ビジネスパーソンインタビュー
「明日の夕飯も、週末の予定も決めたくない」(共感…)
「10年後の幸せなんてわからない」たけもこさんが語る“やりたいことがない人のキャリア”
新R25編集部
就職活動や転職活動の際ときどき耳にする、「やりたいことがない」という悩み。
転職が当たり前になった今だからこそ、「転職したいけど、べつにやってみたいこともないし…」とモヤモヤした気持ちを抱えている人も少なくないと思います。
そこで今回お話を伺ったのが、「新卒でヤフーに入社」「CanCamモデル」「タレント」「ライター」と、さまざまな肩書をひっさげて活躍するインフルエンサー・竹本萌瑛子(通称・たけもこ)さん。
【竹本萌瑛子(たけもと・もえこ)】1996年生まれ。熊本県出身。2019年、新卒でヤフー株式会社に入社。web広告のマーケターとして働きつつ、複業でライター、タレントなどマルチに活動中。大学時代にマーケティングチームで商品開発やPR企画を行い、同時にライターのインターンをはじめライティングを学ぶ。現在は主にウェブなどで執筆中。領域は働き方、SNSマーケ、日常のエッセイなど
たけもこさんが新卒でヤフー株式会社に入社したのは、「“やりたいことがない人間”のキャリア戦略」だったのだそう。
今年8月に社員数約7000人のヤフーから、ライターとして活躍する「5歳」さん経営の株式会社アマヤドリ(社員数2人!)へ転職したたけもこさん…。
アプリから会員登録したユーザーが自分の知見を回答できる「新R25ワイドショー」のテーマから、こんなお話を聞かせていただきました。
たけもこさん
やりたいことはなくても、「Being(どうありたいか、どう生きていたいか)」という“人生のスタンス”ならあるはず。
私もそこを重視して、キャリアの選択肢を広げています。
「とくにやりたいこともない…」と感じている、キャリアに漠然と悩む皆さん。まずは筆者といっしょに、たけもこさんのロールモデルを聞いてみましょう。
〈聞き手=サノトモキ〉
7000人企業から社員数2名の企業へ。そのとき、まわりの反応は…?
サノ
大企業ヤフーから、社員2名の会社への転職。
すごく大胆な決断だと思うんですが、まわりからは反対されなかったんですか?
たけもこさん
それは…すごく言われました(笑)。
とくにお父さんからは、「せっかく入ったのにもったいない」「せめて3年は…」「世間の声が…」みたいなことも。
最終的には、「アマヤドリに入社する話はいったんなしにしてもらえ」とまで言われましたね。
そこまで…! でも、お父さんが心配する気持ちもわかる
たけもこさん
ただ、私からしたら今回の転職はある意味想定通りなんですよ。
私がヤフーに入ったのは、「やりたいことを見つけるため」のキャリア戦略だったので。
サノ
そこなんですよ…今日はそのキャリア戦略を詳しく教えてください!
「やりたいことがわからない自分は、これ以上『What』を掘っててもダメだ」
たけもこさん
私…就活生のとき、「やりたいこと」が全然わからなかったんです。
「やってみたいこと」と言われればたくさん浮かぶんですけど…「一番やりたいことをひとつだけ選べ」となると、全っ然ピンとこなくて。
わかります
たけもこさん
「もっと自己分析しなきゃ」っていろんな本を読みまくったんですけど、方向がありすぎて余計わからなくなって…
そこで、「自分はこれ以上ここを掘ってもダメだな」と気づきました。今の自分は、「What(=何をしたいか)」を深堀りしても答えを出せないなって。
サノ
じゃあ、そこから何を深掘ってヤフーにたどり着いたんですか?
たけもこさん
「Being(どうありたいか)」です。
やりたいことはないけど、「どう生きていたいか」という“人生のスタンス”ならあるよなと。
「何をしたいかじゃなくて、“どうありたいか”で共感できる会社を探せばいいんじゃないかって」
たけもこさん
私の場合は、「自分が何かをしたいと思ったとき、それを選べる自分でいたい」というのが“人生のスタンス”でした。
「この本買いたいな」と思ったときに、買えるお金があること。「今日友達と焼肉食べたいな」と思ったときに、行ける時間があること。
やりたいことがわからないからこそ、「選びたくなったときに選べる状態」を作っておくことが私にとっては何より大切なんですね。
サノ
その「人生のスタンス」をキャリアに置き換えると…
たけもこさん
「この仕事やってみたい」と思ったときに、いつでも挑戦させてもらえる環境。こういう企業なら、自分は幸せに働けるんじゃないかなと。
そこで私は、「副業OKであること」を絶対条件にして企業を探し始めたんです。最終的に一番スタンスが合ったのが、ヤフーでした。
「Being」基準での企業探し、実はめちゃくちゃ本質的な就活スタイルなのでは…?
たけもこさん
つまり私は、「やりたいことを堂々と模索させてくれる、最もスタンスの合う企業」としてヤフーに入社したんですよね。
その結果、インフルエンサー業、タレント業、モデル業…働きながらやってみたい仕事になんでも挑戦させてもらえました。ヤフーの懐の広い文化には、本当に感謝してます。
「『どうしてもこれがやりたいんだ!』なんて人、あんまいなくないですか?」
サノ
ただ、僕GACKTさんに取材した事がありまして…
彼は「選択肢を広げるな!」と真逆のことをおっしゃってたんですよ。
「お、おお、GACKTさんが…!(笑)」
サノ
「良い学校に進学する」みたいに選択肢を増やすことで、進みたい道が余計にわからなくなってしまう。
「だから、叶えたい未来から逆算して、ゴールに向かう一本道を行け」というのがGACKTさんのお考えでした。
たけもこさん
たしかに、GACKTさんみたいに「やりたいこと」がバチっと定まってる方は、むやみに選択肢を増やさないほうがいいと思います。遠回りになったり、決心が鈍ったりする原因にもなるかもしれない。
でも、「人生これに捧げるぞ!」なんて思えてる人…実際あんまりいなくないですか?
それは…たしかにそうかも
たけもこさん
「10年後ここにいることが幸せだ」って自信を持って言いきれる人って、すごく素敵だと思うんですけど…
私は「10年後にそこにいたら幸せかなんて、10年後の自分しかわかんないじゃん!」って思っちゃうタイプで。
サノ
ああ、僕も正直完全にそっちタイプですね…GACKTさんすみません…
たけもこさん
あはは(笑)。私は極論、明日の夕飯ですら決めたくないです。
サノ
わかる…週末の予定とかも…
たけもこさん
入れたくない!(笑)
変なところで意気投合してしまった
たけもこさん
実際、幸せのかたちってけっこう変わっていくじゃないですか。
長いキャリアにおいて「ゴールを決めて進んでいく」ってけっこう無理がある気がしていて。
だから私は、常にアジャスト(調整)しながらそのときの自分が選びたいキャリアにひょいひょい移っていくほうが幸せだなって。
たけもこさん
マーケター、モデル、インフルエンサー…いろんな副業をするなかで、「ありたい状態」、つまりBeingを追い求めていくキャリアもアリなんじゃないか…?と思って、今回アマヤドリに転職することを決めたんですよね。
やりたいことってあったほうがかっこいいのかもしれないけど、みんながそんな簡単に「これだ!」って出会えるものでもないじゃないですか。
実際やってみなきゃハッピーかもわからないし。
サノ
たしかに。
たけもこさん
私は、いろんなことをやって常に「今思う幸せ」にアジャストしつづけたいんです。修正して修正して、ちょっとずつ納得感のある人生にアジャストしていく。
やりたいことがわからない人は、そういうキャリア戦略もありなんじゃないかなと思うんですよね。
安定志向な人ほど、たまに「踏み外す」と選択肢が広がるかも
サノ
「やりたいこと」が明確じゃないまま転職するということは、決断するまでに相当迷われたのでは…?
たけもこさん
いや…転職を決めたのはわりと最近で、しかもけっこうパッと決めたんですよね。
サノ
どうしてそんな思い切った決断ができたんですか?
たけもこさん
…私、定期的に「踏み外し願望」が来るんですよ(笑)。
「踏み外し願望」…!?
たけもこさん
基本的に破天荒な性格じゃなくて、安定志向タイプなんですけど…
だからこそ、「“いつもの自分なら選ばないこと”をやらないと選択肢がどんどん減っていくな」という危機感が常にあるんです。
ああ、でもこれちょっとわかるかも
たけもこさん
だからこそ、ときどきあえて「これを選んだらどうなるのか想像できない選択肢」を選ぶようにしていて。
もちろん怖いんですけど、踏み外すとたまに「思いがけない選択肢」が人生に登場するんですよ。
サノ
思いがけない選択肢…たとえばどんなエピソードが?
たけもこさん
大学2年生のときミスコンに出場したのは、まさにそれ。
普段の自分なら絶対出ないんですけど、東京で一年過ごして、家→学校→バイトの往復ばっかりで「東京来た意味ないなぁ」って思ってたタイミングで、実行員の方に声を掛けていただいて…
「じゃあ、いっちょ踏み外してみるか」と。
「例の衝動がやってまいりまして」
たけもこさん
『CanCam』に声をかけていただいたのはそれがきっかけで。あのとき思い切って踏み外したことが、「モデル」という副業につながっているんですよね。
私はそうやって選択肢を広げまくった結果、「こういう選択肢がたくさんある状態、いいな」と「Being」の解像度が上がった人なので…
私みたいな「やりたいことがわからない人」は、ときどき思いがけない方向に「踏み外し」てみるのが案外ポイントなのかも…(笑)。
たしかに、「踏み外す」って実はめちゃくちゃ“選択肢を広げてくれる”アクションなのかも。本日はありがとうございました!
「やりたいこと見つかるまでは、選択肢を増やすことに全振りしてもいい」
「たまには“踏み外し願望”に従っちゃえばいい」
「常に、“今の幸せ”にアジャストして生きる」…
実は筆者自身、今後のキャリアへの悩みを抱えながらの取材だったのですが、たけもこさんの言葉を聞いて、「やりたいことがわからない自分」を少し許せた気がしました。
いつかまた「やりたいこと」がわからなくなったときは、この記事を読み返してみようと思います。
〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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