ビジネスパーソンインタビュー

プロになっても、月のお小遣いは10万円。大谷翔平が“言語の壁”を超えても愛される理由

ジェフ・フレッチャー著『SHOーTIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』より

プロになっても、月のお小遣いは10万円。大谷翔平が“言語の壁”を超えても愛される理由

新R25編集部

2022/07/28

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MLB(メジャーリーグベースボール)のMVP選手にも輝き、2022シーズンも投手・打者として二刀流で活躍する大谷翔平選手

そんな彼のメジャーで1460日間をエンゼルスの番記者のジェフ・フレッチャー氏が追いかけた新著『SHOーTIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』(徳間書店)が発売されました。

彼が日本で野球少年として生まれ、海外で活躍する現在までの、圧倒的な活躍の秘密に迫った同書。大谷翔平のプロとしての圧倒的な成果はどのように生まれたのでしょうか?

同書より、周囲を巻き込むマインド面での学びや、120年に一度の天才を輝かせた野球界のキーパーソン達の努力から学べるマネジメントの秘訣など、抜粋してお届けしていきます。

自分に厳しく、チームやファンには親しみやすく。プロ野球選手としての振る舞いを徹底する

選手の中でも背が高く、あどけなさを残したイケメンで、しかも、あの活躍ぶりだ。

大谷は、超大物のセレブとなっていった。大谷の球場における大活躍によって、さらに球場外での名声も高まった。圧倒的な野球の才能と、二刀流というかつてない強烈な個性のおかげで大の人気者となった。

しかし、そんな周りの狂騒に対して、大谷は完全な免疫ができているようだった。当時近くにいた元チームメイトたちによると、どれほどセレブになっても、最高の野球選手になりたいという一途な思いと探究心は、一切揺らぐことがなかったという。

まるで野球にしか関心がない無名の野球少年のような生活を続けていた。広告出演料を含めなくても、年俸は2億円を超えていたわけだが、大谷は母親から毎月送られてくる10万円ほどの小遣いで生活していた

しかも、まるで大学生のようにチームの寮で寝起きしていて、もしも外出したくなったら、栗山監督かチームのマネージャーの許可が必要だった。

スターになったり年齢を重ねたりした選手は、ほとんどの場合、豪奢で快適な住まいを求めるのが一般的だ。大谷は、とにかくすべてをシンプルにすることを望み、1日の大部分を球場か寮のどちらかで過ごしていた。

日本の報道陣は集中的にこの男を追いかけ、何かスキャンダルはないのか、野球をしていないときの素顔はどんなものかを嗅ぎまわったが、何も出てこない。

「ジャパンタイムズ」のスポーツライター、ジェイソン・コスクリーが指摘した。

「まあ、何かやらかしていれば、絶対に誰かが見つけるよね」 「スキャンダルも皆無だし、物議をかもすこともない。本当にごくごく普通の若者で、謙虚で、礼儀正しく、親しみやすく、腰も低かったね」

「あいつは完全に世俗から切り離されていたな」

そう振り返るのは、2016年にファイターズでチームメイトだったアメリカ人投手、アンソニー・バースだ。

「いちばん感心したのは、スーパースターでありながら、よきチームメイトであることを両立していたことだ。普段は親しみやすいヤツだよ。自分があんなスーパースターだったら、毎日コツコツと同じことを続けられるとは思えない。あれだけの重圧にさらされながら、活躍を続けるわけだから」

ファイターズの親会社である日本ハムは、球団の選手を自社食品の宣伝のために活用している。親会社は、2013年にプロ入りして、初の春季キャンプさえ始まっていない18歳の大谷を、あらゆるイベントに引っ張り出した。

大谷はイベント会場で無数のカメラと、少しでもスーパースターを近くで見たいと押し合う3000人の来客に囲まれながら、自社の肉製品を頬張るシーンを撮影した。

チームメイトから借りたまだ慣れないスーツ姿で、大谷は可能な限りくつろいでいる様子を見せていた。おそらくは、高校時代のトイレ掃除のおかげで謙虚な姿勢を保つことができたのだろう。

当初は「緊張していた」と認めたが、大谷はこのイベントで注目を集めたことに関してはだんだん慣れたという。

「いい経験でした。プロ選手として、ファンやスポンサーの方々といい関係を築くことは大切ですから」

球場外では静かな生活を続けた大谷だったが、キャリアの伸びは凄まじく、メジャーリーグのスカウト一同も否応なく追うようになった。

2016年シーズンの終了後、とあるメジャーリーグの大物が「大谷こそ世界最高の野球選手だ」と断言した。ベテラン野球ライターの永塚和志もこう評した。

「たしかに今まで見た中で、最高の選手だと思います。大谷を目撃するたびに、何か今まで見たことのないものを見せつけられる気がします。ダルビッシュとか、イチローとか、野茂(英雄)とか、誰であれ。でも、比べてはいけません。大谷をこういう選手たちと比較するのは公平ではない。だって、ほかの誰もやったことがないことをやっているわけですから」

言語の壁がある海外でも、一員になろうとする努力がチームメイトに伝わる

大谷は、専属通訳付きで1日中報道陣に追いまわされていたが、それでも新しいチームメイトの中へ溶け込もうとしていた。

何人かのチームメイトたちとゴルフに行くこともあったし、バスケットボールにも興じていた。先発投手仲間のアンドリュー・ヒーニーとともに、NHL(ナショナルホッケーリーグ)のアリゾナ・コヨーテズの試合観戦にも行った。

当初はゲームで交流を深めたこともあり、特に「クラッシュ・ロワイヤル」という、プレイヤー数人が集結して軍隊を構成し、仮想のタワーを攻撃するゲームがお気に入りだった。

中継ぎ投手のブレイク・パーカーは熱心なゲーマーで、大谷と熾烈なゲーム上のライバルとなり、バイリンガルな罵り言葉の応酬までするようになった。 パーカーが、大谷との言葉の応酬と、新言語の習得について指摘していた。

「誰だって、最初に悪い言葉を覚えるものだろ」

「あいつは間違いなく、オレたちの一員になろうと努力している。オレはそう感じる。あいつは馴染もうとしているし、気張らないようにもしている。球場では競争心むき出しだけど、それ以外では冗談を言って楽しもうとしているよ」

ファイターズ時代から大谷を知る日本人記者たちに言わせると、大谷は日本にいたころより落ち着いていて、新しい環境のほうが楽しそうに見えるという。

「みなさんがどう思っているかわかりませんが、僕はここに馴染んでいると思いますよ」

大谷はキャンプ初期にそう語った。

「球場外では、何の問題もありません。ごくごく順調です」

大谷は何かモノが違うと初めて認識したのが、初期のオープン戦だった。打席に入ると、メジャーリーガーよりも13歳の女の子に似合いそうなポップな日本の歌が流れ始めた。

チームメイトの一人が、いつもスキニージーンズをはいて球場入りする大谷をからかう意味で、きゃりーぱみゅぱみゅの「ファッションモンスター」を選曲したのだ。

エンゼルスの選手一同はダグアウトで大爆笑して、曲を聴いた大谷もいつもクラブハウスで見せるような笑顔を見せた。

投手のギャレット・リチャーズが証言する。

「あいつは、いつも笑顔だよ」「いつも機嫌がよさそうなんだ」

「世界レベルの一流として、突き抜ける理由」

オールスターゲームに2年連続で選出され、2022シーズンもより一層活躍することが期待されている大谷選手。

彼の野球選手としてパフォーマンスの秘密に迫った同書ですが、ビジネスパーソンも共通する「一流とは何か?」を考えさせられるような内容が詰まっています。

個人でも組織でも突き抜けた成果を出すために必要なエッセンスが感じ取れますので、ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

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