ビジネスパーソンインタビュー
水上颯著『頭を鍛える5つの習慣』より
水上颯「本の内容は“忘れてOK”。読書から得られるのは知識だけじゃない」
新R25編集部
『全国高等学校クイズ選手権』『最強の頭脳 日本一決定戦! 頭脳王』(どちらも日本テレビ)で優勝、『東大王』(TBS)ではチームの大将を務め、東大No.1頭脳との呼び声も高い、東大医学部生・水上颯さん。
生まれながらにして天才という印象を持たれる水上さんですが、当の本人は「僕には才能も素質もない。ここまで来れたのは誰にでもできるような習慣をずっと繰り返してきたからだ」と言います。
その習慣をまとめた書籍『頭を鍛える5つの習慣』のなかから、今回は「インプット力を高める習慣」をご紹介。
現役東大生の頭脳をつくった習慣から、明日の仕事に活かせるノウハウを吸収しましょう!
日常から知らないこと探し出す
知識を増やすには、物事をぼーっと見ていないで、そのなかに自分が知らないことを見つけ出す癖をつけておくといいでしょう。
先日、僕はお昼ご飯にロールキャベツを食べました。
そのときに、「ロールキャベツについて、知らないことって何かあるかな」と考えてみました。
大好物なので、つくり方についてはよくわかっています。
でも、「ロールキャベツの発祥地については知らない」ということに思い当たりました。
「イタリアかな? それともロシアかな? 案外アメリカとか?」などと推測しながら調べてみたら、トルコだということがわかりました。
「ドルマ」というトルコ料理がヨーロッパに伝わり、ロールキャベツが生まれたそうです。
こうしたこと1つひとつを「知らなくてもいいじゃん」と思ってしまったら、知識の広がりはそこでストップしてしまいます。
人はただ、生きるのに役立つ便利な知識だけもっていればいいのではなく、「へえ、そうだったのか」と思えるような「雑学的知識」を増やすことで、人生を豊かなものにしていけると思っています。
だから、知らないことを探し出すというのは、僕にとって日々のとても重要な作業になっています。
「疑問メモ帳」をつくる
新しく調べたことについては、抱いた疑問と、調べた結果をまとめてメモ帳に書き留めておきます。
この作業をマメに行なっていると、たびたびメモ帳を開くことになります。
そうすると、かつて調べて書いたことも自然と目に入ってきます。
そこでまた記憶の確認もできるし、「あれ? これって前に調べたことと関係しているな」などとつながりを発見することもあります。
そうして、どんどん知識を広げていけるのです。
僕のメモ帳はクイズに使えるような雑学ネタが中心に書き込まれていますが、自分の仕事に合わせたものなどもつくるととても役立つと思います。
そのときに、とにかく自分の中の疑問を大事にしてください。
単純に人からいわれたことをメモするのではなく、「なんでこれは流行っているんだろう?」「どうしてこんな名前がついたんだろう?」「これはどんな仕組みになっているんだろう?」などと疑問を書き出し、自分なりに調べていくプロセスが重要だと思います。
自分がどんなによく知っていると思うことであっても必ずひとつくらいは「知らないこと」が隠れているはずです。
それを見つけ出せるかどうかが、知識を広げていけるかどうかの分かれ目なのです。
読んだら忘れる読書術
「せっかく読んだのに、中身を思い出せないことがあって残念」
このように、読書好きの中には、本の内容を「覚えておく」ことを重視する人もいます。
でも、記憶には限界がありますから、僕は「忘れてOK」と考えています。
実際に読んだ本のことはかなり忘れてしまいますが、それを困ったことだとは思いません。
新しい情報や知識を得るだけではなく、自分が何を思ったか、どういう考え方をしたのかというのも重要だからです。
考え方自体は知識と違って、一度身につくと忘れることはありません。
「自分の考えとは、どこに違いがあるんだろう」
「この人、何がいいたくてこれを書いたんだろう」
こうして頭を使うことで、「考える力」が磨かれます。
たとえ、本の内容を忘れてしまっても、考える力はあらゆる場面で活用できます。
知識を得ることだけが本を読む意味ではない。
そういった意識をもって、「読みながら考える」習慣をつけてもらいたいと思います。
あえて「意見の合わない本」を読む
意見の合わない著者の本を手にしてみることも大事です。
たとえば、あなたが「消費税増税に反対だ」という考えの持ち主だったとしましょう。
その考えを裏づけてくれるような反対派の本なら、自分の意見が補強されたことに安心するでしょう。
一方で、「消費税増税に賛成だ」と主張する著者の本は、「何か違うな」と、ときに不快感を抱きながら読み進めることになるはずです。
でも、実は、後者のほうがいい読書だと僕は思っています。
一方的に自分の考えを補強するのではなく、著者の考えに対して「本当かな?」と疑問を抱きながら読むことが増えるからです。
僕たち人間は、基本的に好きなものにふれようとします。
読書でも、意識しないでいると共感できる本ばかり選んでしまいます。
それだと、楽しく読むことはできますが、考えながら読むという点では弱くなります。
とくに、二項対立の内容については両方読んでみるべきです。
そのとき、かなりレベルは高くなりますが、どちらが正しいとか間違っているとか決めつけるのではなく、対立した2つの意見を昇華させ、新しい見地を得るということができたら最高です。
「原典」を読んでみる
難しそうなものについては、「まず簡略本で読んでみて、面白そうだったら原典にあたろう」と考える人が多いはずです。
でも、実際には、簡略本で「わかった気」になってしまうと、たいていそこで満足しておしまい。次に進みません。
もし、原典を手に取る人がいたとしても、簡略本に慣れた頭は、その難しい内容をなかなか受けつけてくれません。
そして、「やっぱり簡略本のほうがいいや」となることが多いのです。
だから、僕は逆をやっています。まず原典にふれて、その後、簡略本を見るようにしているのです。
たとえば、ニーチェの思想についても「超訳」などと頭についた簡略本がいっぱい出版されていますが、できれば原典に近い『ツァラトゥストラはこう言った』(岩波書店)から入るのです。
すると、当然「何が書いてあるのかわからない」ところがたくさん出てきます。そこで投げ出さずに、考えて考えて自分なりの答えを用意します。
その後に「超訳」を読んでみると、「ああ、そういう解釈も成り立つな」と多角的、かつ客観的な視点がもてます。
ところが、最初から誰かが解説しているものを読んでしまえば、「そういうことなのだ」という一方的な情報しか得られません。
それに、自分の中で掘り下げをしていないので、表面的な理解にとどまってしまいます。
簡略本を手にしてすると、考える機会が減ってしまう
堂々と王道の原典にチャレンジすればいいのに、つい簡略本を手にしてしまうのは、「自分には読めないだろう」と最初から決めてしまっているところが大きいのではないでしょうか。
でも、たとえわからないところがあっても、その人なりの解釈ができればそれでいいのです。
現代は、なんでも調べればすぐ答えが見つかるので、「自分で考える機会」がかなり減っています。
わからなさそうなものは最初から敬遠してしまう。
そういう僕らの姿勢が、簡略本という形に表れているのではないかと思います。
僕にとって本は、「知るため」というよりも「考えるため」のツールです。
しかし、手軽に知識を得られる簡略本を読んでも、思考力を鍛える読書にはなりにくいのです。
それよりも、原典と自分なりに向き合って、少しずつ難しい内容を読み解くことにこそ価値があるのだと思っています。
毎回、理解しにくい原典を読むのは無理だとしても、せめて半分はチャレンジしてみてはどうでしょう。
いつもやさしい入口を選ぶのではなく、10回のうち5回は難しいほうから入ってみる。
すると、両者では頭の使い方が違っていることに気づくはずです。
原典にチャレンジして、「ここはどういう意味なんだろう」と一生懸命読み解こうとすることで、「考える力」が磨かれていくのです。
東大クイズ王の頭脳をつくった習慣をもっと学ぶ
水上さんが日々実践しているノウハウが詰まった『頭を鍛える5つの習慣』。
今回お届けした「インプット術」に加え、「時間管理術」や「アウトプット術」など、ビジネスでも使える習慣が詰まっています。
仕事でなかなか成果が出せない。でも新しい勉強をする時間はない。
そんな方は、日常生活のなかで無理なくできる「5つの習慣」を試してみてはどうでしょうか?
<撮影=實重かおり ©TBS>
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