ビジネスパーソンインタビュー

吉本興業のギャラ騒動から学ぶ、ビジネスパーソンは知っておいた方がいいお金の話

会社の利益を想像しろ

吉本興業のギャラ騒動から学ぶ、ビジネスパーソンは知っておいた方がいいお金の話

新R25編集部

2019/08/24

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記事提供:キングコング 西野 公式ブログ

おはようございます。

ウチの田村プロデューサーが自分の誕生日プレゼントに、“西野のお金で”高級ホテルを予約したことを昨日知らされたキングコング西野です。

見たことがない形のサプライズプレゼントです。

さて。

吉本興業のイザコザニュースが手を替え品を替え、まだまだ続いております。ごめんなさい。

先日、このサロン内にも投稿させていただきましたが、騒動をより大きくしてしまうので(つまんない時間が増えてしまうので)、吉本所属の芸人として今回の件に触れることは本意ではありません。

ただ一方で、『口外禁止』を規約としたサロン内でのコメントですので、「ここでの発言がニュースになって、それがキッカケで騒動を拡大させることはない」という前提があったのと、それより何より、日頃応援してくださっているサロンメンバーの皆様に対して、心の内を明かさないのはアンフェアだと思いましたので、“サロン内だけで”胸中を吐露しました。

本日の記事は、こんなスタートを切っておりますが、吉本興業の騒動に関してゴチャゴチャ話したいわけではなく、今回の一件で感じた「芸能だけでなく、あらゆるビジネスに携わる人間が共有しておいた方がいいなぁ」と思ったコトについてお話ししたいと思います。

吉本興業の岡本社長の会見後、いろんな芸人さんのTwitterがニュースでとりあげられましたが、中でも目立ったのが、若手芸人によるギャランティーの不満です。

1、2を争うぐらいバズったのは、芸人「佐藤ピリオド君」の、このツイート。

ご本人的には「明朗会計にして」というメッセージだったのかもしれませんが、世間は「客席も満員にして、グッズも完売させたのに、ギャラが4000円しかなかった!」という不満と捉え、吉本興業の超絶ブラック企業っぷりに、おおくの人が反応しました。

「抗議にいったら仕事減らされて…」の部分は、それが直接的な原因なのか真偽のほどを確かめる術がありませんので、ここでは『お金』の話だけをします。

445席のイベントを完売させて「ギャラ4000円」は安すぎる!?

このツイートだけを切り取ると、「吉本興業、サイテー!」となってしまいますが…

「クラウドファンディング」や「オンラインサロン」で、エンタメの制作費不足の補填を繰り返してきたキングコング西野は、おそらく他の誰よりも制作費に明るいと思うので、そんな男から意見させていただきますと、「この規模のイベントで4000円貰えるなんて、ありえない」です。

おそらく、エンタメの予算感覚が世間一般の方とズレていると思うので、冷静に計算していきましょう。

調べてみたところ、「佐藤ピリオド君(元・お茶ノ水男子)」の初単独ライブがおこなわれたのは、2011年11月22日。

会場は『品川よしもとプリンスシアター(現・クラブex)』、キャパは445席です。

チケットは「即完」ということなので、前売り料金で完売したのでしょう。

調べたところ、このイベントの前売りチケットの値段は1800円

チケット収益は1800円×445席=80万1000円ですね。

ツイートには「グッズも完売したのに」とありますが、最大445人を対象としてグッズを作る場合、在庫リスクを考えても、グッズ1つにつき、それほど数が刷れないので、原価がベラボーに高くなり、この人数だと、それほど利益は見込めません。

メチャクチャ甘く見積もったとしても、グッズの利益は、せいぜい「10万円」といったところでしょう。

つまり、佐藤ピリオド君の初単独ライブの予算は「約90万円」です。

ここから、会場費や機材費やセット費や衣装費や人件費やチケット手数料が引かれます。

『よしもとプリンスシアター』は、今は『クラブex』という劇場に変わりましたが、ここは当時『サーカス ~世界で一番楽しい学校~』で頻繁に利用させていただいておりました。

都内の、このクラスの会場を押さえようと思ったら、会場レンタル料は、どれだけ安く見積もっても50万円~60万円はかかりますし、佐藤ピリオド君が単独ライブをおこなった2011年11月22日は土曜日ですので、もう少し割り増しです。

ビックリするぐらい少なく見積もって、65万円としましょう。

となると、残りの予算は25万円ですが、音響費と照明費で、メチャクチャ安く見積もっても15万円。セット費(袖パネルだけ)に5万円

「コントライブ」ということでしたので、衣装費をメチャクチャ安く見積もっても3万円といったところでしょうか。

ここから、スタッフさんのお給料を支払わないといけないのですが、残りの予算は2万円しかありません。

ここからチケット手数料も支払わなければならず、打ち上げに行こうものなら大赤字です。

この規模の単独ライブ(しかも一日コッキリ)で黒字化することは、ほぼほぼ不可能で、では何故、この規模の単独ライブが実現できたかというと、吉本興業が「他の売れっ子芸人さんの売り上げ」から制作費を補填しているんですね。

(※なので、吉本興業のタレントが全員エージェント契約をすると、基本、売れっ子がオイシイ思いをして、売れない若手が更に食いっぱぐれます)

僕自身、過去、ステージに用意するものがセンターマイク1本だけでよかった(つまり、あまり予算が必要なかった)『西野亮廣独演会in日比谷公会堂』(2000席)の売り上げから、結構な額のお金を、他の芸人さんの赤字単独ライブの補填にまわされたことがあったのですが、

逆もまたしかりで、もっともっと新人の頃におこなった自身の単独ライブの補填は、きっと他の芸人さんの売り上げから出ていたと思います。

自分のイベントの利益が後輩のイベントの赤字の補填に回されることを事前に知っていたら、全然納得がいくので、『西野亮廣独演会in日比谷公会堂』以降のイベントは、1円単位で内訳を出してもらうように会社と交渉をしました

今回の佐藤ピリオド君のツイートから吉本社員と吉本芸人が改善しなきゃいけないことは、それぞれ一つずつ。

吉本社員はイベントの売り上げをブラックボックスにせず、キチンと内訳を説明する

ブラックボックスにしなくちゃいけない場合は、ブラックボックスにしなくちゃいけない理由をキチンと説明する。

たとえば、僕のクラウドファンディングは国内屈指のスタッフが『友達価格』でやってくれているので、その額を発表するわけにはいかず、どうしても、クラウドファンディングの内訳を出すことはできません。

ちなみに、こちらのクラウドファンディングでは、イギリス王室に招待されたりしている西畠清順君が、市から依頼された清順君と僕の共同プロジェクトですが、完全に「知り合いのよしみ」でやっていて、

清順君とキングコング西野が正規のギャランティーをとってしまうと、予算が足りなさすぎるので、僕らの報酬は「打ち上げに参加できる」ぐらいなのですが、そのことは表には出せないんですね。

それを表に出してしまうと、「なぜ、アッチは◯◯円で、コッチは◯◯円なんだ!」というクレームがきちゃうので。

予算を取り扱う人間には、『公表できない予算』があった場合、公表できない理由を説明する義務があると思います。

②芸人(雇われている側)に関しては、「予算の内訳を教えてくれないっ!」という文句を垂れ流すのではく、予算の相場を自分で調べて、そのデータをもとにキチンと交渉をした方がいいと思います。

佐藤ピリオド君のツイートの文面を見るかぎり、「これだけしか貰えなかった」という不満が滲み出ていて、まさかチケットとグッズが完売した自分のイベントが「赤字イベント」だとは思っていない様子なので、そこの想像力は必要だったのかもしれません。

勿体ないのは、吉本興業が佐藤ピリオド君のイベントの赤字を補填してあげているのに、佐藤ピリオド君は「吉本に、かなり中抜きされている」と思ってしまっている可能性がある点で、ここは話し合いでクリアできる部分です。

大切なのは『売り上げ』ではなくて、『利益』を共有しておくことですね

芸人6000人に対して、社員の数が圧倒的に不足している会社を選んだのは、芸人自身なのだから、交渉に時間がかかる(自分一人に時間を割いてもらうのに苦労する)のは当たり前の話で、そのことを踏まえて、芸人は会社と粘り強く話し合うことが大切だと思います。

そこで条件が合わなければ今すぐにでも辞めればいいだけの話です。

手元に入ってきたギャランティーが多いのか少ないのかを判断するには想像力が必要で、想像力を働かせるには、想像の素材となる『情報』が必要です

この文章をお読みのサロンメンバーの皆さまが自分の給料に不満を持ったならば、不満を口にする前に、一度、“利益の一部が自分の手元にくるまでにかかったであろう経費”を自分なりに計算してみることをオススメします。

会社に恨みを持った状態でギャラ交渉をするのと、会社(社長)の痛みを理解した上でギャラ交渉をするのとでは、交渉の結果に大きな差が生まれるので。

現場からは以上でーす。

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