ビジネスパーソンインタビュー

「ポジティブって言葉、最近プレッシャーじゃない?」どん底を克服した青山テルマの“落ち込み学”

「落ち込まない秘訣」なんて、ない。

「ポジティブって言葉、最近プレッシャーじゃない?」どん底を克服した青山テルマの“落ち込み学”

新R25編集部

2021/12/29

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どうして自分は、あの人みたいにうまくできないんだろう

いまだに他人と比べて「あの人はいいな」と思って落ち込んでしまう癖が拭えません。キラキラとした姿を見るのが嫌で、思わずSNSをミュートしてしまうことも(小さい…)。

この負のループ、どうにかして断ち切れないものか…

今回お話を聞いたのは、バラエティ番組でも活躍中のアーティスト・青山テルマさん。メディアではいつもポジティブで笑顔全開な彼女ですが、「デビュー後てっぺんからどん底まで転げ落ちた」とのこと。一体何が…?

【青山テルマ(あおやま・てるま)】1987年10月27日生まれ。トリニダード・トバゴ人と日本人のクォーター。小学校6年生までをインターナショナルスクールで、その後家族とともに移住しLAで過ごす。2007年9月5日に「ONE WAY」でメジャーデビュー。同年「ここにいるよ feat.青山テルマ」がヒットし、2008年には「そばにいるね」でオリコン1位を獲得。「日本で最も売れた着うたフル楽曲」としてギネス世界記録を受賞。バラエティ番組をはじめとするメディアで見せる飾らないパーソナリティに幅広い世代からの共感を集める

「私たちが手に入れるべきは、“落ち込まないコツ”じゃなくて…」

いしかわ

今日はいつもポジティブなテルマさんに、「落ち込まないコツ」を教えていただきたいのですが…

青山さん

うーん…私べつに、ポジティブでいようと思ったことないですけどね

いしかわ

そうなんですか!? こんなに明るいのに!?

青山さん

私からすると、落ち込んだり、そんな自分が嫌になったりするのって超日常ですから

そこをなくすって、普通に無理じゃないですか(笑)?

いしかわ

素で明るい方だと思ってたので、けっこう衝撃なんですが…!

青山さん

いや、むしろ「落ち込まないコツ」とか一生答え出ないと思ってます(笑)

思ってたのと全然違う展開になってる

青山さん

私たちが手に入れるべきは、「落ち込まないコツ」じゃなくて「落ち込んだ自分とうまく付き合うコツ」なんですよ。

残酷な話なんですけど、自分だけは自分から一生消えられないんで。

いしかわ

消え…え?

青山さん

恋人も、家族も、友だちもいつかは自分の前から消えるじゃないですか。

でも、自分は一生自分として生きていかなきゃいけない

であれば、落ち込んだ自分を受け入れて、仲良くなるコツを考えたほうが生きやすいと思います。

それは…たしかにそうかも

“落ち込む”とは、「理想の自分」に気づくための時間

いしかわ

でも、落ち込んでる自分を肯定的に捉えるって無理じゃないですか?

青山さん

まあ、 サラッと言ってみたけど難しいよね(笑)。

はい…ハードルがめちゃくちゃ高いです。

青山さん

でもね、「落ち込む」っていうのは、きっと何かを変えたいと思っている“サイン”なの

青山さん

落ち込んだときって、必ず悩みのなかに「理想の自分」がいるんですよ。

もっとこうしたいなとか、ああすればよかったなとか…なんでこの恋うまくいかないんだろうとかね(笑)。

だから「落ち込む」って、もう一度「理想の自分」を確かめるための時間だと思うんです。

いしかわ

落ち込んでいる自分にこそ、人生を好転させるヒントが隠れていると。

青山さん

もちろん友だちと喋ったり、ドラマを観たりして気を紛らわすこともできるけど…

いつかは根本的に悩みの種を解決しなくちゃいけないんですよ。結局自分しか変えられないからね、自分のことは。

そういう意味では、落ち込むというのは、「最高の材料」だと思いますね。

「落ち込むこと=なりたい自分になるための材料」。ちょっと元気が出てきました…

「誰かのせい」にしている限り、いつまでも落ち込みつづける…!?

いしかわ

ほかにも、落ち込んだ自分との向き合い方のコツってありますか?

青山さん

人のせいにしない」。

人のせいにしてる限り、「落ち込みループ」から抜けだせることはないですね。

青山さん

私が人生で一番「落ち込みループ」にハマってたのは、「そばにいるね」で1位を取ったあとだったんですね。最高潮に高まったまわりの期待に、応えつづけられるかどうかという局面。

当時は19歳だったので、プレッシャーに押しつぶされそうで、つねに落ち込みがちだったんですよ。

いしかわ

「そばにいるね」のときって19歳だったんですか…それは苦しそうですね…

青山さん

でもそうやって落ち込んでいるとき、自分がすべて“人のせい”にしてることに気づいたんですよ。

誰かに「こっちのほうがいいんじゃない?」「いい曲じゃん!」と言ってもらえたのに、結果がダメだったときに「ほら、だから言ったじゃん」って。

そうやって「相手のせいにする」ことがクセになってたときこそが、私は“どん底”だったと思うんですよ

どん底!

青山さん

だって、自分に一切原因がないのかといえば、絶対そうじゃないでしょ?

勇気を出して主張して、立ち向かう選択肢もあったはず。それを怠って「いざとなったら人のせいにできるようにしてた」だけ。

弱音を吐くのは必要なことだと思うけど、ずっと人のせいにしててもループから抜け出せなくなっちゃう。だから、「人のせいにしない」はすごく意識しています。

いしかわ

誰かのせいにしない…でもただでさえ落ち込んでいるときに「自分のせいにする」って、余計落ち込んじゃいませんか…?

青山さん

そこでポイントになるのが、さっきの「理想の自分」の考え方です。

自分を追い詰めるんじゃなくて、解決策や次のヒントを探すために、整理すればいい。

「自分のせいにする」ことは、自分を幸せにすることでもあるんですよね。

人と比べてしまうのは、自分が成功したい理由をわかっていないから

いしかわ

あと…まわりと比べて落ち込んでしまうことが多いんですけど、これっていい向き合い方があるのでしょうか…?

青山さん

いや、めっちゃわかります。今はみんなSNSをやっているから、羨ましかったり、妬ましかったりする瞬間も多いよね。

「失敗すればいいのに」とか思う気持ちも、正直わかる。私もそう思ったことはある

青山さん

でも、「その人が失敗する」=「自分が成功する」では全然ないってこともわかってるんですよね。

自分の現在地は何も変わってないのに、何をよろこんでんの?って、だんだん気づいてく。

いしかわ

グサグサに刺さってます。

青山さん

誰かと比べちゃうのって、まだ「自分がどうありたいか」がわかっていないんですよ。

「自分がどうありたいか」がわかってる人はそれを叶えることがすべてだから、他人がどうとか本当にどうでもいいの

そこがわかってないから、人と比べて「まわりよりはまだマシ」って思おうとしちゃう。

真理すぎて聞いてるのもしんどいな

青山さん

でも、落ち込んだ自分と向き合って「理想の自分」がしっかりわかっていくと、だんだん人と比べなくなっていくから。

人を超すことが本当にやりたかったこと? 違うよね。「理想の自分」がそれぞれ違うことに気付けば、比べるべき“ライバル”なんて誰もいないことがわかるんですよ。

誰かに合わせてカメレオンにならなくていい。「無理矢理」をやめてみること

いしかわ

この1時間終始正直な言葉で話してくださって…

テルマさんがつねに「自然体」であることにちょっと驚いてます…!

青山さん

ああー、そう言ってもらえるのはうれしい! じつは私が意識してる最後の「落ち込んだ自分とうまく向き合うコツ」は…「人に合わせないこと」なんです。

青山さん

私が20代で一番気持ちが楽になったのって、「自分が好きな自分でいよう」と割り切れたことだったんですよ。

もともとは、落ち込んでいる自分が嫌で、イケてる人と友だちになってみたり、人が喜びそうなことをして盛り上げたり、カメレオンのように自分をいろんな色に染めていて。

でもね、そんな自分で何かいい出来事があっても、あんまりうれしくなかった。それってやっぱり、無理してたからなんですよね。

青山さん

だから、あなたも無理に「ポジティブになろう」って考える必要はないんですよ。

なんか今って「ポジティブになろう!」みたいな声が多すぎて、むしろプレッシャーになってる気がしません?

いしかわ

そうかも…

青山さん

本当に自分を好きでいたいなら、ある程度の適当さも必要だし、ある程度の逃げも必要。無理矢理やってることって大体いつか壊れていってしまうから。

それより、自分が本気で守りたいものを守ったほうが絶対に楽しいよ。それが、一番「無駄な落ち込み」をなくせる方法だと思う。

いしかわ

「無理矢理やっていないか」は自分の心の叫びに気付くヒントになりそう…! 本日はありがとうございました!

〈取材・文=いしかわゆき(@milkprincess17)/編集=サノトモキ(@mlby_sns)/撮影=長谷英史(@hasehidefphoto)〉

青山さんの最新アルバム『Scorpion Moon』が絶賛発売中!

青山さんの最新アルバム『Scorpion Moon』が10月27日にリリース!

オリジナルアルバムとしては3年ぶりのリリースとなった本作。

when I was 19 夢握ってがむしゃらに飛び込む業界に 山のてっぺんは凄く孤独でそのまま転び落ちた下まで 諦める事なんていつだって できたけど伝えたいこの言葉で 大人に睨んで歯を食いしばった 『いつか見てろよ』って中指立てた

と、自身の半生を振り返るようなリリックが散りばめられた「life goes on」をはじめ、この3年間で感じたこと、経験したことを赤裸々に素直に曲にしたという青山さん。

青山さん

あんまり今回は頑張らなかったです(笑)。いろんなことにチャレンジしようっていうよりも、素の自分が出たアルバムなんじゃないかな。

…というコメントの通り、飾らない青山さんのマインドにチアアップされる作品となっております。ぜひチェックしてみてください!

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