ビジネスパーソンインタビュー
地方移住に新風…!
移住経験者・紗栄子も「挑戦してみたい」と言った、福島12市町村での新しい“キャリアの開拓”
新R25編集部
“自分らしい生き方”を求める若者たちの間でムーブメントになっている地方移住。
いま、20代〜40代の働き盛り世代の移住先として、福島12市町村が選ばれていることをご存じでしょうか?
震災と原発事故から約12年が経ち、94%の箇所で復興工事が完了。地域色を生かした新しいチャレンジができる場所として、移住者が増えています。
特筆すべきは支援制度。単身120万円・一世帯200万円の「移住支援金」や、最大400万円までの「起業支援金」など、移住者の新しいチャレンジを応援する制度が充実しています。
支援も頭脳も環境もある。福島は今、“若者が挑戦できるまち”になっていた…!|新R25
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…とは言っても、「今すぐ福島に移住しよう!」となれない理由はたくさんあるし、みんながどんなふうに移住を決めているのか気になる方もいるはず。
そこで、牧場運営に携わるために自らも栃木に移住した、モデルで実業家の紗栄子さんに聞き手に立ってもらい、福島移住の魅力を深掘りしていただくことに。
【紗栄子(さえこ)】1986 年 11月16日宮崎県生まれ。モデルやタレント、実業家として活躍。アパレルやコスメを中心にさまざまな商品プロデュースを手掛ける。支援活動にも10年以上携わり、2019年には一般社団法人「Think The DAY」を設立。栃木県にて、「NASU FARM VILLAGE」の運営にも参画。どの分野に関してもつねに情報を発信し、活動の幅を広げている。
「ふくしま12市町村移住支援センター」のセンター長・藤沢烈(ふじさわ・れつ)さんとの対談を通して、移住希望者が気になる「福島12市町村での暮らしや働き方」をじっくり聞いていただきました。
「心が震えたら、飛び込むに尽きる」紗栄子が栃木移住を決めた理由
藤沢さん
紗栄子さんは、東京から栃木に移住されたんですよね?
紗栄子さん
はい。3年ほど前に栃木に移住して、今はいくつかの拠点を持ちながら生活しています。
栃木で『NASU FARM VILLAGE』という、馬とのふれあいを楽しめる牧場を運営しているんです。
NASU FARM VILLAGE
栃木県大田原市に位置する草原の緑と空の青がどこまでも続く牧場で、那須野原ヶ丘の風を感じながら、乗馬体験やカフェの利用などをお楽しみいただけま
紗栄子さんが保護馬たちのセカンドライフを提供する場を目指して、2020年から運営する観光牧場。ホーストレッキング・カフェ・ウェディングフォトの撮影などを楽しむことができます
藤沢さん
移住はどのように決断されたんですか?
紗栄子さん
きっかけは、乗馬をするために訪れていた当時の牧場の経営者が代わるかもしれず、そうなるとそこにいる従業員や馬たちの将来が危ないかもしれないという話を聞いたことなのですが…
周囲には反対もされましたが、いてもたってもいられず、私が経営を預からせていただくことになり、「私が守りたい、とにかくやろう」という思いで移住しました。
藤沢さん
すばらしい考えと行動力ですね。
移住に際して、「うまくやっていけるだろうか…」というような不安はなかったんですか?
紗栄子さん
まったくなかったと言えば嘘にはなりますけど…不安とかリスクを言いだしたらキリがないんですよ。
牧場の経営はもちろん未経験だったのですが、「馬たちが安心して生活を送れる牧場を早くつくらなきゃ」という使命感を勝手に感じていました。
そんな、自分が使命を感じたり心が震えたりしたことには、飛び込んでみるに尽きる。
挑戦することでコミュニティも広がっていって、だんだん自分の居場所になっていったんですよね。
移住経験者・紗栄子さんが、福島12市町村への移住で知りたい4つのこと
藤沢さん
私は普段、「ふくしま12市町村移住支援センター」のセンター長として、福島12市町村への移住を支援しているんですけど…
ふくしま12市町村移住支援センター
ふくしま12市町村移住支援センターでは、働きたくなる、暮らしたくなる、チャレンジできる12市町村を共に創ることを通じて福島の復興と創生を進め
2021年7月に開所した移住支援センター
藤沢さん
移住希望者のための情報を発信したり、実際に現地の空気を体感してもらえるツアーを企画したりしているのですが、まだまだその魅力が届ききっていないと思っていて。
移住経験者である紗栄子さん目線で、福島12市町村に移住するとしたら、どんなことが気になりますか?
仕事:地域文化と移住者の力で新しい産業が生まれている
紗栄子さん
そうですね…まず気になるのが仕事です。
福島12市町村には、どんな選択肢があるんですか?
藤沢さん
今なら、地域課題の解決や場づくりに関わる「まちづくり」の仕事が人気ですね。
最近では、ドローンやロボットなど先端技術の分野でも面白い動きがでてきています。
世界中から研究者を集めて研究機関をつくって、そこで得た知見をもとに地域で新しい産業をつくっていく予定なんですよ。
藤沢さん
あとは、自分で起業される方もたくさんいます。
福島12市町村には、日本でトップクラスの「起業支援金制度」があるので、少ない自己負担で新しいチャレンジができるんです。
たとえば、江戸時代から“馬は家族”の文化が根付いている南相馬市では、紗栄子さんのように馬とふれあえる観光事業をおこした方もいるんですよ。
「馬は家族」の文化がある南相馬から、起業家として、馬術選手として世界を目指す
移住のきっかけは?起業型地域おこし協力隊「Next Commons Lab 南相馬」の存在を知ったこと移住して良かったと思う瞬間は?チャレン
馬術競技で日本一になったキャリアの持ち主が、「馬の社会的価値を高める事業を発信したい」との思いで、観光として乗馬を楽しめる事業を立ち上げたのだそう
紗栄子さん
へぇ〜…!
南相馬市の文化と移住者の力で、まちづくりがおこなわれているんですね。
紗栄子さん
今って、農業のような一次産業をやりたくて移住する若い子たちも多いと思うんですけど…
農業未経験の方が、行ってすぐに働けるような環境も整っているんですか?
藤沢さん
いきなり新規就農は難しいと思うので、まずは働きながら学べるような農業法人を紹介させていただきます。
福島12市町村は土地も広大ですし、温度管理や農薬の散布などをロボットで操作できる「スマート農業」にも力を入れているので、今後もっと農業が発展していくと思いますよ。
紗栄子さん
既存の仕事をするにしても新しく何か始めるにしても、場所も環境も整っているし、支援制度も充実していると。
そういう後押しは、安心材料になると思いますね。
藤沢さん
福島12市町村って、想像力を形にできる場所なんですよ。
当センターはもちろん、地元住民や先輩移住者も、みんなでフォローする基盤があるので…何かチャレンジしたいことがある方は、安心して飛び込んできてほしいですね。
住居:空き家の改修支援や、家賃補助など手厚くサポート
紗栄子さん
あと私にとって、仕事と同じくらい大きな壁になっていたのが住む場所で…
土地勘もないし、どういう家があるのかもわからない。それがすごく不安だったんです。
住宅のサポートとかもあるんですか?
藤沢さん
もちろんです。我々移住支援センターでもサポートしていますし、福島12市町村それぞれにも窓口があって。
そこで各地域の空き家を集めた「空き家バンク」の情報をお伝えしたり、賃貸住宅を紹介したりしているんですよね。
それから、住宅にまつわる支援制度も充実していまして…
藤沢さん
空き家の場合、改修する際にかかる「改修費補助制度」は最大250万円。賃貸の場合には、「家賃補助制度」を月に最大4万円受けられる市町村もあります。
少ない負担で新しい住居を構えられるんですよね。
藤沢さん
もちろん復興途中の場所もあるので、すべてのインフラが整っているまちばかりではありません。
ただ、だからこそ「新しいまちをつくっていこう」という想いを持つ人たちと一緒に暮らしながらまちづくりに参加する、面白い体験ができると思いますよ。
人:「受け入れられていない感覚になったことはない」
紗栄子さん
私のまわりにいる福島県出身の方は、とっても優しくてチャーミングでユーモアのある方たちばかりなんです。
こういう方が多いなら、移住しても温かい気持ちで過ごしていけそうだなって思うんですけど…地元の方は、移住者を快く受け入れてくれるものなのでしょうか?
藤沢さん
移住者はよく、「受け入れられていない感覚になったことはない」っておっしゃってくれるんです。
福島12市町村のみなさんは、震災によって地元を離れて違う場所に住まざるを得なかった経験をされている方が多くいるので…
よそから入ってきた人の気持ちをわかっているんだと思います。
紗栄子さん
移住支援センターでも、地域の方に溶け込みやすくするためのサポートをされているんですか?
藤沢さん
まさにいま、地域の方とつながっている先輩移住者たちを介して、新しい移住者が地域の方とつながれる仕組みを準備しているところなんです。
たとえばゴミ出しとか、まだルールが見えにくい地域もあったりするんですけど…そういう細かいところも先輩に聞きながら学んでいけます。
紗栄子さん
同じ移住者なら、たぶん同じ悩みを経験してこられているはずなので…
近くにいてくれるとすごく安心だし、頼りやすいですよね。
まち:国の協力のもと、地元住民と新しい移住者が手を取り合って復興の最中
紗栄子さん
いま、復興の状況はどうなんでしょうか?
藤沢さん
徐々にではありますが、生活の基盤が整ってきています。
復興の大きな転機になったのが、鉄道の復旧。
東京と仙台間を結ぶ「常磐線」が全線復旧したことで、少しずつお店も増えて、だんだんまちができてきたんですよね。
藤沢さん
ただ、すべての人に戻ってきてもらうのはやっぱり難しくて…
もともと双葉郡8町村には8万人ぐらいの方がお住まいだったんですけど、戻ってきたのはまだ2万人弱ぐらいなんです。
だから今、国の協力のもと手厚い支援制度を用意して、地元住民と移住者が手を取り合って、新しいまちづくりをしている最中なんですよ。
紗栄子さん
“チームの力”があってこその復興ですよね。
『NASU FARM VILLAGE』も、私ひとりの力だけではなく、従業員のみんなやクラウドファンディングで応援してくださった方々の力をお借りしないと不可能でした。
地域だけじゃなくて、さまざまな企業の方々や国の力も借りて、みんなでやっていく。福島12市町村には、そんなチームのエネルギーを知っている方がたくさんいらっしゃるんでしょうね。
月1回の来訪でもいい。地方移住の一歩目は「同じ生活を体験してみること」
紗栄子さん
もし地方移住で悩んでいるなら、郷に従うじゃないですけど、実際に行って地域の方と同じ生活をしてみるのがいいと思います。
何度か通って、まちのみなさんとコミュニケーションを取ってみて、地域の空気を感じてみる。
すぐに移住まで踏み切れないなら、デュアルライフのように拠点をいくつか持つとか、いろんな形があっていいはずですし。
自分のペースで関わっていけばいいと思うんですよね。
藤沢さん
移住というと構えてしまう方が多いと思うんですけど…たとえば月1回とか年に何回か通ってくれるだけでも、とってもありがたいんです。
そういう軽めな関わり方もあることは知ってほしいですね。
藤沢さん
最後に…もしも紗栄子さんが福島12市町村に移住するなら、どんなことがしたいですか?
紗栄子さん
え〜…やりたいこと、たくさんありますよ!
最先端の技術を勉強したいですし、プライベートな時間には地域の方とコミュニケーションもとりたい。
変わっていくタイミングってまち自体にもエネルギーがあると思うので、自分の目で見てそれを感じたいし、エネルギーを持って帰りたい。
もちろん自分も復興支援をしていきたいから、できることも見つけたい…もう、一つに絞れないですね(笑)。
「福島12市町村の復興には、“自分ごと”として関わりたい」とおっしゃっていた紗栄子さんの深堀りによって、リアルに見えてきた福島12市町村への移住。
支援制度だけでなく、環境や地元住民のサポートも整っているので、何か新しいことを始めたい方にうってつけの場所です。
「移住には興味があるけど、なかなか一歩を踏み出せない」…そんな方も紗栄子さんのように、心のままに飛び込んでみてはいかがでしょうか?
〈取材=石川みく(@newfang298)/文=山田三奈(@l_okbj)/編集=福田啄也(@fkd1111)/撮影=中村和孝〉
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