ビジネスパーソンインタビュー
「飲みにいくのをやめた理由」に納得
「ストイック」はやめた。厳しい役作りで有名な松山ケンイチが伝えたい“休み方”とは
新R25編集部
20代、世間では「頑張りどき」だと言われる年代。
「目の前のことを頑張っているつもりなのに、これ以上何を頑張れというのだろう…」と悩んだり、何者かになるために必死になったりしている新R25読者もいるのではないでしょうか?
今回は、ストイックに仕事に向き合うヒントを探るべく、俳優・松山ケンイチさんにインタビュー。
松山さんといえば、体重を何キロも増減させるなどの徹底的な役作り、演技への真摯さで知られている方。そんな彼に「ストイックになれる方法」を聞きたい!
…の予定が、松山さんの一言をきっかけにインタビューは思いもよらぬ方向へ?
「頑張らなきゃ」と焦る20代に向けて、松山さんが伝えたい言葉を余すことなくお伝えします。
〈聞き手:ライター・於ありさ〉
【松山ケンイチ(まつやま・けんいち)】1985年生まれ、青森県むつ市出身。ドラマ『ごくせん』で俳優デビュー。以降、映画『デスノート』『デトロイト・メタル・シティ』『NANA』『GANTZ』『聖の青春』などで、数多くの個性的な役柄を演じ、演技派俳優としての地位を不動のものにする。5月24日に公開となる映画『プロメア』では、早乙女太一とともにW主演を務める。5月22日~26日放送のテレビ朝日5夜連続ドラマスペシャル『白い巨塔』にも出演。また公開待機作に映画『宮本から君へ』がある
ライター・於
今回は、ストイックに仕事に向き合うためのヒントを学びにきました!
松山さん
企画書見ましたよ!
こんなこと言いにくいんですけど…僕、じつは「ストイックをやめた」んですよ(笑)。
ライター・於
え…!!!
松山さん
ストイックなときも確かにありました。
新R25の読者のなかには、今も突っ走っている子も多いと思うから、今日はありのままの僕が伝えたいことを話したいなと思いまして。
取材早々、松山さんと筆者は同じ小学校なことが判明。「あの小学校で育った人間が、ストイックなんて続かねえって!」(下北弁)。松山さんの下北弁と筆者が長く暮らした青森市の津軽弁を混じえながら、インタビューさせていただきました
ストイックに生きることは、人に迷惑をかけること
ライター・於
でも、松山さんはストイックな役作りで有名ですよね…?
松山さん
そういうイメージを持ってもらうのはありがたいんですけどね…
僕、ある時期から「ストイック」ってネガティブな言葉だと思うようになったんですよ。
ライター・於
どういうことですか?
松山さん
ストイックって、人に迷惑を掛けることがけっこうあるんだなとわかったんです。
頑張っている自分に酔っちゃったり、自分だけで突き詰めすぎちゃったりして…まわりが見えていないことが多い。
ライター・於
なるほど。
松山さん
まわりが見えないと、感謝の気持ちを忘れてしまうことすらある…
20代のころの自分を振り返ると、もっとまわりと歩調を合わせるべきだったなと思うことがたくさんあります。
ライター・於
そんなふうに「ストイックはダメだ」って考えるようになったのには、なにかきっかけがあったんですか?
松山さん
5、6年前ぐらいですかね。体調を崩しちゃったんですよ。
「今日は休めないから」って、薬飲みながら仕事に行くとかを繰り返してて…。その場では何とか乗り切れても、体調を崩す頻度が増えていくもので…
ライター・於
ツラい…そういうことは一般の仕事をしている人のなかにも多いかもしれません。
松山さん
ある日、ふと「このままだと、大きな病気になってしまうんじゃないかな」って思ったんです。
「ON・OFFの切り替え」はいらない
ライター・於
私、そういうふうに自分の「しんどい」サインに気付けないことがよくあるんですよね。
やっぱりONとOFFの切り替えが大事なんですかね?
松山さん
僕もそう思ってたんですけど、重要なのは「切り替え」じゃないみたいなんですよね。
え
ライター・於
違うんですか…?
松山さん
僕も、昔は「切り替えて休まなきゃ!」と思って、OFFばかりを意識していたんですけどね。
根がマジメだからかな?気付いたら「OFFになることがタスク」みたいになっていて…
ライター・於
わかります! 休みの日に、「せっかくの休みだから満喫しなきゃ」って張り切って、結局回復してないまま休日が終わってしまうという…
松山さん
そうそう! そんなときに座禅の本を読んで考えが変わりました。
座禅だと、「○○をしよう」という意識があると、その時点でもう“思考を休められていない”と考えるらしいんです。そうではなく、すべてのことにとらわれるのをやめてみて、悩みをリセットするのがいいと。
今は、スーっとしている状態のなかで、ポンって仕事するのが一番理想だなって思ってるんです。
ライター・於
どういうことでしょう?
松山さん
僕の理想は…これでした。(ガバッ!)
突然体勢を崩し、寝たふりをする松山さん
松山さん
ゴルゴです。
休むことが下手な僕らが目指すべき姿は、『ゴルゴ13』だと思うんですよ。
寝てるときでも、いつでも背後に鉄砲を向けていて、なにかあればパッと起きて撃てる!
ライター・於
ゴルゴ…?(ピンとこない)
松山さん
ON・OFF付けずに、いつでも自然体でいて、やるべきときにポンってスイッチを入れられる。
そういうふうな状態を目指せばいいんじゃないかな?
ライター・於
境界をあいまいにするってことですね…!
最初は一瞬「?」と思いましたが、だんだん腑に落ちてきました。たしかに、優秀な経営者とかが「ONとOFFの区別がない」って言ってるのを聞いたことあります。
やることの取捨選択。「飲み会」をやめたら常にフラットでいられるように
ライター・於
でも、今それができない人は、まずどのように行動を変えたらいいですかね?
松山さん
やることの取捨選択をしちゃえばいいと思うんですよね。
ライター・於
取捨選択というと、具体的にどんなことをやめるようにすればいいですか?
松山さん
やらないことを決めてしまって、「心地いいことだけをする」ように仕向ければ、自然とONとOFFの境目はなくなっていくはず。
僕の場合は、自分を整える時間がほしくて、飲みにいくのをやめました。
ライター・於
思い切った決断ですね。「飲み」をやめたのはなぜですか?
松山さん
悪口を聞いたり、自分も批判的なことを言ったりすることが、前からストレスになっていたんですよ。
気付かないうちにお酒を飲むことを、「ONとOFFの切り替え」に使ってたんですね。
ライター・於
「仕事終わりの一杯」とか「お疲れ飲み会」みたいな。多くの人はそうですよね。
松山さん
そう。でも、「もう切り替えずにフラットでいよう」と思ったから…
ライター・於
……必要なくなったのか、納得しました!
松山さん
そういうことなんです。
その一方で、どんなに「ツラい!」と思っていても残るもの、やめられないものが絶対にあって。
それが、その人にとって譲れないことだと思うんですよね。
ライター・於
なるほど…
松山さん
僕にとって、お芝居はそれ。どんなに体調を崩しても、捨てようとは思わなかったですもんね。
好きなことだからたまにストイックが顔を出すけど…
ライター・於
松山さんは今はもう「ストイック」をやめて、フラットな状態になれているんですか?
松山さん
テキトーに生きることを選んでから5年くらい経ちますけど、やっぱり好きなことですからね。昔のクセで気付かないうちにガーッて突き進んでしまうことがあって。
そのたびに、「ダメだダメだ!」って自分にストップかけてます。
今回声の出演をさせていただいた映画『プロメア』の撮影でも、体に負荷をかけてしまったなって思ったことがありました。
ライター・於
何があったんですか?
松山さん
1、2日目に収録、3日目が休み、4日目に収録というスケジュールだったんですけど、3日目のオフの日に寝込んでしまいました。
(映画『プロメア』で演じた)ガロが熱い性格だから、その熱量を何とか届けたいって、ひたすら叫んでいたら、自分が熱を出しちゃったんですよ(笑)。
ライター・於
相当、没頭していたんですね。
松山さん
それで思い切ってまるまる1日寝てみた。そしたら、4日目の朝には完全復活。
昔の僕だったら「寝込んじゃいられないな! 昨日、学んだことを勉強しなおそう」って体にムチを打って頑張っていたと思う。
でも、今はストイックになってまわりに迷惑をかけることのほうがだめだなって気付いたから。結果的に、最終日に万全の状態で臨めてよかった。
やっぱり今の状態は、ちょうどいい頑張り方を見つけられたなって思います。
思いがけず「気楽に生きること」の大切さに気付かされた今回の取材。企画書をバッサリ斬られ、一時はどうなることかと焦りましたが、具体例を混じえながらわかりやすく説明してくれた松山さんの優しさに助けられ、あたたかい雰囲気で取材は終了しました。
読者の皆さんは、今突っ走りすぎていませんか?
「あと4日頑張ったらお休み…」「明日は飲みの約束…」と休日までのカウントダウンをしている時点で、もしかしたらON・OFFくっきりの”休み下手人間”になっているかも!
…とかいってる、私もそうなんですけどね(笑)。
まずは、「心地の悪い」ことを、思い切って捨ててみるところから始めてみようかな。
〈取材・文=於ありさ(@okiarichan27)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=森カズシゲ〉
【松山さんが劇場アニメーションでW主演! 『プロメア』】
ベストな“頑張り方”を見つけられたという松山さん。新たな演技の幅を広げる精神は引き続き健在で、5月24日に公開される映画『プロメア』では“声の出演”を果たします。
人気TVシリーズ『天元突破グレンラガン』(2007年)、『キルラキル』(2013年)の監督:今石洋之と脚本:中島かずきによる初の完全オリジナル劇場アニメーション!
松山さんは昔ながらの“マトイ”を担ぎ、燃える火消し魂を持つレスキュー隊員・ガロ役に挑戦。熱さ全開のバトルエンタテインメントが誕生しました!
インタビューを読んで松山さんの演技に興味をもった方は、ぜひチェックを!
映画『プロメア』
2019年5月24日、全国ロードショー
配給:東宝映像事業部
原作:TRIGGER・中島かずき
監督:今石洋之
脚本:中島かずき
キャラクターデザイン:コヤマシゲト
音楽:澤野弘之
3DCG制作:サンジゲン
アニメーション制作:TRIGGER
製作:XFLAG
キャスト:
ガロ・ティモス:松山ケンイチ リオ・フォーティア:早乙女太一
クレイ・フォーサイト:堺雅人
ビニー:ケンドーコバヤシ デウス・プロメス博士:古田新太
アイナ・アルデビット:佐倉綾音 レミー・プグーナ:吉野裕行 バリス・トラス:稲田徹 ルチア・フェックス:新谷真弓 イグニス・エクス:小山力也 エリス・アルデビット:小清水亜美 ヴァルカン・ヘイストス:楠 大典 ゲーラ:檜山修之 メイス:小西克幸
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