ビジネスパーソンインタビュー

限界まで使え。“世界の前澤”が語る「お金を増やす方法」はシンプルだった

「ちょこちょこ使ったって、何も変わらない」

限界まで使え。“世界の前澤”が語る「お金を増やす方法」はシンプルだった

新R25編集部

2018/05/15

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編集長の渡辺です。

…大変なことが起きました。『マネ凸』5人目の取材にして、一気にラスボスにたどり着いてしまったかもしれません。

きっかけは、ダメ元で会社の問い合わせフォームから取材依頼をしたことでした。でもそんな連絡、普通なら無視かサクッとお断りじゃないですか。

正直、メールが返ってくることすら期待していなかったのですが…広報の方が熱心につないでくださった結果、想定外の超ビッグインタビューが実現することに。

そう、今回のお相手はこの方です!

【前澤友作(まえざわ・ゆうさく)】株式会社ZOZO 代表取締役社長。早稲田実業学校卒業後、輸入CD・レコードの販売を開始。2000年、カタログ販売をオンライン化するとともにアパレル商材の取り扱いを始め、2004年にファッションECサイト「ZOZOTOWN」を開設。2007年東証マザーズに、2012年2月には東証第一部に上場。2017年11月、採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」を発表。プライベートブランド「ZOZO」の展開と併せて、70億人のファッションの共通課題である「サイズ問題」を世界レベルで解消することを目指している

2017年8月に時価総額1兆円を突破したスタートトゥデイを率いる前澤社長

バスキアの作品を約123億円(米国人アーティストの作品として史上最高額)で落札して世界にその名を轟かせたり、画期的な体型計測を可能にする採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」を発表してファッション業界に衝撃を与えるなど、規格外の話題を振りまいています。

日本を代表するファッション通販サイトを築き上げた前澤社長に単独取材をする機会をいただけるということで、間違っても加点を狙わない、空気のようなファッションでインタビューに臨みました。

とにかく服装に関しては「何の印象も与えないこと」が目標でした

渡辺

今日は取材を受けていただき、ありがとうございます。

ここが前澤さんの会議スペースなんですね。全面ガラス張りでエントランスからも丸見えなんで、失礼ながらはじめは喫煙室かなと思ってしまいました(笑)。

前澤さん

たしかに(笑)。

僕デスクもパソコンもないんで、オフィスに来るとここで会議しかしてないです。

渡辺

もはやスマホだけあれば十分という感じなんでしょうか?

前澤さん

はい。カバンもボールペンも持ってないですね。もう10年以上このスタイルです。

渡辺

今日は前澤さんのお金の価値観を聞きたいと思っているのですが、さっそく面白い話が聞けそうな期待感が高まっています(笑)。

前澤さん

何でも聞いてください。

「いつもお金がない」報道は本当だった。どこまで行ってもキリのない物欲

渡辺

前澤さんの資産のほとんどは経営する会社の株になると思いますが、読者が気になっているのはどちらかというと年間約35億円もある配当収入の使い道かなと。

ちなみに、ネットで「前澤氏はいつもお金がない」みたいなエピソードが書かれている記事を見つけたんですが、これは本当なんでしょうか…?

前澤さん

事実です。いっさい貯めないです

欲しいものがありすぎて、次から次へと買っちゃうんですよね。

渡辺

さ、35億円が…

前澤さん

すぐなくなります。

渡辺

デマじゃなかったんですね…

バスキアは話題になりましたが、ほかにはどんなものにお金を使うんでしょうか?

前澤さん

最近は現代アート、骨董品、家具、あとは相変わらず車もいっぱい買ってます。将来住みたい場所に土地を買ったりもしますね。

渡辺

アートも土地も、運用目的で買っているわけではないんでしょうか?

前澤さん

はい。金融商品も不動産投資も、それこそ仮想通貨にもまったく興味がないです。

そんなことより自分の事業を頑張ったほうが増えるので。

渡辺

なるほど。では、購入した作品を売ったりすることもないということですか?

前澤さん

ありますけど、それは新しい作品が欲しいけどもう家に置けないから、泣く泣く売って入れ替えてるだけですね。

キャピタルゲインを目的にしたことはないです。

渡辺

そういえばこの連載の前回の取材で、堀江さんが「バスキアを買うことで前澤くんの名前は世界的に認知された。あれはZOZOが世界進出するためのうまいやり方だった」と言っていました。

そのような狙いはあったんでしょうか?

前澤さん

そういう打算的なところはないですね。たまたまそうなっているだけです。

渡辺

堀江さんに言っておきます。

ちなみに、「お金は貯めずに全部使ってしまう」というのは昔からですか?

前澤さん

はい。いままで貯金したことはないかもしれないです。高校生の頃もバイト代はレコードや楽器につぎ込んでいました。

渡辺

経営者に話を聞いていると「もう物欲はない」と言う方が多いのですが、前澤さんからはまったくそんな感じがしないですね…

前澤さん

欲しいものがどんどん出てきます

よく「キリがない」といいますけど、自分の“キリ”がどこにあるのか見てみたいですね(笑)。

遥か彼方にある(はず)の“キリ”を見つめる…

ワンミリオンドル単位で上がっていく“しびれる”オークション現場

渡辺

興味本位で伺うのですが、あれだけの金額が動くアートのオークションってどのような雰囲気なんでしょうか?

前澤さん

ふつうにハンマーを持ったオークショニアが「どうだい?どうだい?」と言いながらオークションを進めて、落札者が決まったら「チン!」とやってますよ。

渡辺

よくテレビで見るやつだ。本当にそんな感じなんですね。

前澤さん

ニューヨークとロンドンで有名なオークションが年に2回ほどあるんですけど、僕は現地で作品を見て入札するかどうか決めて、入札の時期にはもう日本に戻ってきてしまうことが多いですね。

渡辺

そこからはどうするんですか?

前澤さん

金額の上限だけ決めて入札は代理人に頼むことが多いですが、電話口でリアルタイムにディーラーとやりとりしながらビッドすることもあります。

渡辺

電話口でビッド…バスキアもそんな感じで落札したんでしょうか?

前澤さん

はい。インターネットでも生中継してるので、それを見ながら電話をつないでビッドします。

しびれますよ〜。ワンミリオンドル単位で値段が上がっていきますから。

渡辺

い、1億円ずつぅ!!!

こんな感じでバスキアを落札!?

限界までお金を使ったときに味わえる体験が、明日の自分の成長につながる

渡辺

前澤さんのお金の使い方のモットーを教えていただきたいです。

前澤さん

とにかく、いま自分が使える限界まで使う

使わないと衝動に駆られないんですよね。

渡辺

限界まで…! なぜそこまで振り切った使い方をするのでしょうか?

前澤さん

10万円稼いでも1万円しか使わなかったら、自分が想像しうる体験しかできません。でも、10万円入ったその日に10万円全部使ったら、それはいままでにない体験になるじゃないですか。

僕は、その体験が自分の成長の糧になるとずっと信じてます。もっとかっこよく言えば、限界までお金を使うことが明日の自分への投資になる

渡辺

少しずつ使っていても自分のスケールは変わらないと。

前澤さん

そうです。

渡辺

そう聞いて僕も限界まで使ってみたくなりましたが…

無理です。ゼッタイ奥さんに怒られます。

前澤さん

(笑)

渡辺

ちなみに、会社の若手社員の方にもお金のアドバイスをすることはありますか?

前澤さん

初任給や初めてのボーナスで何を買うかは君の人生にとってめちゃくちゃ重要だよ、ということを話したりはします。

渡辺

具体的に「こう使うべきだ」「こんなものを買うべきだ」みたいなことも話すんでしょうか?

前澤さん

人と同じものを買わないほうがいいよ」とはよく言いますね。

たとえば、初めてのボーナスでみんなが持ってそうな時計を買ったって何の自慢にもならないし、自分の成長にもつながらない。

だったら何を買うか。どう使ったらどうなるかを想像をして使ってみなと。

渡辺

なるほど。それはモノであっても体験であってもよいとお考えですか?

前澤さん

はい。自分の趣味を突き詰めるために使ってもいいし、人を思いっきり喜ばせるために使ってもいいと思いますよ。

たとえば、初めて手にしたボーナス50万円をすべて使って両親を旅行に連れて行ったら、そのあとの親子の関係性はどうなるか。そう考えると面白いじゃないですか。彼女に思いっきり50万円分のプレゼントをしてみるのもいい。

渡辺

いきなりすべてのお金を人のために使ったら…たしかに何が起きるか予想できません。

前澤さん

とにかく、少しずつお金を使ってもたいした体験はできなくて、自分自身は何も変わらない

それなら一気に使って面白いを体験してみたら、とアドバイスしてます。

もしかして、ZOZOTOWNの「ツケ払い」にもこの価値観が反映されている?

前澤さん

あと、そうやってお金を使うと、人に出会えるチャンスが増えたり、新しいコミュニティができたり、いろいろ新しいことが起こるんですよ

渡辺

なるほど。ちなみに、バスキアを買ったらどんなことが起きたんでしょうか?

前澤さん

わかりやすい出来事でいうと、レオナルド・ディカプリオから連絡がきましたね。

渡辺

それはヤバすぎる…実際に会ったんですか!?

前澤さん

はい、自宅に招待してくれました。彼もバスキアが大好きなので。

渡辺

バスキアパワー、おそるべし。

ちなみに、先ほど「趣味を突き詰めるために使ってもいい」とおっしゃっていましたが…

前澤さん

それもいいと思いますよ。自分も趣味が仕事に生きているタイプです。

渡辺

具体的にはどのように生きているんでしょうか?

前澤さん

たとえば、僕は車が好きなので、何億円もする車を何台も買います。

最近もブガッティという3億円ぐらいする車を買いましたが、フランスの工場に何度も足を運んでデザイナーさんやエンジニアの方とお話をする機会があって、会社やモノづくりに対していろいろな想いを聞けました。これは、その辺のショールームで車を買っても絶対にできない体験です。

最近ZOZOTOWNでもプライベートブランド「ZOZO(ゾゾ)」を始めましたけど、そういう体験が自分のモノづくりにかける想いやモチベーションにつながっています

渡辺

なるほど…! すごいスケールで趣味が仕事に生きてますね…

「資本主義の象徴である前澤友作」と「競争を排除した会社」の不思議なマッチング

渡辺

あと、前澤さんにお会いできたらどうしても聞いてみたかったことがありまして。

我々からすれば、豪快にお金を稼いで使う前澤さんは、まさに資本主義の象徴のような存在です。ただその一方、競争を嫌って社員の基本給やボーナスを一律にしたり、6時間労働制を導入したりしているじゃないですか?

前澤さん

はい、そうですね。

渡辺

そこに少し違和感があるというか、我々からすると不思議なマッチングに見えるんです。どのような軸で両者がつながっているのかなと。

これまで、同じようなことを聞かれた経験はないでしょうか?

前澤さん

ありますね。でも、自分のなかでは一貫した軸があります

渡辺

ぜひそこをくわしく聞きたいです。

前澤さん

僕は本来、人間は競争するためじゃなくて、自分が楽しんだり人の役に立つために働くと思っています。

ただ、過度に競争が社内のシステムとして存在していると、隣の席の人に勝つために働くようになってしまう。

だから、なるべく社内から競争を排除することによって、みんなに本来の働く目的を再確認してほしいんです。

前澤さん

僕自身も、ただ好きなことをやっているだけです。

好きだから仕事をして、好きなモノを買う。誰かに勝ちたいなどとはまったく思わないですね。

渡辺

なるほど。前澤さん自身のお金の使い方も会社の制度も、「楽しさ」にプライオリティを置いた結果だと。

前澤さん

はい。自分の好きなことを追求して、それが人の役に立つことが素晴らしい

僕はずっとそう思って生きてきたので、みんなが自分と同じことを思ってくれれば会社はもっと良くなるし、成長するはずだという感覚があります。

渡辺

以前、前澤さんが「会社のビジョンは世界平和だ」と話しているのを聞いたことがあるんですが、当時は正直、ZOZOTOWNの事業イメージとその壮大なビジョンが結びつかなかったんです。

でも、こういった前澤さんの価値観が反映されたものだったんですね。

前澤さん

そうですね。僕はみんなが楽しんで働けば、世界はもっと良くなると思っています。

渡辺

競争を排除するという意味では、社会主義的な発想に近いところもあるのでしょうか?

前澤さん

いや、社会主義は抑圧された感じがするし、資本主義も僕からすると抑圧されている。どちらでもないですね。

渡辺

なるほど。ちなみに、ここ数年で盛り上がっている「評価経済」の考え方についてはどう思われますか?

前澤さん

うーん…

前澤さん

それもあまりピンときません。フォロワーが少なくても人の役に立っている人はいっぱいいますから。

自分的には「感謝」という言葉のほうがしっくりきますね。

渡辺

感謝経済。感謝を集める人にお金が回ってくるということですね。

この世からお金がなくなったらどうなるのか。お金の価値をもっと下げたい

渡辺

前澤さんは国のシステムとしてベーシックインカムの導入も推奨されていますが、それは金銭的な保障があれば働き方が変わるはずだから、という理由ですよね?

前澤さん

そうです。人間はお金が最優先になってしまうと行動が狭められるし、思考も広がらない

でも、ベーシックインカムがあって生きていくために稼ぐという思考がなくなったら、みんな自分の得意なことや好きなことをやろう人の役に立つことをやろうと思うはずです。

僕はそのほうが豊かで平和な社会になると思います。

渡辺

なるほど。ベーシックインカムがあると労働意欲が低下するんじゃないかという懸念もありますが、前澤さんはそういう考えなんですね。

前澤さん

僕は、人のなかにあるお金の価値、お金のウェイトをもっと下げたいんです。

雇われているとか、お金のために働かなければならないとか、多くの人が思っている労働に対しての概念を変えたい

渡辺

以前、「地球上から突然お金が消えたら」というテーマの映画を作りたいとツイートされているのを見ました。

前澤さん

作ってみたいですね。僕は「お金がなくなったら人間はどうなるのか」というのにとても興味があります。

明日は働かないかもしれないけど、はたして1カ月経っても何もしないでダラダラしているのか。すべてが無料で手に入るようになったとしても、お店の前に行列ができるのか六本木でフェラーリに乗るのがカッコいいのか。そういうことをよく想像しています。

渡辺

それは興味深いですね。自分の本当の価値観と向き合わなければならなくなるというか、欲望が浮き彫りになるというか。

お金のない世界、ぜひ映画化していただきたいです。実際に話は来てないんでしょうか?

前澤さん

いや、実は来てるんですよ。

でもいまはZOZOSUIT(ゾゾスーツ)やプライベートブランドに注力してるので、ちょっとそれどころじゃありません(笑)。

みんな首を長くしてZOZOSUITを待っております!(笑)

お金は自分が楽しいと思うことや、人を喜ばせるために使うと増える

渡辺

最後に改めて、R25世代の読者にお金についてのアドバイスをいただけないでしょうか?

前澤さん

とにかく、どんどん使えと。限界まで使い込むと、それが明日の自分の活力になります。

そして、お金は自分が楽しいと思うことや、人を喜ばせるために使うと増える。これに尽きますね。

渡辺

シンプルで刺激的なメッセージをありがとうございます!

…そして大変恐縮ですが、この連載の恒例になっている色紙への一筆もお願いしてよろしいでしょうか?

前澤さん

オッケーです。ただ、こういうの書くの久しぶりですね(笑)。

「どうしよっかな…?」

前澤さん

よし、じゃあこれで。

使えば 使うほど 増えるよ

前澤さん

どうですか?

渡辺

いいと思います! ただ、予想外にかわいい仕上がりです(笑)。

前澤さん

ちょっと自信なさげな字ですね。これじゃあお金増えなさそうだなぁ(笑)。

終始笑顔で対応してくださった前澤さん。本当にありがとうございました!

前澤さん直筆の「マネーの金言」をプレゼント!

前澤さんのサイン入り色紙は、読者の皆さまにプレゼントいたします。欲しい方は、新R25のTwitterアカウントをフォローのうえ、こちらの投稿をリツイートして応募してください!

思いっきりお金を使って、想像もできないような体験を!

〈取材・文=渡辺将基(@mw19830720)/撮影=長谷英史〉

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