ビジネスパーソンインタビュー
チーム全員が同じ温度感で目標を語る方法とは…?
「NMB48をV字回復したい」悩めるリーダー・小嶋花梨に、組織のプロが“変革プラン”を本気で提案
新R25編集部
「停滞期にあるNMB48を、なんとかV字回復させたい…」
そんな思いで、“ビジネスのしくみ”を使ったチーム変革を日々模索する、アイドルグループ「NMB48」のリーダー・小嶋花梨さん。
2022年1月21日。読んだビジネス書を「今週の1冊」としてアウトプットしている音声メディア・Voicyで、10万部超のヒットとなったチームづくりの教科書的な一冊『THE TEAM 5つの法則』を紹介しました。
2019年4月にNewsPicks Bookより発刊された、組織変革コンサルタントの麻野耕司さんの著書。精神論・経験則になりがちな「チーム運営」を、社会学・経営学・心理学などのアカデミックな理論をベースに解き明かした一冊。
このVoicy更新のツイートが著者・麻野耕司さんの目に留まり、早々に対談が実現。
麻野さん
企業の経営者や管理職の方だけじゃなくて、アイドルの小嶋さんが「チームの法則」を活かそうとしてくれているのがめちゃくちゃうれしいです。
今回は勝手ながら、3つの「NMB48変革プラン」を考えてきました。
組織変革のプロ・麻野さんが本気で提案する「NMB48変革プラン」とは…!?
【小嶋花梨(こじま・かりん)/左】1999年7月16日生まれ、埼玉県出身。女性アイドルグループ・NMB48のメンバー。同グループの2代目キャプテンを務める。グループ内のプロデュース業も行いつつ、派生ユニット『だんさぶる!』のメンバーとしても活躍 【麻野耕司(あさの・こうじ)/右】リンクアンドモチベーションにて、中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング事業の執行役員に当時最年少で着任。新規事業として国内初の組織開発クラウド「モチベーションクラウド」を立ち上げる。2019年リンクアンドモチベーション取締役を退任し、2020年にナレッジワークを創業
『THE TEAM 5つの法則』で、NMB48はチーム変革できるのか…?
小嶋さん
じつは今、NMB48は停滞期にあって、チームづくりにかなり悩んでまして…
麻野さん
それは僕にも伝わってきました。
小嶋さんのYouTubeを観たら、ホワイトボードを使ってめっちゃくちゃ真剣にメンバーに講義みたいなのをしてて…この人ガチやなって。
8期研究生に「アイドルとは何か」を説く小嶋さん
小嶋さん
自分でも「アイドルがやることじゃないよな」と思いつつ…(笑)。
麻野さん
もう目が本気でしたもん。
これは僕も、真剣にチームのことを話してみたいと思いましたね。
小嶋さん
思いが伝わってうれしいです…!
今日は、『THE TEAM』に書かれている内容をもとに「NMB48の変革プラン」を提案していただけるんですよね?
麻野さん
はい。頭文字がABCDEから始まる「チーム運営の5つの法則」に基づいて、NMB48のチームづくりのアドバイスをさせてもらおうと思ってます。
THE TEAM 5つの法則チーム運営の5つの法則とは?
A:Aim(目標設定)の法則
B:Boarding(人員選定)の法則
C:Communication(意思疎通)の法則
D:Decision(意思決定)の法則
E:Engagement(共感創造)の法則
小嶋さん
すごい…やるからには本気で取り組みたいので、よろしくお願いします!
麻野さんによる「NMB48チーム変革講義」開講です!
NMBの変革プラン① リーダーが心底語れる「意義目標」を設定する
麻野さん
まず、チームづくりでもっとも大事なのが「Aim(目標設定)の法則」です。
チームは、人が集まって「共通の目標」を持ったときに初めて“チーム”になると思ってます。
今NMB48として達成したい目標ってどんなことがありますか?
小嶋さん
ここ3年くらいNMB48がずっと掲げているのは、「京セラドームに立つ」っていう目標なんですよ。
ただ、何のためにそれを目標にしているのかが、正確には見えていなくて…
麻野さん
目標には、「行動目標」「成果目標」「意義目標」という3つがあって。
イメージしやすい例を挙げるなら「3人のレンガ職人」という話があります。
麻野さん
組織が同じ方向を向くためには、「意義目標」がとくに重要なんです。
僕、かつてのAKB48は、この意義目標がとても明確だったなと思っていて。
麻野さん
当時のリーダー・高橋みなみさんが個人的に語っていた意義目標が、「努力は必ず報われると私の人生をもって証明します」ということ。その言葉に込められた方向性に共感していたメンバーも多かったんじゃないかと推測します。
そして成果目標が「東京ドーム公演」でした。AKB劇場と東京ドームまでの距離「1830m」をどう埋めるか…それがメンバーだけじゃなくてファンの方々にも共有されて、みんなで工夫を重ねてましたよね。
AKB48の3つの目標設定
意義目標:努力は必ず報われることを証明する
成果目標:東京ドーム公演
行動目標:AKB劇場と武道館の距離「1830m」をどう埋めるか
小嶋さん
たしかに…
それでいうと、NMB48の「京セラドームに立つ」は成果目標になりますね。
麻野さん
小嶋さん的には、「京セラドームに立つことの意義」ってなんだと思いますか?
小嶋さん
やっぱり大阪を代表するアイドルとして、まずは関西の方たちに愛されたい。
自分たちにしかない「お笑い」だったり「パフォーマンスの力強さ」だったりを、たくさんの方にお届けしたいと思ってます。
麻野さん
素晴らしいと思います。
「意義目標」は耳触りのいい言葉よりも、多少ベタでもいいしわかりにくくてもいいので、リーダーである小嶋さん自身が「これをやりたいんだ」って心の底から言える言葉を掲げることが大事です。
ここまでの流れをふまえると、NMB48の3つの目標はこんな感じでしょうか。
NMB48の3つの目標設定
意義目標:関西にパワーを届ける
成果目標:京セラドームに立つ
行動目標:日々のアイドル活動
小嶋さん
私の願いを目標にしてしまっていいんですかね…?
メンバーのみんなと話し合って意義目標を決めたほうがいい気もするのですが…
麻野さん
みんなで話し合うことも時には大切ですが、最終的には正解を探すんじゃなくて、小嶋さんが「コレで行く」と決めて、それを正解にすることが大切だと思います。
麻野さん
「Decision(意思決定)の法則」には3つの意思決定の方法がありますが、物事が停滞している時には、みんなで話し合って決める「合議」では物事がなかなか前に進まないことが多くて。
速くて強い決断をする「独裁」のリーダーシップが、停滞している状況の打破に繋がりやすいです。
THE TEAM 5つの法則3つの意思決定
独裁:誰か1人が意思決定する
多数決:投票で決める
合議:話し合いで決める
麻野さん
停滞期は、リーダーに権限を集めて大胆な変革に向けた意思決定が必要になります。
なので「小嶋さんとプロデューサーさえいれば、いろいろなことがどんどん決めていける」みたいになると、すごく変わるんじゃないかなって思いますね。
NMBの変革プラン② チーム全員が同じ温度感で「意義目標」を語る
小嶋さん
メンバーみんなが同じ温度感で同じ目標に向かうためには、どうしたらいいでしょうか?
じつは最近、卒業の多さに悩んでいて…みんながバラバラな気がするんです。
麻野さん
小嶋さんの悩み、企業の経営者みたいですね(笑)。
実際、「新卒入社が3年以内に辞めちゃう」とか離職率の高さに頭を悩ませる経営者は多いんですよ。
それを改善するのがチーム目標への共感を高める「Engagement(共感創造)の法則」です。
人を動かす「4P」とは? チームづくりのプロ・麻野耕司が語る“人を巻き込む3カ条”|新R25
凡人が天才を巻き込むには?
「Engagement(共感創造)の法則」この記事で詳しく語られています
麻野さん
チームのエンゲージメントを高めるには、「やりたいな」と思える“目標の魅力”を高めるか、「実現できそうだな」と思える“達成可能性”を高めるか、「やらないとヤバいな」と思わせる“危機感”を高めるか。
このどれかしかないんですよね。
麻野さん
小嶋さんでいうと、「関西にパワーを届ける」という“目標の魅力”を高めて、「そこに向かって少しずつ前に進めているんだ」と思える“達成可能性”をみんなに共有していくことが大事な役割なんじゃないかなと思いますね。
小嶋さん
なるほど…!
でも一部のメンバーには共有できても、チームメンバーみんなに私の思いを共有するのってなかなか難しくて…
麻野さん
みんなに一気に共有するんじゃなくて、「京セラドームにどうしても立ちたい」「関西にパワーを届けたい」って思うメンバーをちょっとずつ増やしていくのがいいと思います。
今NMB48って、チーム分けされてますか?
小嶋さん
はい。「TeamN」「TeamM」「TeamBⅡ 研究生」の3チームに分かれていて、各チームにリーダーと副リーダーがいます。
麻野さん
その仕組み、すごくいいと思います。
「Communication(意思疎通)の法則」には、チーム内の人と人を結ぶ「コミュニケーションライン」という考え方があって。
麻野さん
たとえば2人ならコミュニケーションラインは1本。5人なら10本。10人なら45本。
じゃあそれが仮に48人になるとどうなるかというと、1128本になるんですよ。
小嶋さん
え〜! 一人で全員とコミュニケーションとるのは無理ですね…
麻野さん
そうなんですよ。
でもチームを3つに分けると、コミュニケーションラインが約3分の1の363本まで減るので、3倍マネジメントがしやすくなります。
麻野さん
まずは、各チームのリーダーが小嶋さんと同じ温度感で目標を話せるように意思疎通をはかって、共感の火種をちょっとずつ広げていきましょう。
そうすれば、その先のメンバーにも小嶋さんの思いが効果的に伝わっていきます。
小嶋さん
なるほど!
さっそくチームリーダーを集めて、私の思いを話してみようと思います。
麻野さん
とてもいいと思います。やる気って伝播していくんで。
徐々に広げていって48人中25人ぐらいがそう思えたら、あるとき臨界点を超えて48人みんながそう思うようになりますよ。
NMBの変革プラン③ 「変えられるもの」にエネルギーを注ぐ
小嶋さん
今日はありがとうございます。
これまでずっと空回りをしていた気がしてましたが、だんだん希望の光が見えてきて…泣きそうです…すみません。
気持ちがあふれでる小嶋さん
麻野さん
小嶋さんが本気でチームと向き合っている証拠だと思います。
僕は、「変えられるもの」を信じてエネルギーを注ぎつづけていけば、NMB48も必ずチーム変革できると思ってます。
小嶋さん
変えられるもの…?
麻野さん
「自分」と「未来」です。逆に変えられないのは「他人」と「過去」。
停滞期とかモチベーションが低いときって、チームの中で「変えられないもの」の話がめっちゃ増えてくるんですよ。
「昔はこうだったのに…」「まわりが協力してくれない」とかね。
小嶋さんはあんまりそれに引っ張られないでください。
小嶋さん
わかりました。
ただ、ほかのメンバーが“変えられないもの”に囚われてしまったとき、どう打破すればいいのでしょうか…?
麻野さん
各チームのリーダーが、その呪縛を説いてあげることですね。
たとえば「あの目標は無理じゃない?」「現場のこと全然見えてないよね」ってメンバーが言いはじめたら、「その気持ちはわかるけど、まずは変えられるものに集中しよう。たとえばこんなやり方をすれば目標達成できると思うから、一緒に頑張ってみようよ」とマインドセットしてあげましょう。
麻野さん
そうやってチーム全体で未来に向かってエネルギーを積み上げていけたら、ファンの方々もその姿に共感して、一緒に積み上げてくれる人たちが必ず増えていくと思うんですよね。
小嶋さん
そっか…今まで「メンバーをどうやって変えようか」ということばかりに縛られていて、自分のなかでの変革が足りなかったんですね。
小嶋さん
今日伺ったこと、メンバー・ファンの方・スタッフさん、みんなで“チーム”になるために、できることはすべてやってみます。
もしもNMB48が変われたら、そのときは絶対に報告させてください…!
麻野さん
僕、いろいろな企業の経営者の方の相談に乗る仕事をずっとやってきたんですけど…
小嶋さん、経営者みたいでした。ホンマに真剣にやってんねんなって思いました。
いい報告を待ってます!
悲喜こもごも、アイドルのチームづくりに奮闘する小嶋さん。
リーダーならではの悩みや責務をかかえる姿に、共感した企業のチームリーダーもいらっしゃるのではないでしょうか…?
ほとんどドキュメンタリーな(?)小嶋さんのYouTubeチャンネル『小嶋 花梨 / Kojima Karin』では、麻野さんによる「NMB48変革プラン」の様子を動画でも観られます。
前編はこちら
後編はこちら
小嶋さんはこれから“自分”と“未来”をどのように変えていくのか…NMB48から、今後も目が離せません!
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