ビジネスパーソンインタビュー
トム・ピーターズ著『ブランド人になれ!』より
自分の署名入りのすごい「プロジェクト」だけが、ブランド人として生きる唯一の財産だ
新R25編集部
世の中に流通しているビジネス本は数知れず。
日々たくさんの本を読んでなんとなく学びになっている気もするけど、せっかくだから確実に僕らの資産になる「珠玉の1冊」が知りたい。
そこで新R25では、ビジネスの最前線で活躍する先輩たちに「20代がいいキャリアを積むために読むべき本」をピックアップしてもらいました。
それがこの連載「20代の課題図書」。
第1回の推薦者は株式会社ZOZO コミュニケーションデザイン室長の田端信太郎さん!
選んだのは、自身の書籍『ブランド人になれ!』と同名タイトルの『トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦1:ブランド人になれ!』。
アメリカの経営コンサルタントであるトム・ピーターズさんが執筆し、日本では2000年に出版された同書に対し、田端さんは「俺の人生を変えた一冊」とコメントしています。
まだSNSも存在していない時代に「自分の看板を持て」と予言の書のように主張していた同書から、3記事を連日公開。田端さんの人生に影響を与えた思想を学びましょう!
あなたの仕事は、くだらない仕事か
仕事という言葉の使い方には注意したい。
「それは私の仕事じゃありません」
「この仕事を火曜日までにやっつけなくちゃ」
あなたはそんなに仕事をするのがイヤなのか。
自分の名前をブランドにするというのは、やれと言われた仕事を嫌々やることではない。
顔が見えるお客さんのために、まちがいなく付加価値がある商品を創造することだ。
商品やプロジェクトを自慢のタネにすることだ。お客さんを、共謀者にし、熱狂的なファンにし、宣伝マンにし、生涯の友にすることだ。
私は「仕事師」である(1966年以来ずっと)。私は良い父親か悪い父親か、自分ではよくわからない(そんなこと、誰がわかるか!)。だが、仕事師として、これだけは断言できる。
私のプロジェクト、それが私である。
私は海軍にいたときから、「職務規程」なるものが反吐が出るほど嫌いだった。私は、自分が何をすべきかは自分で決める。
33年前(海軍設営部隊の将校としてベトナムにいた23歳のとき)も、いまも、私が自分に言い聞かせていることに変わりはない。
「毎日、かならずひとつすごいことをやれ」
「それができない日はすごいことができるよう死力を尽くせ」
私はそれほど信仰のあつい人間ではないが、社会が必要とする人間でありたい、世の中の役に立ちたいと、いつも願っている。
私が生きている証、それはプロジェクトしかない。
していることを見れば、その人がわかる
自分とはいったい何者か?
私の答えはいたって簡単だ。
予定表を見れば、その人がわかる!
ひと昔まえ、みんな品質管理で大騒ぎした。「品質問題」に取りかかる成功の秘訣は何だったか。デミング・セミナーに行くこと? クロスビーの著作を読むこと? どちらも悪くない。大いに勉強になる。
しかし、本当の秘訣は、自分のいちばん貴重な資源、すなわち時間の50パーセントを「品質そのもの」に費やすことだ。
「言行一致」あるいは「世の中を変えたいなら、まず自分から変われ」と言ってもいいし、「集中こそすべて」と言ってもいい。
人を気づかうふりをすることはできても、その場にいない人が、その場にいるふりをすることはできない。
自分の名前をブランドにできるかどうかは、署名入りのすごいプロジェクトをやり遂げられるかどうかにかかっている。
だとすれば、気が散るものをできるだけ排除し(排除目標は96パーセント!)、署名入りのすごいプロジェクトに全力を傾注しなければならない。
すこしでも時間が見つかると、あれもこれもと手を出すヤツがいる。仕事も遊びも細切れにしかできないヤツがいる。どうでもいいことに忙殺されて、時間が足りないとぼやいているヤツがいる。
大馬鹿者!時間を大切にして、はじめて時間はできる。
友だちや妻や(夫や)子供たちに「ノー」と言わなければならないとして、それがいったいどうしたというのか。
何も失わずに得られるものなど、この世にありはしない。
私は本を書いているとき(いま書いているのだが)、友人にも家族にも同僚にも、おそろしく冷たくなる。
手紙をもらって、1年も返事を出さないこともある。リトルリーグの試合にはすっかりご無沙汰するし、母親には電話さえかけない。
正直いって、私にはそうする以外にないのだ。ほかにどうしようがある?
プロジェクトのポートフォリオ
きょうから、プロジェクトのポートフォリオのことをいつも考えるようにしよう。
ブランド人への道を切り開く大切な仕事、それは、お客さんを中心に動き、一個の作品となるプロジェクトしかない。
それが、ブランド人の財産になる。
それが(雇われ人であろうとなかろうと)解放行きの(唯一の?)切符、(精神的にも現実的にも)独立行きの(唯一の?)の切符になる。
『ブランド人になれ!』1.仕事は与えられてやるものじゃない。
2.プロジェクトだけが財産になる。
3.プロジェクトのポートフォリオを考えてみよう。
次の一行は、火の文字で印刷してほしい。
私が誰だか知りたかったら、私のプロジェクトをみてくれ。
私はこれまで数多くのプロジェクトを遂行してきた。すごいプロジェクトを一つやり遂げた。平凡なプロジェクトもあった。爆弾のようなプロジェクトも…。
私は1966年から68年にかけ、ベトナムに従軍して、4つの橋をつくった。砲床もつくった(これは工学雑誌に取り上げられた)。
ペンタゴンに転勤してから取り組んだプロジェクトは、ディエゴ・ガルシア(インド洋)の海軍基地に結実した。
1973年から74年にかけては、ホワイトハウス、行政管理予算局、国務省を転々としながら、メキシコでの阿片撲滅運動を指揮し、このプロジェクトは大きな成果をあげた。書いていけばキリがないので、このくらいでやめておく。
プロジェクト、プロジェクト、プロジェクト。
プロジェクト、プロジェクト、プロジェクト。
私はいつもプロジェクトとともに歩き、プロジェクトとともに走る。
そして、プロジェクトに向かっていくときは、いつも胸がしめつけられる。そんな思いをしなくなったら、もう生きていたってしようがない。
つまらない仕事を黄金に変える
ひとのせいにするな。決めるのは、あなただ。
黄金律──どんなつまらない仕事も、黄金に変えられる。イマジネーションさえあれば。
ここだけの話だが、いいことを教えよう。
ビッグ・プロジェクトだけが、プロジェクトじゃない。
私はウソは言わない。大ベストセラーになった『エクセレント・カンパニー』は、誰ひとり振り向きもせず、最初は誰ひとりお金を出してくれないちっぽけなプロジェクトから生まれた。
つまらない仕事、誰にも頼まれない仕事が──くすぶっている隠れた才能との出合いを生み──パンドラの箱、目も眩くらむようなドル箱をあけてしまうことがよくある。
いま26歳で、下っ端のあなたには、つまらない仕事しか回ってこないかもしれない。
さて、問題はそこから先だ…。「つまんねえ」と言いながら仕事に取りかかるか、それとも、その「つまんねえ」仕事を「すげえ」プロジェクトに変えてやろうと思うか。
そんなことができるだろうか…できる。やる気さえあれば、できる(やる気がなければ、なにごとも始まらない)。
そんなことが実際にあるのかって? あるとも。あるどころじゃない、世間ではよくある話なのだ。
大ヒット商品や永遠のベストセラーは、いつも決まって(そう、いつも決まってだ)、ほんのちょっとしたことがきっかけになっている。
たとえば、ある日曜日の朝、教会でのこと。ある男が手にした聖歌集から一枚の紙切れが床に落ちた。それは、その日歌うはずの頁にはさんでおいた栞だった。
男は舌打ちしてつぶやいた。「落ちない栞はないものか…」。
そのつぶやきから15年後に生まれたのが、3Mの大ドル箱商品〈ポスト・イット〉である。
たとえば、あなたが社員研修専門の会社に勤めていたとしよう。あなたは下っ端で、やることといえば電話番くらいだ。
ある日電話を取ると、販売員4人を1日だけ研修してほしいという依頼である。ちっぽけな注文だ。
しかし、お客さんが考えているプロジェクトの内容を聞いているうちに、意気投合し、すっかり興奮してきた。
そこで、社内規定に反し、くる日もくる日も、ひそかにそのプロジェクトを調査する。
そして、画期的な研修セミナーを考え出し、お客さんを集める。
それから2年後、あなたのセミナーは会社の売上高の35パーセントを占めるようになり、スピンオフが決定され、あなたは28歳にして新会社の社長におさまる。
すべては、気がまえの問題である。
つまらない仕事が回ってきたとき、落胆するか、それとも絶好のチャンスだと思うか(あなたのやることは誰も見ていない。それは「つまらない」仕事なのだから)。
失礼だが、あなたは間違った本ばかり読んでいるのではないか。自分は無力だなどという言い訳は聞きたくない。作家にして俳優にして哲学者だったロザンヌは言っている。
「力は誰も与えてくれない。自分で奪い取るものだ」と。
私がこれに付け加えるとすれば、26歳でも66歳でも、16歳でも86歳でも、このことに変わりはないということだけだ。
これが田端信太郎の原点。「個人の時代」を生き抜くためのブランド人思考
「労働ではなく投資の時代に個人が持ち得る最大の資本は自分の『名前』だ」
田端さんが同書のリニューアルの際に、本の帯に残したコメント。2000年以前に書かれた本だと侮るなかれ。
会社員として限界が見えつつある現代に必須スキルがここに残されています!
〈著者画像撮影=Allison Shirreffs〉
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