「仕事と家庭で“顔”を変えろ」本音が話せない28歳にコミュニケーションのプロ・安達裕哉さんが“シーン別の戦い方”を教えてくれました
新R25編集部
「複雑なはずのビジパの悩みを、単純化して取材していた」 「本質的じゃない悩みをでっちあげていた」
という反省のうえ、「個人のリアルな悩みにひもづいた取材」を改めてしていくことを方針とした新R25編集部。
今回は、新R25編集部・藤野の「まわりを気にして、本音が言えない」という悩みについて。
相手に嫌われることなく本音をぶつける方法、うまいコミュニケーション術はあるのでしょうか…?
まわりを気にしすぎて、嫌われたくなくて、しんどい
藤野
僕、まわりの目を気にしすぎる性格なんですよ。
前回の動画についた「藤野さん、ちょっとふくよかな鈴鹿央士感」ってコメントを見て、ジムに通いはじめたり…
気にしすぎるあまり、発する言葉も、発言する前に自分のなかで何回もカーブしてから言うクセがあって…
天野
たしかに藤野に会話のボールを投げると、しばらく「あれ、戻ってこないな」って…
気にしすぎてボールを返せないキャッチボール…
藤野
自分の感情をそのまま口に吐き出すことはほぼゼロ。「ここは言わなきゃダメだろ」という場面でも、なかなか言えない。
プライベートで奥さんと意見が割れたとき、奥さんはまっすぐに言えるタイプなんだけど、僕は…
渡辺
うちもまったく同じだわ。
藤野
でも、嫌だとかではなくて、助かってる部分も…
あ、まさに今も。こういうクセです。スパッと言い切れない。
渡辺
仕事ではリーダー的なポジションになると、絶対言わなきゃいけない場面が出てくるよね。
性格自体をがらっと変えるのは非現実的だけど、仕事でも自分の意見を適切に主張できないのは、よくないよね。
藤野
そうですよね。適切なタイミングでズバッと伝えるにはどうしたらいいのかを知りたい。
一発目に思ったこと、感情を素直に放ちたいです。
渡辺
悩んでるタイミングがダルいと。
ただ、そういう自分が嫌いじゃないはずなんだよね。
まわりを傷つけてまでズケズケ本音を言いたいわけじゃないでしょ。
藤野
そう、絶対に嫌われたくない。
天野
嫌われない本音の言い方が知りたいんだね。
渡辺
「甘すぎる」って言われる可能性もあるけど(笑)。
藤野
じゃあ…自分の本音との付き合い方を教えてもらいたいです。
ビジネスシーンでの会話で「素」を出す必要がない理由
藤野
僕、仕事でもプライベートでも、ストレートに話すことが苦手なんです。
思いついたままだと、確実に相手を傷つける言い方しか思い浮かばなくて…とくにビジネスシーンで、ストレートにものを言えなくなってしまっていて。
【安達裕哉(あだち・ゆうや)】ティネクト株式会社 代表取締役。デトロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門を立ち上げる。立ち上げの際には「コミュニケーションにおけるマニュアル170項目」を作成。著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は48万部を売り上げ、2023年年間ベストセラー1位(ビジネス書単行本・トーハン調べ)。個人ブログ「Books&Apps」が累計1億2000万PVを誇るビジネスメディアに成長
安達さん
それでいいんですよ。
ビジネスシーンは、“素の自分”を出すところでもストレートに言う場でもないですから。
藤野
…!
安達さん
基本的に、ビジネスシーンでの会話には「成果を出す」「解決策を考える」などの目的がありますよね。
そこでのコミュニケーションは、そうした目的に叶うかどうかで100%、考えてしまっていいんです。
もちろん、そういう姿勢が非人間的だと思う人もいるでしょうけど、ビジネスではお金が発生しているので、仕方がないじゃないですか。
藤野
なるほど…ちょっと踏ん切りがつきました。
安達さん
上司になると、嫌われないというのは不可能です。
それは単純に、目的に向かって邁進すると必ず犠牲が出るっていうだけの話。ついてこられない人のペースに合わせて部門全体の進捗を遅らせるわけにはいかないですよね。
藤野
そうか…僕は仕事とプライベートをごちゃ混ぜに考えちゃってたのかもしれないですね。
安達さん
これをプライベートでやると家庭が崩壊するので、全然おすすめはしないですよ(笑)。
プライベートで言いたいことが言えないのはなぜなのか?
藤野
僕の奥さんはストレートにものを言えるタイプなので、僕と互いに補い合っている形ではあるのですが…
とはいえ、ときどき納得できないこともあって。反論したいときに、自分の考えをストレートに言えないんです。
安達さん
藤野さんの悩みは、めちゃくちゃ真っ当だと思いますよ。
プライベートはビジネスと違い、「目標の達成」ありきの組織をつくっているわけじゃなくて、どちらかといえば「存続」を目的とする関係ですよね。
そのためには、互いの気分がよくなる落としどころを見つけないといけない。ストレートに言うことでお互いの気分が悪くなったら意味がないので。
藤野
たしかに…
安達さん
藤野さんはおそらく大体“折れる側”、つまり妥協することで、お互いが気分よくなっているわけですよね。それで、ちょうどいいバランスが保たれている。
会社は妥協すると組織自体がなくなるのでダメなんですけど、家族などの存続が目的の場合は妥協しないと逆に崩壊する。
だから、(非営利な)コミュニティの運営は難しいんです。
たとえばゲーム内でチームビルドをしなきゃいけないとき、目的を達成したい派と、わいわい楽しく続けたい派っていうのは、めちゃくちゃ割れる。そうなると崩壊するんです。
藤野
ビジネスとプライベートでは、コミュニケーションのあり方が異なるというお話でしたが…
夫婦で起業する場合、一気にプライベートからビジネスに変わるじゃないですか。
というのも、僕は将来夫婦でお店をやりたいという夢があって。そのとき、目的や意識の整理がうまくできるのかなって…
安達さん
プライベートとビジネス、両方で同時に人間関係を成り立たせるのは曲芸に近いと思います。
実際、夫婦でやっているお店がビジネス界で一大外食チェーンになることはあまりない。規模を拡大するのは、完全に“ビジネス”ですから。
夫婦経営のお店が、小さな規模で地域に愛されるコミュニティをつくる様相になるのは、互いがぶつからないというせめぎ合いの結果なんです。
藤野
ああ、なるほど。存続させる方向に持っていったということですね。
安達さん
夫婦関係は、お互いから何か利を得ようとして関係を続けているわけではないですよね。
そこに“政治”が入ってくると、存続が目的なのか、マイルストーンをクリアすることが目的なのかで、かなり考え方が違ってくるので、本来“混ぜるな危険”なんですよ。
藤野
一個上の階層で、目的・意識がそもそも違うと。
僕はストレートに言えないことが、自分の弱みみたいな意識が結構強かったんですけど…
安達さん
いやむしろ、“強み”じゃないですか?
藤野
強みですか!?
安達さん
言わなくて済むように自分をコントロールできるって、すごい強みだと思いますよ。
「言っちゃった」でトラブルになって、人間関係に悩む人のほうが多いんじゃないですかね。
ただストレートに言える人は、ビジネスにはすごく強いかもしれません。
藤野
それでいうと、僕の奥さん、めっちゃ仕事ができる人です…!
「ストレートに自分の感情を言いたい」という欲求の解消方法
藤野
ストレートにものがバスッと言える人の特徴って、何かありますか?
安達さん
目標を見失わない。
よくあるのが、管理職のほうが「前回言い過ぎちゃってかわいそうだから、今回は言わないでおこう」と妥協するパターン。
もちろん言わないほうがいいこともあるけど、ビジネスシーンにおいて感情的な判断をすると、どんどん楽な意思決定に流れて、最悪の結果を招いてしまいます。
藤野
自分は社会人に向いてないんじゃないかという気持ちがしてきました…
安達さん
いえいえ、本質的に、会社に入っている以上「金儲け」をしないといけないだけです。ビジネスの世界では、目標を達成することがすべてなので。
だからこそ、ストレートにものを言う人は反感を買いやすい側面があるのですが、それは目標が優位に立っているから。
経営者や政治家のなかには、家と会社でキャラクターが違う人も珍しくないですよね。
藤野
逆にそういう方じゃないと、ビジネスとプライベートの両立って難しい…?
安達さん
そう思います。
藤野
僕はそもそもの考え方が違ったようです…
安達さん
藤野さんが「ストレートに言わないといけない」という結論を、どうやって出したかのほうが重要です。
何回も何回も婉曲に伝えてきたけど、全然改善されないままタイムリミットが迫っていて、さすがにきっちり言わないとわからないだろうなという判断の過程があったうえで、ストレートに言うという結論なら、それでいいと思います。
それが意思決定というものです。
ほとんどの人は、好き好んで人を追い込むような物言いはしたくない。それなのに、それをやらなきゃいけないときは、疲弊しますから。
藤野
いやあ…そうですよね。
“無理にでもストレートに言わなきゃいけない”という思い込みがあったので、スッキリしました。
そうは言っても、妻にいろいろ物事を決めてもらっている状態を続けていると、他人軸で生きている気持ちになりかねないという懸念があって。
自分で意思決定をする場面を増やした方がいいのかなと思ったのですが…
安達さん
人の本質はそんなに変わらないので、恐らく奥さまとは、一生そういう関係になると思います。
でも、友人・知人、趣味、ボランティアなど、他の方との関係やコミュニティにおいては、藤野さんが意思決定者になることも十分考えられますよ。
藤野
コミュニティを増やして、自分の意思決定をする場所をつくれば、ストレートに自分の感情を言いたいという欲求はなくなる…
安達さん
全然もう、あっという間に。
藤野
ああ、めっちゃしっくりきました。
自分は「話す」タイプなのか、「書く」タイプなのかを見極める
藤野
僕の場合、ストレートに伝えられない理由のひとつに、言語化する力が乏しいこともあると思っていて。
言語化力を鍛えるトレーニング方法はありますか?
安達さん
前提として、“話すのが得意な人”と“書くのが得意な人”がいます。
話すのが苦手な人は書けばいいんです。「今日のテーマはこれです」って。
…藤野さんももしかして、書くタイプですかね? (今回の取材の資料が)これだけまとまっている、わかりやすい企画書をつくれるし。
藤野
自分がどちらのタイプか、どうやったらわかるんですか?
安達さん
「書くタイプ=読むタイプ」なので、報告が文書でほしいのか、口頭でほしいのか。
口頭で報告がほしい人は、話すタイプですね。メールで送ってくれという人は、書くタイプ。
私も書くほうが好きなので、今回のようなインタビューを受けるときには必ず事前にメモを用意します。その場でうまいこと言えないので。
藤野
お話をうかがって、そもそも目を向けるところが間違っていたと痛感しました。
ビジネスシーンでは目的を達成するための手段としてコミュニケーションがあって、プライベートにおいては存続するという目的がある。
妻とは一生をともにする仲だと僕は思っているので、引き続き、いろいろ決めてもらおうかなと思います。
安達さん
「ストレートに発言しない」という藤野さんの特性を活かして。ストレートで言ってしまう人にはできないことが、たくさんあります。
藤野
これからは“長所”として捉えようと思います!
相手に何かを言うとき、そのコミュニケーションの目的が「ビジネス的な目標の達成」なのか、「プライベートな関係の存続」なのかで、言い方は変わるということ。
前者なら、場合によってはズバリストレートに伝えることも必要だけど、後者なら必ずしもそれが“正解”ではないということですよね。
これまで“ストレートに言えたほうがいい”と思い込んでいた頭が、ひっくり返りました。
ひと呼吸置いてものを伝えられる自分に、自信を持ちたいと思います…!
〈取材=藤野拓郎/編集=天野俊吉/編集=鳥山可南子〉
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