齋藤孝著『頭のよさとは「説明力」だ』より
池上彰さんの人気の秘訣は「わかった感」!? 相手を混乱させる3つの“ダメな説明”
新R25編集部
ミーティングや営業、企画プレゼンなど、仕事のありとあらゆる場面で必要とされる説明力。
しかし、説明力そのものを鍛える機会は少ないし、具体的に何をすればいいのかわかる人も少ないのでは?
だったら、説明のプロにその鍛え方を聞いてみましょう。
明治大学文学部教授の齋藤孝さんによる『頭のよさとは「説明力」だ』のなかには、最低限の意識で説明力を底上げする手段が載っています。
本当にわかりやすい説明を体得し、相手に「頭がいい」と思わせる方法を、同書から学んでいきましょう!
ダメな説明①「すべてを説明しようとする」
上手な説明には、構成を考えたり、資料をつくったりといった事前の準備が欠かせませんが、それにばかりこだわっていても、わかりやすい説明にはなりません。
説明のうまい人は事前の想定にとらわれることなく、臨機応変にその場の空気や反応に対応する力も持っています。
説明は相手があってのものですから、常に、相手の理解度を把握しながら進めることも必要です。
説明するほうは当たり前すぎて省いているようなところが、実は初めて聞く人にはわかりづらく、そこでつまずいているということもあるものです。
「ここまでの内容はわかりましたでしょうか」と相手の理解の度合いを確認しながら説明を進めていき、もし、こちらの想定していたところまで聞き手に理解してもらうことが難しそうに思える場合は、説明の軌道修正が必要です。
仮に3つのことを説明しようとしていたとしても、そのすべてを説明することはやめて、2つだけにとどめるといった臨機応変な対処が必要です。
私は「これだけ方式」と呼んでいるのですが、とにかくわかってもらえる部分だけに説明をとどめて、「これだけはわかってください」と説明するのです。
1つの理解がやっとなのに、事前の説明プランにこだわって、3つすべてを説明しても、相手は混乱して、「よくわからない説明だった」といった印象だけを持つことになってしまいます。
それよりも、理解してもらえる「これだけ」に絞って説明を展開することが大切といえます。
わかりやすい説明とは、必ずしもすべてを説明することではないのです。
この点は、若干、杓子定規な人が誤解しがちな部分です。
まじめな方のなかには、一生懸命、すべてを説明しようとする人がいますが、そこにこだわる必要はないのです。
上手な説明とは、「相手のわかることだけ」「いま必要なことだけ」を説明するものという側面があるのです。
ダメな説明②「時系列で説明する」
丁寧に説明しよう、正確に説明しようという意識が強い人のなかには、時系列にこだわりすぎて、最初から順を追って事細かに説明していく人がいます。
しかし、こういった説明は多くの場合、まわりくどいだめな説明になってしまうことが多いものです。
私も会議や打ち合わせなどで、説明者が「そもそも…」とか、「ことの発端は…」などと言い始めたときは、「結論のほうから逆に回してよ」と思ってしまいます。
「そもそも…」から始まる説明だと、この話がこれからどこに向かうのかが見えてこないという不安のまま、以後の説明を聞かなければなりません。
当然、結論に至るまで相当の時間がかかるので、これでは簡潔な説明とはいえないでしょう。
基本的に説明とは、行き先のゴールを先に見せて、あとは時系列にこだわりすぎず、問題の優先順位で説明していくことがもっともわかりやすい説明になります。
「いま、急いで結論だけ言いますと…」「これだけはいま、意思決定していただきたいのですが」といった言い方で、優先事項から話していくという方法です。
時系列の正確な整理は、資料としてまとめておくという対処がベストで、実際に説明をするときには、優先度の高いものから話すことで、「まわりくどい説明」を避けることができます。
ダメな説明③「わかりづらい箇所を説明する」
説明をしているとお客さんが口をはさんできたり、上司への報告の場合は、途中で上司が語りはじめたりして、自分の思ったように説明が進められないこともあります。
最悪の場合、途中で時間切れになることも考えられます。
いつ、そのような事態になっても大丈夫なように、とにかく相手にわかってほしい部分から、まず説明は始めるべきです。
前段の話をしてから、順を追って本論へ入るといった説明ではなく、ヘリコプターで直接、本丸を攻めるような説明が理想的なのです。
普通、10分の時間をもらっていたとしたら、その時間内に説明すればいいと思いがちですが、最初の1分間だけで説明が中断してしまうことも十分考えられます。
時間を無駄にせず、わかってほしいポイントから、優先的に説明していきましょう。
また、説明すべきポイントのなかには、少々難解で、わかりづらいポイントもあります。
こういった理解しづらいポイントは、説明の順番としては、どんどん後回しにしていくことが上手な説明のコツです。
説明には、「わかった感」というものが、とても大切です。
相手が、「ああ、なるほど!」と納得感を持ってくれることが重要なのです。
わかりづらいところを頑張って時間をかけて説明し、「うーん…なんとなくわかりました」といった感覚をもたらすよりも、理解しやすいところを説明していって、「ああ、わかる、わかる」、「なるほど!」といった感覚を与え、テンポよく展開していくほうが、上手な説明になります。
教育の分野では、「最近接発達領域」というふうに言うのですが、いま、できていることよりちょっと難しい領域から教えていくことで向上していくという考え方です。
90キロの重さを持ち上げることができたら、91キロに挑戦すべきで、95キロにいきなり行かない。
できているところのいちばん近いところの課題を出すことで、できた感覚を繰り返しながら、半歩ずつでも先に進んでいけるということです。
説明もそれと同じで、いきなり先まで進まないで、「ああ、わかった!」「理解できた!」といった連続で進んでいくことが好まれます。
池上彰さんがテレビでとても人気があるのは、おそらく、「ここがわかった」というところの少し先を説明して、また「ここもわかった」という連続をやっていて、それが視聴者に「わかった感」をもたらしているからではないかと思います。
人によっては、難しいところから言葉を尽くして説明しようと考えがちな人もいますが、それは避けるべきです。
理解しづらいところは後回しにして、徐々に難易度を上げていくことがうまい説明のコツです。
相手に「頭がいい」と思わせる説明力をもっと鍛えよう
会議やプレゼンで「何が言いたいかわからない」「つまりどういうこと?」と言われ、説明に苦手意識を持っている方も多いはず。
しかし齋藤さんは、「説明は、意識して取り組めば必ずうまくなる」と断言します。
『頭のよさとは「説明力」だ』は、日々のなかで無理なく説明を鍛えられる方法が詰まった一冊。
同書の内容を実践して、最短ルートで説明力を向上させましょう!
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