ビジネスパーソンインタビュー
ヒント:ビールはお酒、ノンアルは清涼飲料水
“人気だから”だけじゃない。ビール会社がノンアルコールビールに力を入れるワケ
新R25編集部
ビールの市場の低迷が止まらない。ビール大手5社の今年の発表によると、ビール類の出荷量は12年連続で過去最低を記録しているそうだ。
その一方で、登場以来ずっと販売好調なのが「ノンアルコールビール」だ。運転や妊娠中などを理由にビールの代わりに飲むということはもちろん、最近では「カロリーゼロ」や「アミノ酸入り」など付加価値の付いた商品が発売され、商品そのものへの嗜好が高まりつつある。
しかし、ビールメーカーがこのジャンルに力を入れる理由は、単に“消費が伸びているから”だけではないようだ。
日本のビール税は約40%!先進国と比較としても飛び抜けて高い
日本では、ビール350ml缶当たりの酒税額は現在77円。商品価格の約40%が税金ということになり、これはドイツの14倍、アメリカの6倍もの課税率だ。なぜこんなにも高いのだろうか?
ビール税が導入された明治時代、ビールは高級酒だった。そこで「金持ちに高い税金を払わせる」ということで課された高い税率が、大衆酒になってからも維持され続けているというのが実情らしい。
ビール税は国や地方公共団体の大きな財源になっていることもあり、政府もなかなか税率を下げることができないというワケだ。
ノンアルコールビールは「清涼飲料水」だから酒税はナシ!
編集部撮影
これに対してノンアルコールビールは、ビール同様におもに麦芽やホップを原料にしてはいるものの、アルコールが含まれていないことから「清涼飲料水」に分類され、酒税はかからない。
一般のビールが350ml缶で200円程度なのに対し、ノンアルコールビールは140円程度。両者の製造原価に大きな差はない一方、ビールの場合は売上の約4割が酒税として差し引かれることを考慮すると、メーカーにとってノンアルコールビールの利益率はビールに比べて格段に高いことがわかる(アナリストの調査では、ビールの2倍前後との推測も!)。
売れ行き好調に加えて、利益率も高い。このような背景もあり、ノンアルコールビールは業界からも熱い視線が注がれる“ドル箱商品”としての地位を確立した。
メーカー間の争いは「成分の特許」をめぐる訴訟に発展するほど熾烈に
編集部撮影
そんなノンアルコールビールをめぐって、メーカーも熾烈な争いを繰りひろげている。
2015年1月、カロリーと糖質をゼロにしたことがウケ、2010年の発売後間もなく販売トップに立ったサントリーの「オールフリー」が、アサヒビールの「ドライゼロ」を特許権の侵害で訴えた。「ドライゼロ」の成分が、糖質を抑えて飲みごたえや風味をよくした「オールフリー」の成分調整の特許に抵触しているのではないかというのがその主張だ。
この裁判は昨年和解が成立したものの、ノンアルコールビール市場で覇権を握ろうと鼻息を荒くするメーカーの姿を象徴する出来事だった。
ちなみに、酒税の改正に関しては、このところいろいろと検討が進んでいるもよう。今後お酒の価格が上がったり下がったりしたときには、「これ、税金が関係しているかも?」と思いをめぐらせてみよう。
<文=新R25編集部>
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