

ギャルの定義は「ヲタク心」だった!?
“ギャル復活”と騒がれてるのはなぜ?「渋谷109ラボ」所長に聞いたギャルの最新事情
新R25編集部
2019年。平成最後のこの年に、40周年を迎える渋谷のシンボルがあります。“ギャルの聖地”として一世を風靡したSHIBUYA109。
その節目に呼応するかのように、昨年あたりから「ギャル」が再び脚光をあびています。90年代を舞台に、当時の「コギャル」たちの青春模様を描いた映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』の公開や、ギャル雑誌『egg』のウェブでの復刊。
そして2019年1月には、ZOZO・前澤社長の“総額1億円のお年玉”に乗っかったこちらのツイートも話題になりました。
もう終わったと思われたギャル文化が、なぜ再び注目を集めているのか。いまのギャルはどんな服装やメイク、髪型をしているのか。
平成を代表する文化である、ギャルの実態と新しいブームについて探るべく、SHIBUYA109 lab. 所長の長田麻衣さんと、過去を振り返りながらギャルについて考えてきました。
【長田麻衣(おさだ・まい)】若者マーケティング研究機関である「SHIBUYA109 lab.」 所長。月200人以上の15歳~24歳の若者と接し、「若者のリアルな今」を調査中。最近若者に圧倒的大人気&大定番飲料である「タピオカ」が主食と化している。個人的にハマっているタピオカは「一芳」。今年の目標は、若者マーケターとしてテレビに出ること、腹筋を割ること
ギャルの復活は、あくまで平成最後の一時的なムーブメントに過ぎない

長田さん
ここ最近、「ギャル復活」と言われている理由は大きく2つあると考えています。
1つは、ちょうど新R25の読者世代(20代〜30代前半)が、映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』などを見て「懐かしい!」とSNS上で共感したことで、話題を生んだこと。
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映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』より

長田さん
2つ目は、2年ほど前から水原希子ちゃんやkemioくんなど、around20(15歳〜24歳までの若者を差す)世代のオピニオンリーダーがギャル文化を発信しはじめたこと。
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水原希子さんのInstagramより
KemioさんのYouTubeより

長田さん
これによって、90年代のギャルブームを知らない若い世代にもギャル文化が浸透したと思っています。

宮内
水原希子ちゃんやkemioくんは、どうしてギャルに目をつけたんですか?

長田さん
あくまで推測ですが、昔からギャルに憧れていたんじゃないかなと。
希子ちゃんやkemioくんって、ギャルブーム全盛期が小学生くらいの頃だと思うんですよ。幼い頃から、「大きくなったらギャルメイクをしてみたい」「派手な服装がしたい」というギャルへの憧れも強かったはず。でも、彼女たちがようやく当時のギャルと同じ年齢になったとき、すでにギャルブームは終わっていたんです。

宮内
私もちょうど同じ世代なので、その気持ちわかります(笑)。
ちなみに、こういった「ギャル復活」のムーブメントと共に、若い子の間でも”ギャルファッション”や"ギャルメイク"が広まってきてるんでしょうか?

長田さん
いや〜、それはないと思います。
若い世代は「マネしたい」ではなく、「新鮮!」「かわいい!」という感想なんですよ。自分はこういう服は着ないけど、「見ているだけでカワイイ」みたいな。
たとえば、eggモデルの伊藤桃ちゃんは女子高生の間で大人気なんですけど、そういうメイクをしてる子はだいたいクラスに1人いるかどうかなんですよね。
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長田さん
世間では「復活」と言われることもありますが、実際のところは、あくまで平成が終わるという文脈も相まった、一過性のムーブメントだと思っています。
ギャルの本質的な定義は「ヲタク」であること!?
長田さんによると、私たちがこれまでギャルの条件だと思っていた、服装・メイク・髪型などは、あくまで数多くあるファッショントレンドの1つにすぎないのだという。では、そもそもギャルの定義とはいったいなんなのでしょう。
Wikipediaギャルは、英語において若い女性を指す girl(ガール)の、アメリカ英語における俗語 gal(ギャル)に由来する外来語。
とりわけファッションやライフスタイルが突飛とみなされながらも、それらが同世代にある程度文化として共有されている若い女性たちを指す場合にも用いる。
ギャルという言葉は、1972年にラングラーよりGalsという女性用ジーンズが発売された時から広まった。また、東京においては1973年に渋谷PARCOが開店し、新宿に代わって渋谷が若者の街として流行の最先端を担うようになるという変化があった。当時、ギャルはニューファッションに身を包んだ女性を指していた。

宮内
ギャルというのは言葉が生まれた当時、ニューファッションに身を包んだ女性、というふうに定義されていましたが、今はあまり"ギャルファッション"をしている人は見なくなったというか…

長田さん
実は、そもそもギャルって完全に消えていたわけではないんですよ。

宮内
あれ。でもいわゆる“ギャル”っぽいファッションの子たちは見ない気がしますけど…
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長田さん
そういうファッションをする女の子がほとんどいなくなってしまったのは確かです。
でも、そもそもあの頃のギャルの服装って、ファッションスタイルの1つを指す言葉であって、それが流行に伴って廃れていくのは当然のことですよね。
もっと本質的に「ギャルの定義とはなにか」「SHIBUYA109に来るおしゃれが好きな若い子たちに昔から共通することはなにか」ということを考えてみると、外見ではなく内面にカギがあると思うんです。

長田さん
それは「ヲタク心」です。
これが、今も昔もSHIBUYA109に来る若い子たちの間で、唯一変わらないマインドなんじゃないかなと。

宮内
えっ…。ギャルとヲタクってまったく噛み合わない気が…

長田さん
昔の子たちは、つけまつげの長さとか、アイシャドウの色とか、髪の色とか、自分をかわいくすることへの探究心が強かった。
要するに、“自分ヲタク”だったんですよね。
一方で今の子たちは、K-POPやYouTuberなど、コンテンツへの愛がすごいんです。かつて自分に向けられていた“ヲタク心”が外に向き、自分が好きなもの・ことに時間とお金を費やすことが、自己表現になっています。
SHIBUYA109 lab.
ヲタ活の対象について、SHIBUYA109ガールズにおこなった調査では、1位「日本の男性アイドル・有名人(35.1%)」、2位「海外の男性アイドル・有名人(19.5%)」、3位「日本のバンド/アーティスト等の音楽(13.0%)」という結果になったそう

長田さん
月に1回、SHIBUYA109館内に来ている子たち100人にヒアリングをしているんですが、自分が「○○ヲタ」と言い切れる対象を持っている子の割合は 7割を超えますし、around20の間では「ヲタ活」という言葉が当たり前のように使われています。

宮内
若者の“ヲタク心”のベクトルが変わっているということですね。なぜそのような変化が起きたのでしょう?

長田さん
それには若者の自己表現手段の多様化とそのゴールの変化が大きく関係しています。
昔は、自己表現をする手段がファッションとメイクしかなかったんですよ。だから「なりたい自分」を完ぺきに表現するためにメイクやファッションを研究して、ありったけのオシャレをして、センター街を歩いていたんです。そして、雑誌のスナップに声をかけてもらうことが若い子たちの目標だった。

宮内
わかる…渋谷に行く日は、全身ブランドで固めたこともありました。

長田さん
でも今では、SNSがある為、ファッション以外でも自己表現方法が多様化しています。
「自分は○○ヲタだ」とTwitterで宣言したり、お気に入りのグッズをInstagramに載せたりすれば、それが自己表現になりますよね。
いまの若者って、外見だけでなく「何が好きか・応援しているか」も含めて「自分」だし、自己表現になってるんです。この変化が一番大きな要因だと思います。
ギャルファッション・メイクは多様化。カリスマのマネではなく、身近な人に影響を受ける時代に

長田さん
もちろん今も、自分のファッションやメイクにこだわる子は変わらず多いです。
たとえば、最近だと韓国から火がついた「韓国ファッション」が人気です。
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宮内
あ〜! こんな雰囲気のメイクや服装はよく見かけますね。

長田さん
ただ、これだけというわけではなく、熱中できるものの選択肢が広がって、昔に比べてファッションのテイストは多岐にわたっています。
以前、「好きなブランドはなんですか?」という質問をSHIBUYA109へ来館した子たちにしたら、1位が「なし」だったんですよ。
毎年同じ調査をしているのですが、「なし」が1位になったのはここ数年からですね。

宮内
私たちの時代にSHIBUYA109に来ていた人たちには考えられない回答ですね。
あの頃なら「CECIL McBEE」「COCOLULU」とか、即答だったはず…!

長田さん
ブランドへの執着の薄れは購買行動にも影響しています。
昔は決まった1つのブランドで「全身まとめ買い」をする人が多かったんですけど、今は1つのアイテムを買うためにいろんなブランドを回って、自分が気に入ったものを選んで買う「1点買い」がスタンダードになっているんです。

宮内
ブランドではなくアイテム一つひとつをちゃんと見るようになっているんですね。

長田さん
そうですね。ちなみに「好きなブランド」で2位、3位と続くのは、GUやH&Mなどのファストファッション。
トレンドアイテムが安価で手に入るようになったことも影響して、「今日はこの子と会うからこういう系統にしよう」という感じで、気分やTPOによってコーディネートを変える子が多いんですよ。

宮内
ギャルブーム時代は、安室ちゃん(安室奈美恵)とか、つーちゃん(益若つばさ)のような圧倒的カリスマがいて、みんながその人たちのマネしていたと思うんですが、そういう存在はもういないんですか?
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長田さん
圧倒的カリスマはいませんね。
ただ、代わりに憧れの存在が多様化して、ニッチになってます。たとえば、友だちの友だちのコーディネートがオシャレだから、その人のInstagramを見てるとか。一般人だけどプチプラアイテムをうまく組み合わせていて、オリジナリティがあるから憧れてるとか。
カリスマというよりも、より身近な存在で自分なりの個性が光っている女の子に憧れる人が多くなっています。

長田さん
私たちの頃って、クラスにいる友人を見ても、「超オシャレな子」と「ダサい子」の差が激しかったじゃないですか。でも今って、「超オシャレな子」か「オシャレな子」しかいないんですよ(笑)。だからこそカリスマが不要なのかもしれません。
SNSに自分の写真を投稿するのが当たり前の時代だから、みんな常に「見られてる」という意識がある。そうなると、自然にファッションやメイクに気をつかうようになるんですよね。

宮内
いや〜、すごい時代だ。
月100人以上の若者と話す長田さんが驚いた最近の若者文化
毎月100人以上のaround20と会話しているという長田さん。最後に、同じR25世代の長田さんから見て衝撃だった若者文化について聞いてみました。
連絡先の交換はLINEではなくInstagram

長田さん
宮内さん、誰かと知り合って「連絡先交換しよ〜」ってなったら何を使います?

宮内
LINEです。

長田さん
それが最近のaround20は、Instagramのアカウントを最初に交換する子も多いんです。
そのあとに投稿を見て、相手の雰囲気とか趣味を把握した上で「この子と仲良くなりたいな」と思ったらDMでLINEのIDを交換するっていう。

宮内
友だちを選んでますね〜(笑)。でも、最初から趣味の合いそうな子と仲良くできるっていうのはメリットかも。
遊びに行く目的が“写真映え”

長田さん
高校生の頃、友だちと遊びに行くときは何が目的でしたか?

宮内
食べ放題に行くか、買い物するか、映画か…。あとは遊園地とかアクティビティ系ですかね。

長田さん
今の子たちって一番重要なのが”写真映え”なんですよ。
Instagramでかわいいお店を見つけたらすぐにスクショして友だちに送って、そこへ遊びに行くんです。

宮内
でた! インスタ映え。

長田さん
なので、集客に最も有効な施策も「フォトスポットをつくる」ことなんです。
ひと昔前なら、「ここだけでしか買えないブランドを置く」とかだったんですけど、今って通販で当たり前のように服が買える時代じゃないですか。
だから最近では、「買う」「食べる」といった従来の体験以外のプロデュースが必要になってくると思います。
SHIBUYA109に設置されたフォトスポット
実際にこんな感じで撮影する若者が多いそう

宮内
なるほどな〜。長田さんの若者心の把握がすごいです(笑)。

長田さん
若者のトレンドを常にキャッチして自分も新しい気持ちでいられるのが、今の仕事の醍醐味ですね。
長田さんと別れたあと、およそ10年ぶりに館内をくまなく歩き回ってみると、楽しそうに買い物をする若者たちの姿が。
服装やメイクは、自分がここに通っていた10年前のそれとは違うかもしれないけれど、SHIBUYA109に足を運ぶこと自体にワクワクしていたあの気持ちは、今も昔も変わらないのかもしれないと感慨深くなりました。
年を重ねても、新鮮な気持ちを忘れないように。常に最先端の情報にアンテナを張っておこうと決意した取材でした。
〈取材・文=宮内麻希(@haribo1126)〉

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