ビジネスパーソンインタビュー
坊垣佳奈著『Makuake式「売れる」の新法則』より
山奥なのにヒットした飲食店の秘密。ブランディングの真髄となる「2階建て」構造とは
新R25編集部
アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」が成功した理由。
それは、「クラウドファンディングの仕組みをアップデートさせて、新しい商品開発の方法を提示できているから」だと、運営に携わる坊垣佳奈(ぼうがきかな)さんは言います。
事業者やプロジェクト自体に資金力や宣伝力がなくても、これまでにない数々のヒット商品を生み出せた裏には、一体どのような秘策があったのでしょうか?
坊垣さんの著書『Makuake式「売れる」の新法則』より、「ファンを巻き込む方法」「これからの時代の“売れるもの”の条件」「うまくいくブランディングの法則」について抜粋してご紹介します。
うまくいくブランドは「2階建て」である
「売れるためのブランディング戦略」は、書籍やセミナーなど、さまざまなところで耳にすると思います。
「いかに新規性を設けるのか」「オリジナリティを出すのが大切」といったワーディングを目にしたこともあるでしょう。
確かに、それらも欠かせません。
しかし、それよりも「新しいものや体験」を生むためのブランディングには、真髄とも呼べる法則があるのです。
それは、うまくいくブランドは「2階建て」であることです。
まず1階部分に来るのは、家であれば基礎や土台であり、そしてお客様を迎える玄関です。
ブランドであれば基本的な構造部分、つまり食べ物であれば「美味しい」、サービスであれば「使いやすさ」といった、その商品に備わる基本的かつ根源的な資質となります。
そして、2階部分に新規性、オリジナリティ、デザイン性、販売方法、愛着や好感といったプラスアルファの要素が乗っかってきます。
まず、2階建てという言葉の通りに、家をイメージして考えてみましょう。
デザイナーズでオシャレだけれど、住んでみると結露がひどい、冬は寒くて夏が暑いといった住み心地の悪い家だった...なんて話を聞いたことはありませんか?
確かにオシャレなのもいいけれど、家である以上は「住む」という大切な土台が弱ければ、本当にユーザーを満足させることはできません。
ところが、ブランディングと聞くと、2階部分だけに注目が集まりがちです。
2階建ての構造を知ってから世界や日本のブランドを見てみると、確かな共通点として浮かび上がってきます。
特に知名度や人気の高いブランドは徹底しています。
土台のない家は、そもそも家として建つことはできないのです。
あるいは1階部分がもろくなっていたり、古びていたりすれば、先にそちらを補修する必要だって出てきます。
1階(土台)を見落とす罠に陥りやすい、2つのケース
誰もがこの2階に注目して1階を見落とす罠に陥りがちです。
その理由として、大きく2通り想像できます。
① 慣例にとらわれて“基礎”をかえりみないケース
まずは、業界を知りすぎていて、慣れてしまっているケースです。
慣例や習慣といったものにとらわれて、「これが普通」と1階をおろそかにしてしまうと、意外に消費者のニーズから外れてしまうこともあるのです。
自分たちにとっては当たり前すぎて忘れていたり、目を向けていなかったりすることも。
この傾向は、老舗と呼ばれるような企業や店舗ほど顕著です。
② そもそも土台を知らないケース
次に、そもそも土台を知らないというケース。
あまり良いたとえではありませんが、まったくの素人がアイデアだけで飲食店経営に乗り出してしまう。
流行になりやすい飲食店のポイントや資金の回し方、食材の調達ルートといった基本的な構造を知らないままに、「この立地に、こういったコンセプトのお店を出せば流行るはず」と出店する...。
もちろん、時には“業界の革命児”や“異業種参入”などといって、慣例を壊すようなプレーヤーが出てくることも、アイデアだけで成功するケースも稀にはあります。
ただ、飲食店であれば基本的には腕利きの料理人が必要であり、食材を見極める必要もあります。
一時の流行りで2階部分がもてはやされても、1階を成す食の基本なくして、長い繁盛は望めません。
1階のクオリティによって、2階はプラスにもマイナスにもなる
「新しいものや体験」の2階建て構造において、基礎であり土台である1階は必ず取り組むべき要素になります。
先日、私は京都市と大阪市の間にある高槻市を訪れました。
お目当ては、駅から車で40分ほどかかる場所にある、Makuakeのプロジェクト実行者がオープンされた「心根(こころね)」という和食屋さんです。
まさに山奥といっていいところです。
でも、その距離感が、この和食屋さんの一つのオリジナリティでもあります。
その山で採れた山菜を使った料理を、山中の澄んだ空気の中で食べる。
この体験自体は、お店にとっての「2階部分」だといえます。
もし、これが京都駅か大阪駅のすぐそばにあるお店だったら、得られない感動だと思います。
ただ、飲食店として見れば、「非常に遠い」という奇抜な2階部分を持つからこそ、その分だけ1階部分の「美味しさ」も非常に高いレベルを求められます。
むしろ、2階部分が奇抜であればあるほど、ユーザーが1階部分にかける期待感が大きくなりもします。
さらに、2階部分に当たるオリジナリティは、1階部分のクオリティによって、プラスにもマイナスにも大きく振れてしまいます。
このお店の場合ならば「とても美味しい」という要素が担保されているので、オリジナリティはプラスになります。
もし味にこだわりがなければ、単に「美味しくもなく遠い場所にある」とマイナスな印象を重ねるだけになってしまう。
作ろうとしているものや体験に対してのユーザー心理を考え、2階部分のオリジナリティをいかに顧客に捉えていただくか。
そして、ものならば「使いやすさ」、体験ならば「美味しさ」「心地良さ」といった1階部分をいかに作り込むか。
この両面に気を払うことは、今後の「新しいものや体験」には必須となります。
固定観念から外れて新たな価値を築くことで、2階を構築できる
ここまで1階部分の大切さを説きましたが、逆に、こんな声も聞こえてきそうですね。
「品質が良いのは当然。オリジナリティのある2階部分は、どう考えればいいの?」
特に、伝統工芸品といったトラディショナルなものであればあるほど、新規性や斬新さの視点が難しいと感じるかもしれません。
それを考えるうえで必要な観点は、自分たちが作っているものや体験の「揺るがない価値、届けるべき価値は何か」の基本をベースに、一度壊して、再構築することです。
ありきたりな言い方をするならば、価値や品質は大前提として、いかにそのものや体験を取り巻く固定観念から外れることができるかが大切です。
「揺るがない価値、届けるべき価値」とは、まさに1階部分に当たる要素です。
ちょうどよい事例として、近年では人気商品となった「カラー漆器」を挙げてみましょう。
従来「漆器といえば朱色か漆黒」が定番とされてきましたが、近年ではその枠組みから外れ、黄色や水色などの色彩鮮やかなカラーをまとったお椀などが登場しました。
作っているものは、従来と同じく丈夫で高級感のある「漆器」であっても、「朱色か漆黒」という固定観念から脱するだけで、ユーザーに新しい価値を提供することができています。
あるいは、漆は「お椀やお重に塗るもの」と思われていますが、漆の持つ「揺るがない価値、届けるべき価値」はそのままに、もっと別のものに塗布しても新たな価値が生まれそうです。
売り手と買い手が直接繋がれる時代の「ものの売り方」
SDGsやエシカルなどが重要視され、消費者の「ものを選ぶ基準」が変わってきている今、“伝統”や“らしさ”を大切にしながら、新しい価値を生み出し続けているサービス・Makuake。
『Makuake式「売れる」の新法則』では、Makuake式のマーケティングの考え方や、「新たなものの売り方」についての参考事例がいくつも紹介されています。
売り手と買い手が直接繋がれる時代の「ものの売り方」を知りたい方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
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