ビジネスパーソンインタビュー
若手社員でもプロジェクトリーダーになれるって本当?
「おカタい大企業」なのかと思いきや…OpenWorkの社員クチコミから見えてきた、日立製作所の“先進的すぎる実態”
新R25編集部
就職活動や転職活動の際、希望する企業の社員クチコミを検索したことがある人は多いはず。
社員クチコミを見ればその企業の社風や働きがい、ワークライフバランスといったリアルな声をなんとなく把握できる一方で、「退職者がネガティブなことばかり投稿してるんじゃないの?」などの疑念がぬぐえないのも正直なところ。
一方で、以前新R25の取材でOpenWorkの大澤陽樹CEOが「社員クチコミを活用した転職がスタンダードになりつつある」とも発言しています。
そこで新R25では、OpenWorkとのコラボ企画として“社員クチコミを活用し、自分に合った転職やキャリアアップ”について考える連載を開始します。
本連載では、社員クチコミを活用した転職やキャリアアップのノウハウのほか、注目企業の社員クチコミがどれだけ企業のリアルなのかについても企業の人事担当者に直撃取材。
社員クチコミの可能性をさまざまな角度から発信していきます。
第3回となる今回は、株式会社日立製作所(以下「日立」)のOpenWorkに寄せられた社員クチコミの真相について、同社人事勤労本部 タレントアクイジション部の草葉さんに聞いてみました。
まずは草葉さんに、日立の社員クチコミの頻出ワードを見ていただいたところ…
「社会イノベーションという言葉は日立がとても大切にしている概念なので、クチコミで多く挙がっていてうれしいです」とのこと。
一方で、「古い」「保守的」というキーワードもちらほら。これを読んでいるみなさんも、よくも悪くも“日立=伝統的な大企業”と思っている方が多いのではないでしょうか。
しかし…草葉さんがクチコミをもとに語ってくれた“日立の実態”は、そんなイメージを覆すような意外なお話ばかりでした。
答えてくれたのはこの方!
【草葉博江(くさば・ひろえ)】2015年に重工メーカーに新卒入社。営業を経験したのち、総合人材サービス企業へ転職。おもにIT業界の大手~中小企業の採用支援やキャリアアドバイザーとして、求職者の転職支援をおこなう。 2022年5月に日立製作所へ入社。経験者採用におけるリクルーター業務、採用ブランディング施策の立案・実行を担当
【働きがい・成長】若手でも大きな仕事にチャレンジできるってホント…?
日立の「働きがい」について、OpenWorkではこんなクチコミが。
・“
社会イノベーション事業
”を銘打っているとおり、社会に大きなインパクトを与える仕事を裁量持って実行することができる。(営業・男性)
・社会イノベーションに注力しているため、仕事のサイズは大きいが、
個人の裁量は小さい
。バリューチェーンが細分化されているため、そもそも仕事の全体が見えにくい中、若手は歯車の一部となるので全体の動きが見えず、やる気を失うケースがある。(主任・男性)
「社会的インパクトが大きい仕事ができる」という声がある一方で、「規模が大きいがゆえに裁量が見えにくい、部門によって違いがある」という声も…。実際はどうなのか、草葉さんに伺ってみました。
――(編集部)日立では、若手のうちから社会的インパクトの大きい仕事に関われる機会があるのでしょうか?
草葉さん
日立は幅広い領域において、社会や顧客の課題を解決する社会イノベーション事業を推進しているので、社会的インパクトの大きい仕事がたくさんあるのは間違いありません。
組織文化としても、年齢に関わらず、チャレンジしようとする人に機会を与える風土があると感じています。
実際、経験者採用で入社したメンバーが、早期に裁量と責任のあるポジションについているケースが多々あります。
社内の「公募制度」を活用し、自身のスキルや経験を踏まえて、それぞれが希望するポジションにチャレンジしていくことも可能です。
そのような挑戦を支援できるのは、組織として品質管理や業務管理のプロセスがしっかり整っており、周囲からのサポートを受けられる環境であることも大きいのかなと思います。
――(編集部)一方で、「人の裁量の見えにくさ・部門による違いの大きさ」という課題感に対してはどのように捉えているのでしょうか。
草葉さん
従業員のキャリアについては、新卒・経験者採用問わず、「自分のキャリアを自分でつくる」という意識を持つようにお伝えしています。
そのために、日立を通じて社会に何を提供したいのか(Will)、そのために必要なスキルは何か(Can)、社会やお客さまから何を求められているのか(Must)という、“キャリアパス”を考えるための診断や漫画といったコンテンツを掲載したサイトを運営していたり、人事制度を設計したりしています。
キャリアパスを考えるなかで新たなチャレンジをしたくなった場合は、社内公募を活用したり、上長とのキャリア面談での相談が可能です。
手を挙げる人には年次に関わらずチャンスを与える風土がある一方で、手を挙げなければなかなかまわりに想いが伝わらないこともあると思います。
ぜひ積極的に挑戦したいことを発信し、みずから裁量をつかんでいただきたいですね。
【企業文化】「ぶっちゃけ“年功序列”なのでは」と思いきや…
企業文化については、OpenWorkのクチコミでも意見が分かれているのが印象的です。
・数年前までは典型的な日本の大企業(階層、縦割り)であったが、
近年は改革意識が高く比較的フラットな風土になりつつある
。(技術・男性)」
・
会社が変わろうとする意思を感じます
。チーム内でも挑戦が賞賛されますし、若手の自由な発想も歓迎してくれ雰囲気がいいです。また、褒めて伸ばす教育方針を強く感じます。(管理部門・女性)
「縦割り・年功序列が残る」など、ある種“大企業らしい”クチコミもある一方で、「近年は改革意識が強い」といった投稿も目立ちます。一体、今の日立では何が起こっているのでしょうか…?
――(編集部)日立では、どんな組織改革を進めているのでしょうか?
草葉さん
日本の社会課題や、事業や従業員の変化を受けて、現在の日立では「ジョブ型人財マネジメント」を推進しています。
具体的には、「職務と人財の見える化」「アップスキル・リスキル教育の強化」「ジョブを明確にした採用・配置」などに取り組んでいます。
草葉さん
グローバルな事業成長を実現するためには、従業員1人ひとりの成長が不可欠です。
社員1人ひとりの意識変革と行動変容を促し、個人のパフォーマンスを最大化することで、組織全体の成長につなげています。
――(編集部)社員の成長サポートとして、「研修制度」についてもポジティブなクチコミが多く挙がっていました。日立では、どのような研修をおこなっているのでしょうか?
・日立グループ会社に
研修専門の子会社
があり、社外の研修も含めて多様なカリキュラムが選択可能。財務や法務、アントレプレナー、新規事業創生など多様な選択肢がある。(企画・男性)
・年次や組織から期待されるキャリアに応じたものだけでなく、
自身で希望したものも(100%ではないが)研修を受講することができる
。(システムエンジニア・男性)
草葉さん
日立グループには、グループ内の人財育成プログラムの開発・運営を担う「日立アカデミー」という会社があります。
ビジネススキルや語学、アプリケーションの利用方法やプログラム言語まで約1300コースの研修コースを提供しており、グループで年間約15万人弱の従業員が受講しています。
――(編集部)クチコミでは、「キャリア自律」に関する声が多いのが特徴的でした。研修制度もその1つかと思いますが、ほかにはどんな取り組みをされているのでしょうか。
・各職位において常に成長を求められる環境であり、挑戦意欲があればいくらでも業務の幅を広げることが出来た。どちらかと言うと、専門職能毎にキャリアを積んでいくスタイルが中心であったが現在はジョブ型雇用へ移行中で、
自分のキャリアプランは自分自身で考えていく方向
に変わりつつある。(調達・男性)
・ジョブ型雇用を積極的に推進しており、社内の雰囲気も変わりつつある。
キャリア自律の重要性は日々感じている
。(人事・女性)
草葉さん
「ジョブ型人財マネジメントの転換」 に向けて取り入れた施策のうちのひとつが、2022年10月より日立グループ向けに導入した学習体験プラットフォーム「LXP」です。
自律的な学習、アップスキリング、リスキリングの促進のために、AIが従業員1人ひとりのスキルやニーズに合わせた学びを提供します。また、上司や同僚、自分と似たようなスキルを学ぼうとしている社員や志向性の近い社員の学習状況を見ることもできます。
ほかにも、業務時間内に別部署の仕事ができる「社内副業制度」や、日立の事業領域以外で新たな挑戦ができる「社外副業制度」など、23年度以降もさまざまな施策の導入を予定しています。
――(編集部)なるほど。そのような取り組みもあって、「キャリア自律」に関するクチコミがたくさん投稿されているんですね。
草葉さん
そうですね。社内の改革に伴い、社員にも変化が生まれています。
実際に社員の半数程度が、必要なスキルの獲得に向けて業務以外で具体的な行動に移しているというアンケート結果も出ているんですよ。
――(編集部)一方で、歴史の長い企業だからこそ、残すべき「伝統」や「文化」も多くありますよね。
時代に合わせて変えていくところと残すところは、どのように線引きしていますか?
草葉さん
変革のさなかであっても、日立が社会において果たすべき使命は変わらないと考えています。
日立には「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という企業理念があります。
この企業理念は、時代を経ても何も変わっていません。
――(編集部)“変わらない使命”のひとつとして、クチコミでも多く上がっていたのが「和・誠・開拓者精神」という言葉です。この言葉にはどんな意味が込められているのでしょうか?
・「和・誠・開拓者精神」を体現している。社会価値・環境価値・経済価値を経営計画で重視しているが、正しくこの順番で物事の需要度を判断していると思う。
多少利益が出なくても、本当に社会によいことをやっている
。(人事・男性)
草葉さん
「和・誠・開拓者精神」は日立創業の精神であり、100年を越える歴史のなかで大切に育んできたものです。
「和」は他人の意見を尊重しつつ、偏らないオープンな議論をし、一旦決断に至れば、共通の目標に向かって全員一致協力すること。
「誠」は他者に責任を転嫁せず、つねに当事者意識を持って誠実にことに当たることで、社会から信頼を勝ち得るための基本姿勢。
「開拓者精神」は、未知の領域に独創的に取り組もうとすること。つねに専門分野で先駆者でありたいと願い、能力を超えるような高いレベルの目標に挑戦する意欲のことです。
この言葉を社内で見聞きする機会も非常に多く、従業員間のコミュニケーションでも自然に使われています。
新卒・経験者問わず、入社時の研修においても行動指針や判断基準となる考え方として共有しています。
加えて、Global Logicなど新たに日立グループに加わった企業に対しても、日立グループのパーパスを共有することで、グローバルでの“Hitachi Culture”の浸透を図っています。
――(編集部)ジョブ型雇用が進むと、必然的に雇用の流動性が上がると思います。正直なところ、転職や終身雇用制度についてはどう考えていますか?
草葉さん
入社は「就社」ではなく「就職」であり、キャリアアップのために日立の外に活躍の場を求めることや、一度退職した社員がふたたび戻ってくることはまったく悪いことではないと考えています。
実際に日立では、2023年3月から「アルムナイネットワーク(退職者ネットワーク)」を運用し、入社から退職まで一直線の型ではない、より柔軟なキャリア形成を促進しています。
さらに、経験者採用も拡大していて、2015年度に150名だった経験者採用人数を、2023年度には600名に増やす予定です。
これにより、日立としては初めて、新卒採用と経験者採用の比率が1:1になります。新卒・経験者を問わず優秀な人財が集まる会社になるよう、私たちも頑張っていきます!
“社員クチコミ”について会社の人事ってぶっちゃけどう思ってるの?
――(編集部)OpenWorkの社員クチコミをもとに企業の実態についてお伺いしてきましたが、人事目線でクチコミをご覧いただいた率直な感想を教えてください。
草葉さん
日立の“リアル”が反映されたクチコミばかりだと感じました。
「社会に大きなインパクトを与える仕事を実行できる」といったクチコミには、まさに日立らしさが表れていますし、「和・誠・開拓者精神」など、日立が一貫して大切にしている価値観に触れたクチコミが多いのも、日立ならではかなと思います。
また、「社内の雰囲気が変わってきている」というクチコミからは、変革を進めるうえでの変化を社員も感じてくれていることが伝わってきて、人事としてもうれしく思います。
――(編集部)ぶっちゃけ、このようなサイトの存在を企業人事としてどのように捉えていますか?
草葉さん
私自身、経験者採用で日立に入社しているので、OpenWorkさんのクチコミを拝見していました。
職場のリアルを知るという点では、こういった社員・元社員のクチコミが候補者の方にとって非常に有用な存在になると感じています。
採用においても、カルチャーや大変なところもご理解いただいたうえで選考に参加いただけるので、ミスマッチが起こりづらくなるのではと思います。
“社員クチコミをチェックする”以外にもこんなに。新R25読者にオススメなOpenWorkの使い方3選
①OpenWorkで転職する
OpenWorkで掲載している求人数は約55,000件(2023年5月時点)。
企業向け採用支援サービス「OpenWorkリクルーティング」ではOpenWorkの評価スコアが高い優良企業ほど多くの求職者にスカウトを送ることができるようになっているので、評価の良い会社からスカウトが届きやすいのがポイント。
自分の知識や経験だけではたどりつけない本当の優良企業と出会える転職サービスはOpenWorkならではです。
②これから伸びる会社かどうかを見極める
OpenWorkでは社員クチコミの投稿文だけではなく、評価スコア(数値)の8角形と総合評価点もチェックすることができます。
さらに、業界比較やこのスコアが上がっているのか?下がっているのか?「データ推移」機能を使って経年変化を分析することも可能。
今のスコアだけを鵜呑みするのではなく、成長中にある企業かどうかを見極めて企業選びをすることに活用いただけます。
実際、OpenWorkのデータを使った論文では、その会社の業績や株価と相関関係にあることが証明されており、投資先の企業選びにOpenWorkを活用する投資家もいるそう。
「組織体制・企業文化」項目のクチコミをチェックすることで、その会社の2〜3年後の業績予測や企業成長を予測するのにもオススメです。
③キャリアの棚卸しや自己理解に活用する
転職や就職の参考として読むだけでなく、1年以上同じ会社で働いたことがある方は投稿をしてみるのもオススメです。(※正社員・契約社員限定)
「どのような点に働きがいを感じましたか?」「この会社の就業経験によってどのように成長・キャリア開発できましたか?」「経営者に、この会社をより発展させるための提言をするなら何を伝えますか?」などの質問に回答するなかで、自分では言語化していなかった働くことへの考え方や自分が大切にしたい価値観に気がつくことも。
あなたのこれまでのキャリアの棚卸しにOpenWorkを活用してみるのはいかがでしょうか?
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