ビジネスパーソンインタビュー

「誰かを傷つけていないか、エゴサしていた」藤井貴彦アナが持つ“言葉の力”の正体

藤井 貴彦著『伝える準備』より

「誰かを傷つけていないか、エゴサしていた」藤井貴彦アナが持つ“言葉の力”の正体

新R25編集部

2021/07/25

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SNSで相手を傷付ける言葉をよく見かけたり、相手に何か伝えたいときに誤解を生んでしまったりしたことありませんか?

個人の言葉が自由に世界へ発信できるようになった今、私たちの言葉は影響力が強くなっています

そんな時だからこそ、伝え方の重要性を語っているのは『news every.』(日テレ)でお馴染みのアナウンサー、藤井貴彦さんです。

藤井さんの視聴者を思いやる言葉は、「感動した」「勇気をもらった」など度々ネットで話題を呼び、今人気のアナウンサーです。

ほんの少し伝える準備をするだけで、少なくとも自分の周りの雰囲気は変えられます

その雰囲気が各所で広がれば、批判暴言を減らせるはずです。

伝える準備

と藤井さんは著書『伝える準備』の中で語っています。

藤井さんが実践する、空気をいい方向に変える“伝え方”とは。

同書より、藤井さんの経験談を中心に一部抜粋してお届けします。

誰かを傷つけていないか、確認する

私はコロナウイルスのニュースをお伝えする中で、基本的な情報に、自分なりのコメントを加えました。

アナウンサーはニュースだけ読んでいればいいという方もいらっしゃいますので、ここではその良し悪しをお話しするつもりはありません。

また、あのコメントが不快だったという方もいらっしゃると思いますので、そういう方は申し訳ありませんが、このページをスキップしていただければと思っております。

一連のコメントをつくり上げる中で一番心配していたのは、「私のコメントで傷ついている人はいないか」ということだけでした。

より多くの人に言葉を伝えるうえで、ここだけは知っておきたかったのです。

そこでSNS上での反応を確認しました。

いわゆる「エゴサーチ」です。

いくつも印象に残ったコメントがありました。

私にはもったいないお言葉も多く頂戴しましたが、その一方で、悲しくなる言葉も多くありました。

ここで、しっかりと分析しなければならないのは、その誹謗中傷が「単なるストレス発散」、言い換えるとすれば「その人の好き嫌い」から始まっていないかということです。

「こいつ、言い方がムカつくな」

「コロナに罹患して早く死ねばいいのに」

これは、実際に私に対して投稿されたメッセージです。

もっともっと切れ味の鋭い、悲しい言葉もたくさん見られました。

でも、この紙面を汚したくないので、できるだけシンプルなものを抜粋しておきます。

こんな言葉を目にして、まず感じたのは「普段はこんなこと言わない人なんだろうな」ということです。

それがSNSだと言えてしまう

私は多くのご批判やご意見を糧に、アナウンサーとして育てていただきましたので、どんなコメントにもある程度の「免疫」が備わっています。

しかし、免疫がない方の場合、初めて目にする悲しい言葉の数々に、メンタルの不調をきたす可能性もあります

もし、SNSの誹謗中傷に悩んでいる方がいたら、ここで判断してください。

議論を前に進めようとするコメントは正当な批判であり、生産性がある

誹謗中傷との最大の違いはここです。

それ以外のコメントは、ここでしか書けないかわいそうな人なんだと思って、その場から離れましょう。

「この言葉は本当に届いているのか」

テレビは多くの人にご覧いただいていますが、スタジオにいる私たちは、みなさんのお顔を拝見することはできません。

だからこそ常に、「この言葉は本当に届いているのか」と自分に問いかけています

新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出された時、テレビ画面は「人の少ない渋谷のスクランブル交差点」を映し出しました。

この交差点をどう表現するか。

アナウンサーによって、テレビ局によって、それぞれのスタンスがありました。

あの緊急事態宣言の状況下ですから、異様な光景とするか、あるべき光景とするか、単に「人がいません」とだけ言うか。

そんな中、私が大切にしていたのは、たくさんの人の立場から言葉を選ぶということでした。

医療従事者

飲食店経営者

学校の先生

感染症の専門家

ご高齢の方々

赤ちゃんのいるお母さんは、

渋谷の交差点をどんな思いで見ていたのか

伝える準備

いろいろな立場の方の顔が浮かびました。

でも、あちらを立てればこちらが立たずの堂々巡りで、言葉が決まりません。

結局、私は「今テレビを見ているみなさんのご協力で、人との接触が防げています」

と、お伝えしました。

この交差点にいない人は、テレビの前にいるかもしれないと思ったからです。

もっと多くの人に伝わるメッセージもあったはずです。

しかし私の言葉は、テレビをご覧になっている方にしか届きません。

だからこそ、今時間を共有しているみなさんにメッセージを伝えようと考えたのです。

私は、誰かを批判することよりも、誰かを励ますことを選びました。

この言葉に対する嫌悪感もあると思います。

しかし私は、「政府にはしっかりとした対策を求めたいものです」といったようなコメントで、いただいた数秒の機会を消費したくなかったのです。

見栄えのいい言葉だけが届くのではなくて、鋭い批判だけが力を持つのではなくて、相手を頭に思い浮かべた言葉こそが届くのだと信じています

言葉は、自分の存在以上の力を持って戻ってくる

ある時、こんなお手紙をいただきました。

ちょっと経緯が複雑なのですが、番組を見てくれているという中学生の女の子のお手紙に、私がお返事を書いて送ったところ、ほどなくして、女の子のお母さんからお手紙が届いたのです。

その手紙には、私からの手紙が届いて娘さんが大喜びしたことや、その手紙を額に入れて飾ってくれていることなどが書かれていました。

私のようなおじさんから届いた手紙をそんなふうにしてくれて、恐縮です。

しかし、お母さんから届いた便箋4枚にわたるお手紙を読み進めていくと、その雰囲気はガラッと変わります

ご家庭の深い事情から、娘さんの日常生活が不安定になっていたこと、学校も行かず、行っても遅刻をし、食事もしなくなっていたことが書かれていました。

お母さんは、これは自分のせいだと、自らを責めていました。

私はそんな事情も知らず、女の子の手紙に返事を書いていたのです

さらに読み進めていくと、私の手紙が届いた後は、早起きをして学校に行くようになり、部活動にも参加するようになったと書かれてありました。

お母さんの喜びとともに、私への感謝のお言葉まで添えられていました。

ここで申し上げたいのは、私の意外な人気ぶりではなくて、たぶん、私の言葉がしっかりと仕事をしてくれたのだろうということです。

メールであれば、自分がどんなことを書いたのか送信履歴で見直せます。

しかし手紙は、相手に届いてしまえば、その言葉や思いを再び確認することは難しいでしょう。

よくやった、私の言葉たち!

正直に申し上げて、あの手紙のどんな言葉に心を動かしてくれたのかはわかりません。

でも、自分の生んだ言葉たちがいい仕事をしてくれたならうれしいです。

その後、女の子は元気に頑張っているのかな。

相手に好意がある時にどう伝えるか。

後輩への指導が必要な時にどんな言葉を選ぶか。

感謝を伝えきる言葉を今、持っているか。

まだまだ道半ばの私が言うのもおこがましいのですが、急に「言葉力」が身につくことはありません。

日々言葉に触れ、使うことで、自分を高める。

それがいつか、自分の存在以上の力を持って自分に戻ってきます

手元にある安易な言葉で、ご自分を包まないように。

発する言葉で自分をつくる意識が、今の時代だからこそ大切なのだと思います。

あなたは最近、誰にどんな言葉を伝えましたか?

藤井アナの言葉の力

同書を読むと、ストイックな努力と、人を想う配慮があるからこそ藤井さんの言葉は多くの人の心に届くのだと実感します

藤井さんは、どのように“伝える”ことと向き合い、どのように言葉を培ってきたのか。

同書は藤井さんの言葉の根底にあるものが分かる一冊です。

ほんのわずかな伝える準備で、自分の周りのみなさんの表情が変わっていきます

その表情に囲まれたあなた自身も、さらにいい変化を見せ始めるでしょう。

悪循環を好循環に変えるのは、あなたの「伝える準備」です。

伝える準備

ぜひ『伝える準備』を読んで、“言葉の伝え方”を学んでみてはいかがでしょうか。

自分も、周りの人も、いい方向に導いてくれるはずです。

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