ビジネスパーソンインタビュー
木下勝寿著『売上最小化、利益最大化の法則』より
“利益とは何か”を説明できますか?「北の達人」代表がすべての会社員に伝えたい、価値あるビジネス
新R25編集部
北海道札幌市に拠点を置き、健康食品や化粧品を自社ECサイトで販売している「北の達人コーポレーション」をご存じでしょうか?
実はこの会社、「利益率」が抜群に高く、2020年2月期の売上は約100億円・営業利益は約29億円を達成。
営業利益率29%は、上場しているEC業界内平均の12倍の利益になるんだそう。
効率的に利益を生み出し続ける北の達人コーポレーションでは、どんな経営や戦略が練られているのか?
代表取締役社長・木下勝寿さんの著書『売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密』(ダイヤモンド社)より、盤石な会社をつくるために知っておきたいマインドを一部抜粋してお届けします!
会社員が知っておきたい「利益」の話
会社を利益体質にするには、社長が利益の大切さを繰り返し語る必要がある。
社員を利益志向にするためだ。
お金に関する考え方は人それぞれ違う。
なかにはお金を儲けることが不道徳なことだと考えている人もいる。
利益とは何か、利益を上げることにはどんな社会的意義があるのか、日常の仕事と利益はどう関係しているか、共通認識を持つ必要がある。
これから紹介するストーリーは、利益に対する「北の達人」の考え方を示したものだ。
新卒社員、中途入社社員には私が直接研修を行っている。
中途入社社員の中には、前職で「売上を上げろ」という教育を徹底的に受けた人も多い。
そこで売上とは何か、利益とは何かを改めて考えてもらう。
この話は、経営者向けの講演でもすることがある。
基礎的な話だが、研修の実況中継だと思って読んでほしい。
稼いでいる会社は多くの人に役立っている
Aさんは自分でつくった鍬で畑を耕していた。
あるとき、隣の畑を耕すBさんを見て驚いた。
Bさんの鍬は特別仕様でつくられていて、同じ時間で2倍の仕事がこなせる。
Aさんは、「ぜひその鍬と同じものをつくってくれ」と頼んだ。
Bさんは、「いいけど、あなたの鍬をつくっていると、私が作物をつくる時間がなくなる。鍬をつくる時間分に相当する作物を分けてくれたら引き受けるよ」と言った。
こうして物々交換が誕生した。
やがてBさんの鍬は評判になった。
あるときCさん、Dさん、Eさんが作物を持ってBさんの家にやってきた。
「Bさん、この作物をあげるから、私たちにも特別仕様の鍬をつくってくれないか」
Bさんは困った。
たくさんの作物をもらっても、食べる前にいたんでしまう。
するとCさんが、「それなら好きなときに私の作物と交換できる券をつくろう」と兌換(だかん)券を渡した。
こうして通貨が誕生した(現実には金が価値を保証する金兌換券だが)。
兌換券1枚=特別仕様の鍬=鍬をつくる時間に相当する農作物3つが同じ価値になった。
モノやサービスの価値を置き換えたものがお金だ(ここでは兌換券)。
お金は人の役に立つともらえる。
価値とは、どれだけ他者の役に立つかということだ。
役に立つかどうか、価値があるかどうかは、お金を渡す側が決める。
「自分は相手の役に立っている」「一所懸命に働いている」と思っても、相手がそう思わなければお金を支払ってはくれない。
私があなたに唐突に「1万円ください」と言ったら断るだろう。
では、どんなケースなら1万円を私に渡すだろうか。
それは1万円分、あなたの役に立ったときだ。
つまり、金額分、相手の役に立たないとお金は絶対にもらえない。
Bさんは特別仕様の鍬をたくさんつくり、たくさんのお金をもらった。
人に役立つ度合がお金の量で、Bさんの社会への貢献度ということになる。
では、毎日の仕事ではどうか。
様々な価値のある商品・サービスを提供する。
それに見合った対価をもらっている。
つまり、稼いでいる会社は多くの人の役に立っている。
会社がどれくらい世の中に役立っているかを示す指標として、次のように言われることがある。
売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密・あってもなくてもいい会社(たまたま目に入ったから買っただけ)→年商5億円以下
・あると便利な会社→年商10億円以上
・なくなると困る会社→年商100億円以上
だから多くの起業家は100億円以上の会社になることを目指すのだ。
利益を出すには、付加価値をつけよう
さて、Bさんは鍬を提供し、役立った分の対価をもらった。
これが売上でお役立ち度の合計を数値化したものだ。
では利益とは何か。
売上の中で自分自身が生み出した付加価値分を数値化したものだ。
鍬はBさんがつくったが、鍬の材料の木や鉄を仕入れているから、すべて自分でつくったわけではない。
売上は、Bさんの鍬の価値の合計だが、利益はその中でBさん自身が生み出した付加価値分だ。
売上だけなら簡単に上げられる。
あなたが人の役に立ちたいと考え、Bさんから鍬を仕入れた。
1本1000円の鍬を10本仕入れ、1本1000円で10人に販売した。
Bさんから買っても、あなたから買っても、品質も値段も同じだ。
お客様はたまたま目についたあなたから買った。
売上は1万円だが利益はゼロだ。
売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密売上1万円(1000円×10本)-原価1万円(1000円×10本)=利益0円
売上は上がったが、あなたは世の中の役に立ったか。
企業の中には、売上100億円でも利益がほとんどないところもある。
仮に、100億円の売上目標を立てたとする。
100億円売り上げるために、価格比較サイトの最安値で、あるメーカーの10万円のPCを、10万台仕入れた。
原価は100億円かかった。
そして、同じ価格比較サイトに出品し、同じ最安値の10万円で販売した。
お客様は品質も価格も同じ最安値だから、たまたま目についたほうを買う。
1台10万円で10万台仕入れたPCが、1台10万円で10万台売れ、売上100億円を達成したとする。
だが、利益はゼロだ。
売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密売上100億円(10万円×10万台)-原価100億円(10万円×10万台)=利益0円
仕入れたものに付加価値が加わらなければ、売上が上がっても利益は出ない。
すでに世の中に役立っている商品を、そのまま仕入れて、そのままの値段で売ると、売上は上がるが、利益は上がらない。
それはあなた自身が世の中の役に立っていないことを示している。
では、このPCに10年保証をつけて11万円で販売したとしよう。
お客様が元のメーカーから買うと10万円だが、あなたの会社から買うと1万円高いものの10年保証がついている。
10年保証に価値を感じる人が10万人いたらこうなる。
売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密売上110億円(11万円×10万台)-原価100億円(10万円×10万台)=利益10億円
一方で、10年保証に価値を感じない人、1万円は高いと感じる人が多ければ売上も利益も上がらない。
価値があるか、利益が適正かはお客様が決めるということを忘れてはならない。
年商100億円の会社でも利益を出さなければ存在価値はない。
売上に意味はない。
利益こそが会社のお役立ち度を示している。
利益はその会社が本当に役立っているかどうかのバロメーターなのだ。
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