ビジネスパーソンインタビュー
片山 義丈著『実務家ブランド論』より
ダイキン宣伝部長が教える「ブランドロゴ」の仕組み。記憶に残るロゴの使い方とは
新R25編集部
「あなたは、“ブランドとは何か”をきちんと答えられますか?」
...こう問うのは、世界ナンバーワンのエアコンメーカー・ダイキン工業で、ルームエアコン「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」の誕生など、企業ブランドの構築に携わってきた片山義丈(かたやま・よしたけ)さん。
33年間ブランドと向き合ってきた片山さんがたどり着いた“ブランド論”が、ギュッと凝縮された新著『実務家ブランド論』から、「広告で効果的にブランドロゴを使う方法」をお届けします。
「ブランドロゴ」がない広告は致命的
R25の読者のみなさん、まずこの広告をご覧いただけますか。
実務家ブランド論
赤ちゃんがすやすやと気持ちよさそうに眠っているこの広告、これを見て、あなたはどう思いますか。
キャッチコピーを読んで、「そうか、人は寝ているときも空気を吸っているんだ」と納得する方もいるでしょう。
そして、多くの方は「ダイキンって、こういう広告をつくっているんだね」と思われたのではないでしょうか。
でも、これがダイキンの広告だとすると「致命的」です。
なぜ致命的なのか?
おわかりになりますか?
それは、ダイキンのブランドロゴマークがどこにも入っていないからです。
ボディコピーに「ダイキン」という社名が入っているので、多くの人は「ダイキン」の広告であることに気づくでしょう。
しかし、たとえダイキンの広告であるとわかったとしても、ロゴマークがない広告は致命的。
ブランドづくりにおいて大きな損失を生んでしまうのです。
その理由をお話ししましょう。
ロゴに一貫性を持たせて、「思い出すきっかけ」と「イメージ」を結びつける
ブランドづくりにおいて重要なことは、そのブランドを「思い出すきっかけ」と人々の「頭の中のイメージ」を、いかに効率よく結びつけるかです。
ブランドを「思い出すきっかけ」の一つが、ロゴマーク。
例えばナイキ、ルイ・ヴィトン、アップル…
こうしたブランド名を聞いたとき、読者の皆さんの頭の中にはすぐにロゴマークが浮かぶのではないでしょうか。
スウッシュマーク、LとVからなるモノグラム、そしてリンゴのマーク…
それと同時に、ブランドにまつわるさまざまな事象を思い浮かべていませんか。
ルイ・ヴィトンであれば「バッグの値段、高いよなー」とか、ナイキであれば「新作スニーカー、かっこいいな」とか、アップルであれば「iPhone13、ついに出たな」とか…。
人は「思い出すきっかけ」を見ると、自分の頭の中にある「その企業専用の貯金箱の中に貯まっている情報」を思い出し、「その商品に対する勝手なイメージ」を思いめぐらせるのです。
企業のロゴマークはあらゆる場面で使用されるものですが、どの場面においても「ロゴマークを見た生活者が一貫して同じ印象を受けるように表示する」ことが重要です。
そしてロゴマークには、一貫して同じ印象を与えるための表現上のルール(形、色、余白の取り方など)があります。
そのルールを守り、どんな場面、どんな接点においても見た目をそろえ、正しく表現することによって、生活者は見る度に“同じロゴマーク”として受け止めます。
同時に、それが「誰から」発信されている情報であるかを認識するのです。
先ほど挙げたナイキ、ルイ・ヴィトン、アップルなどは誰もが認める、いわば“スーパースターブランド”です。
日本には、素晴らしい会社や商品・サービスは数多くありますが、残念ながらこれらのブランドのように誰もが認めるスーパースターブランドはありません。
“凡人ブランド”の広告で、ロゴを目立たせるべき理由
上記のような理由から、スーパースターではない“凡人ブランド”においては「ブランドを貯める」一番の要素であるロゴを、できる限り目立たせることを、私はお勧めします。
ブランドロゴがシンボル(象徴)として目立つデザインであるほど多くの人の目に留まり、凡人ブランドの広告にはふさわしいのです。
例えば、こんな感じでしょうか。
実務家ブランド論
この広告事例は私がつくったものなので、極論のデザインになっています。
ここでお伝えしたいのは、いくら「素晴らしい情報」でも、それが「誰からのメッセージ」であるかが頭に残らなければだめだ、ということです。
ロゴマークの色や形を正しく表現することは、広告の大事な基本。
実務家は、そのことをきちんと覚えておかなければなりません。
ロゴマークを、なぜ広告で使うのか。
その最終目的は、「目指すブランドの情報」をその「企業や商品」に結びつけること。
マーケティングの現場にいる実務家が考えるべきは、「ブランドを貯める」効果を「あらゆる接点」で最大化するために、いかにブランドマークを効果的に使っていくかということなのです。
このことをより強く意識することで、情報をより効率的にブランドに貯めていくことができます。
私は33年にわたってブランドづくりにかかわる中で、スーパースターブランドの広告を真似してしまい、誰からのメッセージなのかわからなくなってしまった広告をたくさん見てきました。
そして、自分自身も失敗を重ねてきました。
そして今から5年前、仕事を始めて28年目に、世の中にある「ブランドの教科書」に書かれている本当の意味や、ブランドをつくる実務家としての方法論がわかりました。
そこで、今ブランドに困っている方や、これからブランドにかかわる方々から、私がかつて抱えていた悩みがなくなるよう、自分自身の経験をふまえた「実務家に向けたブランド論」としてまとめたのが本書です。
この本を活用していただくことで、私のような多くの失敗や無駄な回り道をせずに「みなさんの企業や商品の本来の価値を伝える」ことができるようになり、ブランドづくりがうまくいくことの一助になれば、私にとってこんなにうれしいことはありません。
実務家が33年かかってたどり着いた、ブランドづくりの教科書
片山さんの実体験に基づいて書かれた『実務家ブランド論』は、凝り固まったブランドの固定概念をほぐす、ブランドづくりの教科書です。
「あなたの企業・商品・サービスは凡人です!」「SDGsで、ブランドなんかつくれません!」...このように、目次にはやや辛辣な見出しも並んでいますが、平凡な企業・商品であっても愛されるブランドづくりのノウハウが詰まっています。
実務家ブランド論・あの人の言う「ブランド」と私が言う「ブランド」ってなんか噛み合っていない気がする
・うちのブランドもAppleやスタバみたいになりたい!
・そもそも何のためにブランドっているんだっけ?
・何から手を付けていいかわからない…
・今やってることが正しいのかもわからない
こんな悩みも解決するはずです。
ブランドづくりに悩んだときに、読んでみてはいかがでしょうか?
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