ビジネスパーソンインタビュー
「備え梅」が生まれた動機は熊本地震
"好き"をビジネスにするには?「梅干し」を仕事にする男が糸井重里から学んだこと
新R25編集部
一見、それだけではビジネスにならなさそうなのに、「一点集中」でビジネスにしている人たちがいます。
たとえば「梅干し」。生産者としてではなく、企画展やワークショップ、販売業まで多角的にビジネス展開している竹内順平さんもそのひとり。
竹内さんは、なぜ「梅干し」を愛しているのか? どうやってマネタイズできるまでになったのか? お話をうかがってきました。
〈聞き手:新R25編集部・N〉
「梅干しは“信じられる存在”、相棒みたいなもの」
【竹内順平(たけうち・じゅんぺい)】1989年生まれ。玉川大学芸術学部PA学科卒業後、東京糸井重里事務所を経て、2014年4月1日に“伝えるをプロデュースするチーム”BambooCut(バンブーカット)を設立
編集部・N
単刀直入にお聞きします。竹内さんはなぜ梅干しを仕事にしているのですか? やはり大好きが高じて?
竹内さん
うーん。食品としても大好きですが、それよりも“存在”に惹かれて…ですかね。
編集部・N
存在…
竹内さん
僕はもともと、日本の文化が持つ“曖昧さ”が好きなんです。断定しない、理屈じゃないあの感じが。梅干しって理屈じゃない魅力がありません?「おばあちゃんの梅干し、酸っぱくてしょっぱかったよね~」とか言いながら、みんないい顔するじゃないですか。
それって、梅干しは何か思いが詰まった“存在”だからだと思うんです。
竹内さん
うまく言語化できないですけど、梅干しは僕にとって、“絶対に魅力があると信じられる存在”なんです。
編集部・N
信じられる存在!
竹内さん
相性のいい相棒のような(笑)。最初は梅干しを仕事にって言うとウケ狙いだと思われたり、バカにされたりもしたけど、その魅力で何とか5年続けられてますから。
梅干しだけでビジネスになるの?と思いきや、販売、イベントともに好調
梅干しづくりのワークショップも“出会いの場”
編集部・N
竹内さんは梅干しに関するイベントを多数手がけられてますよね。どのような経緯で始められたんですか?
竹内さん
もともとは梅干しに限らず、イベントやグッズのプロデュースをやりたくて、会社(BambooCut)を立ち上げたんです。
竹内さんが手にしているのが「立ち喰い梅干し屋のまかないびん」
竹内さん
それが3年前、表参道で「立ち喰い梅干し屋」というイベントをやったとき、「少量でいいから、もっといろんな種類を食べたい」など、お客様の声をたくさん聞くうちに「じゃあ梅干しの商品をつくろう」となって、イベントで出していた各地の梅干しを小瓶に詰めて「立ち喰い梅干し屋のまかないびん」として商品化したんです。
編集部・N
それが好評で、現在の業態(販売)につながってるんですね。
ほかにも、「にっぽんの梅干し展」などの梅干しイベントを企画されてますが、お客さんの入り具合はどうなんですか? 正直、ピンポイントすぎて人が集まるイメージがなく…
竹内さん
いやいや。梅干し好きの方は意外といらっしゃるんですよ! 最初の「立ち喰い梅干し屋」の来場者は約4000人で、2週間で約7000粒を食べていただけましたし、毎回来てくださるお客様もいて、本当にありがたいなぁと思っています。
編集部・N
梅干しだけでそんなに集まるんですね! 甘く見てました…
そこから販売業を始められたわけですが、不安はなかったんですか?
竹内さん
いえ、不安でしたよ(笑)。現在、10社14種類の梅干しを販売していて、販売業としてはまだまだですが、少しずつ売れてはきています。
編集部・N
そうなんですね!
現在のような販売体制になるまでどれくらいの工房を回ったのでしょう?
竹内さん
オファーをかけた梅干し屋さんとしては、そんなに多くないですよ。個人も含めると30くらいかなぁ。基本的には、自分が食べて美味しいと思った梅干しの生産者さんにアポを取って訪ねるといった動きで、かたっぱしから当たっていくことはしていないですね。
自分が本当に興味を持って、一緒に仕事をしたいと思わないと、相手に失礼ですし。
災害時に役立つ「備え梅」。熊本地震の被害を見て商品化
「梅干しにまつわる文献は、かたっぱしから読みあさりました」
編集部・N
梅干しの商品としての“魅力”を、もう少し教えてもらえますか?
いろいろありますけど、健康面での魅力ですかね。
うちの商品で「備え梅」というのがあるんですが、梅干しは災害時に備えておくのにピッタリなんです。
編集部・N
なぜ災害時に梅干しが必要なんですか?
竹内さん
熊本地震のとき、十分な食事ができず、唾液が出づらくなって免疫力が下がった子どもがたくさんいたと聞きました。健康のためには唾液がとっても重要なんです。
唾液と言えば梅干し。見るだけでも唾液が出てきますよね? それがきっかけで、梅干しを防災アイテムにしようと考え始めたんです。
「備え梅」を商品化するために防災士の資格も取っちゃいました。
「梅干しバカだから(笑)」とのこと
編集部・N
すごい!
竹内さん
人間は体内の塩分濃度が下がっていくと精神的に不安定になるそうなんですが、それを緩和するためには塩分が必要になってくるんです。
塩分だけでなくクエン酸も含んでいて、唾液の分泌をうながす梅干しは、まさに備えておくべき食品というわけです。
編集部・N
梅干しってスーパーフードなんですね!
竹内さん
「医心方」という平安時代の医学書にも書かれてあるくらい、昔から梅干しは健康食とされているんですよ。
なぜそれをやるのか? 糸井重里から学んだ“動機”の大切さ
竹内さん
実は当初、梅干しをビジネスにしてやろうとは思ってなかったんです。人を喜ばせる、楽しませることが大好きな性格なので、何かしらでそれができればと。
それが、糸井重里さんのお仕事を見せていただき、「楽しいことに、お金はきちんとついてくる」って教わりました。だから、ちゃんと楽しませ続ければ、ビジネスチャンスは生まれるって信じてます。
編集部・N
そういえば、竹内さんは東京糸井重里事務所(現「株式会社 ほぼ日」)で働いてたんでしたね。ユニークな企画力や運営のノウハウはそこで磨かれたと思うのですが、いまに生きている“学び” はありますか?
竹内さん
「動機を大事にする」ということですかね。「『なぜそれをしたいのか、どうしてそういうふうにしたいのか』という動機がすべて」ということ。
編集部・N
“動機”?
竹内さん
「ほぼ日」が、宮城県の気仙沼でおこなう様々なプロジェクトに参加させてもらったことで、勝手に力になれた気になってたんです。
竹内さん
ところが、独立したあとに起きた熊本の震災のときは、力になりたいと思っていながら、本当に何もできなかった。
その無力さが大きくて、すごく落ち込んでいたときに、唾液が出づらくなって健康を害した子どもたちの話を聞いたんです。
それで、「同じ後悔をしたくない」という“動機”が僕に「備え梅」をつくらせたわけです。
編集部・N
なるほど。
竹内さん
糸井さんには、「自分の心がこう思ったから、いまこれがある」という、“動機”の大切さを学びました。だから、どんな小さなことでも“動機”があればこれからもチャレンジし続けたいですね。
「とにかく、人を楽しませることをやり続けたいですね」。
人を楽しませたいという“動機”があるからこそ、これから先も新しいチャレンジができる。竹内さんの話からは、仕事に向き合う本質的な姿勢を学べた気がしました。
〈取材・文=新R25編集部/撮影=オカダマコト〉
「立ち喰い梅干し屋 in コレド室町」が9月に限定オープン
竹内さんが選び抜いた絶品梅干しが食べられるチャンスです!
開催日:2018年9月5日(水)〜2018年9月17日(月・祝)
時間:10時~21時
会場:コレド室町3 3F COREDO室町+ 東京都中央区日本橋室町 1-5-5
主 催:BambooCut
“梅干しバカ”竹内順平さん厳選の梅干しはこちら
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