改革へのモチベーションが足りないからです。

はい。なぜモチベーションがないかというと、現状に満足しているんですね。

内閣府の調査（※）で、国民が戦後過去最高に生活に「満足」していることがわかっています。アベノミクス効果で景気がいいですしね。

多くの人が生活に満足しているのは、すごくいいことでもあるけれども、同時に私はこの状況に強い危機感を持っています。

そう、日本は新しく何かを始める力が弱くなっているんです。

今は景気もいいし、生活に満足しているからと。でも、果たして本当にずっとこのままでいいんでしょうか、ということです。

どんどん人口が少なくなる日本で、すでに人手不足を肌身で感じる話題をたくさん耳にします。

昨年のクリスマスに、コンビニの外でチキンやケーキを売るアルバイトは、時給2,000円出さないと集まらなかった、なんていう話も聞きました。

人口減少による人手不足が、想像していた以上のスピードで現実になりつつあります。

なるほど。

かつて小林一三（こばやしいちぞう。阪急電鉄・宝塚歌劇団・阪急百貨店の創設者）がいいことを言っていますよ。「人間を動かすのは我欲」。

不思議な話ですが、政治の世界を見ていると誰も反対しないような改革は実現しないんですよね。

「人口減少、人手不足だから働き方改革で生産性を上げましょう」だと、きれいな論理で、誰も反対はしない。でも、改革も進まない。

そうですよね。そして、時に国の規制を突破してでも、新しい商品やサービスを生み出してほしいです。

野心を持って果敢に挑んでくれる企業がなかったら、経済は成長しないですから。

でも今、経済界がすごくおとなしいんですよ。教育無償化などの政策に対して、安倍首相が求めた3000億円の負担、経団連（※）はすぐに容認したでしょう。

教育無償化はもちろん大切な政策ですが、「従業員の給料を上げるから、3000億円の拠出はムリ」ぐらいに言ってくれる気概があってもいいんじゃないか、と思いました。

しかも、3000億円の拠出金は経団連に加入している一部の企業だけでなく、社会保険に加入するすべての企業が負担するんです。

経団連で容認されたからといって、それで物事が進むのもおかしな話ですよね。

その一連のやり取りを見る中で、いま安倍首相に一番モノが言えないのは経済界なんだと感じましたね。

特に円安で儲かっている重厚長大の輸出企業や、株高で儲かっている上場企業。

ところで青野さんは、経団連には加盟されていないんですか？

僕ね、青野さんみたいな人には、ぜひ経団連に入ってほしいんですよ。

青野さんが加入されて、一言「会長は製造業じゃないとダメなんですか？」って言うだけで、いろいろ変わりますよ。

青野さんなら、それができますよ。僕は、若い農家の人たちにも「農協のやり方に不満があるなら、農協から抜けるのではなく、むしろ組合長を目指せ」と言っています。

何かを変えたいと思うとき、外から働きかけるよりも中から変える方が絶対に早いし、成果が出る。

青野さんのようにちゃんと声をあげて、いろんな物事と闘う姿を見ると、僕も本当に励まされます。