ビジネスパーソンインタビュー
「カッコいいSF」の草分け的存在!
AKIRAやメタルギアにも影響を!続編公開で話題『ブレードランナー』の偉大さを解説
新R25編集部
『ブレードランナー』の30年後を描く新作映画『ブレードランナー2049』が公開され、ファンを中心に話題になっている。
正直、前作『ブレードランナー』も観てないし、何がそんなにスゴイ作品なの?と思っていたが、じつは日本の様々なカルチャーにも影響を与えた、エポックメイキングな映画だったらしい。同作のファンブログを運営する「シュウさん」に解説してもらった!
「カッコいいSF」の草分け的存在!近未来をイメージした日本の風景も特徴的でカッコいい
『ブレードランナー』は、「近未来のアメリカで人造人間たちが人類に反旗を翻し、それを捜査官“ブレードランナー”が処刑していく」というストーリー。原作はフィリップ・K・ディックによる『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』というSF小説だ。
シュウさんは、何よりもまず映画の「ビジュアル」のトリコになったという。
「超高層ビルがあって、ネオンがギラギラしている。カッコいいんですよ。それまでも、未来を描いたSF作品というのは当然あったんですが、ビジュアルが良いものがなかった。たとえば1976年に『2300年未来への旅』というSF映画が公開されたんですが、未来をイメージしたのか、衣装はシンプルなつなぎのような無味乾燥なデザイン。残念な感じなんですよ…」
さらに、同作には日本の風景が登場することでも有名。スタッフが来日した際に見た、新宿など繁華街のイメージが反映されているという。
「日常的に見ていた日本語や日本の風景が、急にハリウッド映画に登場した。『強力わかもと』と書いてある看板がドーンと登場するシーンがあるんですが、そんなヘンテコなものでも、意外なほどカッコよさがあったんです。それまで海外の映画に登場する日本って『出っ歯でメガネ、必ずカメラを持ってる』みたいな紋切り型の表現しかなかったので、驚きでしたね」
といいつつ、『ブレードランナー』、1982年の公開当時には国内外ともに全然ヒットしなかったんだとか。
「海外では、“サマームービー”として『E.T.』『スタートレック2』『ロッキー3』と同じタイミングで公開され、埋もれてしまったんです。さらに、1977年に公開された『スターウォーズ』ブームもあって、“派手な宇宙SF”みたいなものを期待していた観客は、『ブレードランナー』の一見暗くて難解な内容にガッカリしたんです」
1回観ただけじゃ理解できないけど…ビデオ普及のおかげで「細かいディティール」の虜になる人が続出
だが、その後VHSの普及のおかげで、じわじわと人気を獲得していく。
「『ブレードランナー』はとにかく情報量がぎゅうぎゅうに多くて、映画館で1回観ただけじゃ理解できないんですよ。VHS普及のタイミングと同時に、何度も観て、細部のディティールなどいろんな発見をしてハマる人が増えていったんです。よく観ると主人公のアパートに盆栽が置いてあった、とか…」
同作は、映像のなかに日本以外にもさまざまな文化が凝縮されているのだという。
「監督のリドリー・スコットはアートに造詣が深く、20世紀アメリカの画家、エドワード・ホッパーの絵画をモチーフにしたシーンもあります。また、イギリスの詩人ウィリアム・ブレイクの一説をもじったセリフもある。このような、古今東西のハイカルチャーを学べるところも作品の大きな魅力です」
「AKIRA」「攻殻機動隊」「メタルギア」など、日本のアニメ・漫画・ゲームに多大な影響を与えた
大友克洋の伝説的作品『AKIRA』。“ネオ東京”を舞台に、暴走族の少年・金田らの戦いを描いている
シュウさんによれば、『ブレードランナー』は数多くの日本のアニメ・漫画作品にも影響を与えた作品だという。
「1982年に漫画の連載がスタートし、1988年に映画化された『AKIRA』は、大きな影響を受けている作品といえるでしょう。1988年から連載された漫画『サイレントメビウス』もそうです。『攻殻機動隊』の原作漫画家・士郎正宗や監督・押井守も、同作にインスパイアされて作品を作っていますね」
原作漫画は1989年に初出となった『攻殻機動隊』。国内外にファンが多い作品だ
ゲーム『メタルギア』シリーズで有名な小島秀夫監督も同様。1988年のゲーム『スナッチャー』は、『ブレードランナー』の影響を受けて製作したと明言している。
さらには、フランスのファッションブランド・ゴルチエのランウェイで、『ブレードランナー』の衣装のようなファッションが披露されたこともあるらしい。
ビジュアル面以外でも影響を与えた、「人間とは何かを問う」「現実を疑う」というモチーフ
ちなみに、カッコいいビジュアル面以外にも影響を与えた要素があるんでしょうか?
「作品のテーマである『人間とは何かを問う』『自分たちがいる現実を疑う』というモチーフは、押井守の監督作品でも繰り返し登場するモチーフですよね。また、本広克行氏が監督を務めた2012年のアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』は、『監視社会のなかで生きる人間たち』を描いていて、『ブレードランナー』および原作の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のテーマと共通しています」
『サイコパス』の公式サイトには、以下のような解説がある。
http://psycho-pass.com/sp/abouts3_3.html近未来SFを描きつつ、あくまで『踊る大捜査線』シリーズのように地に足の着いた“人間”を描くのはどうか、という提案である。『ウィリアム・ギブスンではなく、フィリップ・K・ディック』という方向性を目指すことで、本作は当初からのイメージである『ブレードランナー』の流れをうけた作品として収束していった。
様々なカルチャーが、現在でもその流れを汲んでいる偉大な作品。前作を予習したうえで、『2049』も観てみたい!
〈取材・文=天野俊吉(新R25編集部)〉
取材協力/参照資料
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