ビジネスパーソンインタビュー
「広告業界の仕組みを変える仕事がしたい」
「広告業界イチ時給が高い」を目指す会社の社長に、生産性を高める秘訣を聞いてきた
新R25編集部
激務な印象が強い広告業界のなかにあって、“18時にはオフィスから人がいなくなる”ほど、生産性の高い働きかたを実現している会社があるそうなんです。
それが、「コンテンツブティック」を名乗り、話題を生み出す施策を次々しかける、株式会社オールブルー。
とはいえ、「残業ナシ」って、実態が伴っていないことが多いですよね。業務量がコントロールしづらい広告業界ならなおさら。
そんな半ばやっかみの姿勢で、18時過ぎのオフィスにお伺いしてみたのですが…。
社員全員が定時退社。「18時以降は予定を入れる」がルール
宮内
(あれ、本当に誰もいない…)
あの〜…みなさん、優秀なんですね…
助野さん
働く時間のケツを決めて、逆算して仕事してるだけですよ。
逆に、いつも何時まで働いてます?
【助野太祐(すけの・たいすけ)】株式会社オールブルー代表取締役。1983年シンガポール生まれ。2005年リクルート入社。2007年博報堂入社。大手飲料メーカー、インフラ企業などの広告からメディアまでTTL領域を多数経験し、2013年オールブルー設立。好きな漫画は「キングダム」
宮内
定時(19時)ぴったりに帰れる日はあまりないですね。
「帰宅して、ビール飲んで、寝るだけ」と伝えると、わかりやすいかと…
助野さん
あ〜(笑)。
業務時間はアウトプットで、それ以外の時間をインプットに使って、脳みそを常にアップデートしないといけないですね!
宮内
しょっぱなから耳が痛いです…
助野さん
うちは就業時間が10時〜18時で、「18時以降はなんでもいいから予定を入れる」ことをルールにしてるんです。
あと、本社は赤坂なんですが、その他都内5カ所にシェアオフィスをもっていてどこでも仕事ができるので、ムダな移動時間もなくなりました。
宮内
働き方が最先端すぎる。
助野さん
この前なんて、めずらしく19時過ぎにオフィスで仕事をしてたことを社員に話したら、「社長、ダサいっすね」って言われて(笑)。
※ちなみに、本日はジム終わりに取材にご対応いただきました
助野さん
こういう点からも、僕らは生産性がとても高いチームだと自負していて、オールブルーは「業界イチ時給が高い会社」だと勝手に思ってます。
宮内
業界イチ…!
“業界イチ時給が高い会社”を支える「仕事を選ぶ3つの基準」
宮内
とはいっても、広告業界の特性上、残業ゼロが実現できるとは到底思えないんですが…
助野さん
僕も以前は、遅くまで働くことが当たり前の生活で、徹夜することもありました。
でも、当時の働き方を振り返ってみると、プレゼンに10人くらいで行ったり、なんとなく帰れない雰囲気があったり。ムダなことが多かったんです。
「10人で行っても半分の人は話さないし、あんまりすることないしね(笑)」
助野さん
そんな反省もあって、働く上で大切にすることを「仕事に関わる人たちとバイブスが合うかどうか」「関わることで成長できるか」「圧倒的に儲かるか」の3つに決めました。
この3つのうち、2つ以上該当しない仕事は基本的にお断りするようにしたんです。これを徹底すると、必然的に生産性の高い仕事だけになって、残業がなくなりましたね。
宮内
バイブスってそんな、ギャルみたいな…
助野さん
バイブスが合うっていうのは、ストレートなコミュニケーションができるってこと。
ストレートに話せれば、たとえばNGだなというときにも、その場で「できません」と言えば終わるじゃないですか。「持ち帰って検討します」とか忖度する必要がない。
助野さん
2つ目も、「この仕事をやり切れば、自分は成長できる」と思えた瞬間、モチベーションって一気に上がるじゃないですか。
モチベーションと時間って反比例するから、モチベーションが高いほど、短時間でいいパフォーマンスが出せるようになるんですよね。
オールブルーが「広告会社」ではなく、「コンテンツブティック」を名乗る理由
宮内
最後は「圧倒的に儲かるか」ということですが、そもそもそんなオイシイ仕事が来たらどの会社も苦労しないですよね…
助野さん
僕らは、メディア枠の代理販売やクリエイティブの制作・運営進行といった従来の広告業務は極力回避してるんです。
オールブルーは、自分たちのことを「広告会社」ではなく、「コンテンツブティック」と名乗ってるんですけど。
宮内
コンテンツブティック…? 初めて聞きました。
助野さん
広告業界って、マージンビジネスになってしまうので、どうしても労働集約的な働き方を抜け出せないんですよね。
悪い意味で、労働時間と利益が比例するスパイラルにはまってしまう。
助野さん
だからオールブルーは、ストック型(知的財産型)でビジネスを展開していくことを目指しました。
たとえば、すでにあるコンテンツをコンテンツホルダーと一緒に、より売れるものにアップデートして商品化する。そして、その商品を多面的に売っていくことが可能になれば、1度きりで終わらないビジネスが展開できるじゃないですか。
こうやって、僕らは従来の広告のビジネスモデルを仕組みから変えてるんです。
【LIFULL HOME'S 統合コミュニケーション】コミュニケーション全体設計から企画、キャスティング、プロモーション、PRまで実施。ベッキーとくっきー(野性爆弾・川島)の共演で話題に。その後、CMだけでなく番組で共演するなどコンテンツ化に成功。
宮内
売れる可能性があるコンテンツを発掘して、さらに売れるように料理して提案する。なんだか、セレクトショップみたいですね!
助野さん
社員一人ひとりがコンテンツのバイヤーであり料理人みたいですよね。それで「コンテンツブティック」と言ってるんです。
うちのメンバーは全員、映画、音楽、ファッション…最低どれか1つ、自分がくわしいコンテンツを持っていて、それが仕事にそのまま活きてくる。
それも、18時以降を自分の好きなジャンルのコンテンツを消費する時間に使ってるからこそできているんですよね。
会食もエンターテイメントに。一流の仕事とは、“相手の知らない世界を見せる”こと
宮内
先ほどの3つの軸で仕事を選べるようになるためには、それだけ「オールブルーにお願いしたい」と思うクライアントがいないといけないですよね。
“選ばれる”会社でいるために意識されていることはあるんでしょうか?
助野さん
仕事はもちろん全力で成果を出す。これは当たり前として、それ以外でも、クライアントを“楽しませる瞬間”をどれだけつくれるかを大切にしています。
宮内
仕事以外、ですか?
助野さん
たとえば、「会食に行きましょう」となったとき、普通に楽しませようと考えたら、「評判がよくて、おいしいお店をセッティングしよう」という発想になると思うんです。
宮内
えっ…違うんですか?
助野さん
僕たちの場合は、クライアントに「17時半に仕事終わらせて、◯◯に集合してください」とだけ伝えます。
それで、ミニバスとか借りて迎えにいくんですよ。千葉に僕が好きな会員制キャンプ場があるんですけど、そこでバーベキューするんです。終わったら、そのまま泊まってもいいですしね。
そんな会食聞いたことない
助野さん
夏だったら、海の家のVIPルームを貸し切ったこともあります。
あくまで会食なんですけど、もはやそれ自体をエンターテインメントにしてしまおうと。
宮内
そこまで徹底するのはすごいですね…
助野さん
一流の仕事って、「相手の知らない世界を見せてあげる」ことだと思うんです。それがきっと、一緒に働く人を楽しませることにつながっていく。
助野さん
だから、相手が知らない話題をたくさん持っておくことは、仕事をする上で最低限のマナーだと思うんですよね。
逆に言うと、ここさえブレなければ、必ずしも派手なことをする必要はないと思うんです。僕の場合、その手段のひとつとして、「相手が経験したことない会食」を持っているだけで。
宮内
たしかに。その考えは会社単位の付き合いだけでなく、個人間のコミュニケーションにおいても大切かもしれません。
「寝ていても儲かる仕組みをつくりたい」助野社長が生産性を追求する想いとは
宮内
最後に、これからの展望についてもお伺いしたいです。
助野さん
オールブルーとしては、レベニューシェア事業を拡大してきたいと思っています。
広告会社に払う金額って、スタートアップだと、とてもじゃないけど出せなかったりする。でも、本当はそういうフェーズの会社こそ、僕たちが入る価値があるんじゃないかと感じていて。
助野さん
そこで最近スタートさせたのが、広告の制作物に対してのフィーではなく、「クライアントがその広告によって売り上げた分のいくらかをフィーとして受け取る」というモデルです。
宮内
なるほど。成功報酬型だと、依頼主の発注ハードルは下がりますね。
でもそれって、御社にとってはリスクもありますよね?
助野さん
ありますね。ただ、僕たちが提案するコンテンツに自信を持てるようになったからこそ、このビジネスを拡大させていきたいという想いがあります。
あと、僕は生産性を突き詰めて、究極寝ていても儲かるビジネスを実現したいんですよ。
宮内
寝ていても…!
助野さん
僕、座右の銘が「老いたから遊ばなくなるのではなく、遊ばなくなるから老いるのである」なんです。
だから5年サイクルで、新しいチャレンジをしたいんですよ(笑)。そのためにも、はやく仕組みを作りきって、そのまま後輩とかにパスしていきたい。それが僕個人のミッションですね。
「最近、“ワークライフバランス”と言われてますけど、それってワークとライフを天秤にかけていてダサくないですか?そうやって2つのバランスをとるんじゃなくて、全部融合させちゃう“ワークライフハーモニー”がいいと思うんですよね。」
この日、オフィスの壁には社員の方々が書かれたという、2019年の抱負が飾られていました。
✔ミス・インターナショナルファイナリスト入賞
✔ベストボディ・ジャパン入賞
✔デリスタグラマーとしてフォロワー1万人
「ワークもライフも、どちらもフルスイングな方が、生き方としてかっこよくないですか?」
…間違いない。そんな生き方を、私も目指します。
〈取材・文=宮内麻希(@haribo1126)/撮影=森カズシゲ〉
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