ビジネスパーソンインタビュー
加藤昌治著『考具』より
行き詰まったら、“問いかけ”を拡げよ。ひねりの利いたアイデアを生み出す3つの方法
新R25編集部
多くのビジネスパーソンが抱える「いいアイデアが出せない」という悩み。
名案を次々と出してくる同僚や先輩を見るたび、「自分には才能がないのかも」と打ちのめされることもありますよね。
それでは、ここで質問です。あなたはアイデアを考えるために何か道具を使っていますか?
「考えるための道具を持てば、あなたの頭は“アイデア工場”になる」
そう語るのは、企画のプロである博報堂メディアコーポレート局・加藤昌治さん。
そんな加藤さんの著書『考具』より、アイデア出しのノウハウがまとめられた2記事をご紹介します。
行き詰まったら問いかけを展開してみる
アイデアを考え出すことに慣れてくると、サッと思考を展開させることができるようになってきます。
または連想の枝をスイスイとたどれるようになってくるはずです。
基本的な頭の使い方が身についた状態です。
それでも、きっとぶつかる壁があります。
企画をまとめることは比較的簡単にできるようになってきたのだけれど、どうもアイデアそのものがパッとしない。
あるいはアイデアの向いている方向が真正面すぎて、ひねりがないように思える…などなど。
大半の課題では真っ当な方向から攻めていって解決する場合が多いと思いますが、時にものすごく狭い関門をくぐり抜けていかなければならないケースもありますよね。
アイデアパーソンであるあなただからこそのぜいたくな悩み。
無理難題を持ちかけられるのはうれしくもある期待ですが、どうやってそれを解決するのか。
突破口、あります。
それは「問いかけ方」を変えてみることです。
より正確に言うと、与えられた課題を変えてみる、ずらしてみることです。
たとえば、上司に「マグカップのお歳暮商戦企画を出すように」と課題を与えられた場合。
最初は素直に考えますね。たとえば下図のようなところでしょうか?
煮詰まったとき、調子の悪いときには、傾向としてマグカップに何かお得な一品を追加するようなアイデアや割引などのアイデアに片寄りがちです。
それはちょっと違うような…と、自分自身でもうひとつ納得がいかないと感じたら考具の出番です。
たとえば、「マンダラート」を使ってみましょうか。
問いかけを展開する考具①マンダラート
アイデアを出すときには、数を限定せずいくつでも出すこと、とこれまで繰り返してきました。
一直線ではなく四方八方、放射状に展開していくイメージです。
そうした頭の動き方をトレースしたかのような考具が「マンダラート」。
頭の中にある情報やアイデアのヒントをグイグイ引っ張り出してくれます。
まずはこちらの図を見てください。
大きな正方形の中が区切られて9つのセルになっています。
これをマンダラと呼ぶのですが、このシンプルな形の上で、あなたの脳が縦横無尽に活躍するから不思議です。
まずは、マンダラの真ん中に「お歳暮商戦」と書いてみます。
そして、その問いの言葉そのものを、周辺のセルに展開していきます。
とにかく8つ言い換えてみましょう。
「お中元の冬版」
「慣習」
「いやいや?」
「使い回しギフト」
「11月、でも商品決定は春」
「デパートで売る」
「値段」
「全国配送サービス」
「そもそもお歳暮って何だっけ?」と新聞記者的なノリで、お歳暮という言葉、概念をほかの言葉に置き換えていきます。
少し外れているかな?と思ってもそのままで。
そして、書いたばかりのマンダラの周辺セル、その一つひとつをさらに展開させます。
「お中元の冬版」を中心に置いて、あれこれ思いつく言葉をマンダラに載せてください。
連想ゲームなども使いながら頭の中を捜索していく感じです。
「お中元と合体」
「秋版」
「夏版」…中元か。
「春版」
「毎月」になるかな? …そういえば来月彼女の誕生日だな、どうしよ?
「誕生日」…あれ? オレの手帳に彼女の誕生日のシール貼ってあったっけ?
「カレンダー」
「シール」
ブツブツつぶやきながら、言葉を拾い上げてみる。
最後はシール?少し離れましたけど、ヒントにはなりそうです。
このくらいまで展開できたら、アイデアが溢れてきませんか?
「誕生日ギフトにマグカップ」──お歳暮と関係ないけどアリかも。
「毎月1つずつ送られてくるマグカップ」──5つのコースから選べる、みたいなの。
「お中元とのセット販売」──春夏秋冬の季節デザイン…変かな?
「マグカップのカレンダー」──数字が書いてあって1人31個買ってくれる…無理か!?
「オリジナルシールをつけてあげる」──ウチのデザイナーにつくれるかな?
「贈りたい人の誕生日にマグカップが届くお歳暮」──ってあったような気もするけど?
どうでしょうか?
問いかけ方をずらしただけで、かなり切り口の違うアイデアが出てきました。
お歳暮と直接関係ないアイデアもついでに出てきそうですが、それも一緒に提案してしまいませんか?
やりすぎだと怒られながら褒められる…そんなに甘くないですかね?
問いかけを展開する考具②「オズボーンのチェックリスト」
こんなとき、オズボーンのチェックリストも使えます。
オズボーンのチェックリストは全部で9カ条。
◆転用したら?現在のままでの新しい使い道は?
◆応用したら?似たものはないか? 真似はできないか?
◆変更したら?意味、色、動きや臭い、形を変えたらどうなる?
◆拡大したら?大きくする、長くする、頻度を増やす、時間を延ばすとどうなる?
◆縮小したら?小さくする、短くする、軽くする、圧縮する、短時間にするとどうなる?
◆代用したら?代わりになる人や物は? 材料、場所などを代えられないか?
◆置換したら?入れ替えたら、順番を変えたらどうなる?
◆逆転したら?逆さまにしたら? 上下左右・役割を反対にしたら?
◆結合したら?合体、混ぜる、合わせたらどうなる?
アイデアを生み出すための要素の組み合わせ方に関して、基本パターンを問いかける形でまとめています。
問いかけの形になっているところがいいですね。
おしゃべり感覚で試してみましょう。
「お歳暮商戦」という問いかけをいろいろ動かしてみます。
◆転用したら?売る相手、ほかにいるか?
◆応用したら?グラスメーカーはどんなことをしてる?
◆変更したら?贈る名目を変える? 意味合いを変えてしまう?
◆拡大したら?早期受注? 年明けまで売るための大義名分は?
◆縮小したら?お歳暮時期のうち、特定の日はないか?
◆代用したら?贈る相手を変える? マグカップの新しい意味は?
◆置換したら?中身を入れ替え? マグカップ以外の当社製品は?
◆逆転したら?上司から部下に贈るギフトなんていうのもあるか?
◆結合したら?ほかのお歳暮と一緒にする? 抱き合わせ商法?
チェック項目との相性もありますが、糸口になるヒントはありそうですね。
マンダラートとは違ったアイデアが生まれてきそうです。
問いかけを展開する考具③「テキストエディタ」
続いて、テキストエディタを考具として使う方法です。
テキストエディタを使う意味は、少しばかりの強制力を自分に与えるため。
この場合、「行数カウント」がそれに当たります。
テキストエディタを開いたら、数行改行してから、まずお題を書きます。
そしてさらに数行改行して、「・」(中黒、クロポチ)を打って、アイデアを1行だけ、書きます。
次のアイデアは改行してまた1行。
これを自分で決めた行数まで続けます。
文章はNG。
1行で足りなかったら改行して補足説明を1~2行。
20案(20行!)と決めたなら、「あと◯つ」と逆算して自分を軽く追い込んでいきます。
テキストエディタを使っていると自分が書いた過去のアイデアがすぐ上に見えますので、それを連想の素にして次の案を引っ張り出していきます。
これはチト違うなあという案が出てきてしまったら、まずは打ち込んだ後で10行ぐらい下のほうに追いやっておきましょう。
デリートはまだしないで。
拡げるときは、とにかく残しておきます。
もう一言。
最初に数行改行して、と言いました。
少々個人的な好みが入っているのですが、「左上の隅っこから始める」ことから離れて欲しいと思っているからです。
アイデア・企画を生み出すための頭の働き方は直線的ではなくアトランダムで放射状のようだ、とお伝えしてきました。
手書きのアイデアスケッチやパワーポイントでも真ん中に大きく1行書くところからスタートしました。
テキストエディタでも同じことをしたいのですがアプリケーションの構造上、文章を書くためのものですから直線的です。
そこで、せめてもの抵抗としての改行、です。
上下左右のどこかに余白をつくっておくことを意識してください。
ダメっぽいアイデアを消さずに下に追いやっておく、としたのも同じです。
行の入れ替えは後でいつでもできますから、改行をうまく使って、ページを広く広く使ってください。
ある程度考具の使い方がアタマとカラダに染み込んでいると、連想を働かせたりすることに気を使わなくていい状態ですから、スムーズに質問のバリエーションを展開できます。
考具を使うことでこの一連の知的作業がどれほど楽に進行していることか。
問いかけ方を変えたことによって生まれたアイデアの拡がりを実感してください。
アイデアに行き詰まったら、質問、問いかけを拡げまくる。
あなたの脳は、必ず応えてくれます。
名著『考具』でアイデア出しのノウハウをもっと学ぼう
アイデア出しを加速させるツールが満載の『考具』。
ほかにも、アイデアを企画に落とし込むための発想法や、スランプに陥ったときの対処法が記されています。
「いいアイデアを速く出せるようになりたい」
「企画会議で恥ずかしい思いをするのはもうイヤだ」
そんな方は、ぜひ手にとってみてください!
〈撮影=RIYO MATSUNAGA〉
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