ビジネスパーソンインタビュー
休み方で人生が変える『休み方改革』より
「上司に根回し→決定」というプロセスは取らない。革新的な“休みを取る”交渉術
新R25編集部
「働き方改革」の一環で、有給休暇消化が義務付けられました。
ただ、「休む」ことを推奨されても、結局その休みを“体力回復”にあててしまいがちな僕たち。
しかし、「そんな休み方はもったいない!」と主張するのが、「リーマントラベラー」を名乗る東松寛文さん。
東松さんは、大手広告代理店に勤務していながら、おもに土日を活用して「働きながら世界一周」を成し遂げました。さらには、旅で人生を豊かにするオンラインサロン「リーマントラベラーサロン」を主宰しています。
そんな彼の新著では、「休みを会社のためではなく、自分のために使う」「自分のために休みを使うと、人生の主体性を手に入れられる」という「休み方改革」を提唱しています。
今回は、同書のなかから「休み」の価値観が変わる3本の記事を紹介します。
「休み方改革」の最大の鍵は「根回し(交渉)」のタイミング
休みを取るとき、あなたならどうやって休みますか?
多くの方は、次のように休みを取ると思います。
『人生の中心が仕事から自分に変わる! 休み方改革』①上司や同僚の顔色をうかがって、休めるかどうかの「根回し(交渉)」をする。
②その結果次第で、休みを取ることが「決定」する。
しかし、この流れだと、休めるかどうかは上司や同僚次第。
もしも、根回しが決裂してしまった場合や、上司が休むことに対して理解のない人だった場合は、なかなか休むことができず、そもそも休み方改革を始めることすらできません。
僕は、従来の「根回し」→「決定」というプロセスは取りません。
僕が提唱する、人生の主役になれる休み方は、この順番が革新的なのです。
それは「根回し」→「決定」ではなく、「決定」→「根回し」。最初の順番をひっくり返した方法で、自分の力で休みを勝ち取ってきたのです。
まずは休むことを自分で「決定」して、そのうえで、「根回し」に臨む。
そうすることで、根回しという名の上司との戦いにも、圧倒的な勝率で勝利を収めてきたのです。
魔法の休み方STEP1: 休みを取ることを決定する
ということで、まずは休むことを、自分のなかで「決定〈Decide〉」して、揺るぎないものにしましょう。
これから、その「休み」に意味をもたせて、揺るぎないものにしていく方法を伝授しますので、今の時点では、「自分が休みたいから」以上の目的や意味はなくて大丈夫です。
チケットや航空券を先に予約してしまう
揺るぎない覚悟をつくることが一歩目だと前述しましたが、そのために、いちばん簡単にできる方法は、チケットや航空券、ホテルなど、休みを取った場合に必要なものやコトを、先に予約してしまうことです。
そうやって、上司に相談する前に、先にチケットを買ってしまいます。
すると次に「買ってしまったのだから、行かないのはもったいない」という気持ちが、おのずと湧いて出てきます。
それが、休むための自分への言い訳をつくるにはいちばん手っ取り早い方法だと思います。
しかし、チケットを買うこともなかなか勇気が必要だったりすると思います。でも、勇気は必要ありません!
そこで、勇気の代わりに、忖度を使いましょう!
チケットを買ったからといって、上司によっては休みが取れないこともあるかと思います。
そんな上司に忖度して、「休みが取れない可能性があることも承知で買う」と、自分に言い聞かせましょう。
金銭的なリスクをみずから取るのです。
言いやすい人たちに宣言してしまう
上司には「休みたいです!」と、なかなか気軽に言えないかもしれませんが、先輩や同僚のなかには、言いやすい仲間もきっといるはずです。
そういった人たちに、まず「休みます宣言」をすることで、自分の意志を固めていくという手法も効果的です。
まわりから固めていくことで、ある意味、「宣言しちゃったからなあ」と、自分にとってももうあとには引きにくい状況をつくり、それさえも言い訳にして、休む覚悟をつくりましょう。
しかし、この作戦を遂行する場合、ひとつだけ気をつけてほしいことがあります。
その話す相手の人たちが、もし「なかなか休みが取れない人」たちであれば、話し方だけには十分気をつけるということです。
なぜなら、そういう人たちは、ときに敵になる可能性があるからです。
そういう人に話す場合こそ、忖度を使いましょう。
「休みを取って、仕事にも生かせるインプットをしてくる」とか「休みを取って、今までできていなかった家族サービスをする」など、休みが取れない人にも「それならしかたがないね」と思ってもらえる理由を並べましょう。
ゴールはあくまで、まわりに共感してもらうこと。
本当の理由ではなくても大丈夫ですので、相手が共感してくれそうな理由を並べに並べて、まわりの人に「休みます宣言」をしましょう。
もういっそのこと人のせいにする
でも、まだその覚悟ができていない人は、この手段を使ってください。
「もういっそのこと、人のせいにしよう」作戦です。
たとえば、その休みを誰かと一緒に過ごすとしたら、「〇〇くんに、そこは絶対に休んでほしいと言われてしまったから…」と一緒に行く〇〇くんのせいにして、気持ちを固めていきましょう。
自分の気持ちを固めるために、〇〇くんを活用するだけなので、実際に〇〇くんに迷惑をかけることは一切ありません。安心して活用させてもらいましょう。
これもある意味、忖度です。
休む覚悟がきちんとできないまま、中途半端な覚悟で、上司に「今度、休みたいのですが」と言いはじめたものの、上司の渋い顔を見た瞬間に、「やっぱり、いいです」だなんて取り下げたりすれば、その場は微妙な空気になります。
そして、その後の人間関係を悪化させるかもしれません。
また、上司から、本当はそうではないのに、「仕事のことはどうでもよくて、とにかく休みたいと思っているやつ」と思われる可能性もあると思います。
そういった、上司や周りの同僚からの、無駄な誤解を防ぐための、「もういっそのこと、人のせいにしよう」作戦でもあるのです。
魔法の休み方STEP2: 休みを取るための根回し術
「絶対に休むんだ!」という強い気持ちをもつことができたら、次は上司への「根回し〈Doing the spadework〉」です。
上司にうまく休みを取りたい旨を伝えて、気持ちよく承認してもらいましょう。
交渉には欠かせない「BATNA」を用意
BATNA(バトナ)は、ビジネスにおける交渉には欠かせないテクニックです。
Best Alternative to Negotiated Agreement の頭文字の略称で、交渉時に交渉相手から提示されたオプション以外で、もっとも望ましい代替案のことを指します。
つまりは、“落としどころ”です。
これは、MBAの教科書でもよく使われる、ビジネスにおける交渉術の基本中の基本です。
交渉には欠かせないから、相手がどのように出てくるのか、いろいろなパターンを想定しておいて、ちゃんと“落としどころ”を見つけておくことが重要です。
そのために、この交渉におけるBATNAは必ず準備しておきましょう。
では、休みを取るための交渉における、BATNAは何でしょうか。
休み方改革は、なぜ行うのか。そこから考えていきましょう。
休み方改革の目的─それは、休み方を通じて「自分で決める」ことに慣れて、人生の主役になることです。
決して、やりたかったことを1回だけやってみる、がゴールではありません。
上司との交渉で、「休みを取って、やりたかったことを実現する」ことができれば、それに越したことはありませんが、必ずしも、最初から思いどおりにいくとは限りません。
では、休み方を通じて、自分で決めることに慣れて、人生の主役になるために、今のあなたに必要なことは何でしょうか。
それは、「まずは休んでみる」ということだと思います。
ですので、この上司への交渉においては、BATNAとして、「まずは休んでみる」という“落としどころ”も用意しておきましょう。
たとえば、次の週末に有休を1日足して、2泊3日で海外旅行に行きたいと上司にプレゼンテーションするときのことを想像してみてください。
すると、上司が渋い顔をしてきました。上司は、何に対して渋い顔をしているのでしょうか。
もしも、渋い顔の理由が行き先であれば、違う行き先にすれば大丈夫です。
しかし、そんなことはないでしょう。
上司は、行き先にケチをつけたいわけではなく、「1日休みを取ること」もしくは「海外旅行に行くこと」にケチをつけたいのだと予想されます。
でも、僕たちの交渉におけるBATNAは、有休を取って海外旅行に行くことではありません。
まずは休んでみること、そして、一歩を踏み出してみることです。
ですので、そんなことを言う可能性がある上司には、「国内でいいから、1日休みを取って行かせてほしい」、もしくは「週末だけで海外へ行くので、金曜日の夜だけは仕事を定時で切り上げて、空港に向かわせてほしい」などといった、「まずは休んでみる」ことをBATNAとして準備しておき、提案しましょう。
負けられないプレゼンテーションだからこそ、きちんとBATNAまで想定して臨むことが重要です。
夢を語る
僕がいちばん使っている作戦が、夢を語る作戦。いわば、お涙頂戴作戦です。
休みを取る理由は、小さいころからの夢を叶えるためだと、熱く語りましょう。
たとえば、あなたが僕の上司だとして、僕が休みを取るときに、こう言われたらどうでしょう?
「小さいころからバスケットボールが大大大大大好きで、中学・高校はバスケ部に所属しておりました。それゆえ、小さいころから、ずっと世界最高峰のリーグ、NBAに憧れて育ってきました。そんな僕だったのですが、ひょんなことから、NBAのチケットを、偶然にも、手にすることができたのです。これは奇跡、そして運命としか言いようがありません。神様からのご褒美かも。そんなことで、小さいころからの夢が叶うチャンスを手に入れたのです…だから休みをください!」
これは、僕が初めて休みをもらって、ひとりで海外旅行に行くときに使った、上司へのプレゼンテーション方法です。
このプレゼンテーションの結果、見事、初勝利を収めた僕は、同僚が誰も休まない時期に休みを取ることができ、小さい頃からの夢を叶えることができました。
ただ「休みたいです!」と一方的に伝えても、このプレゼンテーションに勝つことはできません。
小さいころからずっとやりたかったことに、このタイミングであれば挑戦することができる。
このタイミングを逃すと、次にできる機会は、数年後かもしれない。もはや生きているうちにはこないかもしれない。
最後のは言い過ぎですが、こんなふうにとにかく夢を熱く語りましょう。
夢を語れば、それを断る上司はなかなかいないはず。
むしろ夢を出されると、上司が世間体を気にするタイプであればあるほど断りづらいはず。夢を壊した上司だなんて、まわりには絶対に言われたくないですからね。
だからこそ、夢を語ることも、ある意味、上司への忖度なのです。
上司にとって、休みを取らせていいのかどうかの判断をしやすくなる材料であり、上司にとっての「言い訳」を提示することなのですから。だから、積極的に使っていきましょう!
とはいえ、小さいころからの夢なんてない…と思った方、ご安心ください。
これは、あくまで休みを取るためのプレゼンテーション方法なので、休みを取るのに十分な理由、つまり上司が納得できる理由になっていればOKなのです。
ですので、夢がないのであれば、“夢があったこと”にしてしまいましょう。ちなみに、ここだけの話ですが、僕が使った小さいころからのNBAを観るという夢。
確かに、高校まではバスケ部でしたが、NBAにはまったく興味がありませんでした。でも、いいんです。それで僕も休みが取れて、上司も納得できるのであれば。
断りづらい理由を使う
この根回しは、いってしまえば、上司との休みをめぐる戦い。われわれにとっては、確実な勝利が求められます。
だからこそ…ここで、忖度。
上司が判断に悩まないようにアシストするのも、部下の役目。
ということで、あえて、こちらから、上司が断りづらくなる理由を、やんわりと伝えましょう。つまり、上司に、「断らなくていい理由」を与えるのです。
たとえば、あなたが僕の上司だとして、こう言われたらどうでしょう?
「死ぬまでに一度は参加してみたかった、スペインのトマト祭り(ラ・トマティーナ)。今年はお祭りの日がちょうど日本の休日と重なっていて、もし今年行くとすれば、数日の休みを足すだけで行けるのです…だから休みをください!」
また、こう言うのもどうでしょう?
「いつか行きたいと思っていた、ギリシャのサントリーニ島。ですが、いつも休める
時期に限って航空券が高くて諦めていたんです。でも、このタイミングの休みであれ
ば、いつもより10万円近く航空券の値段が安くなっていて、ここだったら予算的にも
行けそうなんです…だから休みをください!」
いつでもできること、いつでも行ける場所を、休む理由として提案したとしたら、上司に、「だったら、別のタイミングでもいいじゃん」と、断る理由を与えてしまいます。
しかし、このタイミングじゃないとできないこと、このタイミングじゃないと行けない場所を提案すれば、上司もさすがに断りづらいでしょう。
結婚記念日、パートナーと付き合って○年記念日、家族や友人の誕生日など、記念日も有効ですね。
また、金額的な制約があることを伝えるのも効果的です。
その日程を逃したら、金額的にあなたが損をするのであれば、それを断ることで、あなたの恨みを買う恐れもあると考えてくれて、あなたの休みを断れなくなる上司もいるかもしれません。
日程や金額的な制約などがあって、断りづらい理由であれば、上司から休みをもらえる確率はぐんと高まると思います。
とはいえ、やりたいことが、いつでもできることだったり、金額的にもそんなに困らないことだと思った方も、ご安心ください。
繰り返しになりますが、これは、あくまで休みを取るためのプレゼンテーションなので、休みを取るにあたって、上司にとって断れない“十分な理由”になっていればOKなのです。
ですので、いつでもできることだとしても、その休日でないとできない理由をつくってしまいましょう。要は、作文をすればいいのです。
仕事でも、成果を報告したり、上司に根回ししたりするときに、承認してもらいやすいように、理由を作文したりしますよね? 同じことを、ここでも使うのです。
その日にしか見られないものが見られるとか、その日であればいちばん高い時期と比較するとかなりお得だとか、上司が断りづらい理由を作文して伝えましょう。
休みを取って休み方改革を始めた先には、明るい未来が待っています。
しかし、まだこの段階では、成果を出したわけではないので、そんなに強がらずに、ときには下手に出まくって、まずは確実に休みを獲得しましょう。
それでやっと、あなたも、休み方改革のスタートラインに立てるのです。
今までの「休み方」から抜け出したい方はこちら!
マイクロソフトやヤフーが週休3日を導入するなど、積極的に休むことが推奨されるようになりつつありますが、全会社員が休みやすくなっているわけではありません。
人の顔色を伺うばかりで、会社を休むことも出来なかった東松さんが、勇気をふり絞って休んだことからはじまった「休み方改革」。
仕事ばかりで自分の時間がない…と少しでも思ったことがある方にこそ読んでほしいです!
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