ビジネスパーソンインタビュー
あなたの“はたらく幸せ”とは?
世界を見て、世界を聴く。音声プロデューサー野村高文さんが考えるはたらく“Well-being”
新R25編集部
パーソルグループは昨年、一人ひとりの“はたらくWell-being”にみんなで向き合い、共に考え、行動するオンラインコミュニティ「はたらくWell-being Lab.」を開設しました!
「はたらくWell-being Lab.」には、年齢やセクシャリティはもちろん、はたらき方や職種も多様なメンバーが集まっています。
「はたらく幸せ」を、いろんな角度から考えるために、「はたらくWell-being Lab.」では、ゲストをお迎えして“はたらくWell-being”を実現するためのコツを紐解くトークイベントを開催しています。
こちらの記事では、編集者、コンサルタントなどの経験を重ね、音声プロデューサー・編集者として独立。最近まで、ご家族を伴い長期の海外出張に行かれていた野村高文さんをお迎えし、「“世界を見て、世界を聴く”。音声プロデューサー野村さんが考える「はたらく幸せ」とは?」と題して開催されたトークイベントの様子をお届けします。
(聞き手:柴山由香)
音声プロデューサー・編集者。東京大学文学部卒。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、ニューズピックスを経て、2022年に独立。制作した音声番組「a scope」「経営中毒」で、JAPAN PODCAST AWARD ベストナレッジ賞を2年連続受賞。その他の制作番組に「News Connect」「みんなのメンタールーム」など。TBS Podcast「東京ビジネスハブ」メインMC。著書に『視点という教養』(共著)
キャリアのつくり方は、「上から順番」!? 経験を重ねたからこそ生まれた、“はたらくための根本思想”
柴山
ご自身で立ち上げたPodcast Studio Chronicle代表としてさまざまな音声コンテンツを配信したり、プロデュースされている野村さんですが、キャリアのスタートは出版社ですよね。
「出版関係に行こう!」というのは、大学の時から決めていましたか?
野村さん
最初は、漠然とメディア業界に行きたいと思っていました。
学生時代は新書ブームで、そもそも本が好きだったし、よく読んでいたんです。
それで、新書が強い出版社を上から順番に受けて行ったら中堅のところにご縁があったという感じですね。
柴山
(上から順番…?)なるほど。
出版社のお仕事はどうでしたか?
野村さん
書店営業をちょっとだけして、雑誌の編集者になりました。
取材をして記事を書くというのがすごく楽しくて、「これは一生の仕事にできそうだな」と思ったんですけど、出版社は景気がよい話が全然なかったんです。
入社したのが2010年、その辺りが最後の花火みたいな感じで、それ以降は年々売上規模が縮小していきました。その時、編集という仕事は楽しいけれど「コンテンツをつくる・記事を書く」というキャリアだと、頭打ちになるなと感じたんですよね。コンテンツを使ったビジネスをする、商売をする。そこを体得しないとダメだなと。
「ビジネスがわかる場って、どんな所だろう?」と考えた時、単純なんですけどコンサルだなと思い、有名なコンサル会社の上から順に履歴書を出していったんですよ。社会人経験が雑誌編集者だけなので、当たり前ですけど、大体の会社が書類落ちなんですよね。唯一面接に呼んでくれたのが、ご縁があったボストンコンサルティンググループでした。
柴山
野村さんは、出版社もそうなんですけど、上から攻めていくんですね。
野村さん
私のころは、ネットで就職偏差値がランクづけされていたんですよ。それを上から順番に受けていきました。
今思えば短絡的で、ダメな考え方ですよね(笑)。
柴山
面白い…!(しかも、それで入れちゃうのがすごい。)
コンサルのお仕事はどうだったか、お聞きしてもいいですか?
野村さん
コンサルは…、全然活躍できませんでした。
いまだに覚えているんですけど、プロジェクトにアサインしたものの、マネージャーからしてみたら私に振れる業務がなくて、延々とExcelのデータを整理するみたいな業務を割り振られたことがありました。「意外とExcel使えるんだね」と言われたんですけど(笑)みんな何かしらの役割を持っていて、何かしらの価値を出しているのだけれど、自分にはここにいる意味がない。貢献できない辛さを味わいましたね。
その経験から、根本思想として、場に対してきちんと貢献できるかとか、価値が発揮できるかというのを意識するようになりました。
それでも1年くらい経つと一通りのことはできるようになって、とりあえず居てもいいんだなというスキルが身につきました。でも、コンサルタントよりも、メディアの方が性に合っているなと感じたんですよね。
「自分はこの場で何の役に立てるのか」足りないところを埋めに行く!
柴山
メディアとコンサルの違いは、どんなところにあると思われますか?
野村さん
例えば、編集業界の人と飲むと「こういう企画、面白いと思うんですよね」「それいいですね、ワハハ」という雰囲気で物事が決まっていくんです。
要は、何が面白いか、という話をするんですね。
一方で、自分の未熟さを差し引いて話をすると、コンサルの現場ではすべての発言に論理的裏付けが求められるんです。「それロジック通っているの?」と。
なので、理論武装をして話していかないといけない。
編集の現場は真逆で、「あなたが面白いと思った」というのが重要なんですよね。もちろん、なんで面白いと思ったかを説明しないといけないんですけど。そっちの方が性に合っているなと思いました。
柴山
その後、NewsPicksからお声がかかったと。
野村さんが入られたのは、会社がものすごい勢いで拡大していく時期でしたよね。
野村さん
そうですね。当時、親会社である株式会社ユーザベースは数百人規模だったのですが、NewsPicksは社員が数十名名くらい。ありがたいことに会社の成長期だったんですよね。ユーザーも伸びているし、仲間も増えていくし。逆に言うと、成長目標がすごく高かったので、前年と同じことをしていても目標達成はできない、という感じの6年半でした。その中で、「自分はこの場で何の役に立てるのか」をすごく考えていました。
最初の方は記者や編集者という役割をフルでやり、途中からNewsPicksアカデミアというコミュニティ事業を立ち上げて、マネージャーになりました。アカデミアのマネージャーをしている頃は、裏方から出演者まで、10の職種くらいを同時にやっていたことがありましたね。最後は、編集部に戻り「デスク」という立場をやりつつ、退職するまでの2年くらい、音声コンテンツの立ち上げをやっていました。
私の特性として、全体を見て足りないところを埋めにいくことがあります。
ここをやったら価値が出せるな、という部分が見えてくる。逆に言うとウィークポイントでもあって、専門家というよりは便利屋になっちゃうんです。
柴山
隙間を見つける力とそこに入っていく力。
どうやってそれらを活用していかれたんですか?
野村さん
「明日、記事が足りないんだけど、どうする?」みたいなことが起きたとします。そうするとスケジュールを管理する人が必要になってきますよね。
さらに、何かあったときのために持ち玉として記事を用意しておいて、パッと出せる人がいたらみんなが助かりますよね。そんな動き方をしていました。
そのため、途中からは優秀なライターさんとアライアンスを組むことにリソースを集中させました。
自分で書く量をあえて減らして、信頼できるライターさんたちとつながることを重視する。
そうすることで、みんながオーバーワークになっている時に「記事、ありますよ!」と言える。なぜそれができたのかというと、コンサル時代に培ったものですね。よく「バリューを発揮する」という言い方をするんですけど、自分で仕事を探しに行くというのは、コンサルで得た能力です。まさに学ばせてもらったところだと思っている部分ですね。
NewsPicksアカデミアのイベントでモデレーターを務める野村さん
一瞬でもかじったものは、何かしらに使える! 自分の価値を発揮するための思考法
柴山
その時々は必死だったかと思うんですけど、こうして聞いていると全部がきれいに繋がっていますよね。
野村さん
そうですね。ただ、20代でAとBとCのスキルを身につけたら、30代で良い感じのスキルになるよ、という風に計算をしていたわけではないんです。
一瞬でも過去にかじったものは、何かしらに使えるんじゃないかというのは、今でも考え方の癖として持っています。
編集スキルはあるものの、NewsPicksには他にも記者や編集者はたくさんいたし、自分よりもキャリアがある人がどんどん入ってくる。その中で自分が価値を発揮するならどれかな、という風に考えると、コンサルタントとして鍛えたビジネスパーソンとしてのスキルでした。
足りないところを埋めに行くというマインドセットもそうだし、事業計画を書いて、数字をつくるのもコンサル時代にできるようになっていたんです。それから、プロジェクトマネジメントですね。プロジェクトマネジメントは得意な役割ではありますね。好きな業務は編集なんですけど、苦なくできる業務の一つです。
柴山
好きと得意が違うのは、つらくはないですか?
野村さん
そこは割り切っています。
得意な業務とは何かと言うと、そんなに精神的負荷なく稼働をかけなくても、周りから感謝されてお金ももらえるもの。
得意な業務で効率よくお金をいただいて、浮いた分を好きな部分に割り振ればいいなと。
今は幸いにも、ほぼ好きな業務なんですけど。
柴山
なるほど。
野村さんは、音声コンテンツの分野で独立をされていますが、ご自分の中でずっと温めていたんですか?
野村さん
「いつか絶対に起業してやる!」みたいな思いはなかったんです。独立したのが2022年の年初で、そう決意をしたのが2021年の夏くらいでした。
会社の中で事業として音声コンテンツを立ち上げようと2年くらいやってみた結果、社員数百名を食べさせる新規事業としては厳しいなということがあったんです。
ただ一方で、「これくらいの収益が上がるっぽい」ということが分かってきたんです。
数百人の社員を食べさせるのは無理だけど、数人の仲間たちだったらみんな豊かになれるみたいな、そういうマーケットサイズだなと思いました。気づいたということは何かのタイミングなんだろうなと思って、独立することにしました。
ご本人提供:TBSラジオの番組に出演する野村さん
これから先もはたらいて笑うために、「めっちゃやりたい仕事」で伝え続ける
柴山
極めて真っ当で、地に足がついてる…!
ちなみに、「はたらいて笑えているな」という時期って、人生で何回くらいありますか?
野村さん
そうですね、今は確実にそうですね!
やっと辿り着いたという感じです。
これがゴールとは思っていないですけど、少なくとも何か一つ、成立するポイントに辿り着いたなという感じがします。
一方で笑えていなくても、振り返って、「あの時は充実していたな」ということもあります。
柴山
笑えてなかった時期がいらなかったわけではないということですよね?
野村さん
まったくないです!
自分にとっては絶対に必要な経験だったなとは思いますね。
柴山
そのお話を聞いて、野村さんの親戚でもなんでもないですが嬉しくなりました(笑)。
今、充実しているんですね!
充実と言えば、つい最近までご家族と一緒に割と長い期間海外出張に行かれていましたよね。
野村さん
5カ国、80日くらい行って来ました。
妻と出国時点で6ヶ月の子どもと一緒で、なかなかなチャレンジでした。
柴山
私、野村さんが立ち上げた番組「News Connect(ニュースコネクト)」の大ファンで、毎朝5分程度で世界のニュースを端的に伝えてくれる貴重な番組を無料で提供されているのは、本当に尊いことだと思っています。
もちろん、会社としての戦略はあると思うんですけど、あれは野村さんが「やりたくてやっていること」なんですか?
野村さん
そうです!
先程お話したことで言うと、好きで、めっちゃやりたい仕事ですね。
基本的に全部無料で出すという方針です。
価値を感じてくださったら、サポーター制度があるので、みなさん加入をご検討いただけるとありがたいです(笑)。
柴山
ここ重要ですね…!
土曜版として配信されている海外で活躍している日本人の方のインタビューシリーズも、もちろん聴いてます。
今回の出張の目的の一つでもあると思うのですが、海外で頑張っていらっしゃる日本人の方々にお話をお伺いして、野村さんは海外に出ようと思われましたか?
野村さん
思いましたよ。
今回の出張には、問題意識がありまして。
私がいる領域は、ビジネス経済メディアなんですけど、情報の出所が偏っているなと感じていたんです。出てくる方々はほとんどが東京に住んでいるし、取材しに行くのも関東近郊が行きやすいし、実際に読者もそこにいる方々が多いので、そういう情報を出していくというのは理にかなっているんです。
でも、もっと世の中は多様だし、経済メディアはもっともっと海外のことを伝えなきゃいけないと思っていたんですよ。
自分で全部を決めてやれる状態になった時には、ずっとやりたかったことをやりたいなと思っていて、それを実行に移したという感じですね。
柴山
あれを聴くと、めちゃくちゃ元気出ます!
野村さん
伝えたいメッセージは一つで、「海外に出るって、案外ハードル低い」なんです。
リスナーのみなさんと、今、海外で活躍をしている起業家のみなさんは、実は地続きなんだと言いたくて。
ごく一握りの、帰国子女とか駐在に選ばれたとか、すごく大それた決断をしたとか、そういう風ではなくても、ちょっとしたご縁と少しの決断…、決断というほどのものではないかもしれない、選択ですね。そういったことで、海外へ行くことはできる、ということを伝えられたらいいなと思いました。
私の現時点のベースは日本なので、そんなに偉そうなことが言えるわけではないのですが、日本だけにいて得られるものが少なくなってきているような気がしているんです。ここが良い部分で、ここが直さなきゃいけない部分と、日本という場所を相対化するためにも、外を見ることがすごく重要だなと。
もっともっと多くの日本人が越境した方がいいと思っているんですよね。「ここで話しているお兄ちゃん、意外と自分と変わらないな」と思ってくれればOK。そういうことを意識してコンテンツをつくっています。
柴山
ありがとうございます!
「はたらいて、笑っているよ」という野村さんのメッセージを聞けてよかったです。
野村さん
今は、幸いにもそうですね。
野村さんは、ニュースコネクトを始めとした素晴らしい音声コンテンツをどんどん発信されていきます。
気になる方は、野村さんやPodcast Studio Chronicleの公式X(旧Twitter)をフォローしてくださいね!
オンラインコミュニティ「はたらくWell-being Lab.」への参加申請はこちらから(どなたでも参加いただけます!)
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