無敵のメンタル術『自分は自分、バカはバカ。』より
僕がこれからも残ると考えている人間の仕事は「営業」。営業能力はこう高めよ
新R25編集部
「僕は、周囲の人たちを基本『見下しモード』でながめています」
2ちゃんねる開設者・ひろゆきさんの新著『自分は自分、バカはバカ。』の一文です。
人間関係に悩む人たちへ向けた「他人に振り回されない無敵のメンタル術」を中心に、ひろゆきさんの考える「これからの社会で生き残る人」や「自分の資産価値をあげる方法」について書かれている同書。
その内容の一部を3記事にわたってお届けします。
「営業」はこれからも残る仕事
僕がこれからも残ると考えている人間の仕事は、「営業」です。
コンピューターを使って数字をいじくる、デスクワーク系の仕事は全部なくなりますが、人間相手にモノを売る仕事は、なくならないんじゃないでしょうか。
「営業」と聞くと、そのワードからにじみ出る体育会系感だけで、苦手意識がわいてくる人もいるかもしれません。「ノルマ」「飛び込み」「接待」などなど。
内向的な人にとって営業にはネガティブなイメージがつきまとうでしょう。
知らない会社に出向き、名刺交換して、頭を下げて商品を売り込む。あるいは、ある地域の家のインターホンを片っ端から押して、飛び込みで営業をする。勧誘電話をかけまくる。
こういうのって営業部門で働いたことのない人にとっては、かなり敷居が高く感じられるでしょう。
でもそれは営業を狭く考えすぎています。人間相手に何かを売る行為は、すべて「営業」です。
だいたい、飛び込み営業や勧誘電話を受けて、実際にモノを買ったことがある人なんてもういないんじゃないですかね。
たとえば、ブログに記事を掲載して、そこにアフィリエイト広告を貼るのも営業です。
BtoC、個人を対象にした記事という商品を用意し、広告によって収益化を図っているんですから。
営業部門のサラリーパーソンは自社製品を売るのが仕事ですが、方法は問屋や小売店を回って頭を下げるだけではありません。
Amazonのレビューやブログ記事を書きまくって、製品をアピールするのも立派な営業行為。どういうやり方であれ、結果として売上が上がれば営業の成果があったということになるわけです。
「人に愛想よく挨拶するなんて自分にはできない」と思っているのであれば、人に会わずに営業して売上を増やす方法を考えましょう。
「売り方」ではなく「買われ方」から考えてみる
では、営業能力を高めるためには、どうすればいいのでしょうか。
売り手の立場から「どうやって売るか」を考え抜くというのはひとつのやり方ですが、僕は買い手の立場から考えたほうがラクだと思います。
たとえば、あなたがコンビニでお茶を買うとしましょう。商品を選んで手に取りレジに持っていくわけですが、このとき「なぜその商品を手に取ったか」を意識するようにします。
棚には、「お〜いお茶」や「綾鷹」などいろんな銘柄のお茶があったのに、なぜ自分はそのなかからひとつ選んだのか。商品名の語呂が気に入ったのか、パッケージの色が気に入ったのか、CMが印象に残っていたのか。
ネット通販でモノを買うときもそうですね。Amazon や楽天のレビューや広告、ブログなどの記事を見て買うかどうか決めると思いますけど、自分が見た情報のうち「刺さった」のは何かを考えてみましょう。
あなた自身に刺さったキャッチコピーや記事の書き方を真似して、ブログやレビューを書けば、少なくともあなたと同じような感性を持った人に刺さる可能性は高いわけですよね。
もしあなたが20代男性でひとり暮らし、年収400万円であれば、同じような生活をしている人がどんな生活をしているのか、頭の中でシミュレーションしてみましょう。
同じような人はけっこういるでしょうから、うまくいけば、それなりのマーケットになるでしょう。
自分の担当する商品を魅力的にアピールする営業能力はどんな会社でも役に立ちますし、商品企画にも使えますよ。
営業は人とちょっと違うことをしたほうがいい
「営業」では、ほんのちょっとだけ人と違うことをしてみると効果的です。
たとえば、メールでのやり取り。今はメールでやり取りするのが普通になりましたから、誰かからメールが来たところで印象に残りません。であれば、あえて万年筆で直筆した手紙を送ってみる。
今時、直筆の手紙を受け取れば、誰でも「おっ」と感じるはずです。その手紙自体はひょっとしたら放置されてしまうかもしれませんけど、メールよりは受取人の記憶に残りやすいでしょう。
別の機会で、その人に出会うことがあれば、「昔手紙を送った者です」と言ってみれば、「ああ、あのときの!」ということになって、会話のきっかけになるかもしれません。
べつに手紙は直筆でなければいけないということではないですよ。
ほかの人がやらないことをやると印象に残りやすい、そういう差別化を行うのが、営業の本質ということなのですよ。
こんなふうに「営業」というのはとても幅広い概念なんですけど、どうしても体育会系的なイメージがつきまといますね。
何か適当な別の言葉に置き換えたほうがいいんじゃね?とすら、僕は思っています。
勝負を決めるのは「正しさ」よりも「説得力」
「営業」の話とも通じるのですが、これからの時代は「それっぽいことが言える」スキルは身につけておいたほうがいいでしょう。
「それっぽいことを言う」は、口からでまかせとはちょっと違います。
いかに相手に「もっともらしい」と思ってもらえるロジックを考えられるか、ということなのですよ。
たとえば僕は、電車に乗っている時にひとりでちょっとしたゲームをしています。昼間山手線に乗っていたとしましょう。もし、次の駅が大塚だったら、誰が降りるだろうと考えてみるんです。
おばさんグループとサラリーパーソンがいたら、どちらのほうが降りる確率が高いか。
昼間なら、おばさんのグループはどこかに遊びに行く途中じゃないかな。だとしたら、ターミナル駅で乗り換えるだろう。大塚にあんまり観光スポットはないですからね。
でも、営業をしているサラリーパーソンだったら、大塚で降りるかもしれない…。
こうして立てた予想がきっちり当たることはそんなに多くはありませんし、僕も条件を揃えて厳密にデータを収集しているわけでもありません。
大事なのは「合っている」かどうか、「正しい」かどうかではなくて、「それっぽい」「もっともらしい」理由を考えることができたかどうかなんです。
いい加減だと思いますか?
でも、実際の仕事でも、仮説が本当に正しかったのか検証できることのほうが少ないんじゃないですかね。
人の心を動かす仮説を立てたほうがいい
本なんかも、まさにそうです。
「今このテーマが流行っている」「この著者が人気だ」「こういうデザインの表紙が手に取ってもらいやすい」などなど、本が売れるのにはさまざまな要因が関係していますが、本当のところ売れた決定的要因が何なのかを正確に検証することはできません。
「インパクトのある表紙が受けた」など後づけで理由を説明することはいくらでも可能ですが、あくまでそれは「仮説」にすぎないわけです。別の表紙だったらもっと売れていたかもしれませんよね。
もちろん、技術の進歩によって、今後はより精密にデータを集めることができるようにはなるでしょう。
紙の本では難しいでしょうが、今でもウェブサイトであれば滅茶苦茶細かいデータが取れるようになっています。
どういう商品が売れているか、その商品と似た商品を買っているのはどんな人か、商品画像Aと画像Bではどちらのほうがクリックされやすいか。
現在は、こういうデータを一生懸命調べたり、コンピューターでグラフにしたりできる人が重宝されていますが、そういう作業は高度化、自動化が進んでいますから、誰でも同じようなことができるようになっていきます。
だから、データを収集して予測するような仕事の価値がなくなっていくのは間違いないでしょうね。
では、仮説を立てるのが無意味かといえば、僕はそうじゃないと思うんですよ。
どんなに仕事の自動化が進んでも、最終的に人間の判断が求められる部分は必ず残ります。
経営に関するデータ分析が進んでも実際にどういう戦略を採用するのか決めるのは人間の経営者ですし、企業にどれだけ投資するのかを決めるのも人間の投資家です。
この本の読者のほとんどは経営者ではないでしょう。
それであれば、「何が正しいのか」よりも、経営者に「こいつの言っていることは説得力がある」と思われることのほうが大事です。
人を動かす「重役っぽい雰囲気」を醸し出すスキル
たとえば、「来年あたりには、こういうジャンルのサービスが流行るんじゃないか?」と、ピンと来ることはけっこうありますよね。
今のところ、コンピューターにはこういう「直観」がありません。
AIツールに大量のデータを放り込めば、一見無関係に見えるデータの間に相関があることを教えてくれはします。
何かのジャンルが流行したあとに、「この流行は××と相関がある」といった分析はできるでしょう。
だけど、まだデータ化されていない、「何となくそうじゃないかという感覚」に関しては、まだコンピューターでは扱うことはできません。
ですから、あなたに「来年あたりには、こういうジャンルのサービスが流行る」という直観が下りてきたら、それに説得力を持たせる理屈やプレゼンのやり方を考えればいいわけなのですよ。
予想なんて、さっきお話しした電車の乗り降り1つ取っても、そうそう当たるものではないですが、当たればすごくラッキーです。自分の意見を採用してもらうために、何が必要かをきちんと考えましょう。
ネット上で、「重役っぽい雰囲気の話し方テクニック」の動画を見たことがあります。
声のトーンや話すスピード、会議の中で一番偉い人をファーストネームで呼ぶといったテクニックを使うことで、たしかに「重役っぽさ」が醸し出されるんです。
欧米ではこういう「重役っぽい雰囲気」のことを「エグゼクティブ・プレゼンス」といって、企業幹部になるための必要条件と考えられているらしいですよ。
根拠となる正確なデータがなくても、もっともらしい仮説を立てて、決定権のある人間をうまく説得する。
それがどんな人間にとっても、重要な仕事ということになっていくでしょう。
普段からそのことを意識しておいたほうがいいと思います。
まわりに左右されないメンタルが、これからの時代を生きる武器になる
タイトルにもなっている『自分は自分、バカはバカ。』という考え。ひろゆきさんならではの発想だと思いきや、実は僕らにとっても必要な視点でもありました。
まわりに対して、そこまで思い悩む必要なんてないのでは? そんなことを考えさせられる1冊です。
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