ビジネスパーソンインタビュー

大食いタレント・ロシアン佐藤さんに「大食い活動」で生計を立てられるか聞いてみた

どんなに工夫をしても食費は月に10万円

大食いタレント・ロシアン佐藤さんに「大食い活動」で生計を立てられるか聞いてみた

新R25編集部

2019/02/28

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記事提供:マネ会

ファーがついた帽子(ロシア帽)をかぶって2008年にテレビ番組が主催する大食い大会に出場したところ、そのかわいらしいルックスと食べっぷりで一躍注目を集めたロシアン佐藤さん

テレビ番組の大食い大会初出場以来、IT系企業の会社員兼大食い選手(フードファイター)として活躍してきました。

「食べることが大好きで、子どものころから食欲旺盛だった」という佐藤さんは、2016年に「食の楽しさ」を広めるためエッジニア合同会社を立ち上げ、COO(最高執行責任者)に就任。

現在は大食いタレントとして活動しながら動画メディアの運営も行なっています。

そんなロシアン佐藤さんに、大食いタレントの活動内容や、実際にどのくらい収入があるのか、また、食費のやりくり法などについて伺いました。

高校生のときはたくさん食べるのが恥ずかしかった

――本日はよろしくお願いします。これ、ぜひロシアン佐藤さんに目の前で食べていただきたくて、特大のフルーツタルトをお持ちしまして…

ロシアン佐藤(以下、ロシアン):わー! すごい! うれしい! ありがとうございます。

――食べられそうでしょうか?

ロシアン:はい! 大丈夫です。これなら3ホールくらいいけると思います(と言いながら食べはじめる)。

――すごい…! ロシアンさんはもともとたくさん食べる方なんですよね。人よりも食べる量が多いと、普段の生活で不自由に感じることはありませんか?

ロシアン:あります、あります。特に高校生くらいのときは本当に恥ずかしくて! スカートのウエストをギュッときつくして胃を圧迫することで食べられないようにして、家に帰ってから大量に食べていました。

――人前では、大食いであることを隠していたんですね。

ロシアン:当時は「女性がたくさん食べるのは恥ずかしい」みたいな空気があったんですよね。その空気感がなくなってきたのが大学に入ったくらいの頃。ギャル曽根ちゃんのテレビ出演がきっかけだと思います。

メイクを直しながら、めちゃくちゃ食べるギャル曽根ちゃんは、今までの女性大食い選手になかったイメージですごくセンセーショナルでしたね。

それで、「女の子がたくさん食べてもいいじゃん」という風潮が切りひらかれたと感じて、私も外で恥ずかしがらずに食べるようになりました。

出演料はお小遣い程度! 大食い一本じゃ食べていけない

――その後、ロシアンさん自身も大食い選手として活躍されるようになりましたが、どのような流れでテレビに出ることになったのでしょうか?

ロシアン:初めてテレビ番組の大食い大会に出たのが大学卒業直前で、学生最後の思い出作りで出場しました。おいしいものをたくさん食べられてうれしいな、くらいの気持ちで(笑)。

正直、当時は一回だけ出て終わりだと思っていたので、そのまま内定していた会社に就職しました。

――それで会社員兼大食い選手に。

ロシアン:はい。会社は大食いの活動をすることには寛容でしたね。有休を使ったり、終業後に19時から朝7時までロケに参加してそのまま寝ないで会社に行ったりしたこともあります。

――ええー!

ロシアン:でも、大食いの仕事は月1回あるかないかくらいだったので、両立できなくはないという感じでした。自分から大食いの仕事を取りに行ってお金を稼ぐつもりもなくて。

そもそも、大食いってそれ一本で生計を立てられるような業界ではないんです

大食い選手としてのテレビ出演料はアルバイトの日当くらいですし。ギャル曽根ちゃんのようにタレントとして成功できればいいですが、なかなか難しいので、飲食店をやるなど食関係の事業で稼いでいる方が多いかと思います。

これまでロシアン佐藤さんが出場してきた大会のゼッケン。大会時は本名の「佐藤ひとみ」で出場することが多いのだそう

――そうなのですね。

ロシアン:だから私も会社員の収入がメインで、大食いの仕事は本当にお小遣い程度でした。

テレビ番組が主催する大食いの大会は勝ち進めばその分賞金が出ますが、たとえ優勝して100万円もらったとしても、一週間くらい拘束される上に、頻繁に大会があるわけではないので、お仕事として考えるとあまり割に合いません

唯一、イベント(※)のゲスト出演料は拘束時間が短くて割がいいかなと思います。

※飲食店や商業施設、公営競技などで開催されることが多い

どんなに工夫をしても食費は月に10万円

――選手として大食いの大会に出場するときは、調整(?)のようなものをするのでしょうか。

ロシアン:大食いの大会って人によって向き合い方もさまざまで、そういうアスリート的な選手もいるのですが、私はあくまでも食を楽しむのが目的で大会に出てるんです。ただただ本当に食べるのが好きでこの世界に入っているので。

だから、今持っている実力で行けるところまで行けたらいいくらいに思っていて、あまり大会前の調整はしていないんです。

ただ唯一、2016年に出場した大食い世界一の国を決める大会だけは、私が勝てば日本が勝つ状況になるかもしれない、と事前に言われていて、初めてアスリート的な姿勢で挑みました。

――具体的には、どんなことをするのでしょう?

ロシアン:その大会では、最初に私がトップスピードで飛ばすことで相手のペースを崩す、という作戦を立てていたので、とにかくスタートダッシュできるかが大事で。

――相手を焦らせてプレッシャーをかけるということでしょうか?

ロシアン:そうです。精神的な緊張やプレッシャーって、胃に結構ダイレクトに影響するんです。心理的な揺さぶりをかけることで、相手が自分の食べるペースを保てなくなり、本来入る量よりも全然食べられずに終わる、なんてこともよくあります。

――なるほど…! ほかに、大食いの大会に出てみて初めて知ったことってありますか?

ロシアン:改めて、自分ってものすごく食べるんだな、と(笑)。

人の5~6倍くらい食べるかなと思っていたのですが、大会で平気でステーキ20人前とか食べて、あれ? 5~6倍どころじゃないな? って(笑)

この日の取材時間は約1時間。取材しながらにも関わらず、取材中盤にはタルトをペロリ

――限界まで食べたときの胃袋の感覚ってどんな感じなんでしょうか?

ロシアン:胃袋が風船みたいに膨らんで、下から肺が圧迫されているので、呼吸が浅くなり、胃袋の下のほうは、足のほうまで広がっていると思います。

なんというか…太ももの付け根まで食べ物が入っている感じです。

――太ももの付け根! ちなみに、これまでの最高記録ってどれくらいですか?

ロシアン:8.5キロだったと思います。限界量って、食べるものによっても大きく変わってくるんです。カレーとかは食べやすいのでたくさん入ります。

肉やキャベツの千切りなど、噛みごたえのある食材だと、あんまり記録が伸びないですね。

――好きなものだとたくさん食べられる、とかはありますか?

ロシアン:それが意外にそうでもなくて! 私、カルボナーラが大好きなんですけど、味が濃すぎてたくさんは食べられなかったです。

お腹にはまだ入る気がするけど、途中で飽きちゃうんですよね。同じものをずっと食べ続けるとつらい、という感覚になるのは大会に出て初めて知りました。

――普段の生活で同じものばかり食べ続けることってないですものね。ぶしつけな質問なのですが、大食い選手の方は、やはり1カ月あたりの食費が高くなってしまうのでしょうか?

ロシアン:中には、普段はそんなに食べなくても平気という方もいらっしゃいますが、私はとにかく食べるのが大好きなので、よく食べます。なるべく自炊をする、外食は食べ放題に行くようにするなど、どんなに工夫しても月10万円くらいにはなりますね

ちなみに、食べ放題は何店舗か行きつけのお店があります。たくさん食べるのを許容してくれるところじゃないとダメなので…。いつも笑顔で迎え入れてくれるお店は本当に貴重なんです。

――確かに、食べ放題とはいえお店が想定している何倍もの量を食べますものね。自炊するときは一回で何人前くらい作るのでしょうか?

ロシアン:10人前くらい作っていると思います。ご飯は7合~1升炊いて、お味噌汁も大きなどんぶりで3~4杯くらい。野菜が好きなので、お味噌汁には野菜をたくさん入れて、おかずはお肉のパックを1キロと一緒に野菜を炒めたものを作ることが多いですね。

普通の家庭で4、5食分くらいの食材を、毎日買い物袋両手いっぱいに買って帰ってきて、それが一日でなくなります(笑)

――それは大変ですね…! 料理するのも時間がかかりそうです。

ロシアン:そうですね。でも、食べるのも料理をするのも大好きなので、全然苦ではないです。食費がかかることについても、半分娯楽感覚というか、働いたお金を食に使いたい、と思ってやっています。

――ちなみに、痩せていらっしゃるので毎日それだけ食べていても太らないってことなんですよね。太ることってあるのでしょうか…?

ロシアン:食べた直後は、食べた分だけ体重は増えるので、6キロ食べれば6キロ分太りますが、それは徐々にもとに戻ります。一気に食べたものに関しては、全部は吸収されないんですよね、たぶん

でも、だらだら少しずつ食べ続けると太るんですよ。年末年始に実家に帰ると、親から親戚から色々な人が、朝から晩まで絶え間なく食べ物を出してくれるので、3キロくらい太って帰ってきます(笑)。

大食いの経験が、現在の事業につながっている

――ロシアンさんは2016年に独立されましたが、どのようなきっかけだったのでしょう?

ロシアン:もともと自分で事業を立ち上げること自体にはずっと興味があったんです。

会社員をやりながらときどき大会やテレビに出るだけだと、大食いは趣味の範疇(はんちゅう)を出なかったので、自分で発信できる場を作りたくて。それで、以前勤めていた会社の同僚と一緒に、会社員として経験してきた「IT」と「大食い」をかけ合わせた会社を立ち上げました。

現在は、メディア運営やITサービス事業、動画制作などをやっています。

――今後はどのような展開を考えていらっしゃいますか?

ロシアン:ロシアン佐藤としての大食いタレントの活動は続けつつ、会社の事業を伸ばしていきたいと思っています。

今メインでやっているのは、料理を作って食べるというYouTubeの番組制作で、企画や見せ方のアイデアのタネは過去のテレビ出演の経験からひねり出しています。

また、普段の料理経験を生かして「Party Kitchen」というレシピ動画メディアの運営、パーティ向け料理の監修もしています。

ほかにも、今後はレシピ本を出したり、飲食店をやったりもしていきたいですね。

――「食」を軸にさまざまな分野に挑戦されるのですね。

ロシアン:はい。「食」ってやっぱり生きていくことと切り離せないことなので、色々な手段で、食の楽しさや情報を発信していく側になりたいです

〈取材・文=朝井麻由美/撮影=関口佳代〉

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