ビジネスパーソンインタビュー
「副業禁止って、誰が得してるのかなって」
「許可より謝罪」の精神で。副業はジャズミュージシャン、サイボウズ社員の副業観
新R25編集部
編集部・福田
どうも。新R25編集部の福田です。
以前、「好景気というけど、結局いつ給料上がるの!?」って経済学者に聞いたら、「我々ビジネスマンには好景気の影響が来ないから、副業に賭けるしかない」という結論でした。
政府も副業を解禁する動きをしているし、これからは副業が当たり前になる時代が来ると思うんです。どう思いますか? 渡辺編集長。
編集長・渡辺
そうだね。「副業」っていうテーマは新R25世代にも身近なものになると思う。
でも、ただお金を稼ぐために副業をするってのも息苦しいよね。
編集部・福田
生活するために仕事をしているのに、その給与だけじゃ生きていけない時代が来ると思うと吐きそうです。
編集長・渡辺
相変わらずメンタル弱いな。
編集部・福田
そこで今回は、副業を“楽しんでいる人”に会って話を聞いてきました。
サイボウズの社員の方なのですが、昼はプログラマーとして働き、夜はジャズバンド活動をしている人なんですよ。
編集長・渡辺
ミュージシャン!? 「副業といえばサイボウズ」みたいな雰囲気もあるけど、会社のことも気になるね。
編集部・福田
そうですね。その点も併せて、話を聞いてみました!
【杉山祐一(すぎやま・ゆういち)】2015年新卒入社。大企業向けグループウェア、Garoonのプログラマー兼エンジニアによるエンジニア採用チームに所属。2017年にジプシージャズバンド「Mash弦楽団」を結成し、ベースを担当。『Django Camp Award 2017』受賞。ファーストアルバム「キノコ狩り ~ MASH Django Sessions ~」をiTunes、Google Play Music、LINE musicなどで配信中。
昼はプログラマーで夜は演奏家。副業をやるって疲れないの?
編集部・福田
今日はよろしくお願いいします。
杉山さん
お願いします。
編集部・福田
さっそくですが、杉山さんは副業としてジャズバンドを組んで音楽活動をされてすよね? いつから始めているんですか?
杉山さん
私は学生時代からベースを弾いていて、高専(高等専門学校)では吹奏楽部、大学ではオーケストラに入っていたんです。
2015年に新卒でサイボウズに入ってからは、ジャズのセッション(楽器プレイヤーが集まり即興で演奏する)ができるところが都内にあったので、そこに参加してました。
編集部・福田
楽器を持ち込むだけでそこにいる人と演奏できるって、めちゃくちゃオシャレですね。
杉山さん
都内にはセッションができるジャズバーがいろんなところにあるので、それらを転々としていました。
いろんなところで演奏していると、よく会う人が出てくるんです。そういう人たちから「今度ライブやらない?」と声をかけていただけるようになり、さらには「バンド組まない?」って誘われるようになりました。
編集部・福田
そんな話を『BLUE GIANT』で読んだことあります! それから副業に?
杉山さん
バンドを組むまでは、趣味活動でした。バンド活動を始めると、ライブに呼ばれるようになり、少しずつですがお金が入ってくるようになって。
さらにストリートライブで収入が増えてまとまったお金が稼げるようになってきたので、これは副業になるのかなって思ったのが始まりですね。
杉山さん(一番左)が在籍しているジャズバンド「MASH弦楽団」
編集部・福田
もともと副業を始めようとは思ってなかったんですね。収入ってぶっちゃけいくらくらいですか?
杉山さん
月数万円ぐらいですね。
編集部・福田
本業もやってて、さらに数万円入るのってめちゃくちゃうらやましい。ストリートライブは平日もやるんですか?
杉山さん
そうですね。仕事終わりにお茶の水や下北沢、高円寺でバンドメンバーと合流して、演奏を始めます。1回だいたい3時間前後ですかね。
編集部・福田
昼は会社で働いて、夜もバンド活動って、正直疲れないですか?
杉山さん
どうでしょう(笑)。本業ではデスクワークなので主に頭を使い、副業の演奏活動では体を使うので疲れ方が違いますね。
〜新R25編集部にて〜
編集部・福田
…って感じだったんですけど、本業と副業って線引きが難しいと思うんですよね。
編集長・渡辺
線引き?
編集部・福田
お金が入ることなら、どちらも仕事には変わりないですよね。そのバランス感が気になります。
編集長・渡辺
たしかにね。個人的には、本業に差し障りないなら自由にやればいいと思うけど。
編集部・福田
なんか浮気相手がいても、どっしり構えている本命の彼女みたいですね。
編集長・渡辺
全然違うだろ。
編集長・渡辺
ちなみに、杉山さんのツイートでこんなのがあるけど、これ面白いね。会社で稼ぐお金と副業で稼ぐお金ってどう違うのかな?
編集部・福田
それについても聞いてきました!
ストリートライブは成果報酬。自分の演奏にお金を払ってくれることに感動がある
編集部・福田
杉山さんのツイッターで、仕事で食べるご飯よりも、ライブで稼いだご飯のほうがおいしいっていう発言がありましたが…
杉山さん
そんなところまで見てるんですか!?
編集部・福田
ちょっと気になって調べちゃいました。この発言の真意が知りたいです。
杉山さん
だって、ストリートライブってふつう通りすぎるじゃないですか。
それでも何人かは立ち止まって、演奏を聴いてくれる。それだけでもうれしいのに、さらに「よかった」って声をかけてくれて、お金を出してくれる人もいる。それは、演奏者としては限りない喜びです。
編集部・福田
そのお金で食べるご飯のほうが、会社の給与で食べるご飯よりもおいしく感じるってことなんですね。
杉山さん
そうかもしれません。本業だと自分の頑張りって、目に見えて評価されるのは年に1回の査定くらいですが、副業の場合は自分たちの頑張りが毎回お金になって返ってくる。
それがうれしいんですよ。
編集部・福田
お話を伺っていると、本業よりも副業のほうがやりがいがありそうですが、音楽に絞ろうって思ったりはしないんですか?
杉山さん
僕は高専で楽器を始めると同時に、情報系の勉強を始めました。ベースを弾くのも、プログラムを書くのもどっちも好きなんですよ。
なので、完全にどちらかで生きていくというイメージはわきませんね。
編集部・福田
本業ではもっとお金を稼ぎたいとか、出世したいとか目標があると思うんですけど、副業にも目標はあるんですか?
杉山さん
僕たちの音楽はふつうのジャズと違って、アンプを使わない「ジプシージャズ」というジャンルなんですけど、そのなかでちゃんとした地位は築きたいと思っています。
編集部・福田
趣味としてではなく、プロのミュージシャンみたいな考え方ですね。
杉山さん
ストリートをやっていると、「プロなんですか? アマチュアなんですか?」って聞かれることがあります。
音楽だけで食べていけるのをプロと定義するならば、アマチュアかもしれません。ですが、自分の音楽を人に聴かせて、それでお金をもらっているので、自分はプロだと思って演奏しています。
〜新R25編集部にて〜
編集長・渡辺
ふむふむ。音楽やってると、プロかアマなのかって思うことはあるよね。俺もアカペラグループで活動してて、たまにお金をもらうことがあるからわかる。
編集部・福田
(一緒にしないでほしい)
杉山さんは今のところ、音楽を本業にすることは考えられないと言っていました。
でもサイボウズの中では、ほかにも副業でカレー屋をやっている人がいて、その人は副業に集中するために週4勤務にしているそうです。そんな働き方って通用するんですね。
編集長・渡辺
そこがサイボウズならではだよね。
1人1人に合わせた働き方というのを提唱していて、どんな理由でそういった勤務調整をしてもいいんだって。
編集部・福田
僕も週休3日制にしたいから週4勤務にしてくださいって言ったら通りますかね?
休みの日はただただYouTubeを見ます。
編集長・渡辺
うん、OK。週休7日でいいよ。
編集部・福田
何でもないです。
でも週5日勤務が当たり前の世の中で、そういう常識を壊していけるってすごい会社ですよね。社長の青野さん自身も3回の育児休暇を取得してたり。
そんなサイボウズだから副業を続けられるのか、というところも聞いてみました。
サイボウズには「明日ライブなんで休みます」と気軽に言える環境がある
編集部・福田
ところで、平日の夜にストリートライブをやるときって楽器ってどうしているんですか? ベースってかなり大きい楽器だと思うんですけど。
杉山さん
演奏がある日は、オフィスの隅に置かせてもらっています。2mくらいあるから目立ちますね。
杉山さんとベース。確かに大人1人分以上の大きさ
編集部・福田
高校の時にギター背負って学校くるバンドマンの友達いたなあ。ってことは会社の人には、副業のことをオープンにしているんですね。
杉山さん
特に隠すことでもないですしね。そもそもサイボウズに入ったから副業を意識したってのもあります。
編集部・福田
というと?
杉山さん
サイボウズは、副業をデメリットだととらえてないですね。なので自分も副業っていう考えをしっかり持って、音楽活動に取り組もうと思ったんです。
急にライブが入っても有給を使って休めるし、そのことで社内の人から白い目で見られることもないですから。
編集部・福田
「明日ライブなんで休みます」って気兼ねなく言える環境ってすばらしいですね。
杉山さん
社内の人も面白がってくれていますよ。1月にはサイボウズの映画部が主催する「日本橋映画祭 in サイボウズBar」で演奏もしました。
編集部・福田
やっぱり、サイボウズだからここまで副業を楽しめているのでしょうか?
杉山さん
私は音楽が好きなので、サイボウズじゃなくてもきっとジャズは始めてて、バンドを組んで演奏していたと思います。
ただ、副業といえるほど打ち込めているのはサイボウズだからかもしれませんね。
編集部・福田
まだ副業を禁止している企業も多いと思います。そのあたりについてはどう思いますか?
杉山さん
私の知り合いにピアノがとても上手な人がいるんですけど、彼の勤め先は副業禁止で。だからお金をもらうような演奏、つまりライブができないんです。
彼の演奏を聴きたい人がいるのに、届けられない。それって結局、誰も得してないなって思います。
「許可を取るな、謝罪せよ」の精神でやってみればいい
編集部・福田
確かにそうですよね…。ちなみに、「副業が禁止されているわけではないけど、なかなか踏み出せない」という人たちに伝えたいことはありますか?
杉山さん
スリーエムの社史に、「Don’t ask for permission, begfor forgiveness」という言葉があります。
「悩むよりも先に始めてしまえ」という考えですが、僕はこの言葉が好きで。とりあえずやってみて、それから報告するくらいでもいいんじゃないですかね。
編集部・福田
なるほど。確かにそういう気持ちでいるとフットワーク軽く動ける気がします。
今日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
〜新R25編集部にて〜
編集長・渡辺
サイボウズは「複業採用」みたいなことをやっていたり、まさに日本の新しい働き方をリードしている会社だよね。素晴らしいなあ。
編集部・福田
杉山さんは趣味から副業に進化したイメージですけど、「副業をしよう」と思って始めて、それを楽しんでいる人もいるんでしょうか?
編集長・渡辺
もっとほかに副業をやっているR25世代に話を聞いてみればいいよ。
編集部・福田
そうですね! 新R25では、これからも“楽しく副業している人”に話を聞いていこうと思います。それでは次の人を探してきますね!
Mash弦楽団
Mash弦楽団 - 「いいね!」311件 · 76人が話題にしています - We love gypsy swing music. violi
杉山さんが所属している『Mash弦楽団』のホームページはこちら
〈取材・文・撮影=福田啄也(新R25編集部)〉
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