した戦術には、習慣として定着したものもあれば、失速して失敗したものもあった。それでも日々の結果を検討するうちに、つまずく原因がわかってきた。
また実験的手法をとったことで、失敗しても自分に優しくなれた。
失敗は1つのデータにすぎないし、明日になればまたやり直せる。つまずきはしたが、メイクタイムはもちこたえた。
僕らはかつてないほどエネルギーにあふれ、頭に余裕が生まれ、おかげで「いつかやりたい」と思いながらできずにいた大きなプロジェクトに着手することができた。
仕事量が変わらないなら、自分の時間を生み出すしかない
GoogleとYouTubeで情熱を注いで働いてきた2人。
スマホやPCで「人の時間をいかに奪うか」ということに注力してきた彼らだからこそ、そのテクノロジーとうまく向き合って、自分の時間を生み出す方法を見つけられました。
彼らが「メイクタイム」と称する、時間を生み出す4つのステップ。
このステップを実践して、自分の時間の使い方を最適な形にデザインしましょう!
(C)Graham Hancock
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