ビジネスパーソンインタビュー
「思わず投資したくなる人」の条件も!
"すぐ意見をひっくり返す人"がいい!? けんすうが考える「いい若手」の条件
新R25編集部
日々仕事を頑張っている読者のみなさんなら、「優秀な若手だと評価されたい」と思ったことが一度はあるのではないでしょうか?
そこで、R25世代が“優秀な若手”だと思われるためにはどうしたらいいのか、エンジェル投資家として、日々たくさんの若手と関わっているけんすうさんに「デキる若手」と「ダメな若手」の違いを伺いました!
〈聞き手:ライター・小野瀬わかな〉
【けんすう】1981年生まれ。19才で学生コミュニティ「ミルクカフェ」を立ち上げ、大学在学中にネット企業の社長に就任。2006年、リクルートに入社。2009年に退職し、nanapi代表取締役に就任
一緒に働きたくなる「優秀な若手」の共通点1「アウトプットが早い」
小野瀬
今日は、けんすうさんに「デキる若手」になって活躍する方法をお伺いしたいと思います。
けんすうさんがこれまで出会った若手のなかで、「この人は優秀だ!」って思った人はいますか?
けんすうさん
最近だと、「漫画ビレッジ」(さまざまなサービスに散らばっている無料漫画を一覧でき、ブラウザから読めるサイト)ってサービスを一緒に作ったフリーエンジニアの遠山晃さんですね。
彼に「合法な漫画村(人気漫画を無料で掲載していた海賊版サイト。物議を醸し、2018年4月に閉鎖された)があるといいと思うんだよね」って話をしたら、3日後にはもうリリースしてくれたんです。「めっちゃ分かってんな~」って感動しました。
小野瀬
3日後! 早い!
けんすうさん
そうですよね。僕が優秀だと思う人の条件のひとつは「アウトプットをはやく出す」人なんです。
普通の会社だったら、構想から2カ月経ってもまだリリースされていないとか普通にあるじゃないですか。でも「ここのページどうしたらいいですか?」みたいな各論って、数字を見ながら修正していけばいい部分なので超どうでもいいんですよね。
実際、漫画ビレッジはリリースから数カ月で1000万PVを超えました。すぐにアウトプットすると、そういういいことが起こるんですよ。
小野瀬
たしかに、アウトプットが早い人は「仕事デキるな~」って印象を受けますよね。
たとえば、若手ビジネスマンが会社でマネできるようなことってありますか?
けんすうさん
それでいうと、僕は新卒のころ、議事録を超書いてたんです。
それも、会議が終わってみんなが自分の席に戻るまでに送るのを目指してました。すごい速さで書くんです。
席に戻った瞬間に議事録ができあがっていると、多少内容が荒くても褒めてもらえるんですよ。
小野瀬
さすがけんすうさん、新卒のころから仕事がデキたんですね!
けんすうさん
いやあ…というよりも、アウトプットに求められるクオリティって、時間が経てば経つほど上がるんですよ。
それがわかってたから、一番ラクなところを狙っていただけです(笑)。
ズルイのかピュアなのかわからないけんすうさん
「優秀な若手」の共通点2「上司を出世させる」
けんすうさん
ほかには、会社勤めなら「上司を出世させる部下が一番優秀だ」っていう説があります。
上司が出世すれば、自分の評価を上げてくれた部下のことも一緒に出世させたくなる。引き上げてもらう状態を作るんです。
小野瀬
上司を出世させるために、やっぱり、自分(若手)も成果は出さないといけないわけですよね?
けんすうさん
そうですね。でも、ほかにも「上司の評判をめちゃくちゃ良くする」という方法もあると思います。
たとえば、役員と仲良くなって「部下の僕から見て、彼(上司)はめちゃくちゃすごいと思うんですよね」って言いつづけたら、上司は出世しますよね。
小野瀬
第三者から言われたほうが説得力ありますもんね。けんすうさんも、上司を出世させるために頑張っていたのでしょうか?
けんすうさん
僕はもともと、ごまをするタイプですから(笑)。
でも単なるごますりじゃなく、会社でどう働くのか?という指針として、「会社に貢献せよ」って言われるより、「自分の上司を出世させよう」と働くほうが目標としてフォーカスしやすいじゃないですか。組織のなかで働くなら、覚えておくといい方法かなと。
小野瀬
たしかに、自己中心的でもないしサイズが大きすぎもしない、ちょうどいいバランスかも…
けんすうさん
『新R25』さんでいうと、親会社社長の藤田(晋)さんとかに「渡辺編集長、すごいヤバイっすよ」って言っておいたら、編集長がもっと出世するときに「僕の出世は編集部の天野さんのおかげだから、次の編集長は天野さんにやらせるよ~」みたいな話になるじゃないですか(笑)。
黙って話を聞いていた編集担当・天野
なりますね! 実行しよう(笑)。
「ダメな若手」はプライドを守るために、嘘をついたり隠し事をしたりする
小野瀬
逆に、けんすうさんが「こいつダメだ」って思う若手はどんな人ですか?
けんすうさん
身内に隠し事をする人ですね。
昨日も若い人から「投資してください」って話がきて。売上とかの数字の推移がグラフにしてあったんですけど、右肩上がりの、数字が一番良かった月までしか書かれていないグラフになってたんですよ。
小野瀬
ずるい!
けんすうさん
悪かったところを隠されてしまうと、僕としてはアドバイスのしようもないし、対策もできないので、そういう人には投資できませんってお話をしました。
投資して一緒に事業をやる仲間のはずなのに、そこで良い面だけしか見せてもらえなかったらやばいじゃないですか。みんなで解決するために仲間になるんじゃないの?っていう。
小野瀬
そういう「この人何か隠してるな」って、見抜けるものなんでしょうか?
けんすうさん
僕も起業した経験があるので、ごまかしたくなる数字とかは大体わかりますし、嘘をつく側の気持ちも分かります(笑)。
たとえば、やたら「率」とか、「先月から何%伸びたか」だけを言う人は危ないですね。100万人から105万人に増えた5%と、100人から105人に増えた5%って全然違う。増えた分の実数を見たらしょぼいんだろうなって思います。
戦略的にやっているのならまだありだと思うんですけど、身内や上司にまでそれをやるのは危ないですよね。
けんすうさんはどんな人に投資してるの? 応援したくなる若手の条件
小野瀬
けんすうさんは投資家としても活動されていますが、「投資したい」と思う人の基準を教えてください。
けんすうさん
アップデート速度が速い人はいいですよね。
僕、明石ガクトさんが代表をやっているワンメディア(動画コンテンツ制作、メディア運営をおこなう企業)に投資しているんですけど。彼、ものすごいすぐに自分の意見をひっくり返すんですよ(笑)。
毎回「この事業プラン、ヤバイです!」って持ってくるんですけど、僕がちょっとでもツッコむと「あっ、そうですね~!」って言って、次の日からまったく逆のことを言いだすんです(笑)。
小野瀬
めちゃくちゃ考え抜いた、とっておきのプランなのに?
けんすうさん
そう。それが一瞬でひっくり返る(笑)。
でも、その姿勢があるから、彼の事業は今とても伸びているんだと思います。アドバイスを鵜呑みにするというよりは、自分が考えてきたものとアドバイスを融合させてアップデートしている感じ。
アップデート速度が速い人は成長速度も速いので、とてもいいなと思いますね。
ちなみに、けんすうさんが「投資したくなる事業」の条件は…?
小野瀬
ちなみに、「事業」で見たときに、“投資したくなる事業の基準”はありますか?
けんすうさん
「NobodySurf」っていう、サーフィンの動画をひたすら集めたアプリを作っているサービスに投資しているんですけど。
最初は一人でやってて、ひたすらサーファーに連絡しては動画を集めて、Facebookとかインスタにアップしているだけだったんですね。
サーフィン動画を集めたサービスって、事業としては可能性がなさそうじゃないですか。
小野瀬
正直言えばそんなに…(笑)。
けんすうさん
ただ、その人がめちゃくちゃ日焼けしていたんですよ。
「この人すげえサーフィン好きなんだろうな~」って思って、投資しちゃいました。
最近ではグローバルでユーザーが増えて、結構うまくいってるんですよ。たとえ、短期的にはスケールしなそうなことをやっていても、超好きなことをやっている人のほうが、ぐっときますね。
小野瀬
確かにぐっときますけど、伸びるかどうか分からない事業に投資するって、投資家としては勇気がいりそうです…
けんすうさん
でもね、こう言っちゃアレですけど、事業が伸びるかどうかなんて分からないですよ。
ゲーム実況サービスの「Twitch」も以前Amazonが1000億円で買収しましたけど、「ゲーム実況なんて誰も見ないでしょ」って言われてた時代もあったじゃないですか。
どうせうまくいくかどうかわからないなら、「この人、本当にこれが好きでやっているんだな~」って感じられる人に投資したほうが面白いですよね。
小野瀬
じゃあ、「成功するかどうか」は気にしていないんですか? 勝算というか、打率というか。
けんすうさん
打率でいうと、50社くらい投資して1本もあたってないですね(笑)。
小野瀬
え?今まで1本もあたってないんですか?
けんすうさん
ゼロです。もはや投資じゃなくて浪費ですね(笑)。でも、投資すると面白い人と仲良くしてもらえるじゃないですか。
たとえば、「キッチハイク」っていう、“人の家でみんなでご飯を食べよう”っていうアプリサービスに投資しているんですけど、代表の人が1年半かけて47カ国の人のうちでご飯を食べたらしいんですよね。
そんな、「どういうことですか? なんで?」ってなる人と出会えるのが面白くてやっています。
小野瀬
「面白い」でお金を突っ込めるけんすうさん、すごすぎる…
けんすうさんが考える「デキる若手」と「ダメな若手」の違い。キモは「アウトプット」と「アップデート」の早さにあるようです!
取材終了後、早速けんすうさんから教わった「デキる若手」を目指して、同席していた担当編集が帰社する前に原稿を完成させようと思いましたが、無理でした(残念…)。
「デキる若手」とは、仕事で成果を出していることはもちろんのこと、思わず応援したくなってしまうような人間的魅力を持っている人なんだろうなあ…。R25世代のみなさん、一緒にデキる若手目指してがんばりましょう!
〈取材・文=小野瀬わかな(@wakana522)/取材・編集=天野俊吉(@amanop)/写真=中山駿(@nk_shun)〉
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