

「ユーザーが喜ぶこと」だけを突き詰める
「競合と同じことをしてもいい」後発参入ばかりのアマゾンのビジネス、成功の秘訣
新R25編集部
2000年にアマゾンジャパンが立ち上がって以降、すっかり僕らの生活の一部になっている「Amazon」。
今年4月、そんなアマゾンの“組織としての強さ”にフォーカスした書籍『アマゾンのすごいルール』が上梓された。競合ひしめく市場で、アマゾンはなぜここまで大きな成功を収めることができたのか?
同書の著者であり、アマゾンジャパンの立ち上げメンバーである佐藤将之さんに話を聞いてきました!
〈※聞き手:天野俊吉(新R25編集部)〉
「競合のことは考えない」アマゾンのサービスは実は“後発”ばかり!

天野
今日は、アマゾンのビジネスについて教えてください。まずは、アマゾンにとって、一番の競合はどこになるんでしょうか?

佐藤さん
あ、アマゾンは競合について考えることがないんですよ。

天野
どういうことですか?

佐藤さん
多くの企業が持つ「打倒○○」という考え方がないんです。あの会社が売上1000億あるからそれに追いつこう、という発想はしません。
「どういうサービスをしたら顧客が喜ぶか」だけを突き詰める会社です。

天野
しかし、「競合を研究して、ブルーオーシャンを探す」という発想はないんですか? ビジネスの基本だと思うんですが…

佐藤さん
ないです。なんだったら、競合と同じことをしてもいいと思ってます。
大事なのは「顧客が何を望んでいるか」でしょう。本当に望まれていることなら、周りの会社がどうであれ、同じことをやってもいいんです。
逆に「顧客が全然望んでないニッチなこと」なんて、いくらやってもしょうがないと思いませんか?

天野
確かにそうですね…。でも、ほかの会社と差別化しないといけないと思ってしまうんですが…

佐藤さん
それ以上のサービスを提供すればいいんだと思います。たとえば、ネット通販で配送に3日かかっている企業が多いなら、それを1日にするとか。そこを徹底的にやればいいという発想です。
ビジネスの世界って、「レッドオーシャンだと思っていた市場に新興の会社がポコッと入ってきて、気付いたらシェアとってました」みたいなことが結構あるんですよ。似たようなサービスをやっている企業があるからって、「本当にどこがレッドオーシャンなのか?」って、意外と分からないもんです。
実際、アマゾンのサービスだって、後発のものがほとんど。「ネット書店」は、4番手か5番手…というレベルですよ。大手書店がバンバン広告打っているなかに入っていったわけですから。

天野
たしかに! 本当ですね…

佐藤さん
ほかのカテゴリでもそうです。動画配信、音楽配信も、Appleなんて何年も前からやってたじゃないですか。
そういう意味では、レッドオーシャンにばかりビジネスを仕掛けてますね。
ユーザーの「小さなメリット」を積み重ねていくことがビジネスの強みになる

天野
それでよくここまでうまくいってますね…

佐藤さん
それでも成功している理由は、イノベーションやテクノロジーでお客さんのメリットを作り出して、ほかの企業よりも選ばれている、ということに尽きます。

天野
どのようなイノベーションを仕掛けたんでしょうか?

佐藤さん
儲けたお金を投じてCDやDVDの値段を下げたり、商品点数を圧倒的に増やして「どんな商品でもある!」と思ってもらう取り組みをしたり。
そういう細かいメリットや利便性の積み重ねが、ビジネスとして大きな強みになるんです。

天野
なるほど~。確かにどれもアマゾンの強みだな…
業界の行く末を憂う前に、まずは自分の仕事に最大限コミットすべき

天野
「競合を意識しない」というのは、資本や技術にすぐれたアマゾンだからできる面もあるのかなと思ってしまいます。
不利な状況でなかなか結果が出ないときは、環境を変えるべきだと思いますか?

佐藤さん
私はそれでも「まずは自分の仕事にコミットする」ことが何より重要だと思います。
たとえば、出版社や書店に勤めている人でも、まずは顧客がハッピーになることにちゃんとコミットする。そこでアマゾンを横目でチラチラ見たり、業界の行く末を案じたりしていても意味がない。

天野
“泥舟から早めに逃げ出したい”みたいな発想はよくないということですかね?

佐藤さん
先ほども言ったように、どこがブルーオーシャンか、どんなビジネスモデルがすぐれているのか、って答えがないものですから。どうしても「もう時代が変わっている」と感じたら、その時点から考えても遅くないと思いますよ。

天野
僕らは目の前のことにコミットしたほうがいいと。

佐藤さん
我々も立ち上げ当初は、出版社をはじめいろんな会社にいろんなことを言われていたのですが(笑)、「結果を出すしかないだろうな」と思って仕事をしてました。
業界のためではなく、顧客のために仕事をしようという考え方がアマゾンの“一番太い背骨”なので、それを信じて突っ走るだけでしたね。
…「競合を気にしない」というアマゾンのビジネスモデルは、型破りでありながら王道ともいえる。次回は、アマゾンが掲げる「リーダー論」についてお話を伺います!
〈取材・文=天野俊吉(新R25編集部)〉

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