田中修治著『大きな嘘の木の下で』より
今は“街の人気者のおばちゃん”が稼ぐ時代。Amazonや楽天に勝つカギは「ヒト消費」だ
新R25編集部
14億円もの負債を抱えていたメガネチェーン店「OWNDAYS」を立て直した、実業家・田中修治さん。
4月15日に発売された新刊、『大きな嘘の木の下で 僕がOWNDAYSを経営しながら考えていた10のウソ。』では、20年間のビジネスの現場で培った考え方が網羅されています。
田中さんは著書のなかで、とくに「私たちには疑うべき世の中の“常識”がある」と言います。
猛スピードで変化していく今の時代、私たちが知っておくべきことは一体何なのでしょうか? 3記事に渡り、抜粋してお届けします!
「ヒト消費」の時代に突入
時代はモノ消費からコト消費へと移り変わり、今は「ヒト消費」の時代に突入したのだ。
ヒト消費は学習塾でもレストランでもヘアサロンでも、メガネ屋でも、靴屋でもどんな業界でも起きてくる。
「◯◯先生から教わりたい」「◯◯さんの作った料理が食べたい」「◯◯さんがいるから、靴はこのお店で買う」「メガネは◯◯さんから買う」、そんな社会になっていく。
今後、沢山の人から信頼され選ばれる人たちは、企業の間で奪い合いになる。
よって、給料もすごく上がる。
人気のおばちゃんが隣町のお店にいたら「給料、倍払うからうちのお店に来てよ」とスカウトされるようになるかもしれない。
「人気のおばちゃんについているお客さん」も一緒にごっそりやってくるようになるからだ。
昔はそういった「街の人気者のおばちゃん」の給料は低かった。
でも、今はそういうおばちゃんは、SNSなどですぐに話題になって引っ張りだこになる。そういうおばちゃんが稼ぐ時代がやってくるのだ。
そういうおばちゃんはなぜ沢山売ることができるのか?それは何より「楽しんでいるから」だろう。
「〇〇さんには、これが似合うわよ」とか「〇〇さんにオススメの商品が入ったのよ」というぐあいに、本人も楽しんでいるし、目の前の人も楽しませようとする。
そういう純粋な気持ちでやっているから、お客さんが支払った価格以上の豊かさを、お客さんに提供できるようになり、お得な交換がファンを生み、その人のフォロワーが増えていく。
仕事だからと嫌々やっているような人には、ファンは絶対につかない。
技術だけで選ばれるような時代も、終わりつつある。
寿司職人であっても、寿司の握り方は今やYouTubeでも勉強できる時代だ。品質やサービスという部分でも差別化には限界がある。
これからは技術や機能だけでは、価値は上がっていかない。技術や機能がどんどんテクノロジーによって代替されてしまうからだ。
そうなると、人間が本来持っている魅力の勝負になっていく。
「この人に任せたい。この人に教えてほしい」、そういうフォロワーを沢山引き寄せられた人が強い時代になっていくのだ。
経営者も、最初は「経営がうまい」ということで評価されていても、最後は存在感や「その人がいる」こと自体が価値になっていく。
そういった価値のことを「意味」と言ったり「ストーリー」と言ったり「人間力」と言ったり、いろいろと形容されるが、とにかくそういった価値で勝負した方が、値段が上がっていく時代になったのだ。
買い物の楽しさを提供できる売り手が勝つ
今、世の中は様々な物事が二極化しつつある。
特に、OWNDAYSのような小売業はその流れが極端に速くなっている。
アマゾンや楽天など、スマホがあればなんでも揃うネット通販のような売り方と、名物おばちゃんがいる商店街の総菜屋さんのような「〇〇さんから買う」といった売り方に二極化していくだろう。
その中間の「どこにでもあるものを、そこらへんにいる人が適当に売る」という売り方は早ければあと数年のうちに淘汰されていくだろう。
次の時代に生き残るのは「アマゾンや楽天では買えないようなマニアックで貴重なものを売るお店」か「商品自体は手に入りやすいけれど、売り手個人に存在感があり、自分に合わせて商品を選んでくれるお店」のどちらかということになる。
ただ、前者は仕入れだけの問題なので、貴重なものであってもネットで手に入るようになればいずれ消えていく可能性も高い。
「売り手個人に価値がある」とはどういうことだろうか?
今はものが溢れすぎて、みんな「何を買ったらいいかわからない」と感じている。そこで的確にアドバイスできるような店員がいたら存在感を示すことができるだろう。
自分のことをきちんと理解してくれて、自分の代わりにプロとしてレコメンドをちゃんとしてくれる店員のいるお店は、お客様にとっても楽だし、信頼できる。
現物を見て、会話をして、実際に試しながら買い物をする楽しさを味わえた時、そのお店は初めてアマゾンに勝つことができるのだ。
みんな、「お金をもらうことが労働だ」という感覚が体に染み込みすぎている。
「会社に行く=お金をもらう」になってしまっている。
会社で働いたり、会社から給料をもらったりしている時点で「これは労働なんだ」と自ら決め付けてしまっている。自分から仕事をつまらなくしてしまっているのだ。
だからこそ「労働だ」と思うような仕事はさっさと辞めて、自分の遊びとか、使命とか、何か意味のあることにもっと集中して、一人でも多くの人から必要とされるような存在にならなくてはいけない。
お店が人で選ばれる時代になるのは遠い先の話ではない。もう今の時代が既にそうなのだ。
これからの時代に備えたい。あなたの“常識”にメスを入れる一冊
親や先生をはじめ、目上の人から教わったことは、いつしか自分の中の“常識”になる場合がほとんどです。
ですが本書では、私たちに刷り込まれた常識に対して、角度を変えた見方を伝授してくれます。
幸せ、仕事、成功、人生など、生きる上で欠かせない項目からメスを入れてくれますよ。
同書を読んで、時代の変化に耐えられる思考を身につけましょう!
〈撮影=池田博美〉
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