ビジネスパーソンインタビュー

ずっと“王道イケメン俳優”でいいのか? 三浦春馬、知られざる20代の苦悩と転機

「ずっと悪役をやってみたいと思っていた」

ずっと“王道イケメン俳優”でいいのか? 三浦春馬、知られざる20代の苦悩と転機

新R25編集部

2018/08/23

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記事提供:20's type

キャリアを積めば積むほど、本当にこのままこの道を進んでいけばいいのか、疑問や迷いは生まれてくるもの。

7歳で芸能界デビューし、子役から若手演技派の筆頭株として着実な成長を遂げてきた三浦春馬さんにも、そんな悩みの季節があったと言う。

8月17日公開の映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』で真選組に混乱を招く伊東鴨太郎役を演じる三浦さん。「ずっと悪役をやってみたかった」と嬉しそうに語るその言葉には、模索のトンネルを抜けた人だけが持つ晴れやかさがあった。

悩み多き20’sを三浦さんはどんなふうに歩いてきたのか、話を聞いた。

【三浦春馬(みうら・はるま)】97年、NHKの連続テレビ小説『あぐり』で子役としてデビュー。2006年、『キャッチ ア ウェーブ』で映画初主演。同年、ドラマ『14才の母』でヒロインの恋人役を演じ、注目を集める。07年、映画『恋空』で第31回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞。以降、映画『君に届け』『進撃の巨人』、ドラマ『ブラッディ・マンデイ』『サムライ・ハイスクール』『大切なことはすべて君が教えてくれた』『僕のいた時間』『オトナ高校』など数々の作品に主演。17年、舞台『キンキーブーツ』で、第24回読売演劇大賞優秀男優賞と杉村春子賞を受賞した

念願の悪役。だからこそ見せたかった冷酷な眼差しに秘めた伊東鴨太郎の葛藤

2017年実写邦画ナンバーワンの大ヒットとなった『銀魂』から1年。待望の続編となる本作で、新たに『銀魂』ファミリーに加わることとなった三浦さん。

演じる伊東鴨太郎は武装警察・真選組の参謀。局長・近藤勲(中村勘九郎)の信頼を勝ち得て、入隊からわずか1年で隊の中心人物にまで上りつめた文武両道の策士だ。

副局長の土方十四郎(柳楽優弥)とは犬猿の仲。理知的な瞳に隠した伊東鴨太郎の策略が、真選組に重大な危機をもたらす、まさに今回のキーパーソンとなる役どころだ。

「このお話をいただいたときはすごく嬉しかったです。っと悪役をやってみたいと思っていたので」

役者の血を騒がせた伊東鴨太郎という役。だからこそ、その人物造形については徹底的に考え抜いた。

「今回、鴨太郎を演じる上で最初に考えたのは、内面の表現。アニメの鴨太郎は最後まで全く表情を変えないんですね。では、それを実写で演じるとなったときに、アニメのように冷酷さ一辺倒でいくのか、それとも微妙な表情の変化から鴨太郎の心の動きを想像できるような演技がいいのか。そこをまず衣裳合わせの段階で(福田雄一)監督と相談しました」

三浦さんの心の中は決まっていた。一見すると冷酷無比に見える鴨太郎。だが内面には、きっと表には出さない複雑な心理があるはず。その揺れ動きを表現することで、伊東鴨太郎という人間を、ステレオタイプの「悪役」ではない、魅力的な「悪役」にしたかった

「例えば、劇中で戸塚(純貴)くん演じる山崎退が鴨太郎の正体に気づいて、土方のもとへ走っていくシーン。それを見ている鴨太郎は一体何を考えているんだろう、とか。自分にはない仲間の絆が眩しく煌びやかに見えているのか。それとも憎らしく見えているのか。一瞬の瞬きや眉間に皺を寄せるといった表情の変化で、観ている人があのときの鴨太郎はこう考えていたんじゃないかと想像できるような、そういう映画ならではの人間味を見せたいというふうに監督には伝えました」

そんな三浦さんの熱意に、福田監督も真摯に応えた。そこからは二人三脚での芝居づくり。シーンごとに細かく意見交換をしながら、伊東鴨太郎の繊細な機微を芝居で表現した。

「どのシーンもしっかり監督と意思疎通を図りながら撮っていけた実感がある。監督とちゃんと意見をマッチングさせながら、映画ならではの鴨太郎がつくれたんじゃないかなと思います」

「ずっと同じ武器で戦い続けていいのか?」葛藤に揺れた20代前半

三浦さんがそれだけ「悪役」に想いを込めたのには、理由がある。28歳にして芸歴22年目、これまで数々の作品で印象的な演技を残してきた。だが、光あるところには必ず影が生まれる。華々しいキャリアの裏側で、三浦さんは人知れず悩みを抱えていた

「10代から20代前半の頃かな。自分が演じるキャラクターの幅がない気がして、もどかしく思う時期はありました

誰もが認める端正な顔立ち。三浦さんは、正統派のビジュアルと清潔感のある佇まいから、いわゆる王道的な役どころを振られることが多かった。

「もちろんいただいた役はどれも精一杯演じてきたつもりです。だけど、その一方でずっと同じ武器で戦い続けているような感じがして。今の自分にはない要素をもっと打ち出していきたいって、ずっともがいていましたね」

これだけは負けないという武器があることは、強い。だがそれと同時に、自分の得意ゾーンの中で安住し、守備範囲が広がらない不安や怖さというのもまた20’sの多くがぶつかる壁だろう。その壁を、三浦さんはどう乗り越えたのか。

大きかったのは、『キンキーブーツ』との出会いですね

そう三浦さんは振り返る。『キンキーブーツ』とは、13年にトニー賞で6部門を受賞した傑作ブロードウェイミュージカル。その日本版が初演されたのは2016年のこと。

そこで三浦さんはドラァグクイーンのローラ役を務めた。スパンコールの散りばめられた真っ赤なドレスとロングブーツに、ド派手なメイク。

インパクト大のビジュアルもさることながら、突き抜けた演技と堂々たる歌唱で、ミュージカルファンからも喝采の嵐。三浦さんはこの作品で優れた演劇人に贈られる『第24回読売演劇大賞 杉村春子賞』を受賞した。

「ずっと演劇やミュージカルは大好きでした。中でもローラは、2013年にブロードウェイで『キンキーブーツ』を観たときに衝撃を受けて、絶対にこの役はやりたいと自分から手を挙げて掴んだ役。あのローラを演じ切ったことで、自分も舞台で挑戦できるんだということを知ったし、全然馴染みのない役を演じる面白さを実感しました

固定化されたイメージを脱却し、新しい武器を身に付けた。演じる楽しさを再確認した。

「そんな時期にいただいたのが、この伊東鴨太郎という役でした。ここまでダークサイドに振り切った役を演じる機会はなかったので、また新しい自分を見せられるチャンス。何よりこんなふうにチャンスをいただけている現状にすごく感謝しています。だからこれからもどんどんいろんな役をやっていきたいですね。悪役でも、正統派の役でも」

そう瞳を輝かせた三浦さんは、相手の質問に対して、すごく真摯だ。フィーリングで適当に答えたりはしない。

時に宙を見つめたり、腕を組んだり、できるだけ自分の気持ちに正確な言葉を探し当てようとするように、じっくりと時間をかける。そんな姿に、三浦さんのプロとしての姿勢が透けて見える。

でも一つだけ、瞬時に即答した質問がある。それが、最後の質問。「これからも俳優を続けていきますか」という問いだけには、間髪入れずまっすぐに答えた。

それは間違いないです。俳優を一生続けていくことは、間違いない

それは、見ているこちらまで温かい気持ちになるような清々しい表情だった。迷いながらも、ひたむきに歩いてきた俳優の道。30歳まで残り2年、三浦さんの20’sはきっと今まで以上に多彩な色で紡がれていくのだろう。

20’sは模索と発見の時期。思い描く理想に手が届かず、停滞や焦りを感じるのは必然のこと。だが、人には誰しも必ず転機が訪れる。そのときにどれだけ本気でぶつかれるか。例えやったことがないことでも、恐れず挑戦した人だけが、自分の可能性を広げることができるのだ。

〈取材・文=横川良明/撮影=竹井俊晴〉

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