ビジネスパーソンインタビュー

高田さん、“街のカメラ屋さん”が1000億円規模の会社になれたのはなぜですか?

効率的な工夫で、会社をつくりあげてきた。

高田さん、“街のカメラ屋さん”が1000億円規模の会社になれたのはなぜですか?

新R25編集部

2019/05/27

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一度聴いたら忘れられないオリジナルソングや、「金利・手数料はジャパネットが負担!」などの耳に残るフレーズで、老若男女から知られている大手通販会社「ジャパネットたかた」。

その原点は、長崎県・平戸のカメラ店「カメラのたかた」とのこと。

街のカメラ屋さんから全国規模の会社にまで拡大していったウラには、きっとビジネスに役立つ秘訣が隠されているに違いない…!

今回は、創業者の高田明さんに、「一代で大手企業をつくりあげたビジネスアイデア」と「マネジメントのコツ」を聞きました!

〈聞き手=於ありさ〉

【高田明(たかた・あきら)】ジャパネットたかたの創業者であり、同社のテレビ・ラジオショッピングのMCとしても知られる。2015年1月16日を持って社長職を退任。現在は株式会社A and Live代表取締役および株式会社V・ファーレン長崎代表取締役社長を務めている(※「高田」の実際の表記は「はしごだか」)

ライター・於

本日は、高田さんにビジネスの秘訣を教えていただきたいです。よろしくお願いいたします!

高田さん

よろしくお願いします。

ライター・於

(あれ? テレビで見るほど、声が高くない…)

高田さんは、大学卒業後に就職した会社の仕事で海外に行ったあと、退職して、その後ご実家のカメラ店を手伝いはじめたんですよね?

学生時代は「漠然と英語を使ったり、海外に行けたりする仕事がいいな…」と思っていたという高田さん

高田さん

そうですね。最初に入った会社をやめて、友だちと「翻訳の仕事をやろう」なんて言ってたんですけど、若気の至りでうまくいくはずもなく、やることもないので地元の平戸に帰りました。

そうしたら父や兄から「やることが決まるまで手伝え」って言われたので、自然と実家の仕事を手伝うようになりましたね。

ライター・於

意外と流れに身を任せるタイプの方なんですね…

高田さん

そうなんですよ。今もずっとそうですね(笑)。

ガツガツしているのかと思いきや、かなり和やかなムードの方だ…

高田流“ビジネスアイデア”のキモは、「シンプルな工夫」で「効率よく」

ライター・於

とはいえ行き当たりばったりじゃここまで大きな会社にならない気がします…

実家のカメラ屋さんではどんなことをしたんですか?

高田さん

当時うちの店では、旅館やホテルで観光客の写真を撮って、次の日の朝食会場でそれを売る仕事をしていました。

そこで、どうせやるならと自分なりに工夫して売上を2倍、3倍と増やしていったんですね。

ライター・於

どんな工夫をしたのか気になります!

高田さん

こういうことは、“シンプルな工夫だけ”で効率よくできることを考えるといいんですね。

たとえば、50人の写真を撮って売っていたところを、「頑張って100人、150人を撮って売上を伸ばそう」とすると難しいですね。肝心の“工夫”がないから、それだけではうまくいかないですよ。

ライター・於

営業成績を伸ばそうとすると、「倍の人数にアタックしよう!」と考えがちですが…

高田さん

ですよね。 私は、50人に50枚売っていたところを、50人に150枚売るようにしたんです。

当時の旅行写真って、風景をバックに1人でポーズをとっているスナップ写真が多かった。

ライター・於

たしかに昔の写真ってそういうイメージありますね…

高田さん

そんななかで「みんなで写りませんか!」って声をかけて、仲の良さそうな2人組、3人組のグループ写真を積極的に撮影したり、撮影に入った宴会が始まる前「記念写真を撮りましょう!」って集合写真を撮ったりして、カット数を増やしたと。

1人しか写ってない写真はその本人しか買わないけど、グループ写真なら同じ手間で複数人分撮れるし、何人もの人に買っていただけるから効率的でしょ?

ライター・於

なるほど…

しかし、思った以上にシンプルな手法ですね。

高田さん

そうですね。僕のアイデアって、仕事に向き合うなかで「どうしたらよいかな」と感じた課題を解決する、ただそれの繰り返しなんですよ。

でも、この“シンプルな工夫”で売上は何倍にもなっていきました

この方が言うと含蓄がある

日本を代表する通販会社になったのも「シンプル」「効率」を追ったから

ライター・於

ジャパネットたかたといえば、「テレビ通販」のイメージが強いのですが…

最初はラジオから始められたんですよね?

高田さん

そうです。1990年ですね。たまたまラジオCMでお付き合いのあったラジオ局の方から声をかけていただいて、番組でカメラを紹介したら、数分喋っただけで月に数台しか売れないカメラが50台も売れたんです。

これはすごい!と感じて、もっと回数を増やしていきたいと思ったんです。

効率的と思うことをどんどん実行していく高田社長

高田さん

でも、ある程度までいくと、長崎のラジオ局でこれ以上枠を増やすのは厳しくなってきて。

ライター・於

そこでは、どんな“工夫”をされたんですか?

高田さん

ラジオなら、電話だけで出演できるな!と。

それで、長崎以外のラジオ局に「電話で出演しますから、放送枠をください!」と営業していきました。

ライター・於

シンプル…! でも、たしかに理にかなってます…

高田さん

ありがたいことに、それでどんどんネットワークを広げていくことができて。近隣の県から、どんどん北上していって、気づいたら北は北海道、南は沖縄までラジオで全国展開していました。

さらに、「ラジオより、テレビのほうが多くの人に情報を届けられるだろう」ということで、テレビでもやってみた。

ライター・於

1段、1段、階段を上がってきたんですね…

高田さん

そう。今日より明日、明日より明後日と、常に“自己更新”を繰り返してきただけなんですよ。

「口下手」だという高田さんの、マネジメントの極意とは…?

ライター・於

でも、いくら高田さんがシンプルな工夫を続けていても、組織として大きくなるためには、社員の方も同じようなモチベーションじゃないといけませんよね?

「マネジメント」についても聞きたいんですが、高田さんはどうやって部下を巻き込んできたのでしょう?

高田さん

痛いところをつきますね(笑)

僕、誰かに何かを指示したりするのが、あまり得意じゃないんですよ

高田さん

これは私のように「指示するのが苦手だ」と思うマネージャーの人に言いたいんですけど、伝えるのがうまくないなら、「メンバーに本気になってもらう」ことだけを頑張ったらいいと思うんです。

僕も、誰よりも自分が一生懸命頑張る姿を部下に見せてきました。

ライター・於

本気になってもらうように頑張る…

どうやったらそんなことができるんでしょうか?

高田さん

売上がピークだった2010年の後、2年連続で大幅に減収減益になりました。その翌年、2013年度のことはわかりやすい事例ですね。

テレビ放送の地デジ化にともなって「家電エコポイント制度」が終了し、それまで売上を牽引していたテレビがまったく売れなくなりました。2年で約600億円の減収、利益も136億から73億まで減りました

私は、そのこと自体はそれほど気にしていませんでしたが、危惧していたのはむしろ、危機的な状況なのに、社内に「誰かがどうにかしてくれるだろう」という雰囲気があったことです。

高田さん

それを見て、このままでは「100年続く企業にはなれない」と思ったんです。

でも一方で、社員たちに「こんな甘えた雰囲気じゃダメだ!」と口で言うだけでは伝わらないと感じていました。

ライター・於

危機的状況なのに、社員にただ発破をかけるということはしなかったんですね。

高田さん

社員からすれば突然のことだったと思いますが、2012年の望年会(=忘年会)で「もし来年、過去最高益を達成できなければ、社長を退任する」と宣言しました。

創業以来、初めて明確な数値目標を設定したのがこの年。前年比の2倍近い利益を出さなければいけない状況に追い込んだんです。

ライター・於

ご自身が退任宣言!? 

高田さん

そうしたら、社員一人ひとりが本気になって、どうしたら過去最高益を達成できるか考えて、行動してくれました。 

1つの商品だけを1日限りお値打ち価格で提案する「チャレンジデー」などの、社員発の企画が生まれてきたのもこのころです。またテレビに代わって、クリーナーやエアコンなどの白物家電でも売上を伸ばすことができました。

ライター・於

それで、結果はどうなったんです?

高田さん

目標の136億円の利益を大きく上回る154億円を達成し、社長を辞めずにすんだんですよ。

よかった! 本当によかった!

気になる“後継MC”たち…彼らはどうやって育成してるの?

ライター・於

もうひとつマネジメントについて聞きたいことが…

ある時期から、高田さんだけでなく、ジャパネットの社員の方たちが番組に出てMCをするようになりましたよね。彼らの指導はどうしていたんですか?

高田さん

じつは、彼らにMCの仕方を教えたことはないんです。もともと、MCとしての採用もしていない。

ええ!

ライター・於

そうなんですか? まるで高田さんをコピーしてるかのように雰囲気が似てるから、徹底的に教え込んでいるのかと…

高田さん

みんな僕と同じような高い声で話していますよね(笑)。

今日話していてわかると思うんですけど、僕、普段は声が大きくも高くもないでしょう?

でも、「商品の魅力を伝えたい…!」と本気になると、自然と声が高くなってしまうんです

ライター・於

そうだったんですね…!

高田さん

これも、僕は言葉で社員たちに何かを指示しているわけじゃない。

本気で“伝えよう”と思ったら、自然と声が高くなる。きっとその背中を見て、社員も「本気」になってくれたんだと思いますよ。

ライター・於

なるほど。細かく指示するんじゃなく、「本気」を伝えることこそが重要なんだと。

高田さん

そうですね!

でも、引退して落ち着いた今、テレビで現役のMCたちを見ていると思うんですよ…

「ちょっと声が高すぎるかな」って(笑)。気づいたときにはときどき注意しています(笑)。

今日イチの笑いを見せてくださった高田さん

高田さん

事業を拡大してきたことも、アイデアのタネも、マネジメントも、全部一緒。

その瞬間、自分のやるべきことに「シンプルに、本気で」取り組んできただけなんですよ。

たくさん質問を考えていただいたのに、全部同じ答えですみませんね!

ビジネスの話というと、大それたことをやろうと考えてしまいがち。

でも、仕事において大切なことは、意外なほどシンプルなのかもと気付かされた取材でした。

…それにしても、高田さんってセレブなはずなのに、あんまり「富豪」なイメージがないですよね?

というわけで明日公開の後編では、みんな大好き「お金の話」を聞きました!

高田さんはいったいどんな「お金の哲学」を持っているのでしょうか? お楽しみに!

〈取材・文=於ありさ(@okiarichan27)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=為永直樹〉

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