ビジネスパーソンインタビュー
「この世に失敗なんて存在しない」
「僕たちは、過去を変えることができる」キンコン西野の近畿大学卒業式スピーチ全文
新R25編集部
記事提供:キングコング 西野 公式ブログ
―西野登場―
会場:(拍手)
西野:どうもどうも。
えっと、あの…皆さんはこれから社会に出られるわけですけども、社会に出たらコミュニケーションというものが、より大切になってくることは想像に難くないと思います。
んでもって、コミュニケーションの鍵は「相手が求めているリアクションをすることだ」ということも、もうお分かりだと思います。
西野:でね、今、僕が出る前にオープニング映像が流れました。もう「スーパースターが出てくるぞ!」といった雰囲気たっぷりの煽り映像です。
あの映像を作られた方が、映像終了後に求めているものは「スーパースターの登場」で、私は自分がスーパースターでないことは百も承知ですが、でもそこは社会人として大切なコミュニケーションです。
私、それはそれは皆様に申し訳ないと思いながらも、スーパースターのごとく、堂々と舞台袖から出てきましたよ。
スーパースターが出てくるような映像が流れ、スーパースターのような振る舞いで西野が登場し、そして、あなた方は…パラパラの拍手を送った。
会場:(笑)
西野:それでいいのか?という話です。あなた方には二つの選択肢があった。1つは、キングコング西野をパラパラの拍手で迎える。
もう1つは、男は野太い声を出し、女は黄色い声を上げ、大歓声でキングコング西野を迎える。
会場:(笑)
西野:どちらでも構いません。皆さんの人生ですから、皆さんの好きなようにされるのがいいと思います。
あ、もう一点。
もう間もなく…あと10分~15分ほどで皆さんの大学生活が本当に終わってしまうのですが、このまま静かに座って終わらせてしまうのか、それとも、最後にバカをして終わるのか?
誰かが世界を変えてくれるのを待つのか、それとも自分で世界を変えるのか?
念のため、もう一度言いますね。あなた方には二つの選択肢がある。
パラパラの拍手でキングコング西野を迎えるのか、それとも、割れんばかりの大歓声でキングコング西野を迎えるのか? 決めるのは、あなた方です。
というわけで、ゲストスピーカーの登場…やり直しです。
会場:(爆笑)
西野:もう一度、VTRお願いします。
―西野、舞台袖にハケて、再登場―
会場:(大歓声)
西野:やればできんじゃん!
どうも、あらためまして、キングコング西野です。宜しくお願い致します。
会場:(大歓声)
西野:まあ、いろいろありまして、こうして僕なんかがスピーチを頼まれたわけですけども、本題に入る前に自分が何者なのかをお話しした方が良さそうですね。話します。
紹介映像にもありましたが、2~3年前に『えんとつ町のプペル』という作品を発表しまして、これが結構売れて、映画化が決定して、今、その映画を作っているところです。
西野:んでもって、自分は「ディズニーを超える」とか何とか言ってまして、今のところスタッフの皆様からは反対をくらっているのですが、この映画『えんとつ町のプペル』の公開を、ディズニーの新作アニメの公開の真裏にぶつけて、観客動員数で勝とうと思っています。
会場:(笑)
西野:そこで、ディズニー映画が一体どれぐらいヒットしているのかを知りたくて、ディズニー映画の収支表のようなものを見たら…あの人達、メチャクチャ売れてるんです。
会場:(笑)
西野:皆さん、ご存知ですよね? 『ベイマックス』とか、『アナと雪の女王』とか。
僕は来年、ここに挑まなきゃいけないのかと思うと、膝がブルブル震えてきたんですけども、ずっと、その表を見ているうちに、ディズニー作品の弱点に、ついに気がついたんです。それは…「ジャングル系の時、ちょっと弱め」。
会場:(爆笑)
西野:なので、ディズニーがジャングル系の作品を出してきたら、「そろそろ西野が出てくる」と思っていただけると助かります。
会場:(笑)
西野:そういうセコいやり方で、ディズニーに挑もうと思っております。
西野:ここまでは、チームの自己紹介です。そして、ここからが個人の自己紹介になるわけですが…好感度は低めです。
会場:(笑)
西野:街中で「キングコング西野さんですよね?」と声をかけられたので、「あ〜、どうもどうも」と手を差しのべると、「大丈夫」と断られたりします。
会場:(爆笑)
西野:声をかけられて、フラれたりします。つらいです。
西野:相方はキングコングの梶原雄太です。最近だとYouTuber「カジサック」として頑張っています。とても頭の悪い男です。バカです。
今からカジサックの悪口を言います。
会場:(笑)
西野:以前、飛行機に乗った時に、あのバカが僕の前の席に座って、離陸後まもなくリクライニングをバーン!と倒してきたんです。
チビで体積も少ないくせに、目一杯倒してきやがったんです。当然、コッチのスペースは狭くなるわけじゃないですか?
ほんのりムカついたのですが、でも、まぁ、椅子を倒すことは禁止されているわけではないし、なにより、「お疲れで寝るんだろうなぁ」と思って、ちなみに、前の席を覗いてみたら…
あのバカ、倒した椅子にもたれずに、前の机を出して、うつぶせになって寝てやがったんです。
会場:(爆笑)
西野:あのバカの背中にムダなスペースが発生しているんです。
会場:(爆笑)
西野:椅子を倒すのなら、もたれろ! うつぶせになるのなら、リクライニングを戻せ!
私、腹が立ってしまってですね、寝ている彼の頭頂部にペットボトルの水をチョボチョボっとかけたんです。
でも、全然起きない。
一滴かけても起きない。五滴かけても起きない。
10滴、20滴かけたら、もう頭がビチョビチョになって、そこで、ようやくあのバカがバッと飛び上がって起きて、濡れている自分の頭を押さえて、呟きやがったんです。「やってもうた…」。
会場:(爆笑)
西野:やってもうた? こんなところ(頭頂部)、やってまいます? ココ(股間)なら、まだしも。本当にバカです。
西野:同期には、ピースやノブシコブシ、とろサーモンやダイアンなど、才能のある面々が揃っております。
その中でも、昔から、よく一緒に遊ばせてもらっているのがNON STYLEの石田君ですね。ここからは、彼と正月にUSJに行った時の話です。
お正月ということで、USJに行く前に初詣に行って、「いい結果が出た方が、何でも命令できる」というルールを設けて、おみくじを引いたんです。
すると、僕が大吉で、彼が大凶を引くという圧倒的な結果が出て、晴れて、僕が彼に命令できる権をゲットしたわけです。
その流れでUSJに行き、「ウォーターワールド」の水上ショーを観に行ったんです。
ご存知ですか? ウォーターワールド。
あれって、ショーが始まる前に、観客席を二つに分けて「声出し合戦」をおこなうんです。
で、声が小さかったチームの代表者1名が罰ゲームで水をかけられる。
西野:僕、それを事前に知っていたので、石田君を最前列に座らせて、自分は最後列に座って、「LINEで僕が指示を出すから、僕の指示どおりに動け」と、ここで“命令できる権”を使ったんですね。
そして、声出し合戦が行われて、結果、僕らのチームが負けて、キャストさんが「負けたチームの代表者、出てこーい!」と言うわけです。
ここだ、と思って、「今だ!前に出ろ!」とLINEを送ったのですが、石田君というのは本当にピュアな男でして、お客さんとして純粋にショーを楽しんでしまって、まるでLINEに気がつかない。
会場:(笑)
西野:何度、LINEを送っても、まるで気がつかない。そうこうしていたら、大学生の男の子が「僕、いきまーす」と前に出ちゃった。
これで、「水をかける人」「水をかけられる人」「水をかけられる人を押さえる人」といった感じで、罰ゲームの役者は揃ったわけです。
そして、まさかの、そのタイミングで石田君がLINEに気づいて、画面を確認するやいなや、ファ~と前に出ていっちゃったんです。
会場:(笑)
西野:客席は騒然です。「石田だ!」「NON STYLEだ!」それより何より、「なぜ、このタイミングで!?」
会場:(爆笑)
西野:M-1チャンピオンが公衆の面前でスベリ散らしているわけです。僕もビックリしました。だって、こんなタイミングで出ていっても、もう役割がないんだもん。
「おいおい、石田。どうするんだ?」と思いましたよ。そしたら、彼…
「水をかけられる人」がいて、「水をかけられる人を押さえる人」がいて、「水をかけられる人を押さえる人を押さえる人」をしたんです。
会場:(爆笑)
西野:押さえる人の後ろにまわって、なんとなく、押さえる人の肩に手をあてているんです。もうワケが分からない。客席はパニックです。
会場:(笑)
西野:でも、罰ゲームをしないことにはショーが始まりませんから、仕方がない。水をかける人が「くらえ~」とバケツ一杯の水をかけるんです。
そしたら、あれはきっと、耳打ちされていたんでしょうね。
「水をかけられる人」が頭を下げるんです。で、本来であれば「水をかけられる人を押さえる人」に当たってオチがつくハズなのですが、その人の後ろには、絶賛ゲロスベリ中のNON STYLE石田がいる。
会場:(笑)
西野:「ここでNON STYLE石田くんに花を持たせてやらないと」ということで、なんと「水をかけられる人を押さえる人」が機転をきかせて、頭を下げてくださったんです。
そしたら、石田くんもビックリして、一緒になって頭を下げちゃった。
会場:(爆笑)
西野:そのまま水が明後日の方向に飛んでいって、誰も濡れない。被害者ゼロ。
会場:(爆笑)
西野:大事故です。酷い有り様でした、ホント。
で、このままフザけた話を続けたいところなのですが、そろそろ先生方に怒られそうなので、ここから、イイ感じの話をします…
西野:想像してください。僕たちは今この瞬間に未来を変えることはできません。そうでしょ?
「10年後の未来を、今、この瞬間に変えて」と言われても、ちょっと難しい。
でも、僕たちは過去を変えることはできる。
たとえば、卒業式の登場に失敗した過去だったり、
たとえば、好感度が低い過去だったり、
たとえば、アホな相方を持ってしまった過去だったり、
たとえば、友達と一緒に恥をかいてしまった過去だったり…
そういった過去を、たとえば僕の場合ならネタにしてしまえば、あのネガティブだった過去が俄然、輝き出すわけです。
「登場に失敗して良かったな」と思えるし、
「嫌われていて良かったな」と思えるし、
「相方がバカで良かったな」と思えるし、
「友達と一緒に恥をかいて良かったな」と思える。
僕たちは今この瞬間に未来を変えることはできないけれど、過去を変えることはできる。
西野:これから皆さんは社会に出ます。
様々な挑戦の末、最高の仲間に出会えることもあるでしょうし、最高のパートナーに巡り会えることもあるでしょうし、最高の景色に立ち会うこともあるでしょう。
一方で、涙する夜もあるし、挫折もあるし、傷を背負うし、言われのないバッシングを浴びることもあるでしょう。
挑戦には、そういったネガティブな結果は必ずついてまわります。
でも、大丈夫。
そういったネガティブな結果は、まもなく過去になり、そして僕らは過去を変えることができる。
失敗した瞬間に辞めてしまうから失敗が存在するわけで、失敗を受け入れて、過去をアップデートし、試行錯誤を繰り返して、成功に辿りついた時、あの日の失敗が必要であったことを僕らは知ります。
つまり、理論上、この世界に失敗なんて存在しないわけです。
このことを受けて、僕から皆さんに贈りたい言葉は一つだけです。
挑戦してください。
小さな挑戦から、世界中に鼻で笑われてしまうような挑戦まで。
皆さんにはたくさんの時間があるので、たくさん挑戦してください。
西野:一応、絵本作家もやっているので、最後は絵本の話でまとめます。
今、『チックタック ~約束の時計台~』という絵本を作っています。時計を舞台にした物語です。
西野:時計の針って面白くて、長針と短針が約1時間ごとに重なるんです。
1時5分頃に重なって、2時10分頃に重なって…毎時重なるんですけど、でも、11時台だけは重ならないんです。
短針が逃げきっちゃう。
二つの針が再び重なるのは12時。
鐘が鳴る時です。
何が言いたいかと言うと、「鐘が鳴る前は報われない時間がありますよ」です。
僕にもありましたし、皆さんにも必ずあります。
人生における11時台が。
西野:でも大丈夫。
時計の針は必ず重なるから。
だから、挑戦してください。
応援しています。頑張ってください。
僕は、少し先で待っています。
いつか一緒にお酒を呑みましょう。
卒業生の皆様、御家族の皆様。
本日は、本当におめでとうございます。
キングコング西野亮廣でした。
会場:(拍手)
2019年3月23日(晴れ)
近畿大学卒業式
ゲストスピーカー:西野亮廣(キングコング)
【完】
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