ビジネスパーソンインタビュー

「キャプテンとリーダーは違った」FC東京・森重真人の殻を破った“目標設定と達成の極意”

頑張る人に、いいエネルギーを。

「キャプテンとリーダーは違った」FC東京・森重真人の殻を破った“目標設定と達成の極意”

新R25編集部

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2019/03/04

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春は新入社員を迎えるとともに、昇進したり新チームを任されたりして、部下を持つようになるR25世代も多いのではないでしょうか。

リーダーシップを求められる機会が増えてくると、成果を出したいと意気込む一方で、その責任の重さに不安を感じる人もいると思います。

そんな若きリーダーとして頑張る人に向けて、今回はJ1リーグ・FC東京に加入して10年目を迎え、まとめ役だったキャプテンを経てチームを牽引するリーダーとなり、今後ますます強いリーダーシップが期待される森重真人選手にお話をうかがってきました。

インタビューの最後には、森重選手からプレゼントも…!

【森重真人(もりしげ・まさと)】1987年生まれ、広島県出身、サンフレッチェ広島のJrユースから高校サッカーを経験し、現在はFC東京のDF(ディフェンダー)。セットプレーから高い得点能力を発揮する日本屈指のセンターバックとして、2013年から6年連続で日本代表に選出された。2013年にはFC東京の、2015年の東アジアカップでは日本代表のキャプテンも歴任

“内に秘めた想い”だけではなく、「高い目標を宣言する」ことで自分の殻を破ることができた

編集部・N

森重選手は日本代表に6年連続で選出され、FC東京と日本代表のキャプテンという華やかな経歴を持っているにも関わらず、以前インタビューで「日本代表に入りたいという想いはそれほど強くなかった」といった発言をされていましたよね。

そんな消極的な一面があったなんて、正直意外でした。

森重選手

もともと僕はみんなの前で「これをやる」と公言して自分にプレッシャーをかけるより、自分の内に秘めた熱い想いや目標を消化していくタイプだったんです。

そこから出た言葉が「消極的」ととらえられたのかもしれませんね。

編集部・N

消極的に思われていた一面を打開するきっかけは何だったんでしょうか?

森重選手

やはり「2014年のブラジルワールドカップ代表入り」という高い目標を公言したことでしょう。

いろいろな人と対話してアドバイスをもらっていくうちに、明確な目標を持って、しかもそれを口に出すことで自分にプレッシャーをかけることの大切さを実感しました。

そうすることで自分の殻を破ることができたと思います。

編集部・N

具体的にはご自身のなかにどういう変化が起こったんですか?

森重選手

責任感が強くなりました

目標を公言することで周囲の期待も関心も高まり、それに応えざるを得なくなりますから。ある意味、「逃げられない」状況に自分を追いこむようになったことが一番の変化です。「“責任”は成長のチャンス」だと思いますね。

編集部・N

目標を高く掲げることで「達成できなかったらどうしよう…」という不安を感じることはなったんでしょうか?

森重選手

なかったですね。目標を達成できるかどうかはもちろん大事ですが、それ以上にそこに向かって何をやるべきなのかを考えることが大事だと思っていたからです。

そのプロセスこそが成長には欠かせないことですし、自分としてもそこを楽しんでいました。

目標の立て方が甘いと、達成しても満足感を得られない

編集部・N

森重選手のように「世界」という高い目標を掲げるアスリートで最近、インタビュー(詳しくはこちら)が印象的だった選手がいるんですけど…

森重選手

どんな選手のインタビューですか?

編集部・N

パラ水泳(障がい者水泳)の木村敬一選手です。 

彼も「パラリンピックに出てみたい」という目標を「パラリンピックで勝ちたい」「日本中が盛り上がる瞬間をつくりたい」とどんどん高くしていって、自分を追い込んでいく姿勢がすごいんです。

パラ水泳・木村敬一選手のインタビュー動画を森重選手にも見てもらいました

森重選手

まったく同感ですね。僕も「ワールドカップに出る」という目標の達成はできたんですが、「実際、出場しただけで何ができたんだろう?」という反省が残りました。それって、目標の立て方が甘かった結果だと思うんです。

編集部・N

「目標の立て方が甘い」とおっしゃいますと?

森重選手

「ワールドカップに出る」より、ひと回りもふた回りも大きな目標を立てていなかったから、自分が納得できる達成感が得られなかったんだと思います。

特に世界を目指すアスリートにとって、大会は「出場」だけではなく「勝ち」を常に意識すべきなのかなと。

編集部・N

達成したときに手応えを感じられる目標であるかどうかが重要なんですね。

森重選手

そう思います。また、高い目標を立てるということは、自分の限界を引きのばしてあげることでもありますからね。木村選手の考えにはすごく共感できます。

編集部・N

東京2020に向けてさらに高い目標を設定している木村選手の活躍には、期待しかないですね!

高い目標を達成するまでのプロセスを細かい目標に分解しよう

編集部・N

目標設定の大切さはビジネスの世界でも同じだと思いますが、高い目標を設定してもくじけないようにするために、何かアドバイスはないでしょうか?

森重選手

大きな目標を決めたら、その達成までの道のりに日々クリアできる小さな目標を設定していくことです。

高い目標は一足飛びに達成できるものではなくて、小さな目標達成を積み上げていくことが必要ですからね。

森重選手

1年後の大目標のために、半年後はどうなっておくべきか、1カ月後はどうなっておくべきか、じゃあ1週間後までにはこれをクリアしよう、今日はこれをクリアしようという具合に、大目標達成までのプロセスを細かい目標に分解していくんです。

編集部・N

大目標達成までのプロセスを分解する。

森重選手

大目標さえブレなければ、積み重ねていく小目標はそのときのコンディションや気分によって変えていっていいと思います。

それは目標のブレや逃げではなく、その時々の自分の考えや状態と向き合うということです。

編集部・N

「目標」って誰しも簡単に言いますけど、そもそも自分としっかり向き合ったうえで丁寧に計画していかないといけないものなんですね。

森重選手

小目標でも、あまりガチガチに決めすぎると達成できないストレスや焦りにつながるので、同じように気分やコンディションを見ながら変えていく柔軟性は必要だと思います。

自分の性格に合ったやり方というのもありますから。

編集部・N

自分にあったやり方を探すのって、簡単そうで実は難しいことだと思います。

森重選手

そのためには、いろいろな人の話を聞いたり本を読んだりすることが大事だと思います。

いろいろな考えや情報に触れることで、自分に合った方法が必ず見つかります。まずは真似から入ってもいいですし、自分流にアレンジしてみるのもいい。

「ぶつかり合っていい」メンバー同士が理解し合えるチームづくりに必要なこと

FC東京

編集部・N

森重選手は2013年にはチームの、2015年の東アジアカップでは日本代表のキャプテンを任されていますが、そのときに心がけていたことを教えてください。

森重選手

キャプテンという立場にあると、チームのことを考えるあまり自分のことがおろそかになりがちです。僕はそうなりたくなかったので「自分のこともチームのことと同じくらいしっかり考えること」を心がけていました。

編集部・N

バランスを取るのがすごくむずかしそうです…

森重選手

最初はそうでした。

キャプテンになる前は、自分が最大のパフォーマンスをすればチームに貢献できると思って自分のことだけしか考えていませんでしたし、キャプテンになるとチームがどうあるべきかを考える必要があった。

編集部・N

チームには性格も国籍も違う多様なメンバーがいると思うのですが、彼らとのコミュニケーションで工夫したことを教えてください。

森重選手

僕はあまり多くコミュニケーションをとるタイプではないんです。当初はそんな自分がキャプテンで大丈夫かな? という不安もありました。

しかし、せっかく与えられたチャンスだったので、僕なりにコミュニケーションについていろいろ考えました。

編集部・N

たとえばどんなことを意識したんですか?

森重選手

特に試合に出ていない選手、出ていても調子が落ちているような選手に対しては、こまめに声をかけるようにしていました。

自分が若かったころのことを思い出すと、キャプテンがかけてくれた言葉に励まされたりしていたので。

森重選手

ただ、僕は一人ひとりにかける言葉数は多くはなかったですけどね(笑)。

やはり僕の場合は言葉以上に、「こういうトレーニングをすれば日本代表になれる」という身をもってのアドバイスのほうが得意でしたね。

編集部・N

キャプテンとしても「背中で見せる」コミュニケーションを貫いていたんですね。

森重選手

そうですね。それが僕には合っているみたいです。

編集部・N

長い時間一緒にいると、キャプテンと意見がぶつかる選手もいれば、メンバー同士でぶつかり合うこともあったと思います。そういうときにはどう乗り切ったのでしょうか?

森重選手

それぞれに自分のサッカー観や人生観を持っているので、意見がぶつかり合うのは当然のことですよね。だから僕は、お互いを理解するためにもそうした言い合いがあってもいいと思っています。

森重選手

どちらかが間違っているということではなく、お互いを認め合ったり、理解し合ったりすることが一番大切ですから。

違う考えや価値観をメンバー同士が認め合えるようにまとめ上げることが、キャプテンとしての大きな責任だと思っていました。

キャプテンとは違う。ベテランとして求められる「リーダーシップ」とは?

編集部・N

FC東京に加入して10年目のベテランとして、現在の森重選手にはキャプテン時代とは違う役割が求められているんでしょうか?

森重選手

いまの僕に求められているのは、強いリーダーシップだと思います。

僕は、キャプテンとリーダーの役割は違うと思っていて。

大まかに言うと、キャプテンにはチームをまとめる役割、リーダーには方向性や信念をはっきりと示してチームを引っ張っていく役割が求められます

FC東京

編集部・N

最後に、強いリーダーとして、同僚にあたるチームメイト、上司にあたる監督、顧客にあたるファン・サポーターやスポンサー、それぞれに対してどのように向き合っていきたいですか?

森重選手

チームの一番のリーダーは監督です。監督が示す方向性が大きな木の幹だとすると、その幹をより強いものにするための提案をしていくのが僕の役割。

だから、まず上司である監督という大きな指針を支え、より強い組織をつくるための提案ができる関係性を築いています。

編集部・N

チームメイト、ファン・サポーター、スポンサーに対してはどうでしょうか?

森重選手

チームの後輩には若干おとなしさを感じますが、ベテランの僕たちが活躍する姿を見せて彼らに優勝を経験させてあげることが先決だと思っています。

ファン・サポーターやスポンサーは、やはり僕たちのエネルギーになっています。だからこそ、スタジアムに応援に来てくれたり、最高なプレーができる環境づくりをしてくれたりという支援に対して感謝の想いを常に持ち、責任を持ってプレーで応えたい

ファン・サポーターもスポンサーの方々も僕たちと一緒に戦ってくれている大事なチームメイトですから!

高い目標を掲げることで成長し、不動のリーダーシップを身につけた森重選手。まっすぐに目を見て話してくれた言葉の端々からも、これまで数々の重責に向き合ってきた強さを感じました。

“責任”は成長のチャンス

森重選手のこの言葉は、きっとリーダーシップを求められはじめるR25世代の背中を押してくれるはずです!

目標の立て方や仲間とのコミュニケーション方法など、森重選手の言うようにまずは真似から入って、自分流にアレンジしてみたいですね。

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〈取材・文=新R25編集部/撮影=オカダマコト〉

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