ビジネスパーソンインタビュー

日本のネット普及の立役者が語る「ネットのない時代〜黎明期の話」に衝撃を受けた

“待ち合わせ”が妙にドラマチック!

日本のネット普及の立役者が語る「ネットのない時代〜黎明期の話」に衝撃を受けた

新R25編集部

Sponsored by ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社

2018/11/21

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突然ですがみなさん、11月21日は「インターネット記念日」って知ってましたか?

いまでは電気や水道と同じくらい我々の生活に欠かせないインターネット。それがもしもなかったら…。想像がつかない分、昔はどんな生活をしていたのかすごく気になりますよね。

今回新R25編集部は、インターネットのない時代から黎明期までを経験してきた大先輩に話を聞く機会をいただけることに!

まさにインターネット普及の立役者になった「中の人」、インターネット接続サービス「So-net(ソネット)」(運営:ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)の磯崎直樹さん中里貴之さんにお話をうかがってきました。

ソニーネットワークコミュニケーションズの磯崎直樹さん(写真左)と中里貴之さん(写真右)

「お父さんが出たらどうしよう…」彼女への電話にも緊張感とドラマがあった

福田

インターネットがないなんてちょっと想像ができないんですけど、おふたりはネットのない時代を経験されているんですよね。

いしかわ

いろいろ不便そうですけど、たとえば待ち合わせとかどうしてたんですか?

中里さん

事前に友だちの家に電話して、時間と場所を伝える感じだったかな。

福田

もし相手が来なかったらどうしてたんですか?

中里さん

友だちの家が近ければ迎えに行くとか、遠くて行けない場合はひたすら待つとか(笑)。

いしかわ

え〜! それじゃ初めての場所なんて気軽に行けないですね。

いきなりの衝撃に笑うしかない

磯崎さん

そうそう。だからいつも同じ場所になりがちでしたね。

いしかわ

自分が遅刻しそうになったらどうしてたんですか?

磯崎さん

どうしようもないから必死で走って行くしかない(笑)。

中里さん

思い出した! 僕、人生最大の大遅刻をしたことがあるんです。

高校生のときに三人一組で参加するクイズ大会があって、その予選に出るのに待ち合わせしてたんだけど、寝坊しちゃったんですよ。2時間くらいの大遅刻で、もう焦ってとにかく走って行ってみたら友だちふたりが待ってて…

福田

すごい! 2時間も待ってたんですね。

中里さん

「なにやってんだ! ずっと待ってたんだぞ! お前のせいで出られないじゃないか!」ってブチギレ状態でしたけどね(笑)。

友情の危機を淡々と語る中里さん

福田

それはキレるでしょう…

中里さん

いまだったら、待ってるほうも携帯電話をガンガンかけまくって起こしてくれるんだろうけど、当時は手段がないからね。

福田

恋人同士なら「ずっと待ってるから!」みたいなロマンスがありますけど、そんな理由で「ずっと待ってる」のはイヤだなぁ(笑)。

いしかわ

中里さんの場合は残念なハプニングだったとして、待ち合わせするのにそんなに緊張感がある時代だったら、遅刻も少なかったんでしょうね。

中里さん

そうですね。反対に僕みたいに友だちにブチギレられるか…

磯崎さん

置いて行かれるかのどっちかだったからね(笑)。

福田

逆に、いつでも連絡できる僕らのほうが時間にルーズになってるかもしれないですね。

いしかわ

ところで、いまだと趣味の人とSNSでつながってオフラインで初めて会う、みたいなことがありますけど、当時はどうやって出会ってたんですか?

中里さん

雑誌の裏に「ペンフレンド募集」とかあったけど、僕の場合は人づての紹介が多かったかな。それで知り合って、付き合う前だと電話するだけでもドキドキですよ。「お父さんが出たらどうしよう」って(笑)。

福田

昭和のドラマでよくあるやつだ(笑)。

就活は就職課で資料を閲覧…「検索」という概念すらなかったあのころ

福田

ところで、就職活動の時期の企業情報はどうやって入手してたんですか?

中里さん

ほとんどの企業はホームページがないし、こちらもネット検索のすべがなかったから、大学の就職課に行ってひたすら資料を見るしかなかったですね。

福田

パソコンを持ってる学生もいなかったんですか?

中里さん

そうですね。大学には共有パソコンが限られた部屋に数台しかない、みたいな感じでした。

磯崎さん

学校にもよるんでしょうけど、当時は「ネットを引くのが危ない」みたいな風潮があったんですよ。

だから、パソコンはもっぱら文書作成用でした。僕の場合、文書作成といえばパソコンよりワープロ世代だけど。

いしかわ

ワープロ…

磯崎さん

でも当時のワープロのディスプレイって2行くらいしか表示されないから、出力してからでないと全体の見直しができなくって(笑)。

福田

レポートとか卒論とか大変そうだ…

磯崎さん

だから手書きのほうがラクだったんですよ。

磯崎さんが学生のころは「手書き」が最速

中里さん

ふたりはもう小中学校のころからパソコンはあったんですよね?

福田

はい。パソコンがたくさんある教室があって、情報の授業ではそこで表計算や文書作成ソフトを使っていました。

中里さん

僕らとは随分差があるなぁ(笑)。大学のときはどうだったんですか?

福田

入学と同時に購買部から案内がきて、ほぼ強制的に買わされました。

いしかわ

講義ノートはパソコンでとったりしてました。

福田

構内はWi-Fi飛んでたんで、パソコンでもスマホでもネットは使えました。

いしかわ

私たちの場合だと、講義中に先生がわからない言葉を言うとその場で検索してたんですけど、ネットがない時代だとどうしてたんですか?

中里さん

講義が終わってから直接聞きに行くしかなかったです。そもそも「検索」なんて概念なかったですからね。

会社間のネット環境やリテラシーの差が仕事のストレスを生んでいた

福田

ここからは、おふたりが社会人になったときのお話をお聞きします。

福田

インターネットサービスプロバイダーの会社であれば、20年以上前であってもほかの会社よりネット環境は整っていたと思うんですが、当時社外の取引先と仕事をするうえで不便に感じることはありましたか?

中里さん

電話やファックスなど、ネット以外の手段はあったのでそこまで不便は感じなかったけど、デジタルデータのやり取りには苦労しましたね。

福田

どのような苦労ですか?

中里さん

急ぎだからこちらからファイルを添付してメール送信できても、受信する側のネット環境が同レベルでないと、受け取るのに時間がかかるとか容量オーバーで受信できないとか。

だから当時はビジネスマナーのひとつとして「添付ファイルの容量は1MB以下」なんてものもありました。

いしかわ

1MB以下!? そんなんじゃ動画送れないですね(笑)。

ギャップがすごすぎて笑ってばかりのいしかわ

中里さん

あと、相手側のITリテラシーが低いと「圧縮データをお送りしたので解凍してご確認ください」とか言ってもわかんないんですよ。だから圧縮、解凍から説明しないといけなくて(笑)。

福田

しんどい…。いまではストレージとかクラウドですぐ共有できるのに。

中里さん

それ以外では、ITリテラシーというよりパソコン操作すらできない上司もいて、そういう人は口述筆記みたいに自分が話した内容を部下にパソコンで打たせてましたね。

正直、その仕事はゼッタイにやりたくない

つなげばつなぐほど課金される…時間との戦いだった「ダイヤルアップ接続」

福田

ここからはインターネット接続の“事業者”として、ネット黎明期のころのお話をしていただけないでしょいうか?

中里さん

初期のころは、「ダイヤルアップ」という接続方法だったんですね。

中里さん

ダイヤルアップって電話回線を使うから、その間は電話が使えないうえに、ネットに接続すればするほど通話と同じようにお金がどんどんかかる

福田

電話回線でネットに接続?

中里さん

いまではネット接続のために光ファイバーが整備されていますが、光ファイバーがなかった時代は電話回線を使うしかなかったんですよ。

磯崎さん

そうそう。で、ネット接続時間が長いとどんどん課金されるから、事前に調べものを絞ってから短時間でネットにつなぐ、みたいなやり方してましたねぇ。時間との勝負(笑)。

福田

たとえば10分接続したらどれくらいの費用がかかってたんですか?

磯崎さん

もう20年以上前なので正確には言えないですが、電話料金以外にネット接続料金もかかるから「電話の請求書を見て親に詰められるくらい」と言えばわかりやすいかな(笑)。

福田

うわー。ネットを使うのに緊張感のあった時代なんですね。

中里さん

ネットサーフィンなんてしようものならとんでもない金額ですよ(笑)。

しかもダイヤルアップだと、画像の読み込みにものすごく時間がかかるから、ホームページも画像がほとんどないテキストだけのものが多かったですね。

ADSLや光ファイバーの登場で一般家庭にも「安くて速い」ネット環境が浸透

中里さん

ダイヤルアップの次は、「ISDN(アイエスディーエヌ、Integrated Services Digital Network)」、そして「ADSL(エーディーエスエル、Asymmetric Digital Subscriber Line)」という接続方法が登場します。

これだと一部回線がデジタル化されているので、画像表示スピードが速くなるんです。

福田

ISDNやADSLだと電話回線は使わないんですか?

中里さん

電話回線は使いますが「モデム」という変換機器を使うことで、ダイヤルアップのようにネット接続中は電話が使えないってことはなくなりました。

磯崎さん

特にADSLの登場で、家庭でのインターネットの普及は一気に加速した感はありますよね。一部サービスではモデムを無料配布するなど、街中を人海戦術でプロモーションしていましたし。

中里さん

それによって「インターネットって何?」みたいなママさん層にも浸透した感じでしたね。そこからネットが「常時接続でも速くて安く」使えるようになった。

福田

ネットはいつでもどこでもつながってなんて当たり前だと思っていたんですが、そんな変遷があったとは…。

ちなみにSo-netはどの時点でインターネット接続サービスに参入したんですか?

磯崎さん

今年で22年なので1996年。ADSLサービスを開始したのは2001年ですね。

福田

ボクらが小学生のときか…

中里さん

その翌年(2002年)にはADSLより圧倒的に速い光ファイバー接続を開始して、So-netもプロバイダー、つまりISP(Internet Service Provider)として知名度を上げたんですよ。

無機質なメールにエンタメ性をプラスした「ポストペット」がヒット

いしかわ

20年以上もつづくSo-netのサービスで「これはヒットしたな」というものはありますか?

中里さん

ポストペット」ってわかりますか?

いしかわ

あ〜モモ! 友だちの家がSo-netを使ってて、ピンクのクマちゃんキャラがいたの覚えてます!

福田といしかわが持っているのが「PostPet(ポストペット)」のメインキャラクター「モモ」

中里さん

90年代、ネットの進化とともにメールが普及するようになったんですけど、メールって文書を送受信し合うだけの無味乾燥な行為じゃないですか。それにエンターテインメント性を加えたのが「ポストペット」。

メインキャラクターのモモの機嫌が悪いとメールが送信できないとか、そんな遊び心を付加したサービスです。

磯崎さん

メールを届けに行った先の家が気に入ったら、しばらく帰ってこないとかね(笑)。社内でもメールのやり取りはポストペットでしたよ。

福田

それじゃ仕事にならないじゃないですか(笑)。

磯崎さん

その場合は待つか、モモ以外のキャラクターを使ってメール送信するとかですね。

福田

めちゃくちゃ平和な時代ですね。

いしかわ

ただ、いまは仕事でもプライベートでもメールを使う機会は減って、メッセンジャーとかチャットアプリでのコミュニケーションが主流になっていますね。

磯崎さん

そういう時代なんですね…。コミュニケーションの手段も電話、ファックス、ポケットベル、PCメール、携帯メール、メッセンジャーと変わってきたんだなぁ。

中里さん

その分、固定電話やファックスのようにメールさえも使われなくなる時代がくるなんて、思ってもみなかったですよ。

僕らですら社内でのちょっとしたやり取りは、メールよりもメッセンジャーを使うことが増えてきましたからね。

福田

今後はどう変わっていくんでしょうか?

磯崎さん

インターネットはコミュニケーション、検索、情報発信の基盤としてではなく、いろんな家電とつながってますます便利な世の中になるでしょうね。

中里さん

そこにAI技術が加われば、住人の行動を学んで、帰る時間には空調を最適温度でつけてくれたり、お風呂を入れてくれたり、好きな番組のテレビをつけてくれたり…。インターネットの可能性は限りないですね。

磯崎さん

僕らも単にパソコンやスマホをインターネットに接続させるだけでなく、生活全般がもっとつながって、もっと便利になるサービスを提供していきたいですね。

インターネットがない世界は予想以上に大変で、いまのR25世代ではとても暮らしていけそうにないことを実感したインタビュー。

だからこそ、インターネットを生活に不可欠なレベルにまで普及させてくれたSo-netの大先輩には頭が上がらない…。安心して快適なインターネット生活が送れることに改めて感謝しなければ!

〈取材・文=新R25編集部/写真=オカダマコト〉

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