ビジネスパーソンインタビュー

「人生が本番だと思えない…」

「自分の人生に切迫感がない」と哲学本著書・しんめいPに相談したら“モラトリアム解消法“にたどり着いた

新R25編集部

2024/08/28

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複雑なはずのビジパの悩みを、単純化して取材していた」 「本質的じゃない悩みをでっちあげていた

という反省のうえ、「個人のリアルな悩みにひもづいた取材」を改めてしていくことを方針とした新R25編集部。
“ビジパの悩みインサイト”企画、第5回は、編集部の天野が「モラトリアムがずっと続いている」という悩みを話し始めます。

副編集長・天野のとってもこじらせた悩み

渡辺

モラトリアムが続いている」ってなに?

モラトリアムって簡単に言うと…まだ始まってない期間みたいな。

天野

よく大学生とか社会人 2、3年目ぐらいまで言われがちな。ゆるゆると生きてる期間というか。

そこからだんだん社会の一員になっていくと思うんですけど、自分はまだモラトリアムが続いてるって思ってて、もっと言うと「まだ人生の本番だ」って思えてないんです。

まわりはもう人生の本番を生きてるんだけど、俺はまだ本番を生きてない

森久保

どういうところでそう思うんですか?

天野

仕事とかでも「まだ本番じゃない」っていう感覚がある。

「独立しないんですか」とか聞かれて、「将来こういうことができたらいいな」と言ったりはするんですけど、本当に切実に考えられたりはしてない

とはいえ30代半ばも過ぎて本番じゃないわけないし、やってておかしくない年なんだけど…

渡辺

俺、わかる。正直わかるなあ…

子どものころに「将来の夢」とか書かされるじゃん。なんとなく書くけど、全然自分ごと化してないっていう、その感じが変わらないってことだと思うんだよね。

天野

めっちゃそうですね。

それなりに頑張りはしてるんだけど、何かを決断して「自分の人生はこうだ」って決めて動くことをしてないんです。

あと、「俺って感覚が若いな」って思うこともあるんですけど、よく考えると「単に幼いんだな」って思うんですよ。若さじゃなくて幼さ

家庭を持ってる友だちと会うと、結婚して子どももいて、それなりの愚痴も言って…人生を背負っているなと思ってしまう。

渡辺

何かを受け入れながら前に進めてる感じがあるっていう。

天野

このまま60歳とかになって、 人生で何かやれる期間は終わったのに“本番を迎える意識がなかったから無策に過ごしてしまった”って思うのかなって…

渡辺

わかるわあ…それも。

森久保はあんまわかってないの?

森久保

いや、どうなんだろう…

渡辺

出てけよ。

森久保

何このモラトリアムの人しかいちゃいけない部屋…

…それで言うと、僕はめっちゃ自覚的なんですよ。切迫感がずっとあって「やばい、もう20代が終わる」みたいな。

休みとかも、「今年の夏は1回きりしかないから夏を感じないとダメだ」って。

天野

それで言うと、休みを取るのもなんか苦手。夏休みとかもあんまり取らない。

今年も来年も、過ぎていくことに自覚的じゃないから、旅行とかも別に行きたいって思わない

渡辺

マジでわかる、俺もまったく同じだわ

編集長にだけ異様に共感されたこの悩み。皆さんはどう思いますか?

悩みを解決するため、「東洋哲学」に救いを求めました

天野

今日は、東洋哲学についてまとめた『自分とか、ないから。』が話題になっているしんめいPに相談できればと…よろしくお願いします。

【しんめいP】東大卒、大手IT企業を経て「無職」に。note「東洋哲学本50冊よんだら『本当の自分』とかどうでもよくなった話」が話題となり、1000冊以上の東洋哲学にまつわる書物を読んだ内容を『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学 』(サンクチュアリ出版)として上梓

Embedly

しんめいP

よろしくお願いします。

今朝、大阪からの新幹線のなかで天野さんの「モラトリアム」っていう悩みについて考えてたんですけど…

結論、まあ大丈夫じゃないですか? 絶対大丈夫だと思います。

天野

大丈夫?? このままモラトリアムやっててもいいってことですか?

しんめいP

うん。僕、本を書くためにいっぱい東洋哲学の本を読んで、修行とかにも参加してみたんですけど。

僕の解釈では、東洋哲学では「キャリアもお金も家族さえも全部フィクション」って言ってると思ってるんです。

「仕事を頑張っても、家族を持っても、本当に意味がない」みたいな。それってむなしいじゃないですか?

天野

はい。

しんめいP

むなしいな…と思ったんですけど、その「むなしさ」をちゃんと感じると気持ちいいって思ったんです

天野

…???

しんめいP

みんなそういう、「むなしい」っていう感情や事実をちゃんと受け止めてない。推奨されてないし。

「むなしい」っていう感情が、常に温泉みたいに湧き上がってくるんですけど、それを見たくないから全力でフタしてます、みたいなことなんですよ。

でも、東洋哲学的には「むなしさ」もただの言葉。勇気を持ってパッてフタを開けたときに、「むなしさ」の温泉をバーッと浴びて「うわーっ」てなる。でも「あれ、でも意外と気持ちいいじゃん」みたいなことがすごくあるんです。

皆さん安心してください。天野も1mmも理解できていません

しんめいP

この世界に意味はないし、むなしいかもしれないけど「まあ大丈夫か」と。意外と清々しい“ゼロの気持ち”でスタートできるんです。

天野

間違ってるかもしれないですけど…、ゼロの気持ちになれたら「本番だ」って思えるみたいな感じがあるんですかね…?

しんめいP

ありますね~。というか、マジでそれが「本番のスイッチ」な気がしてて。

“思考”と“感覚や感情”があったときに、思考の世界に入っちゃうと“感覚”を無視しがちだと思うんです。

自分の人生、「モラトリアムを楽しんでいたい」「でも本番を始めなきゃいけない気もする」みたいに、頭のなかで悩みつづけてるとき、思考の世界だけにいると“バーチャル感”がすごいんですよ。

天野

はい…

しんめいP

たとえば、会社で新卒の子が天野さんのアシスタント的に入ってきたとするじゃないですか。

で、チームのみんなでランチに行くことになって、「行きたいお店選んでおいてよ」って頼む。そしたらその新卒が「ちょっと…寿司か焼肉かで悩んでて…」って言ってくるとするじゃないですか。

天野

ほう。

しんめいP

「寿司って、魚じゃないですか。生の魚ってリスクがあるかなと思って…」とか言ってくる。「でも焼肉は昼からは重たいかな…」「カロリーも高いし…」とか。

そしたら、「いやちょっと待ってよ、君はどっち食いたいの??」って思いません?

天野

はい。「そんな悩むことじゃないでしょ」って。

しんめいP

イメージとしては、「思考の世界」って、寿司と焼肉をパラメータやスペックで比較して、優劣をつけたりしてる感じなんですよ。

あ~、なるほど。それは意味ない

しんめいP

「今日は寿司食いたい」って気持ちって、思考じゃなくて感覚的に浮かび上がってくるものじゃないですか。


「寿司食いたい」って感覚から目を背けたら、ランチひとつですごい大変な世界になっちゃうんですよ。永遠に答えが出ない

天野

ああ~…

しんめいP

「モラトリアムじゃダメで、本番を生きるべきか」ってそれと同じで、思考の世界に入っちゃうと答えが出ない。


「まあ、どっちでもええんちゃう」みたいなとらえ方のほうがいいと思うんです。

天野

今の話でちょっと分かってきた。

しんめいP

ランチで寿司か焼肉どっちに行くかって、天野さんから見たらどっちでもいいじゃないですか。ランチだけの話なんて、けっこうすぐ過ぎ去っていく話だから。

同じように、悩みってまわりから見るとどっちでもいいんですよ。感覚でパッと決めちゃえばいい。

今モラトリアムを楽しもうが、本番をガチでやろうが、どっちにしろ人生は過ぎ去っていく

より良い「年齢との付き合い方」

しんめいP

僕、今35歳なんですけど、すげえリアルな数字になってきたなと思ってて

天野

わかります…。「ちゃんと歳を取る」にはどうしたらいいんですかね?

しんめいP

けっこう白髪が生えてきてたんですけど、最近「白髪もけっこういいか」って思うようになってきたんですよ。

そっちのほうが気持ち的には明るくなるし。

歳を取るって絶対嫌じゃないですか。ただ、温泉のように湧き上がる「嫌だな」って感情をいったん全部感じちゃうことで、「まあ、本も書いたしこれはこれで文豪っぽく見えるからいいかもな」と思えたんです。

天野

さっきの話と同じように、嫌だっていう感情を1回浴びて認めると、自意識がなくなる感じですか?

しんめいP

「自意識」、そうですね。たとえば“若さ”なんて典型で。

「若い人は髪は黒くて…」みたいな自分のなかのイメージがある

前はよく、タクシーの運転手さんに「兄ちゃん大学生?」とか言われて「いや、ちゃうんすよ(笑)」とか言ってイキった気持ちになってた。

そういう若く見える状態を「自分」だって思ってるけど、それがどんどん変化してしまう。自分が自分だと思っているイメージが壊れていくんですよ。

天野

めちゃくちゃわかりますね。

しんめいP

自分が自分だと思っているイメージが壊れることを受け入れる。

難しいんですけど、「うわー、嫌だ…」って思いながらでも受け入れると、「白髪も白髪で悪くないか」ってなるんですよね。

そうすると、新しい自分のイメージが形成される

今ある「自分」というものにしがみついていて、それがなくなったら“何もなくなっちゃうんじゃないか”って思うんですけど、そんなことなくて。都度都度新しい発見があって「今の自分ってこうなんだ」みたいな。

しんめいP

その新しい自分もいつか壊れると思いますけど、ブッダとかも「壊れることを怖く思わなくていい」と言ってて。

老いって止められないのでどんどんいろんなところがしょぼくなっていくと思うんですけど。

それは嫌だけど受け入れるしかないし、その嫌だって感情もちゃんと受け取ってあげる。

「こじらせる」とは何か

天野

感情にフタをしないっていうのがやっぱり大事なのか。

しんめいP

これ、本の帯とかって自分が書くんじゃなくて出版社の人が書くんですけど、「東大卒のこじらせニート」とかけっこう失礼なこと書かれてて…

天野

本当だ(笑)。

しんめいP

で、「“こじらせてる”って何だろう」って考えたんですよ

さっきの温泉のたとえで言えば、「嫌だな」っていう感情が湧き出てくるじゃないですか。その温泉のエネルギーがあるのに、「嫌じゃない!」みたいにムリヤリ抑えつける


あとは、「これは『嫌』っていう感情じゃなく、もっと崇高な感情なんだ」みたいに、まっすぐ湧き上がってきてるものを違う方向に流そうとするとか。

しんめいP

これをやると「こじらせる」のかなと思ってて。

こじれすぎると、だんだん自分がどうやって感情の温泉にフタをしてたのかがわからなくなって、自分の感情もよくわからなくなってしまうっていう。

天野

めっちゃあると思いますね、僕。

感情にフタをしているとまで言わないけど…、近いことはすごいあると思います。

「仕事がつらい」と言わないとか。「別につらいって思ってないし、楽しいし」みたいな。本当っちゃ本当なんですよ。でも、そういう感情を曲げるクセをずっとつけてる気がします。


だから、外から見たらちゃんとしてるみたいに見えるけど、本当はちょっと違う感情があるから、「本番じゃない」みたいなウソ感があるのかな。

しんめいP

今聞いてて僕がめっちゃ納得しました。

最初に、新幹線で考えてきたことそのまま言ったの反省しました(笑)。もっとこうやってちゃんと話聞けばよかったです(笑)。

しんめいPが「大丈夫」と言った真意

しんめいP

リクルートの出木場さんの、「世界はすごいスピードで落下しているっていう有名な話あるじゃないですか。


頑張って新しいビジネスをつくるよりは、世界は落下するように一方向に動いてるから、とりあえず人より少し先に行けば、勝手に利益なり成長なりがついてくるよっていう。

天野

はいはい。一時期バズったやつ。

Embedly

しんめいP

僕、それってすごくいいなと思っていて。

事業とかやると「1から積み木みたいにつくり上げなきゃいけない」って感じがしてくるけど、この出木場さんの言葉だと「世界のほうが動いてるから、それに合わせて先に行っちゃえばいい」みたいな。


今日の話で言うと、「世界はすごい速度で落下しているから、僕らもすごいスピードで老いていくし、いろんな人生のイベントも放っておいても勝手に起きる」っていうか…

しんめいP

僕も本当にモラトリアム人間だと思うんですけど、ちょっと前に母親が急に脳出血になって倒れたんですよ。

自分が実家を管理しないといけない?とか、もしかしたら介護とかも始まるの?とか…

そのときに、やっぱり世界はすごい速度で落下してるなと。モラトリアムか本番かで悩んでいようが悩んでなかろうが、「勝手に急に本番に行かされる」ってすごい思ったんです。

天野

はい。

しんめいP

だから、自分で何かしようと思わなくて別にいいんだろうなっていうか、それぐらい世界はのっぴきならない


諸行無常ってそういうことだと思ってるんです。多分「世界は落下してる」と近いことを言ってる

しんめいP

天野さんが自分で「この状況を打開しなきゃ」とか思わなくても、どっかのタイミングで、嫌でもその状況に向き合わざるを得なくなる。その世界観ってすごい大事だなって思いました。

天野

たしかに、「自分でこうしなきゃ」とか「決断しなきゃ」「決めなきゃ」って思ってて、それがさっき言ってた積み木を積み上げてる感覚みたいな…

でも、本当はそうじゃなくて重力で動いてるだけだから。

最初に「別に大丈夫だから」みたいに言ってたのはそこなんですかね?

しんめいP

そうですし、見方を変えると大丈夫じゃないんです。

大丈夫じゃないぐらい世の中は変化していく。自分を保とうと思っても保てないし。

多分今これだけ悩んでても、5年後の天野さんが見たら「いや、これで悩んでる意味なかったわ」って思うぐらいの変化が急に起きたりとかするし、そこに“委ねる勇気”があったほうが痛い思いをしないよなと思いますね。


変化が起きたときに急に「つらいよー!」ってなるんじゃなくて、あらかじめ落下していく世界に身を任せておく…という。

天野

なるほど。自分はずっと若いと思ってて、ある日いきなり全白髪みたいになったら受け入れられないみたいな。

しんめいP

そうですそうです。

受け入れきったら別に「これはこれでありかも」って思えるようになる。

ちゃんとそういうふうに人間やこの世界はできてるな、みたいなのはけっこう実感しますね。

天野

ちょっとまだまだお話を聞きたいんですけど…

かなり納得っていうのもアレですけど、個人的には今日の話をもっと反芻したいなって思ってます。

しんめいP

僕も新幹線で反芻しながら帰ります(笑)。

Embedly

動画版はこちら!
https://youtu.be/ISuPajQPIyg

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