ビジネスパーソンインタビュー
「やっていることはほぼ前田裕二さんの『メモの魔力』なんです」
「信じる神様は途中で変えていい」自称劣等生・乃木坂46山崎怜奈が“成功”から解放された話
新R25編集部
やりたいことが見つからない。自分になんの武器があるかわからない。
おそらく誰もがぶち当たってきたであろうこの悩み…。
今回お話を伺ったのは、アイドルグループ・乃木坂46の山崎怜奈さん。
ラジオ好きを公言し、乃木坂46初となる帯ラジオ番組のパーソナリティを務めたり、「歴女」として歴史の本を出したり…他のアイドルと一線を画すユニークな活躍ができているのは「アイドルとして圧倒的に劣等生だったから」なのだそう。
何やら“掘ると深そう”な彼女に、「自分の武器を見つける」話を聞いてみました。
〈聞き手=いしかわゆき〉
【山崎怜奈(やまざき・れな)】1997年生まれ、東京都出身。2013年、母親が本人に内緒でオーディションに応募したことをきっかけに、乃木坂46二期生として活動を開始。2020年、慶應義塾大学卒業。世界遺産検定2級を取得したり、乃木坂46初となる帯ラジオ番組のパーソナリティを務めたり、クイズ番組への出演や歴史本『歴史のじかん』(幻冬舎)を上梓するなど、幅広く活躍中
自分らしい武器を見つけられたのは「アイドルとして劣等生だったから」
いしかわ
今日は「武器の見つけ方」についてお話を聞きたいんですけど…
山崎さん
あ、ちょっとスマホ取ってきてもいいですか?
いしかわ
えっ?
山崎さん
私、スマホにいろんなことをメモしまくっているんです。
全部記憶できたらいいんですけど…。回答に困ったらメモを見ながら話しますね。
普段から思考を書き出しまくっているとのこと。すでに性格の片鱗がうかがえる…
いしかわ
ラジオパーソナリティや歴史本など、山崎さんは「自分だけの武器」で戦っているイメージがあるのですが…
これって何か理由があるんですか?
山崎さん
アイドルとして圧倒的に「劣等生」だからです。
いしかわ
劣等。えっ、いやそんな…
山崎さん
うまく結果を出せず、アイドルとしての自信を失いそうになってしまう瞬間もあって。そんなとき、「自分が触れてこなかった社会で、どんな人が、どういう考え方で、どんな生き方をしているのか?」っていうことが知りたくなったんです。
それで、アイドルではなく芸人さんのラジオを聞いたり、ビジネス系の雑誌で一般企業の方のインタビューをたくさん読んだりしたんですね。
いしかわ
アイドル以外の世界を知ろうと。
山崎さん
そしたら気付いたんです。
アイドルも含め、「自分がいる世界で成功とされていることだけがすべてじゃない」って。
山崎さん
私はそれで、「信じる神様」を変えたんです。
「この世界で認められなきゃダメだ」って、思わなくていいし、気にする必要もない。
そこで一気に吹っ切れましたね。
いしかわ
信じる神様を変えた…!!
山崎さん
人が目指しているものを、私も叶えなくてはいけないと思わなくていい、私は私の大事なものがある。
もちろん、途中で信じているものが変わってもいいと思います。
今の自分の価値観がすべてだと思わない。大切なのは、「今の自分の考え方」に依存しないこと。
いしかわ
そのために、外の世界を見ろと。
山崎さん
私も、ラジオ番組を持てたり書籍を出せたり、他のアイドルがしない動きができるようになったのはそこからです。
だから今は、アイドルとしての劣等感はあるけど、人としては自分を認められるようになってきました。
『メモの魔力』から学んだこと。「同じ道で自分よりすごい人がいるのは“ありがたい”」
いしかわ
ちなみに、何かに挑戦するとき「この道はどうせ自分よりできる人がいる」と思って諦めてしまうこともあると思うんですけど、山崎さんはどうですか?
山崎さん
たとえばラジオも、私より圧倒的にすごい方がいくらでもいらっしゃいます…伊集院光さんとか…
いしかわ
(急にラジオ界の大御所…)
山崎さん
そこに勝てるなんてはなから思ってないというか…え、勝つ必要あります?
山崎さん、なんかクセになってきました
山崎さん
むしろ、すごい人たちのエッセンスをいいとこどりできるのって、後続隊の武器だと思うんです。
ラッキーでしかない。すごい先輩がいるのはありがたいこと。
「ありがたいな」と思っています。
いしかわ
なるほど。今回出された本『歴史のじかん』は「歴史」という、アイドルとしては特殊なテーマですけど…
山崎さん
それも、歴史の授業を抽象化して、テーマを自分で決めて、現代の話に置き換えているんですけど…
やっていることは、ほぼ前田裕二さんの『メモの魔力』で学んだことなんです。
山崎さんがメモ魔一派だったことが発覚しました
山崎さん
自分の人生で経験できることは限られているので、人の人生からおいしいところだけ「ありがたい」って“転用”したほうがお得だと思います。
法則だけもらって、自分が楽しめる要素を当てはめていく。それでじゅうぶん「自分らしい仕事」ができることに気が付いたんです。
いしかわ
なるほど…!
山崎さん
世の中すごい人っていっぱいいるけど…
私は、才能で勝ち続けている人よりも、負けて努力している人のほうが強いと信じています。
「自分に期待していないからこそ、準備魔になれるんです」
山崎さん
あと私、とにかく「失敗上等」精神なんです。
失敗しようが負けようが、ひたすら数を打つ。やるだけやって結果が出なかったら、何か歯車が違ったということ。
ダメだった歯車を次で改善するのみです。
いしかわ
失敗だった挑戦もあるんですか?
山崎さん
スベりまくっていますね(笑)。絵を描いたり、有料のモバイルメールで自分の勉強ノートを掲載したり…散々失敗しています。
でもその一方でラジオパーソナリティをさせていただいたり、「日本史好き」アピールが実を結んで今回書籍を出させていただけたり。数を打てば当たるんです。
いしかわ
でも、失敗がまわりに認識されるのって嫌じゃないですか?
山崎さん
私、自分に期待してないんですよ。「まぁ自分はこんなもんだろうな」って。
自分がうまくできると思っていないし、7、8割取れれば上々かなと思っているんです。
でも、自分に期待していなければ、失敗なんて気にならないはずですよね。
いしかわ
ものすごいドライっぷりですね…
山崎さん
でも、自分に期待していないからこそすごい準備魔にもなれるんです。
この間自分のラジオにLiSAさんがいらしたんですけど、これまでどんな質問をされてきたのか過去のインタビュー記事を探せる限り全部読みました。
終わったら、またラジオを聴き返して改善点を探して。「なんでこう返せなかったんだ」「なんでここ拾わなかったんだ」って自分のなかで“次こうするリスト”を作っておきます。
いしかわ
完全にプロの思考だ…
山崎さん
今の自分が大した成果を出せるわけないと自覚しているからこそ、迷いなくPDCAを回しまくれるんです。
人生、これからも私は「負け」の経験をたくさんするはず。そのときの引き出しを増やすつもりで、引き続き「失敗上等」でいこうと思います!
「何が武器なのかわからない人って、苦手なことをやりすぎて好きなことや武器が奥に追いやられているだけ。
ゆとりを与えてあげれば出てくるかもしれない。どうか自分を責めないで」
そう語る彼女に、ものすごく勇気をもらえました。
自分らしい武器がまだ見つからないというR25世代の皆さんも、山崎さんの姿勢を参考にしてみてください。
〈取材・文=いしかわゆき(@milkprincess17)/編集=サノトモキ(@mlby_sns)+天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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