
ビジパの悩みインサイト
「学生時代の経験を活かそうとか、論外です」北の達人・木下社長に“社会人1年目の働き方”を相談したら、キャリア観が180度変わりました
新R25編集部
「複雑なはずのビジパの悩みを、単純化して取材していた」 「本質的じゃない悩みをでっちあげていた」
という反省のうえ、「個人のリアルな悩みにひもづいた取材」を改めてしていくことを方針とした新R25編集部。
今回は、インターンとして新R25編集部で働いている大学4年生・りんたろうの「やりたいことがわからないし、何から始めたらいいのかがわからない」という悩みについて。
ズバッと言い切ってくれる回答がほしいというオーダーに、解決策はあるのでしょうか…?
「社会に出て一つの分野に集中するのがこわい」インターン・りんたろうの葛藤

渡辺
社会人になる前の学生として、今モヤモヤしていることってある?

りんたろう
僕、将来的には事業責任者や起業などで、人を動かして大きなことをやりたいという目標があって。
でも僕はまだ何かのスキルがあるわけではないし、何から始めたらいいのかがわからないんです。


渡辺
うちの会社に入ると、大体みんなそういうこと言うんだよね。でも、本気で思っている人と、強迫観念に駆られて言ってるやつがいるよね。

森久保
僕は後者でしたね(笑)。

りんたろう
一方で、一つの仕事を極めることにも抵抗があって。
たとえば広告一筋のキャリアを積んだとして、広告のマネージャーにはなれても、事業の全体を見るマネージャーにはなれなさそうで、怖いなって。

渡辺
自分のキャリアが固定化されちゃうのが怖いってこと?

りんたろう
そうですね。
僕が通ってる法学部政治学科が銘打っていたのが「ジェネラリストを育成する」なんですけど、それが合ってるなと思ってて。「やりたいことを探す期間」としてサークルやバイト、インターンなど本当にいろんなことをしてきて、充実した毎日を過ごしてるんです。


りんたろう
中高はラグビーしかやってこなかったから、そこから解き放たれたというのもあって、あえて何か一つに没頭してこなかったんですよね。
でもその感覚のまま社会に出て、特定の分野にリソースを投下するのが怖いというか。

渡辺
それが自分の成功体験でもあるから、社会人もそんな感じでいきたいと思ってるってことでしょ?

りんたろう
とはいえ、そんなに甘くないこともわかってます。「いろんなことをやりたいです」と言ってる人って結局、何もやらないじゃんみたいなところもあるし…
何か一つ柱をつくらなきゃいけないとは思いつつ、それが何なのか、どこから始めたらいいのかがわからない。配属希望でも「何となくいろんなことできそう」という基準で選んじゃって。

渡辺
かといって、ジェネラリストとして活躍したくても、何を鍛えればいいかがムズいしね。

りんたろう
解像度が粗すぎて不安なだけなのかもしれないけど、営業をやるって決めている子とかがいると、すっげえ置いていかれてる感がして。

渡辺
それ、羨ましいんだ?

りんたろう
羨ましいです。やりたいことが決まってるからフルコミットできて、いいなと思う。自分は逆に一歩引いて見ている感じがあって。厳しく言ってくれる人もいないし。
「お前はこれやったほうがいいよ」みたいにハッキリ言ってくれたら楽なんですけど。

リクルート新卒から起業家へ。上場企業CEOの木下勝寿さんに相談してみた

りんたろう
木下さん、よろしくお願いします。
今日はキャリアのファーストステップをどう踏み出すべきか、という悩みをご相談させていただきたいです。

木下さん
うーん。まず、考えすぎかなと思いますね。


木下さん
今、やったことや見たことがない世界に対して、めちゃくちゃ想像を働かせている状態ですよね。
でも、やっぱりやってみないと、見てみないとわかんないよね。
考え過ぎて方向性を決め過ぎちゃうと、可能性を絞ってしまうかなと思います。

りんたろう
それって、「とりあえず始めてみろ」みたいなことですか?

木下さん
多くの人が、若いころに考えていろいろやった結果、「ああ、あのころ考えたことってほとんど無駄だったな」って思うんですよね。
いろいろ考えるのは全然あり。ただ、決めすぎるのは絶対しないほうがいい。
初めての仕事は、やってみないとどんなものか絶対わかんないし、向いてる・向いてないも全然わかんないじゃないですか。

りんたろう
そうですね。

木下さん
たとえば今の仕事が、すごく自分に向いてると思ってたとして。
もし、やる前から「僕はほかのことに向いているから」って全然違う方向を向いていたら、この可能性は潰していたという話。
だから、緩やかな方向性は決めてもいいけど、ガチガチには決めないほうがいい。
学生のうちにこんな丁寧なアドバイスをいただけて、りんたろうは恵まれていますね…

りんたろう
僕は職人のように一つに没頭して、つぶしの効かないキャリアになるのが怖いという気持ちがあって。

木下さん
職人として一生過ごす人もいるけど、そっちにいきたくないっていう話ですよね?

りんたろう
そうです。

木下さん
社会に出てスキルを身につけるのって、4段階に分かれるんですよ。
最初は「業務スキル」。業務を自分でやっていけるスキルを身につける。
次の段階で「マネジメントスキル」。人に教える、もしくは複数人で一つの仕事をやるスキルですね。
その次に「未知問題解決スキル」といって、今までに経験したことがない問題を解決するスキル。その後に、「仕組み化のスキル」がある。
なるほどお…

木下さん
で、この4段階の間で、途中で止まる人、止める人が出てくるわけです。
業務スキルで止める人は職人になるし、マネジメントスキルで止める人は課長、未知問題解決スキルで止めるんだったら部長とか。仕組み化のスキルだと、もっと上の経営者層とかになってくる。

りんたろう
どこで止めるかは自由ってことですか?

木下さん
そう。それは自分で決めたらいい。ただ、止めると止まるは違うよね。もっと上にいきたくてもいけないっていうのもあるだろうし。

りんたろう
それって、最初の業務スキルから始めないとダメなんですか?

木下さん
最低限は必要だと思うよ。
業務スキルがないままマネジメントはできないし、マネジメントができないまま未知問題の解決はできないし、そこができないまま仕組み化もできない。

りんたろう
たしかに…今思ったんですけど、学生は「マネジメントスキル」や「未知問題解決スキル」に視点を置きがちな気がしてて。
でも実際に社会人になると、いきなり「業務スキル」に引き戻されるギャップがあるのかなって。

木下さん
それ、「未知問題解決スキル」だけやってると、意識高い系だけどスキルはまったくないって人間になりかねないね(笑)。
やっぱり「業務スキル」は大事ですよ。入社して2、3年は、業務のスペシャリストになっていく必要があると思います。

りんたろう
そうですよね。


木下さん
なぜ学生がそこをすっ飛ばすパターンがあるかというと…
「守・破・離」という考え方があって、「守」は、今までのやり方を守る。「破」は、自分なりのやり方を加える。「離」っていうのが、自分流を確立するイメージ。
この、最後の“自分流を確立する”部分って、ラッキーパンチがあり得るんです。だから、社会も学生にやらせてみることがある。ラッキーパンチが出ればラッキー、外してもショックは受けない。
でも、社会人になってラッキーパンチをやってたらキツいよね。

りんたろう
再現性がないってことですか?

木下さん
そう、全然ない。だから確実に仕事ができるスキルを身につける必要がある。

りんたろう
実際の社会と、学生までの間に見ている社会とは違うと。

木下さん
全然違うと思ったほうがいいです。
「28歳までに不得意を潰せ」若手がキャリアを築くうえで大事なこととは

木下さん
今のりんたろうさんは、広く浅くじゃないですか。
仮に学生時代に何か成果を出していたとしても、せいぜい、何の社会経験もない、一人の学生が出せるレベルのことですよね、それで30歳、40歳まで生きていくつもりなんですかっていうことなんですよ。
なんか自信なくなってきました…

木下さん
僕は就職したら、最初は左手と受話器をガムテープでぐるぐる巻きにされて、アポとれるまで受話器を離すなっていう環境でした。
でも、そこでものすごいスキルを身につけられたわけです。
まったく何もないところから電話をして仕事を取って、年間億の売上をつくっていく。その一連のスキルをマスターするから、学生とは完全に差がつく。

りんたろう
力をつけるために、集中してやる時間は一定必要ということですか。

木下さん
そういう時間はあったほうがいい。「石の上にも3年」という、何千年も前からある言葉が急に変わることはないように。

りんたろう
どのぐらい、一つのことに集中する期間をつくるべきなのかが想像できないです。
たとえば、営業として3年で成果を出せるようになっても、ほかのスキルはないままだから、何かやる度にまた新しく勉強することになる。それは途方もないなって思っちゃうんですけど。

木下さん
りんたろうさんは、中高とラグビーをやってたんですよね。でも、ラグビーだけできるようになったのではなくて、チームスポーツのやりかたも身についたと思うんです。

りんたろう
あ…そうですね。

木下さん
自分のプレイヤーとしての上達の仕方と、チームプレイの方法をある程度学んでいる。
そうなると、まったくやったことがない人に比べて、ほかのチームプレイもできやすいはずですよね。

りんたろう
たしかに。

木下さん
営業でも同じです。営業を極めたとき、ほかのスキルがまったくゼロかっていうと、全然そんなことなくて。
仕事の基礎の部分は、営業でもめちゃくちゃ学べるわけです。「何の仕事でも一緒」だという部分が必ずある。
だから一つのことを一度極めると、ほかの職種にも通じる部分が出てきますよ。

りんたろう
一つの柱を立てると、そのまわりの普遍的なスキルもついてきて、次の展開がしやすくなると。

木下さん
そう。そこを持たないまま右往左往している人を、僕は結構ヤバイなと思いながら見てますね。


木下さん
そして、この“何かを極める”というのを、28歳までにやらないといけない。

りんたろう
ああ、木下さんは「28歳までに不得意分野を潰したほうがいい」って、ほかのメディアでも言われてましたよね。それってどういうことですか?

木下さん
吸収力があるのが、大体28歳ぐらいまでなんです。28歳を超えると、それが落ちる。
そうなると、28歳までに何を培っておくかがすごく重要なんです。それ以降は、そこまでに培ったものをベースに戦っていくことになるから。


木下さん
あと、いろんなものに手を出している人と、一つのものを極めた人だったら、後者のほうが応用が効くから、強いんです。
28歳以降で勝負をかけるために、28歳までにどれだけ培っていくか。
そう考えると、「この仕事は無駄になるかも」とか考えている場合じゃなくて、「これだけはできる」というものを身につけておいたほうがいい。

りんたろう
そのファーストステップを、どう踏み出していけばいいでしょうか?

木下さん
何の仕事でも、一旦3年ぐらいやって極めること。
今の若者のなかには「2年ぐらいで独立して」とか言う人がいるけど、僕らから見ると、たった2年で培ったベースで今後生きていこうと思ってるのは、キツいなと。

りんたろう
見積もりが甘いな、という感じですか。

木下さん
今は身の回りの人たちから仕事をもらってしのげるかもしれないけど、5年、10年後マジでやっていけると思ってるの?と。
僕でも、たとえば会社を引退して一人でコンサルタントやったとして、持つのは長くて3年だと思うよ。


りんたろう
木下さんでも3年ですか!?

木下さん
だって、世の中どんどん変わってるんだから。
変わっていくなかで、独立後も勉強して情報も収集していかないといけないでしょう。会社を離れて、そんなに情報入ってくると思う?

りんたろう
そうですよね…

木下さん
一つ何か仕事を成し遂げたとき、自分にあるものが本当のスキル。
その後まったく別の仕事に関わっても、経験値があればこなせます。そういう経験を積み重ねて、パーフェクトになっていく感じだと思うよ。
その過程では、なるべく難易度が高いところに行ったほうがいいよね。あと一人でなるべく完結する仕事。大きな業務フローの一部だけを極めても、それしかできなくなったりするから。

りんたろう
ある程度応用がきいて、自分が1から10までやれる仕事だとなお良いって感じですね。

木下さん
今のりんたろうさんでいうと、1本の動画を企画して編集をして、最後までやり遂げる。その間に起きることっていろいろあるじゃない。
それを全部乗り越えた経験があると、「一つのプロジェクトを回せます」と言えるようになるよね。
とはいえ「仕事ができる人」と「仕事を任せられる人」は違う

りんたろう
木下さんが、マネージャーをやらせてみたいとか、新しい挑戦をさせてみたいと思うのは、どういう人ですか?

木下さん
新しい挑戦はみんなしたらいいけど、任せられるかどうかは、トラブルが起きたときに絶対に最後まで自分で解決しようとするかどうかという、姿勢の部分。

りんたろう
やりきる姿勢ってことですか?

木下さん
やりきるというよりは、トラブルが起きたときに、「チャレンジしたけどできませんでした」という人なのか、できるまでずっと自分でやり続ける人なのか。
これは仕事に取り組む一人ひとりの考え方の問題で、能力が高い・低いとはちょっと違います。

りんたろう
メンタリティの部分ですかね。

木下さん
めちゃくちゃ能力が高くて大半の仕事はできるんだけれども、一定のしきい値を超えた段階で「できないです」っていう人と、できることは少ないんだけども、できるまでずっとやり続ける人がいたら、僕は後者に仕事を任せます。

りんたろう
それって、自分がどっちの人間なのか見極めるのが難しいなと思ってしまうんですが。
僕自身はまだ大きなトラブルを経験したことがないので、どこで折れるかもわかんないんですけど…無理難題やトラブルとかに直面しておくことが重要なんですかね?

木下さん
いま、「無理か無理じゃないか」と言ってる時点で、「できるかできないか」って考えになってるでしょ。もうその時点で任せられない。


りんたろう
……そうか…これって変わっていくものですか?

木下さん
変わります。僕は経営者になった瞬間に変わったよ。だって自分がお手上げしたら、会社が終わるわけだから。

りんたろう
自分で腹決めしてやれるか、みたいな部分が重要なんですかね?

木下さん
そうそう。それはね、ハッキリ言えば新入社員でできる人もいるし、40歳になってもできない人もいる。
できる・できないで物事をとらえるか、できるまでやり続けるかは、その人の考え方だから。

りんたろう
でも、すべてにおいてフルコミットするのは、やっぱり難しくないですか?

木下さん
いやいや、やる。
たぶん、りんたろうさんはうまく生きようとしてると思うんですよ。

りんたろう
あ、めっちゃしてます…

木下さん
もちろん僕もうまく生きようとしてますけど、僕自身の人生において、うまく生きるための結論って、誠実に向き合うのが一番簡単で楽だと思ってるんです。


木下さん
僕が決めているのは、絶対ウソつかない、絶対人裏切らない、絶対人を助けるという3つです。テクニックやノウハウじゃなくて、自分が決めたら何があっても絶対にやる。他人に出し抜かれたとしても別にいい。
…っていうぐらい腹を決めて生きていくと、少なくとも自分が得たいものは絶対得られます。
学生時代の成功は“誤差”にすぎない。デキる学生が直面する社会の壁

木下さん
学生時代って、何かやってうまくいく人がいい感じに見えるけど、社会人になると多分そうじゃなくて。結構、学生時代の成功体験で止まっちゃう人って多いんですよ。
ちょっとやってうまくいく経験しかしていないので、うまくいかないことをやらなくなる。
自分の不得意なところを潰さないまま、28歳を超えて。周囲からは、「あいつ、高校時代はごっつい輝いてたのになー」って。

りんたろう
僕、そっち側の人間かもしれないです…
なんでもやってうまくいってたタイプだからこそ、無意識に、「これはうまくいかないな」と思うことを避けちゃってた。僕の問題は、そこなんですかね。

木下さん
僕は就職のときに、「ほかの学生のスキルが5だとしたら、僕には20ぐらいのスキルがあります」って言ったら「社会に出たら1000ぐらい求められるから、誤差でしかない」とバッサリ言われたことがあって。
上の人が新しい社会人レベルのことを学びなさいって言ってるのに、「僕は学生のときにこうやってうまくいったんだ」みたいな感じでいると、「うわこいつめんどくせえな」ってなる(笑)。
うっ…

木下さん
そういう人は学生時代の成功体験があるから、上から言われることを素直に聞かない。一方で、未経験の子たちはみんな素直に聞く。ここで大きな差がついていくんですね。
一年ぐらい経って、やっと「学生時代の俺を捨てないといけない」って気づく。

りんたろう
ここで木下さんと話せて、本当によかったです…
僕、どうやって学生時代やってきたことを社会人として活かすかっていうことばっかり考えてたんですけど、いやもう、そんなの意味ないですね。

木下さん
論外。28歳をピークに置いて、自分は培ったものを発揮するタイミングなのか、吸収するタイミングなのかを常に見つめていく。
りんたろうさんは、今は確実に吸収するタイミングです。逆に、今何かを発揮してたらアウトだと思う。

りんたろう
僕、今何も発揮できないのに、発揮しようとしてました。考え方が完全に変わりました…!

うまく生きようと考えて、今までの自分に“とらわれすぎていた”りんたろう。
将来につながるかどうかを考える人に仕事は任せられない…という話に、同じくハッとした人も多いのでは?
目の前のことを着実に固めていくと、その枝がどんどん広がっていく。社会人生活に迷いや不安がある皆さん、まずは目の前の仕事に全力で取り組んでみてください。そこから新たな可能性が開けるはずです…!

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