ビジネスパーソンインタビュー

結婚式の費用を抑えたい…とプロに相談したら、「結婚式のコスパの本質」を教えてもらった

なんで結婚式ってあんなにお金がかかるの?

結婚式の費用を抑えたい…とプロに相談したら、「結婚式のコスパの本質」を教えてもらった

新R25編集部

2019/08/31

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結婚することが決まったら、頭に浮かんでくるのは「結婚式どうしよう?」という悩み。

一生に一度とはいえ、「高いお金を払ってまでやる意味あるの?」「お金かけずにやる方法ないのかな…」などと、R25世代としてはお金まわりが気になる人は多いはず。

今回お話を聞いたのは、オリジナルウェディングのサービスを提供する株式会社CRAZYの創業者・山川咲さん。

結婚式で節約する方法について聞いたところ、意外な展開に…。 最後まで読むと、結婚式のとらえ方がガラッと変わるかもしれません。

〈聞き手=水玉綾〉

【山川咲(やまかわ・さき)】2006年に神田外語大学を卒業後、人材教育系のコンサルティング会社へ入社。人事新卒採用責任者として数々のプロジェクトやイベントを立ち上げ、メディアの注目を集める。2011年に同社を退職し、完全オーダーメイドのオリジナルウエディング事業を立ち上げ、業界で話題に。2016年5月には『情熱大陸』(毎日放送)に出演。著書に『幸せをつくるシゴト』(講談社)がある

結婚式ってどれくらいお金がかかるの? 何が高いの?

水玉

結婚式はやたらとお金がかかるイメージがあるのですが…実際はどれくらいかかるんですか?

山川さん

参列者が平均的な60人とすると、一般的にはだいたい350万円ぐらいですね。

水玉

350万円!?

山川さん

ただしこれを全額負担するわけではありません。

水玉

あ、そうなんですか。(びっくりした…)

山川さん

自己負担額は150万円ぐらいですね。ご祝儀として参列者1人につき約3万円をいただいて、その残りが自己負担になります。

水玉

それでも150万円…やはり高い買い物ですよね。何にそんなにお金がかかっているのでしょう?

山川さん

特に披露宴の「参列者の飲食費」が高いんです。結婚式は、愛を誓い夫婦になる「挙式」と、夫婦になった2人をお祝いする「披露宴」をセットでおこなうのが一般的。

披露宴で提供するのは、1人につき1万円ほどの料理と、3000円程度のドリンクのセットが最低ライン。それを人数分となると、それだけでけっこうな額になってしまいます。

ほかにも会場利用料や、新婦のドレスや新郎のタキシード、当日の写真と映像…細かくお金がかかって、総額が平均で350万円ほどになります。

結婚式が高額になってしまう2つの原因

水玉

結婚式は大事なイベントですが、やはり「なんでそんなに高額になるんだろう」って疑問に思っちゃいます。

山川さん

私は2つ大きな原因があると考えてます。

水玉

なんでしょうか?

山川さん

まず1つは結婚式場のビジネスモデルの問題

結婚式を請け負う結婚式場って、基本的には『ゼクシィ』みたいなウェディング情報メディアに掲載してもらわないと、集客が難しいのが現状なんです。

そのせいで、メディアではたくさんの結婚式場が紹介され、それぞれは埋もれていきます。

だから、いい立地にゴージャスな建物を建てて、内装もこだわって…と、なんとかお客様に選んでいただけるように努力しないといけません。流行りに合わせて旬な会場であり続けるため、頻繁にリニューアルも必要です。

水玉

不必要なくらい、お金をかけないといけないんですね。

山川さん

それで普通に運営して十分に利益が出るならいいんですが、コストを回収できるのはほとんどの結婚式が開かれる土日しかないので絶望的(笑)。

それで少ない結婚式でも利益が出るように、どうしても高額になってしまう。それが結婚式場のツラい現状なんです。

水玉

なるほど…もう1つの原因はなんでしょう?

山川さん

顧客の心理です。結婚式は家柄同士の見栄の張り合いが起きるなど、「安く済ませたら恥ずかしい」という心理が働いて、高い価格が守られてきている面があります。

水玉

たしかに「一生に一度だし…」って思うと、どうしてもより豪華な選択をしてしまいそうです。

山川さん

それに結婚式って、たいてい会社の偉い人を呼ぶじゃないですか。そういう「忖度すべき人物」を呼んでしまうと、不快な思いをさせないために、過度なおもてなしが必要になります。

水玉

「後からなんか言われないかな」って不安になりますもんね。

山川さん

これらの理由で、たいていの結婚式の費用は想定以上に上がっていきます。

準備の序盤には想定できてないことが多いと、最終的には見積もりから200万円くらい上乗せになることもあります

水玉

200万円も上乗せされるって、見積もりの意味が…

山川さん

さらにこれらを加速させているのは、たとえ納得のいかない結婚式であったとしても、周囲に悪い口コミが広がりにくいこと。

基本的には1回だけの買い切りの商品ですし、何より「自分の結婚式は最悪だった」なんて誰も言いたくないでしょう。

そういう心理も相まって、結婚式の高い価格は守られてきているんです。

結婚式で節約するには、式場から決めてはいけない

水玉

結婚式の費用が高くなってしまう理由はよくわかりました…でもそんななかで、少しでも節約するにはどうすればいいんでしょう?

山川さん

一番節約できる方法は、結婚式場から決めないこと。式場を決めると、衣装などの関連コストもほとんど決まってしまうから、節約しようがなくなります。

まずは、いろんなことを決めてから、式場を見に行くべきですね。

水玉

いろんなこと…ですか。

山川さん

今って、昔ほどしばりが強くないので、やろうと思えば結婚式だってかなり自分の思い通りにできます。

だから自分たちにとっての「結婚式の成功」を明確にして、それを叶えられるやり方を選ぶべき。

水玉

何か具体例はありますか?

山川さん

親同士に仲良くなってほしいのであれば、親族だけで離島でやるのがいいかもしれない。

お世話になった少数の人と密に話したいなら、一週間だけ家を解放して、1日2枠で6人ずつ来てもらうのがいいかもしれない。

いわゆる“結婚式”にとらわれなければ、いくらでも節約はできますよ。

水玉

たしかに…!

山川さん

もしそれでも結婚式場を選ぶのであれば、契約前が一番大事

自分たちがやりたいことを念頭に、価格を交渉し合意しておきましょう。式場側も契約を取るためにある程度は要望を聞いてくれるはず。

くわえて、理想像から外れた“ムダなオプション”も避けましょう。天井のない世界だから、気をつけて。

結婚式のコストではなく、パフォーマンスにも目を向けよう

水玉

なんだか、節約できそうな気がしてきました…!

山川さん

でも“節約だけ”を考えるなら、そもそも結婚式なんてやらないほうがいいんじゃないですか?

水玉

えっ…!?

山川さん

「とにかく安く済ませたい!」と思って結婚式をするって、もはやなんのためにやってるんだろうって疑問に思いません?(笑)

水玉

やらなきゃいけないものだから、どうせやるなら安いところで、って…。

山川さん

もちろん節約したい気持ちはわかります。ただ、コストばかり考えてたら、参列者は不幸ですよ。

数万円のご祝儀を払って、手間をかけておしゃれをして、ほぼ丸1日の時間を使うわけじゃないですか。

それなのに節約ばかりを考慮したつまらない結婚式だったら、本当に不幸!

水玉

(うっ…)

山川さん

だからコストパフォーマンスの「パフォーマンス」へ、ちゃんと目を向けましょう

今の結婚式の問題は、低いパフォーマンスに対して、高いコストがかかっていること。だから高く感じる。

一方でパフォーマンスが高ければ、コストが多少高くても十分に満足できる可能性はありますよね。さらに自分たちが満足いくものになっていれば、参列者にとっても充実した時間になるはず。

水玉

おっしゃってることはわかるんですが、1回やって終わりの結婚式のパフォーマンスには限界があるのでは…

山川さん

その思い込みがもったいない。結婚式は準備するプロセスにこそ価値があるんですよ。

水玉

どういうことですか?

山川さん

結婚式の準備は、新郎新婦がお互いの深い部分を知るいい機会になります

普段は話しづらい幼少期からの夢や、本当はやりたいけどできてないことが、結婚式を言い訳に共有しやすい。「実はずっと田舎暮らしがしたかったんだよね」とか。

そうした共有をしていくと、夫婦で歩みたい人生の方向性が見えてきて、大きく人生が変わるきっかけになり得る。それってすごく価値があることだと思いませんか?

水玉

たしかに…その視点はありませんでした!

山川さん

しかもこれは夫婦間だけではなく、周囲の人にも同じことが言えます。

たとえばご両親との関係が深まるケースは多いですね。それまで疎遠だったとしても、プランナーのような第三者から背中をおされ、結婚式を機に話し合って、確執が解消されるなんてことがよくある。

水玉

結婚式って、その場限りじゃないんですね。

山川さん

そうなんです。ほかにも仕事の面でも結婚式が転機になることもあります

たとえば、新郎が今の仕事に対する志を結婚式で伝えたとしましょう。もしかしたらそれを聞いていた参列者が大きな仕事を頼んでくれるかもしれない。

水玉

結婚式後にも大きな効果が見込めるってことですね。

山川さん

はい。そんな風に、自分たちの強い想いをひとつずつ言葉にし、大切な人たちに伝えられるのは、長期的にすごく価値のあること。

いわば自分たちの最高のプロモーションの機会にもなり得る。うまく活用すれば、結婚式のコストをゆうに超える経済効果があるかもしれません(笑)。

私たちが結婚式をプロデュースしたお客様のなかには、結婚式を機に転職されたり、起業される方も多くいらっしゃいました。

結婚式を通して、理想の生き方や人生が見えた、ということだと思います。

水玉

そう考えると、かなりコスパがよくなる可能性もありますね。

山川さん

現状だと、たいていの結婚式は単に「結婚します」という事実を伝えることに数百万円を払ってるような状態。それはあまりに高い。

ですが、やりようによってはパフォーマンスはいくらでも高くなり、結婚式は自分たちの人生を変えるきっかけにもなります

結婚式に否定的な人たちには、そのこともちゃんと知ってほしいですね。

「結婚式って高いお金かけてやる意味あるの?」

そうやってコストばかりを気にしていた人は、雷を打たれたように結婚式に対する考えが変わったのでは?

思考停止して、妥協した選択をするのではなく、自分たちなりの「結婚式の成功」を考えることで、結婚式は人生を左右する大きな転機にもなり得る。

この記事を読んだ人が、素晴らしい結婚式を迎えられることを願ってます。

〈取材・文=水玉綾(@maya_mip)/撮影・編集=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉

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