ビジネスパーソンインタビュー
人生を重ねて見つけたこと
“ 今 ” を重ねて、明日がある。シニアインフルエンサーきょうこばぁば流“はたらくWell-being”
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンの中には、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。
今回紹介するのは、シニアインフルエンサーのきょうこばぁばさん。
Instagramの投稿には美味しそうな料理がずらっと並び、YouTubeではシニア向けのコーディネートポイントなどを発信中。業務スーパーやファストファッションなどを活用し、お金をかけずに暮らしを楽しむ様子が反響を呼び、Instagramのフォロワー数は8.7万人を超えています。
今でこそ誰から見ても豊かに暮らしているように見えるきょうこばぁばさんですが、それまではフルタイムの介護士として15年間勤務。家族4人、生活に金銭的余裕がなくなり、どん底の時代を経験したことも。
60代を越え、人生を重ねてきたきょうこばぁばさんが感じる“はたらくWell-being”を聞きました。
1956年生まれ、60代のシニアインフルエンサー。Instagramのフォロワー数は8.7万人、YouTubeのチャンネル登録者数は5.3万人。夫と次女の3人家族。長女はモデルのAgathaさん、娘婿はミュージシャンで俳優のハマケンこと浜野謙太さん。日々の簡単レシピや、ファストファッションの紹介などをInstagramとYouTubeで発信し、グレーヘア情報も好評。著書は、『きょうこばぁばの ちょっとの工夫でいつものごはんが「わぁ!ごちそう」になるレシピ』(ワニブックス刊)。
@kyokoba_baがシェア
67歳のシニアインフルエンサー! 年齢を重ねた今、伝えたいことがある
――(編集部)Instagramで拝見していたきょうこばぁばさんにお会いできて光栄です。今のご年齢をお伺いしても良いでしょうか?
きょうこばぁばさん
今年で67歳になりました!
シニアインフルエンサーきょうこばぁばさん、赤いマニキュアが素敵
――(編集部)私とは、3回り以上離れています!
きょうこばぁばさん
ええ、お若い〜(笑)! 新R25の読者も若い方が多いと聞いていたので、ちょっと緊張しちゃいますね。うまく喋れるかしら……。
――(編集部)ぜひ、気兼ねなくお話をお伺いできればと思います! さっそくですが、きょうこばぁばさんはいつからシニアインフルエンサーになられたんでしょうか?
きょうこばぁばさん
Instagram自体を使い始めたのは2013年から。覚えている方は少ないかもしれませんが、そのときのInstagramのアイコンは茶色いカメラだったんですよ。
始めは自分の得意だった料理を趣味程度に投稿していたんですけど、本格的に活動し始めたのはコロナ前あたりからですね。だんだんと反響を呼び、レシピ本を出版させていただいたり、雑誌に掲載してもらったりして、今に繋がっています。
――(編集部)となると、Instagram歴は10年目! 最初は、使い方に戸惑いませんでしたか?
きょうこばぁばさん
まったく戸惑わなかったです(笑)。というのも、昔からインターネットを使って何かを発信することが好きだったんですよね。
30代のときから好きなアーティストを応援したい一心で、持っていたパソコンを駆使してファンサイトを自作していて(笑)。そこで同じようなファンの方たちとネットを介して交流して、ライブなどで会い実際にお友達になった方もいました。
その後、SNSの走りでもあるmixiもしていましたし、アメーバブログも使っていましたね。その流れで新しいSNSとしてInstagramが流行したので、自然と移っていったんですよ。
――(編集部)本物のデジタルネイティブ!
きょうこばぁばさん
そう思うと、発信して反応をもらったり、交流が生まれ友達が出来たりといった楽しさは、昔から変わらない原動力の1つだと思います。
そのうえで、今はもう1つ目的があるんですけど。
もう1つの目的とは?
きょうこばぁばさん
日本は将来的に、私のような高齢人口が増えていきますよね。にも関わらず、若者向け家族向けの情報はたくさんあっても、高齢者本人に向けた情報提供の場が少ないと私は感じているんです。
私が年齢を重ねてもやりたいことをしたり、行きたい場所に行けたりすることを伝えることが、高齢者に向けた情報提供の一環になればいいなと思っているんです。
――(編集部)そんな想いがあったんですね。今、きょうこばぁばさんはInstagramに加えてYouTubeもされていますが、お1人で活動されているんでしょうか?
きょうこばぁばさん
いえ、森田という30代の男の子と2人で活動しています。
YouTubeにもときどき登場しているのですが、彼と一緒に企画を考えたり、YouTubeの編集をしたりしています。
――(編集部)ちなみに、森田さんとはどのように出会ったんですか?
きょうこばぁばさん
それが、ある日突然Instagramに「シニア向けのYouTubeを一緒にやってくれる人を探していて、一度会ってくれませんか!」とDMがきたんですよ(笑)。最初は、どうしてこんなおばあさんに会いたいのかな、何か騙されるんじゃないかなと思っていたので「会えません」と断っていたんです。
だけど、そのあとも連絡が途絶えなくて(笑)。
――(編集部)森田さんもバイタリティがすごい。
きょうこばぁばさん
それほど連絡をくれる理由も聞いて、家族にも相談したうえで「じゃあ」と渋々会ったんです。実際に会って話をしてみると、森田は理学療法士として、医療・介護現場で働いていたことがあり、「家で一日中テレビを見て過ごすのではなく、もっと高齢者が外に出ていきいきと暮らすような世の中にしたい。そのために、動画で高齢の方に向け、同世代の目線から楽しいと思える情報を発信してほしい」と話していました。
まさに、私と同じようなことを課題に感じていたことが分かり、「目標が同じなら二人三脚でやろう」と決め、今は一緒に活動しています。シニアインフルエンサーとしての活動を本格化したのも、森田との出会いが大きかったと思いますね。
「生きていくために」はたらいていた、笑えなかったどん底時代
――(編集部)ご高齢の方に向けた発信への想いは、きょうこばぁばさんご自身が年齢を重ねたことで生まれてきたんですか?
きょうこばぁばさん
いえ、そうではなく、15年間ほど介護士をしていた経験が影響しています。
介護士をしていたときに施設の利用者さんが「おばあちゃんになると、遊びに行ける場所がデイサービスしかない」と話していらっしゃって。ほんとうはもっと行ける場所があるはずなのに、そのことを知る手段がない、と実感したんです。
「やりたいことをやれる手段や、行ける場所があることを知れないなんて、もったいないじゃないですか」
――(編集部)インフルエンサーの前は、介護士をされていたんですね。15年間ということは、40代頃に転職して介護士になられたんですか?
きょうこばぁばさん
転職…そうですね。
正直に話すと、介護の仕事を始めたのは夫の事業が立ち行かなくなったことがきっかけだったんです。
――(編集部)なんと。
きょうこばぁばさん
私も夫の会社を手伝っていたので、夫婦2人、娘2人がいる中で無一文になってしまって。
始めは「2、3年我慢すれば」と思っていたんですが、実際はもっと深刻で、蓄えも底をつき、明日のご飯すらも危ういような状況が続きました。
――(編集部)明日のご飯も、ですか。
きょうこばぁばさん
今思い返しても、人生で一番大変な時期でした…まさにどん底、という感じです。
そのときはもう、とにかく生きていくことに必死で。娘も2人いるし、学校にも行かせなきゃならないし、どうにかしなきゃと思って近所のスーパーに勤めることにしたんですよ。
だけど、それまで外ではたらいたことがないから、すべてが初めてのことばかり。まったく上手くいかなくて、「もう無理、無理」と毎日泣きながら帰っていました。
料理が好きなので惣菜担当を志望したものの、人手が足りなかった精肉担当へ
きょうこばぁばさん
だけど、ここで辞めたら生活できなくなってしまうから、「生活のために続けるしかない」と自分を奮起させてはたらいていました。
そんなとき、近所に有料老人ホームが開設されることを知って、介護士は資格のある専門職だから手に職をつけられると思い、介護士になろうと思ったんです。
――(編集部)そのようなスタートだったんですね。
きょうこばぁばさん
介護士になって3年後には国家資格の介護福祉士も取得して、同じ施設で15年間、ひたすらはたらきました。仕事はハードでしたが、利用者さんとお話をしたり、一緒に歌を歌ったりする日々がすごく楽しくて。
間違いなく今の活動の源泉になっていますが、当時は「生きていくために」が一番の目的だったと思います。
少しの「えいや」が世界を広げ、自分を進化させる
――(編集部)どん底を越えてきたからこそ、今のバイタリティがあるんですね。
きょうこばぁばさん
そうかもしれないですね。あの10数年の経験は、大きく影響していると思います。先が見えなかったし、見ようとも思えなかったですから。とにかく今日1日、そして明日1日、生きられたらいいと思っていました。
だけど今なら、あの経験があったからこそ、今の私がいると思えます。辛く苦しかったですが、人生にあってよかった期間だったなと思っています。
きょうこばぁばさん
今はやりたいことができていて、いっぱい笑える毎日。発信のためにファッションやメイクなど身なりにも気を使うと、緊張感のある充実さを感じています。
そうそう!黒染めを辞めたことも、楽しく生きるターニングポイントでしたね。
――(編集部)黒染めを辞めた?
きょうこばぁばさん
はたらいていたときの私は、「はたらく私は黒髪!」と思っていたので、毎月必ず黒染めをしていたんです。
でも60代になり、ふと鏡を見ると、自分の顔と黒髪が全く合っていないことに違和感があって。葛藤して迷った末に、白髪染めを辞めることに決めました。
――(編集部)それは、大きな決断ですね。
きょうこばぁばさん
若く見られたいとは思っていなかったのですが、いざ染めないでいると、黒髪とグレーがまだらになっているのがすごく嫌で。くじけそうになりましたが、黒髪が生え変わるまで、8ヶ月をかけて今のグレーヘアになったんです。
――(編集部)グレーヘア、とってもお似合いです!
きょうこばぁばさん
ふふ、ありがとうございます。周りからも評判が良くて「似合っているね」と言われることが増えました。
「『はたらく私は黒髪!』は、私の固定概念だったんですよね」
きょうこばぁばさん
白髪染めを辞めたことで、前よりも自然に、私らしくいられているなと実感しています。それにこのスタイルで発信をしたことで、新しいグレーヘア友達もできたんですよ!
一歩踏み出すと、新しい世界が拓けるんですよね。
――(編集部)インフルエンサーも、介護士も、グレーヘアになることも、きょうこばぁばさんは一歩を踏み出す勇気がすごいです。
きょうこばぁばさん
もちろん私も不安や迷いはあるんですけど、結局は「えいや」とやってみるかどうかの問題だと思っています。できないって思ってることや、無理だと感じてることって、もしかしたら、無意識のうちに自分がハードルをあげてるだけのときってないですか。食わず嫌いみたいに。
なんとか一歩を踏み出してみると、実は思ったよりハードルが低いことってあると思うんです。特に私は年齢も重ねているので、自分を進化させるために「えいや」の気持ちが大切だと思っているんですよね。
私の未来は明日まで。“ 今 ” の積み重ねが“はたらくWell-being”をつくる
――(編集部)今後、きょうこばぁばさんが「えいや」と挑戦してみたいことはありますか?
きょうこばぁばさん
そりゃあ、たっくさんありますよ!すぐ思いつくのだと、電子マネーを使えるようになりたいです(笑)。今はキャッシュレス決済のみのお店も増えていますし、きっと今後もますます増えるはず。世の中の常識に取り残されないように、私も対応できるようになりたいですね。
「先日も、マイナンバーカードの申請をどうにか一人でやり遂げました」
きょうこばぁばさん
ほんとうは娘に聞いたら早いんですけど、それだと自分のためにはならないから、一人でなんとかやってみる。もしここで娘を頼ってしまったら、これからも何かあるたびに娘を頼ってしまいますし、自分でできるはずだったことができなくなってしまうじゃないですか。
自分をアップデートできるのは自分だけだ、という気持ちです。
――(編集部)最後に、きょうこばぁばさんにとっての“はたらくWell-being”を教えてください。
きょうこばぁばさん
私は今、67歳。SNSでは楽しく過ごす姿を発信していますが、年齢を重ねることに当然ながら怖さも感じています。今は自由に身体が動くけど、今後は衰える一方。これからの金銭的不安を感じることも。
多くの高齢者がそうであるように、私も考え出すと止まらないし、不安になりますよ。
でも、だからこそ私は、「今日は今日で生きる」と思うようにしているんです。過去でも未来でもない、今日1日。
――(編集部)「今日は今日で生きる」。
きょうこばぁばさん
“ 今 ” 生きている、“ 今 ” という感覚を大切にしています。ただ、これは私が年齢を重ねたからこその考え方だと思っていて。
お若いと目の前のことより、5年後、10年後、もっと先の未来に重きが置かれますよね。でも、私にとっての未来は5年後、10年後じゃなくて、明日まで。
きょうこばぁばさん
「 “ 今 ” だけでいいの?」と思うかもしれませんが、それってすごく大事なことだと私は思うんです。だって、よく考えてみてください。今日生きていないと、明日は生きられないんですよ。
1日、1日を丁寧に積み重ねていく。それが、きょうこばぁばの“はたらくWell-being”です。
<取材・文=田邉 なつほ>
「“はたらくWell-being”を考えよう」
信頼してくれる人を裏切らない。「サスティナブルな情報交流」を仕掛けるブランドディレクターの、“はたらくWell-being”
新R25編集部
Sponsored
多様性を認める文化を、花の世界から。フラワーサイクリスト® 河島春佳が「規格外な自分」から見つけ出した使命
新R25編集部
Sponsored
「はたらくWell-being AWARDS 2024」授賞式&トークセッションに潜入! そこには、はたらくを楽しむためのヒントが満載だった
新R25編集部
Sponsored
「日本が世界に勝てるものを見つけた」植物工場で世界の名だたる企業から200億の資金調達を達成したOishii Farm 古賀大貴が使命を見つけられたワケ
新R25編集部
Sponsored
プロ野球選手から公認会計士試験合格。異色の転身をした池田駿さんの“はたらくWell-being”
新R25編集部
Sponsored
実はコンビニより多い。神社というインフラから考える日本の「はたらくWell-being」
新R25編集部
Sponsored
ビジネスパーソンインタビュー
スモールビジネスの課題“3つの分断”に挑む。freeeによるプロダクト開発の基盤「統合flow」を発表
NEW
新R25編集部
「結婚に焦っているけど、本気の恋愛が億劫です…」ハヤカワ五味さんに相談したら、初めて聞くアドバイスが返ってきた
NEW
新R25編集部
「ずっとうっすらお金がない」悩みを解決!? 北の達人が新入社員に必ず教える“豊かになる鉄則”
新R25編集部
「営業のセレブリックス」が変わる(かも)。“最速マネージャー”の若手率いるマーケ支援総合サービス
新R25編集部
山本康二さんが新R25副編集長にガチ檄。「暗くても、パッとしてなくてもいい。リーダーに必要なのは一つだけ」
新R25編集部
【兼務で忙しい人へ】仕事を断らないサイバーエージェント専務が実践している「マルチタスクの極意」
新R25編集部
新会社設立!「GMO インターネットグループ」が新時代をリードする“AIとロボット”事業に進出
新R25編集部
「会社員は出産後のキャリアアップが見えない…」女性のキャリアの“根深い課題”を有識者2人に相談しました【金井芽衣×石倉秀明】
新R25編集部
「薄っぺらい人間から脱却する方法」をReHacQ高橋Pに相談したら「本気“風”で仕事する恐ろしさ」を教わった
新R25編集部