ビジネスパーソンインタビュー
「何かがしたいというより、戦に勝ちたい人」
音喜多氏も分析!“政界を振り回す”小池百合子の「メディアコントロール術」を解剖
新R25編集部
2016年、東京都知事に就任した小池百合子氏。その後、「希望の党」を立ち上げ、代表として衆院選へ…。都知事選から今回の衆院選まで、なんだか政界は小池氏に振り回されつづけているような。
しかし、小池氏はなぜここまでフィーチャーされているのか? 2016年夏に出演した『羽鳥慎一モーニングショー』のインタビューで、彼女は「私の最大の味方はメディア」と発言していた。どうやら彼女の強さは、その巧みな“メディアコントロール”にあるようだ。
「クールビズ」も生み出したキャッチフレーズ力!型破りの言動で、抽象的な言葉でもワクワク感を醸成
アフロスポーツ
2006年、環境大臣時代の小池氏(左)
小池氏の会見やトークを見ていると気になるのが、その独特な言葉のチョイス。特に彼女が使う「カタカナ語」は、メディアを通じておおいに話題になる。代表的なものを挙げてみよう。
「クールビズ」
今ではすっかり定着した「クールビズ」という言葉も、2005年に環境大臣だった小池氏が決定したもの(約3000件の公募のなかから選考)。予算をかけずに言葉ひとつで日本中からネクタイ姿を減らした功績は、堀江貴文氏も自身の著書などで高く評価している。
「都民ファースト」
都議会選の際に、小池氏が掲げたマニフェスト。米トランプ大統領の掲げた「アメリカファースト」というキャッチコピーを真似たものと思われるが、この言葉を政党名にも活用し、その存在感を都民に強烈に印象づけた。
「アウフヘーベン」
衆院解散時には、安倍首相に対して「いままでの議論をアウフヘーベンし、国民が希望の持てる政策を投げるべき」と発言。もともとは哲学用語。小池氏は「矛盾するものを発展的に融合させて、レベルを高める」というようなニュアンスで使っているよう。
小池氏は、政治家になる前はニュースキャスター。あの『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)の初代メインキャスターとしても活躍した。彼女の言葉のセンスは、キャスター時代の経験が生きている?
袂を分かった音喜多氏を直撃しました(※画像は「おときた駿 公式サイト」のスクリーンショット)
都民ファーストの会を離党した東京都議会議員・音喜多駿氏に取材すると、「たしかに“テレビ的”な、ワクワクする言葉を使うのが得意な方だと思います」とのこと。
「例えば『アウフヘーベン』のようなカタカナ語でイメージをふわっとさせて、何を言っているのかよくわからなくしてしまう。聞いている人は、普通わからないと不安になるものですが、小池さんの場合はそこで『何か意味があるんじゃ』と周りがウラ読みしてしまうんですよね。『ワクワク』を感じさせるのがうまいんですよ」
なぜワクワクさせられてしまうんでしょう?
「小池さんの決断力、行動力、パフォーマンス力がすごいからでしょうね。9月25日、安倍首相の衆院解散を記者会見した日も、それにぶつけて同じ夕方に『希望の党結党』を一人で発表してしまった。政界の常識からしても、一般の常識でもありえない。そういう『何かやるんじゃないか』という期待に応える行動をするんですよね。だからこそ、苦しいはずの今回の衆院選でも、『何か小池マジックがあるんじゃないか』と政界から注目されているんでしょう」
“仮想敵”にケンカを売る「劇場型政治」が得意。音喜多氏「何かがしたいというより、戦に勝ちたい人」
つのだよしお/アフロ
1992年の政界進出以来、「小池グリーン」をテーマカラーにしている小池氏。これもメディアを意識したイメージ戦略の一環だろう
そして、彼女のメディア戦略としてよく指摘されるのが“劇場型政治”というもの。選挙プランナー・三浦博史氏は、産経ニュースの記事「ポピュリズム 小池百合子氏はカリスマ都知事になれるか?」のなかで、その手法を
「マスコミ対策として目立っていたのは、都庁担当記者を含む全国紙より、テレビやスポーツ紙を徹底して取り込む手法だ。これはまさに小泉純一郎元首相や橋下徹前大阪市長が得意とした、仮想敵を作ってケンカを売る『劇場型選挙』の模倣だったといえる」「巨大な組織選挙に対し、女性1人で孤高に立ち向かう姿を演出することによるアンダードッグ効果」
と表現している。
小池氏は2016年の都知事選以降、下記のような“劇場型演出”をしてきた。
・都議会自民党の重鎮・内田茂氏を「都議会のドン」と指摘し、対立する自民党東京都連の体質を「ブラックボックス」と批判。「男性ばかりの組織と戦うヒロイン」の構図を演出した。
・豊洲市場移転問題では、過去に移転を推し進めていた石原慎太郎元都知事に宣戦布告。石原氏が「大年増の厚化粧」と小池氏のことを批判した際には、「そういうことはしょっちゅう言われている。でも、女は聞き分けがいい、使い勝手がいいなどとは絶対に思わせない」「(化粧は)顔のあざを隠すため」とかわし、女性層の支持につなげた。
Natsuki Sakai/アフロ
築地市場の豊洲移転を推進したとして、2017年3月に証言に立った石原氏
音喜多氏は「小池さんは向上心、競争心の人だと思います。何かと戦っているときに力を発揮するんですよね。彼女は、選挙に勝って何かがしたいというより、戦に勝ちたい人。核となる思想は特にないんです。だからこそ、都知事になってすぐに国政に打って出たんだと思います」と話す。
強い競争心でつくり出した“既成権力と対立する構図”を、メディア受けするインパクトのある言葉で伝えて大きな支持を得る。たしかに、政治家からすると(特に選挙においては)敵になってほしくない存在だろう…。
衆院選の投開票は10月22日。「希望の党」の結果がどうであれ、今後も小池氏の動きには注目しておいたほうがいいかも!?
〈取材・文=天野俊吉(新R25編集部)〉
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