① 細分化する

② 日常の解像度を上げる

③ 「○○の○○版」を考える

④ ネーミング力を身につける

企画脳ねえ。なるほど。いろいろあるねえ…

共感できる企画やアイデアって、「なぞなぞ」だと思うのよ。

普通、企画を求められても、すぐには思い浮かばないものでしょ？

でも誰かの答えを聞いたら「あ～そんなことか！ そんなの誰でも思いつくよ～」って思うようなやつ。

そういう経験あるでしょ!?答えを聞いたら超簡単な企画みたいなパターン。でも実際は言われるまで気がつけなかったわけで。

じゃあ基本的な考え方から。

アイデアって「細かく刻むこと」なのよ。

たとえば「恋愛」をテーマにドラマや歌を企画するとする…

でも、恋愛って要は「好きか嫌いか」「くっつくか別れるか」ぐらいやん。根本は。そのままだったら作れて4曲くらいなわけ。

だから、それを何種類にも細かく刻む。要するにイチゴを使ってどれだけスイーツが作れるかみたいなね。

恋愛の歌で、「朝起きて、準備して、彼氏に会って、ご飯食べて、今日も好きでした」っていう小学生の絵日記みたいな内容だったらどう!? 共感性は乏しいよね。“わかるわかる～”ってのがない。

でも、素人さんの歌詞は99％そんな感じに思う。

たとえば、「朝起きて、デートに行くまで」だけで1アイデアにしないとアカン。

具体的にいうと「デートに行きたいのに鍵が見つからない」。「待ち合わせの時間に遅れたくないのに『鍵がない！ 鍵がない！』」。

これを5分の曲として全体を書き上げたら、みんな「わかる～！」ってなる。

いいアイデア、いい歌詞って、そうやって細分化してある。

「いとしのエリー」の「言葉につまるようじゃ恋は終わりね」って歌詞を聞いたときも、12、13歳くらいやったと思うけど、子どもながらに“これやな”って思ったよね。

（しばらく考え込んで）…新R25の読者の人は、毎日家出て会社につくまで1時間とか？

同じコースで行くでしょ。そのとき、途中に自動販売機がいくつあるかわかる？

じゃあ、コンビニが何軒あるかは？ 薬局は？ ポストの場所は？

芸能界でいろんなマネージャーを見てきたけど、デキるマネージャーってそういうのを覚えてるんよね。若い子で話す内容が「おもろいな～」と感じる子って、だいたいそういうディティールが細かい。

つまり、日常の解像度が高くて、「見えてる」ってこと。

アイドルにしたって、代わり映えのない日常のなかで「何かあった？」ってエピソードトークの差はそこにある。

同じグループのメンバーでツアーバスに乗って移動してるから、ほぼ見てる景色、体験は同じなはずなのに、そのなかからMCで面白トークをできる子って見えてるディテールが細かいんよ。

おいしいものを食べたときに「おいしかったです」じゃなく、どこに着目するのか？ たとえば「佐藤優樹ちゃん（モーニング娘。'21）が七味唐辛子をかけようとしたら、フタが取れてドバッとかかってしまった」。このエピソードを、どう表現するのか？で力量がわかる。

みんなが当たり前に体験していることを、面白くできるかが腕の見せどころよね。

それは、言語化する力でしょう。

単にメモるだけではなく、自分の主観を言語化できる力。

“景色を自分の感性で言語化できるかどうか”ってことになるんだけど…もちろん「才能」っていう意味で解像度の違いはあると思うけど、でも、大半の人は“覚えてるかどうか”なのよ。日記とかブログとかツイッターとかなんでもいいけど、人に見せなくてもいいから、自分なりに面白いと思ったこと、解釈を言語化するといいと思う。

写真をインスタにあげるのは誰にでもできるけど、それをどう解説できるかが他人との差につながる。漫画の吹き出し的な発想。

どんなに解像度が高くっても、こと細かくメモは取れても、それを解釈や解説する力がなければまったくの無意味。

もちろんすべてはメモすることから始まるけど、議事録を取るだけでなく、そこに主観をどう添えられるかが重要。

おいしそうなハンバーグの写真を撮ったとして、この時点ではメモみたいなものだけど、それをどう解説できるか。もしくは自分の感想を添えられるか。ここで大きく差が出る。

オリンピックの実況であっても、みんな同じ映像を見てるなかで、どんな主観を添えるかでアナウンサーの力量が問われるし、その番組の良し悪しも変わる。

僕は景色に気がついたらスマホのメモに書くことが多い。「これ歌詞になるな」って思ったことを端的に言語化しておく。連載とかコラムとかnoteのアイデアも、全部そこからきてるね。

そうね…（少し考えて）。企画するときは、自分のなかで「突拍子もないけど、こんなものがあったら便利だろうな～」ってものを探してるかな。

で、それを「○○の○○版」って表現できないか考える。

Uber Eatsとかのサービスって、今となっては当たり前だけど、日本に上陸したころは理解されないものだったでしょ？

「食べに行ったら1000円のものが1300円になるって？」「おそば屋はサービスで出前してくれるのに、Uberだとなんで高くなるの？」って。

「突拍子もないけど、あったらうれしいもの」を考える。でも、突拍子もないから最初世間は理解できないやん？ そもそも日本ではUberの普及が難しかったのもあって世間的にUberの意味がわからない。

なのでいきなりUber Eats開始！って言われても「は？」となる。そこで「タクシーの、出前してくれる版始まる！」とか「タクシーの、おそばを運ぶVer.始動！」って感じで言語化する。そうすると誰にでもなんとなく想像がつく。

そうやって、いろんな人に伝わるかたちにできるかどうかが、いいアイデアかどうかの分かれ道って感じがするなあ。

まだ世に出てない松浦亜弥をどう伝えるか？

実際はキャラとしては全然違うので否定することはできるんだけど…当時「平成の松田聖子」って表現したメディアはすごいと思ったね。それを聞いただけで「歌がすごくうまいアイドルなんだろうな」って想像がつくから。

そうやって魅力が誰にでもわかるように言語化するのってとても大事だと思う。

へー、そう？どんなところが？

なるほど、そう見えるんや！

僕はクセを出そうとは思ってなくて、むしろ「企画をアウトプットするときは難しい名前をつけない」って決めてる。意味はわからなくてもその名前だけは読める、みたいな。

“みんなに支持されるアイデアは、より単純な名前”だと思う。

子どもでも理解できるような言葉がいいよね。「モーニング娘。」も「シャ乱Q」もそんなに難しい文字を使ってない。「つんく」も平仮名3文字でしょ。

だから「L'Arc～en～Ciel」が出てきたときに、すごい勝負かけるな～！って思ったよ。読めないし覚えられんやん！って（笑）。

あの名前で売れたってことは、結果相当バンドに力があったってことだよね。

たとえば、政治の世界で「自由民主党」を超える政党をつくるにはどうすればいいか？ 僕は「まず政党名やろ！」ってずっと思ってて。

まだ「これだ！」ってのが思いつけないので自民党がトップであり続けるのは仕方ないって思ってる（笑）。

「都民ファースト」もネーミングとしてすごくいい線いってますよね。でもここ最近で…最近でもないか…一番いい名前だなと思ったのは、「みんなの党」。

どこがって…だって…「みんなの党」やんか！（笑）

小学生でもわかるこの感覚ね。

あの…ほら、ジャニーズの子とかバカリズムが家事をする…

『家事ヤロウ!!!』や。

「家事をやろう！」と「家事する野郎」をかけてるっていう。

アイデアの話で「Uber Eats」の話をしたのはなぜかというと…

思いつくアイデアが時代より早すぎるとうまくいかないというか、時代より先に行かないくらいがちょうどいいと思うねんけど。

いろんな経営者に、「すでに世にあるものを改善していくビジネス」か「まだ世にない、時代の一歩先をとらえたビジネス」、どっちを選んだほうが勝機があると思いますか？ってきいてみたいね。

プライド的に“2匹目のドジョウ狙い”はしたくないけど、もしかしたらそのほうが勝つんちゃうかなってちょっと思う。

あんま早すぎると理解されないのよ。後発のもので「うまくいってるやん」って思うこともいっぱいあるから。

僕も何年か前に、「オンラインでアイドルたちがファンと会話するサービス」を考えてたの。でもまわりに話したら「それエロチャットと同じ構造ですよね」って否定的で…

そういうことじゃないねん…って思ってたんだけど、結局、いま日本では前田裕二くんが「SHOWROOM」としてすごくいいかたちでやってるよね。

そういうアイデアって、当時の僕としてはいろんなことやってる仕事の一つやんか。でも彼はそれだけに命懸けてやってる。だからこそ成功したんだと思うけどね。

そうやな～、タリーズコーヒージャパンの創業者で、元みんなの党の松田公太さんとか。

彼はアメリカからタリーズとかエッグスンシングスを持ってきて、どう日本のマーケットに合わせていくのかって、かなり鼻が効かないとできないよね。どう考えてるんやろ？ 2匹目のドジョウのようで日本にとっては新規のアイデアとなる。これはすごいね。