ビジネスパーソンインタビュー
孫社長も認めた最強の話し方『1分で話せ』より
自分の話を“超一言”で包み込め。1分で人を動かし、記憶に残る「伝え方の極意」
新R25編集部
「ロジカルに話すだけでは、話は伝わらない」
Yahoo!アカデミア学長・伊藤羊一さんはそう主張します。「90%の人は、話し方で損をしている」と。
今回は、2019年に読むべきビジネス書第1位(BookLive!調べ)に輝いた伊藤さんの著書『1分で話せ』より、2つの記事をお届け。
ソフトバンクの孫社長も認めた「シンプルに伝える最強の話し方」をご紹介します。
※画像提供:リクナビNEXTジャーナル
「てっぺんのないピラミッド」では伝わらない
1分で話せない人、頑張って話しているのにさっぱり伝わらない人は、話や考えが「てっぺんのないピラミッド」になっています。
たとえばよくあるのは、
「Aさんもいいと言っていました」
「お得意さんも喜んでいました」
「実際に数字も上がっています、以上」
で終わる人。
聞いている人は、「で?」ってなります。
ロジカルシンキングを多少なりとも勉強した方は、ピラミッドストラクチャーを学んだ方も多いと思います。
初めて聞く方のために簡単に説明すると、話には結論と根拠があり、その結論を一番上に、根拠その下に並べたものです。
根拠は複数あることが多いので、三角形、 つまり、ピラミッドのような形をしている ので、「ピラミッドストラクチャー」といいます。
冒頭の人は、ピラミッドでいう「根拠」だけがあり、結論がありません。
「Aさんがいいと言っていた」「数字が上がっている」など事例やデータをいくら重ねても、相手はこのデータや事実から、何を読み取ればいいのかまったくわかりません。
だから「で?」となってしまうんです。
逆にいえば、このピラミッドがしっかり組めれば、話が長くなったり、伝わらなかったりすることはなくなります。
「これが結論です」
「理由はAでBでCだからです」
「わかった、了解」
これだけです。
「1分で考えよ」の根幹はここにあります。
まず伝えようとすることの骨組み、つまり、結論と根拠のセットを構築します。
これができれば驚くほど説得力を増す伝え方ができます。
事実やデータは結論ではない
では、結論ってなんでしょうか?
たぶん、みんな「結論を先に」ということはわかっているのに、なぜか、
「売上が伸びています」
「今年の展示会はEVが増えていました」
などという話をしています。むしろ、こうしたことが結論だと思われているのかもしれません。
でも、これらを伝えても事実の羅列となり、結局、「てっぺんのないピラミッド」になってしまいます。
では、企画を通す場合などにおいて、「こういう企画です」ということと「これは売れます」ということと、どちらが結論なのでしょうか。
正解は「これは売れます」が結論です。 もっといえば、「これは売れます。だからやりましょう」が結論です。
結論とは、相手に動いてほしい方向を表したものです。
「こういう企画です」という言葉は、方向を表していません。
いいのか悪いのか、好きなのか嫌いなのか、売れるか売れないか、わかりません。
「売れます(だからやりましょう)」には方向があります。売れるか、売れないかという選択肢があるなかで、「売れます」と言っています。
プレゼンは相手に「動いてもらう」ためにおこなうもの。
だから、どちらに向かうのか、動いてもらう「方向」を出すのが結論です。
ピラミッドで「枠組み」を共有しよう
結論を言うからには、根拠(理由)が必ずあります。
なぜその結論がいいのか、なぜその施策をやるのか、人に提案する場合は必ず根拠があります。
根拠、理由はない、だけどやりたいではプレゼンになりません。
人はそれでは納得しません。
この結論を主張するのは、こういう根拠があるからだということを、必ず言わねばなりません。
しかし話が長い人は、根拠をたくさん話します。
「あれもよくて、これもよくて ......」
会話ならいいですが、仕事では、たくさん言うと、かえって印象に残らなくなります。
「あぁなんかたくさん言ってたね」という感じです。
とはいえ、根拠が1つだと、やっぱり説得力が弱くなることが多い。
考え抜いた根拠は、複数あったほうがよいのです。
目安はオーソドックスですが、3つでしょう。
絵に描いてみると、次のようになります。
たとえば「私は田中さんと仕事がしたい」という結論があって、理由が3つあります、1つめは方針がわかりやすい、2つめは私たちを守ってくれる、3つめはお茶目で楽しい、と。
こんな形で表現するといいでしょう。
何かを伝える場合、それが5分でも30分でも1時間話すような内容であっても、このピラミッドを使って、一番大事な結論はこうで、その理由は3点あってこうです、と整理してみましょう。
このピラミッドがしっかりとできていれば、その通り人に話せばいいのです。
「私の主張はこうです。理由は3点あって、1点めはこう、2点めはこう、3点めはこうです」という感じです。
プレゼンというのは、自分が伝えたいことを「伝えていく」行為ではなく、「相手の頭の中に、自分が伝えたいことの骨組みや中身を、『移植していく』作業」なのです。
ピラミッドそのものは見せなくても、
「ああ、結論はこうなのだな」
「そしてそこに根拠が3点あって、それぞれこういうことなのだな」
と自分の頭の中にその骨組みをつくり、それを伝えていけばいいのです。
「結論」「根拠」「たとえば」の三段ピラミッド
結論に対し根拠を3点あげる、しかも短めにとなると、どうしてもその根拠は抽象的になります。
そこで、それをもう少し具体的な言葉で説明するわけです。
そうすると、聞いている人にはわかりやすくなります。
「たとえば」と言うことで、聞き手にイメージを湧かせることは、たとえ1分で話をする場合であっても、不可欠です。
ですので、ピラミッドストラクチャーは、実は2段ではなく、3段でつくるとよいのです。
つまり、2段めで根拠をあげて、3段めで実例をあげる、ということです。
数としては、2段めの根拠は3つくらいあげるとよいでしょう。
3段めは、場合によりけりではありますが、1つか2つでよいと思います。
あまりあげすぎると、何がなんだかわからなくなります。
1つか2つにしぼって、とにかく、根拠を具体的に説明するために必要な要素だけをあげるようにします。
イメージを湧かせるために、ピラミッドストラクチャーは3段つくる。
話のなかで3段目の内容を「たとえば」と入れる。
これを実行しましょう。
「超一言」で包み込む
ただし、皆さんが人に何かを伝えるとき、多くの場合、勘違いしていると思われることがあります。
それは、「正しいこと」、「聞き手にイメージが湧くこと」を伝えれば、つまり左脳を納得させ右脳を刺激したら、人は勝手に動くという幻想です。
私はこれまでの仕事人生の中で、合計10年くらい、法人営業の仕事をしてきました。
取引先に、商品やサービスの説明をし、購入してもらったり、取引をしてもらう仕事です。
当然ながら、しっかりと相手に伝わるようにストーリーをつくります。
また、相手に響くように話す練習もします。それでも、最初は結果が出ません。
取引先の方々はしっかりと説明を聞いてくれます。
「いい提案だね」と言ってくれます。
それでも、最終的になかなか取引に結びつかないのです。
プロセスを振り返ってみると、1度説明して、次にまたお邪魔して次のステップに進むものの、できれば成約に結びつけたいというときに、最初に逆戻りして、いちから説明しなければならないことが多かったのです。
「あれだけ、『素晴らしいね!いい提案だね!』と言ってくれているのに、何で忘れているんだろう」と思うようなことばかりでした。
でも、そんなものなのです。
いくらいい話をして聞き手に喜んでもらったとしても、聞き手がそれを、ずっと覚えているかどうかは、別の話です。
ではどうするか。
「自分の伝えたいことを、一言のキーワードで表す」
そうすることで、その一言に、自分の伝えたい内容を「包み込む」のです。
私はそれを、「めちゃくちゃ大事な一言」という意味を込めて「超一言」と言っています。
これを強く感じたのは、2011年、私がソフトバンクアカデミアという、「孫正義の後継者を発掘し育てる」ことを目的とした学校の中で、私が最初に孫さんにプレゼンをしたときのことです。
私は、Eコマースの戦略を話しました。
今、Eコマースでは「明日お届けする」から「今日中にお届けする」というように、どんどん納期が短縮化してきているが、本当は、今日、明日のお届けでなくてもいい商品がたくさんある。
しかしそれを「1週間後くらいにお届けする」「10日後くらいにお届けする」と曖昧な期日で伝えると受注率は上がらない。
そうではなく「◯月◯日にお届けします」と、きちんと納期を明快にすれば、受注率は上がるはずだ、と提案しました。
そして、「で、これは、きっちりくるから『キチリクルン』というモデルです」と言いました。
この言葉を孫さんは覚えていて、私の後、15人ほどプレゼンしたのですが、全員のプレゼンが終了した後、「君のキチリクルン、いいねぇ〜」と、キチリクルンというキーワードとともに声をかけてくれました。
ある意味、ウケを狙って名づけたキーワードだったのですが、人はキーワードで覚えてくれるんだなということを、私はこの瞬間に理解しました。
それ以来私は、自分自身のプレゼンに「超一言」のキーワードを入れるようにしました。
この例でもわかるように、「超一言」のキーワードは、自動車の名前のように、カッコいいネーミングにする必要はなく、「覚えやすく、その一言で、プレゼン全体を表現するようなキーワード」 にできれば最高です。
たとえば私のプレゼンでいえば、 「今日くる、明日くる、ではなくて、きっちりくる、だから『キチリクルン』です」 ということで、それがプレゼンのテーマそのものだったわけです。
孫さんは、私のプレゼン内容を、その「キチリクルン」というキーワードに「包み込んで」認識してくれました。「キチリクルン」だけ覚えておけば、「そうそう。きっちりくるんだな」と 思い出してくれるのです。
「超一言」のキーワードの威力は実に大きいのです。
このプレゼンをおこなってもう何年もたっていますが、その場にいた聴衆の方々は皆、私がどんなプレゼンをしたか、 今でも、「キチリクルン」という言葉とともに、鮮明に覚えてくれています。
もし「キチリクルン」がなかったら、おそらく「あのときの伊藤さんのプレゼンはよかったね」 くらいの記憶だったと思います。
「超一言」のキーワードを加えるだけで、聞き手は、びっくりするほど、あなたの話
を覚えてくれます。
相手を動かすプレゼン術をもっと学びたい方はこちら!
「1分で話せないような話は、どんなに長くても伝わらない」と主張する伊藤さん。逆に、1分で話すプレゼン術は、会議・交渉・報告・会話、すべてに応用できると言います。
詳しくは、「1分で記憶に残すノウハウ」から「話すときのメンタルセット」まで書かれた伊藤さんの著書『1分で話せ』にて。
「話が伝わらない」と悩むあなたにオススメの一冊です。
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