ビジネスパーソンインタビュー
“クチコミサイト”にとどまらない秘密とは?
「日本には知られざる“超優良企業”がたくさんある」社員クチコミサイト・OpenWorkが日本の国力アップにつながる理由
新R25編集部
就職活動や転職活動の際、希望する企業の社員クチコミを検索したことがある人は多いはず。
社員クチコミを見ればその企業の社風やリアルをなんとなく把握できる一方、「退職者が感情的に悪口を書いてそう」「裏で企業への忖度があるのでは…?」などの疑念が拭えないのも正直なところ…。
そこで今回は、国内最大級の社員クチコミが掲載され、500万人を超えるユーザーが利用する転職・就職のための情報サイト「OpenWork」で代表を務める大澤陽樹社長に、社員クチコミに関する疑問を直撃。
【大澤陽樹(おおさわ・はるき)】1985年生まれ。東京大学大学院卒業後、リンクアンドモチベーションに入社。人事コンサルティング事業のマネジャーを経て、企画室室長に着任。新規事業立ち上げや経営管理、人事に携わる。2019年にオープンワーク副社長に就任した後、2020年より同社の代表取締役社長に就任。2022年12月 東証グロース市場に上場。
「OpenWorkの社員クチコミへの疑問をぶつける」をテーマに取材するはずが「社員クチコミを投稿&活用することが、日本の国力をあげる」という壮大な話に展開するとは、思いもしませんでした。
〈聞き手=宮内麻希(新R25編集部)〉
クチコミ数は国内最大級!でも匿名のクチコミって、本当に信用できるものなの…?
宮内
今日は社員クチコミにまつわる疑問から、キャリアアップに使える活用法まで、率直な疑問をぶつけていきたいと思っています。
大澤さん
はい、社員クチコミのことなら何でも聞いてください!
宮内
OpenWork(旧Vorkers)といえば“老舗の社員クチコミサイト”という印象ですが、どれくらいの社員クチコミが掲載されているんですか?
大澤さん
企業の社員クチコミと評価スコア数としては国内最大級で、1400万件以上にのぼります。
世界的に見ても、おそらくトップクラスに入るデータ量だと思いますね。
宮内
世界レベルのデータ量なんですね。
ただ、匿名で投稿できるので正直怪しいと思っていて…退職者が感情的にネガティブなことばかり書き込んでることが大半じゃないですか?
おそるおそる聞いてます
大澤さん
どうしてもネガティブな内容に目がいきがちなのでそう感じられる方も多いのですが、OpenWorkの実態はニュートラルな(中立的な意見の)社員クチコミが最も多く、ネガティブとポジティブは半々の割合なんですよ。
大澤さん
OpenWorkの社員クチコミがネガティブなものに偏らない理由が、弊社で「8・8・3」と呼んでいる評価項目にあるんです。
OpenWorkに投稿される内容は「8つの定量評価スコア」「8カテゴリの定性クチコミ」「3つの事実情報」に分類されます。
OpenWorkの投稿項目
【会社評価のスコア】
・待遇面の満足度
・社員の士気
・風通しの良さ
・社員の相互尊重
・20代成長環境
・人材の長期育成
・法令順守意識
・人事評価の適正感
【社員クチコミ】
・組織体制・企業文化
・入社理由と入社後ギャップ
・働きがい・成長
・女性の働きやすさ
・ワーク・ライフ・バランス
・退職検討理由
・企業分析[強み・弱み・展望]
・経営者への提言
【データ】
・年収・給与
・残業時間
・有給休暇消化率
大澤さん
この評価項目は「組織に人が属する要因」を網羅的に把握するために、国内外の研究論文を参考に定めていて、事実情報を集めながら、定性的なネガティブ・ポジティブを集められる設計になってるんです。
さらに、サービスの質を担保するために社員クチコミの項目は合わせて500字以上書くことを必須にしています。
宮内
合計500字以上となるとハードルが高いですよね…。適当に字数を稼いだような内容を投稿されてしまうリスクはないんでしょうか?
大澤さん
投稿されたクチコミは1件1件、AIの審査とスタッフによる目視でのチェックを行っているので、仮に500字以上書かれていたとしても、適当なものやコピペとわかるような質の低い内容・個人情報や誹謗中傷が入った内容は必ず審査で落としていますね。
宮内
なるほど。目視のチェックがあるのは安心ですね。
“自分だけではたどりつけない”超優良企業に出会うことができる
宮内
ちなみに…ぶっちゃけ企業との癒着はありますか?
たとえば「OpenWorkにお金を払えば自社の評価を高くしてもらえる」みたいな…
正直、まだOpenWorkを疑ってます
大澤さん
それは一切ありません。
たとえ、OpenWorkと契約してリクルーティングサービスを使ってくださっている企業のお客様だとしても、クチコミの投稿内容やスコアの数値をお金で買う事はできないですし、お客様からの削除依頼などにも一切応じていません。
OpenWorkにとって、ユーザーと投稿いただいた社員クチコミや評価スコアは命。企業と癒着すれば“OpenWorkの質が下がる=ユーザーが離れる”ので僕たちのビジネスも成り立たなくなってしまいます。なので、企業と癒着することはこの先も一切ありません。
ただ、OpenWorkで社員から評価されている、いわゆる「優良企業」への配慮はしています。
宮内
どういうことですか?
大澤さん
弊社で展開している企業向けの採用支援サービス「OpenWorkリクルーティング」では、OpenWorkの評価スコアが高い優良企業ほど多くの求職者にスカウトを送ることができるようになってるんです。
つまり、求職者からすると評価スコアが低い会社からのスカウトは届きにくくなってるんですよ。
大澤さん
OpenWorkで掲載している求人数は約54000件(2023年2月末時点)ですが、これは某大手ダイレクトリクルーティングサービスの求人数とほぼ変わりません。
他社の転職サービスとの違いは、OpenWorkは評価の良い会社からスカウトが届きやすいので、本当に行くべき良い会社を見つけることができるんです。
宮内
企業選びの参考に見るサービスだと思ってましたが、転職サービスとしても活用できるんですね。
大澤さん
日本には、まだまだ知られていない超優良企業がたくさんあります。
自分の知識や経験だけではたどりつけない会社に出会えるのは、OpenWorkならではの強みだと思います。
株式投資の判断材料にもなっている“社員クチコミ”の可能性
大澤さん
僕、会社ってパフェのようなものだと思っていて。
宮内
パ、パフェ…?
大澤さん
この前、SNSで話題になっていたチョコレートパフェを食べにお店に行ったんです。
たしかに見た目はすごく映えるしおいしそうだったんですけど、いざ食べてみたら中身がほぼすべてコーンフレークで…やられましたよ(笑)。
いや、何の話ですか?
大澤さん
企業もこれと同じで、外から見た姿やブランディングと中身がまったく違うというケースがあると思うんです。
なので、企業が謳っている「雰囲気のいい会社です」「若手で成長できる会社です」「ビジョンが素晴らしいです」というざっくりとした言葉で会社を判断するのは危険だと思っていて。
そんなときこそ、OpenWorkを活用してほしいんです。
宮内
でも、クチコミを見て“良い会社かどうか”を見極めるにはどうすればいいんですか? 結構難しそうなんですが…
大澤さん
“働く環境”という視点だと、職種、年齢、性別など自分の属性と同じ人の社員クチコミだけを20件ほどチェックするのがいいですね。
自分と同じ属性の人が、どんな仕事をやっていて、どのように成長していて、何を不満に思ってるかまで見ることをオススメしてます。
宮内
社員クチコミの内容がポジティブ・ネガティブだけで判断するのではなく、自分と同じ属性というフィルターをかけてチェックしていくんですね。
大澤さん
そうです。そしてもう一つ大事なのが、“これから伸びる会社なのかどうか”という視点。
これはOpenWorkの項目のなかでも「組織体制・企業文化」のクチコミを見るとわかります。
宮内
なぜ「組織体制・企業文化」の項目なんですか?
大澤さん
OpenWorkのスコアを使った論文で、ディープラーニングを活用して「組織体制・企業文化」項目のクチコミから企業文化が良いか悪いかを点数化して、企業の組織文化のスコアが業績や株価と相関関係にあることが証明されました。
この論文は2018年に「証券アナリストジャーナル賞」を受賞しています。
すご…
大澤さん
つまり、「組織体制・企業文化」項目のクチコミは、その会社の2〜3年後の業績予測や企業成長の予測ができるデータと言えるんです。
今では実際に、勘と経験に代わる株式投資の判断材料のひとつとして、海外のヘッジファンドにもOpenWorkのデータを購入いただいてるんです。
宮内
クチコミから会社をそこまで知ることができるなんて初めて知りました。
大澤さん
あと、“いい会社”かどうかのわかりやすいチェックポイントとしては、要注意ワードに着目してみてください。
【要注意ワード①】
イエスマン、顔色、機嫌、相続、会長、ワンマン、権力 など
【要注意ワード②】
精神論、昭和、アナログ、マニュアル、古い体質、古臭い、昔ながら、旧態依然 など
大澤さん
これらは、OpenWork上の評価スコアが下位5%の上場企業の社員クチコミに頻出するワードなんです。
ほんの一部であれば問題ありませんが、20件程度見て、7〜8割がこのような内容だったら危ない会社かもしれません。
OpenWorkが、キャリアの棚卸しや自己理解にもオススメな理由
大澤さん
さらにオススメなのが、自分がどんなキャリアを歩んでいきたいのかについて“自己理解”を深めるためにOpenWorkを活用いただくことです。
宮内
クチコミサイトで“自己理解”ってあまりイメージが湧かないんですが…
大澤さん
OpenWorkで記入する社員クチコミ項目って、普段はなかなか考えないようなことも多いんですよ。
「あなたの会社の企業風土どうですか?」「経営者へ何か提言してください!」なんて飲み会では絶対言われないじゃないですか(笑)。
そんな飲み会想像しただけでイヤです
大澤さん
OpenWorkでは普段聞かれないような項目をズケズケ聞いていくので、「社員クチコミを書いているうちにキャリアの棚卸しができた」というユーザーさんがすごく多いんですよね。
“項目”という物差しがあることで、自分が今何に満足していて、どんなことに不満を持っているのか自然と言語化できるんです。
宮内
なるほど。
大澤さん
自分にどんな会社が合ってるのかわからないという人は、いろんな会社のクチコミをひたすら眺めるだけでも、好きな会社とそうじゃない会社の雰囲気がわかると思います。
大澤さん
多くの人は年収や仕事内容や福利厚生のようなハード面を気にして会社を選びますが、実際の退職理由は人間関係や社風、成長環境など、ソフト面の原因が多いのが事実。
ミスマッチを防ぐ意味でも、OpenWorkで社員クチコミを見たり、実際に自分で書いたりすることで、自分のキャリアにおいて何が本当に大切なのかを見つけていただけたらうれしいです。
みんなが楽しく働ける“ポジティブな日本”をつくっていく
宮内
お話を聞いて、OpenWorkというサービスのイメージが変わりました。
企業の評判チェックだけでなく、転職活動や自分自身のキャリアアップのツールとしても活用していきたいです。
大澤さん
僕たちは、OpenWorkを通じてこれから日本を支えていく人たちがポジティブに働ける社会をみなさんと一緒につくっていきたいと思っています。
社員のウェルビーイング(幸福度)を図る国際調査「エデンレッドイプソスバロメータ」で、日本はダントツの最下位でした。
でも僕は、日本には“本当に幸せに働ける会社”もまだまだたくさんあると信じてるんです。
大澤さん
OpenWorkが浸透すればするほど、社員や元社員に評価される誠実な経営をしている“良い会社”に“良い人”が集まり、逆にそうではない会社は淘汰されていく。
すると、良い会社や良い仕事、ポジティブに働く人が増え、働きがいも生産性も高まっていくと思うんです。
宮内
OpenWorkにデータが増えれば増えるほど好循環が生まれますね。
大澤さん
そうなんです。
だからOpenWorkを広げることは、日本を元気にして国力を上げることにもつながります。
みんなが楽しく働き、豊かな生活ができる国をユーザーのみなさんと一緒に実現したいきたいですね。
取材中、学生時代「自分は社会に出たら絶対に楽しく働くぞ」と意気込んでいたことをふと思い出しました。
あれから数年、ライフステージや仕事上の立場の変化によって、“責任”や“収入”など大切にしたいことが変わりはじめている自分がいるのもまた事実。
だけどやっぱり、“良い仕事”は“楽しく働くこと”から生まれると思うんです。
OpenWorkが実現したい未来に共感できた方はぜひ、“自分の会社についてクチコミを投稿してみる”という小さなアクションからはじめてみるのはいかがでしょうか?
〈取材・編集=宮内麻希(@haribo1126)/文=エディット/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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