パーソルが大切にする“DEI”
“はたらくWell-being”につながるダイバーシティ パーソルにDEIの取り組みを聞く
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンの中には、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。
今回、ご登場いただくのはパーソルホールディングスのDEI推進室長本川碧さんです。部署名にもなっているDEIとは何なのか、パーソルは一体どのような取り組みを行っているのかを聞きました。
2008年インテリジェンス(現:パーソルキャリア)入社。個人の転職支援、法人の中途採用支援、営業企画・業務企画・サービス企画業務を経て、現在は国内グループ全体のDiversity, Equity & Inclusion(DEI)ならびにキャリアオーナーシップを推進。社員一人ひとりが最大限能力を発揮し活躍できる環境や機会、場づくりに携わる。「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会の実現を目指し、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、日本社会におけるDEIの促進に貢献できる取り組みに注力している。国家資格キャリアコンサルタント、一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所認定トレーナー、3児の母。2023年より現職
DEIってなに?多様性にあふれる人材がそれぞれの強みを生かして活躍できる環境をつくるパーソル
ーー本川さんはDEI推進室長なんですね。「ダイバーシティ」は多様性だと理解していますが、DEIは初めて聞きました。DEIってなんですか?
本川さん
なんの略?って思いますよね(笑)。DEIはDiversity, Equity & Inclusionのことです。
Diversity(ダイバーシティ)は、一人ひとりのもつ属性・価値観・能力などの多様性を理解し、尊重すること。
Equity(エクイティ)は、一人ひとりのおかれている状況に合わせ支援し、不平等を改善すること。
Inclusion(インクルージョン)は一人ひとりがその人らしくあるとともに、組織の一員であると本人・周囲が受けとめていること。
つまりDEI推進室は、パーソルの社員一人ひとりが最大限能力を発揮し、誰もが挑戦できる環境づくりを推進していく部門だってことです。
ーー一なるほど、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの頭文字をとっているんですね。
本川さん
はい。パーソルでは、多様性にあふれる人材がそれぞれの強みを生かして活躍できる環境をつくるため、グローバルを含めたグループ共通のDEIポリシーを掲げています。
パーソルグループ DEIポリシー
私たちパーソルグループは、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を掲げ、すべての人たちが「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会の実現を目指しています。
価値観の多様化、テクノロジーの進歩に伴い、世界のはたらき方を取り巻く環境や考え方は大きな転換点を迎え、労働市場もこれまで以上の変化を続けています。
この変化の激しい環境で社会と企業が持続可能な発展を続けていくためには、多様な能力を生かし、新しい価値を生み出していく柔軟性と創造性が求められています。
その根源となるものが、メンバーの多様性だと考えています。
すべての人たちが、「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会を実現するためには、私たちの中にも多くの人々の気持ちや考え方、視点を理解し、受け容れることのできるメンバーの存在と、その活躍が必要不可欠なのです。
私たちは社会に価値を提供すべく、多様性を理解・尊重し、受け容れることのできる文化・風土醸成に努め、多様性にあふれるメンバーの強みを生かし、ビジョン実現に向けた具体的な取り組みに着手しています。
平等な機会のもと、メンバーの可能性を最大限に引き出すこと。
それが私たちの、挑戦です。
パーソルグループでは、このポリシーをすべての役員、管理職、従業員に適用します。
トップコミットメント、制度・環境整備、風土構築の3段構えで取り組むパーソルのDEI
ーーDEIの意味は分かりました!でも正直言って、あまりピンとこないです…。
本川さん
具体的にどんな取り組みをしているのかをご説明したほうが、ピンときて頂けるかもしれません。
パーソルのDEI推進は、大きく分けて3種類の取り組みをしています。トップコミットメント、制度・環境整備、風土構築の3つです。
本川さん
DEIポリシー策定後、具体的な取り組みとして私たちはまず「制度・環境整備」から着手しました。
というのも、パーソルは2010年代以降M&Aを通じてグループを拡大させており、100社を超える会社が集まる企業体になったんです。
ーー100社以上!?
本川さん
はい、人事制度も違えば、企業文化も違う。製造業で組み込みエンジニアとしてソフトウェアの設計開発している方もいらっしゃれば、企業から業務を受託するBPOを担当している方も、個人のお客様の転職支援をしている方もいる。
そんな多種多様な社員や会社の集まりだったパーソルが社会に価値を発揮していくには、社員一人ひとりがお互いの価値観や強みを理解し、尊重し合うことが第一歩。
そして、自分の能力を最大限発揮するための場づくりと個を伸ばす仕組みが必要でした。場づくりの一環として、多様なはたらき方を促進するための制度から導入したのです。
それが、複業制度、ドレスコードの原則自由化、フレキシブルワークの3つでした。
ーーまずは制度を整備するところからのスタートだったのですね。
本川さん
そうなんです。
ーー副業ではなくて、「複業」というのは珍しいですね。
本川さん
はい、パーソルでは副業ではなく「複業」と表記しています。なぜなら、「主業」「副業」という関係ではなく、「複数の職場ではたらく」、あるいはそうした場を提供したいという想いを込めているからです。
社員の自己実現や経験・価値観・スキルの社会還元などを目的としており、いまや1,000人以上の方が複業をしています。学校法人でのキャリア教育、webサイト構築支援といった今の仕事のスキルが役立つものもあれば、音楽活動や映像制作、演劇など感性や趣味を生かした複業をしている方もいますよ。
ほかにも、社員が環境や日々の仕事内容に応じて服装や身なりを選択することで、快適に仕事に向き合える環境を提供したいという想いからドレスコードを原則自由化しました。フレックス勤務や、時短勤務・日数限定勤務(一部の企業が該当)などを制度化したフレキシブルワークにも取り組みました。
その後、さらなる社員のエンゲージメント向上のために、リモートワークや在宅勤務環境の整備など、時間や場所にとらわれないはたらき方を推進しています。
――はじめに取り組んだのが制度整備だったことは分かりました。その後のDEIはどう進めたんですか?
本川さん
制度整備と並行して取り組んだのは「風土醸成」です。風土が育まれていなければ制度があっても使われないですよね。制度と風土は両輪必要だということで継続的に取り組んでいます。
まずは全社員に受けてもらうe-learningのDEIリテラシー研修を開発しました。これはもう今年で6年目になり、累計12万人の社員が受講しています。
本川さん
また管理職に向けたDEI研修も3種類行っているほか、「みんでぃ」というイベントも開催しています。
――「みんでぃ」って、かわいい響きですね。
本川さん
「みんなでDEIを考えるかい」というパーソル内のイベントです。
月1回開催していますが、テーマは「育児中の女性管理職のはたらき方」や「男性ならではの生きにくさ」、「性のあり方」、「年齢の多様性(エイジズム)」など様々です。最近では200名近くの参加者が集まります。
特に好評なのは「多様なキャリア」や「複業」をテーマとして社員が登壇するものです。グループ内・個社内異動制度や複業制度を活用することで自律的なキャリア形成やイントラパーソナルダイバーシティ(個人内多様性)を推進する事例は多くの社員にとって自分事なのだと思います。
でも「みんでぃ」のイベント企画や登壇者を毎月探すのは大変なんですよ・・・ほんと
――本当に次々に取り組みを進めてきたんですね。最後のトップコミットメントというのはどんなものですか?
本川さん
トップコミットメントはつまり、パーソルの経営陣がどれだけDEI推進を本気で取り組んでいるか、ということですね。
DEI推進のさらなる加速のため、2021年9月にはグループ横断で、経営の直轄組織となるジェンダーダイバーシティ委員会を設置しました。この委員会では、各SBU(※)の人事責任者およびCEO、CHRO、CEOが指名する委員長で月に1回議論を行い、女性管理職比率と男性育休取得率の向上に向けた議論と取り組みの計画をしています。
また、委員会の中にある分科会を通じてグループ横断の取り組みを企画、実行しています。
※ SBU:Strategic Business Unitの略
――経営の直轄組織という点に本気度を感じますね。
本川さん
はい。また、役員評価のうち非財務指標・テーマ指標には、女性管理職比率などのマテリアリティ関連の項目も含まれています。
目指す女性管理職比率37%、男女の賃金格差の是正にもつながる
――パーソルの女性管理職比率と男性育休取得率はどうなっていますか。
本川さん
女性管理職比率は、2023年10月時点の実績は24.6%。2030年3月期にはグループにおける総合職の女性比率と同等の比率である37%を目指しています。女性管理職比率の上昇は、男女の賃金格差の縮小にもつながると考えています。
男性育休取得率は、2023年3月時点では1日以上の取得実績は64.8%、2026年3月期までに100%を目指します。もちろん、1カ月以上の育休取得推進にもすでに着手しており、取得率の向上に手ごたえを感じています。
――パーソルのDEIに対する取り組みが良くわかりました。
本川さん
パーソルは1973年、創業者である篠原欣子が「はたらきたいと望むすべての女性が活躍できる社会にしたい」とテンプスタッフ(現:パーソルテンプスタッフ)をつくったことから始まりました。
篠原が高校を卒業しはたらき始めた当時は、社会に出てはたらく女性がまだ少ない時代でした。篠原のDNAを受け継ぐためにも、社会に横たわるジェンダーダイバーシティの問題に立ち向かいたい。
そしてもちろん女性だけでなくはたらく人それぞれの多様性を生かしながら、社内外に“はたらくWell-being”を広げていきたいなと思います。
――本川さんの今後の目標について教えてください。
本川さん
「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として日本全体にDEIの輪を広げていきたいです。DEIを推進することと、“はたらくWell-being”を創造していくことは、私の中ではイコールなんです。
DEIを推進することによって、パーソルのグループビジョンである「はたらいて、笑おう。」を実感できる社会の実現の一助になると思っています。ただ、一人ひとりが最大限能力を発揮し活躍できる場づくりをしようとすると、パーソル1社だけでは限界があるなと感じていて。
先ほど紹介させていただいた私が携わった仕事の中に、2019年から社内向けに実施してきた「DEIリテラシー研修」があるのですが、この研修を、2023年から社外に無償で公開することとしました。
――無償で? 太っ腹ですね!
本川さん
はい、私が社外に公開したいと上司に提案したところ、「会社としてぜひやろう」と応援してくれました。
「DEI研修を社員に受けてほしいがプログラムを開発できていない」といった経営者や人事の方にはぜひダウンロードして活用してほしいです。
今後、さらに内容をアップデートしたものを、社外へ公開していく予定です。他の企業と手を取り合ってDEIを進めながら、世の中全体で“はたらくWell-being”を実現したいと考えています。
大志を抱く本川さん
「“はたらくWell-being”を考えよう」
信頼してくれる人を裏切らない。「サスティナブルな情報交流」を仕掛けるブランドディレクターの、“はたらくWell-being”
新R25編集部
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