森 泰輝著『「ダメな自分」でも武器になる 』より
コンビニバイトは1カ月でクビに。引きこもり大学生が、年商14億円YouTube事務所の社長になるまで
新R25編集部
仕事で失敗したときに「自分のダメな部分を、なんとか変えたい」と思うことってありますよね。
しかしYouTuber事務所「VAZ」の創立者・森 泰輝(もりたいき)さんは、著書『「ダメな自分」でも武器になる コンビニバイトはクビでも年商14億企業をつくった男の人生戦略』のなかで、「努力したって、できないものはできない」と断言しています。
コンビニバイトも1カ月でクビになるような、引きこもりの大学生だったという森さん。
一体どのようにして、ダメな部分をそのままに成功を手に入れたのでしょうか?
森さんが考える「ダメな自分のままで成功する方法」を、同書から一部抜粋してお届けします!
大学に半年で行かなくなり、コンビニバイトも1カ月でクビに
2011年8月。
猛勉強の末に勝ち取った大学合格、そして上京。
入学からたくさんの友人ができて、憧れの東京での学生生活を謳歌しているはずだった僕は、ワンルームのアパートでひとり布団に寝転がっていました。
半年も絶たずに僕は、大学に行かなくなりました。
キャンパスに居場所をなくし、時間を持て余していたのでアルバイトを始めます。
最初のバイト先は家の近くのコンビニです。
未熟な頭で、「誰にでもできそうだな」と軽い気持ちで選んだ職場でした。
僕が不器用にレジを打つ横で、テキパキと作業をこなすおばちゃんからは冷たい目線が向けられます。
結局、僕は1か月もたたないうちにクビになりました。
店長からの「お前ほど仕事ができないヤツは、今まで見たことがない」という言葉...
今もそのときのイントネーションまで覚えています。
スヌーピーとメンター・Aさんの言葉に出合い、ハッとした
そんな生活が数か月続いた頃、奨学金を生活費に回している自分に嫌気がさし、「できることから始めよう」と、ようやく考え始めたタイミングで、人生を変える出合いがありました。
ひとつはSNSのタイムラインに流れてきた
「配られたカードで勝負するっきゃないのさ... それがどういう意味であれ」
というスヌーピーの言葉です。
偶然目にした言葉でしたが、ハッとしました。
友人はいないし、バイトもクビになった。
でも、その原因をつくっているダメな部分も含めて自分自身なんだ、と。
それから僕は狂ったように本を読みはじめます。
おそらく200冊近くの本を読んだと思います。
面白いもので、たくさん本を読むと、世の中の解像度が上がっていきます。
そんな毎日を過ごしていると、もう一つの人生を変える出会いが巡ってきました。
それがのちに、僕が起業するうえでのメンターになってくれる人物、Aさんとの出会いでした。
Aさんは広報戦略を立てる能力が抜群に優れていて、企業だけでなく政党からもPRを依頼されるほどの凄腕ビジネスパーソンでした。
「森くんが得意なことは何だと思う?」
「どういう生き方なら本来の自分を活かせると思う?」
そんな問いかけを、Aさんは何度も何度も繰り返ししてくれました。
その日から僕は、 なれもしない他人に憧れるのではなく「本来の自分を活かす」という行動指針を持つようになったのです。
「弱みを逆手にとる」作戦が奏功し、1年で“意識高い系”営業マンに
その後、僕はさらに学生団体の活動にのめり込むようになり、自分が代表を務める団体を立ち上げました。
元ひきこもりから1年で「意識高い系(笑)」へと変貌したのは、我ながらすごいギャップだと思います。
学生団体の友人を通じて紹介してもらったのは、小売店に集客用ITサービスの導入を促す仕事でした。
しかし、当然ながら営業の素人が数字を上げられるわけがありません。
「売り上げゼロ」が約2か月続いた頃に、考えを変えました。
学生らしさを前面に押し出せば「強み」になるのではないか―と、自分の中で仮説を立てたのです。
次の日からは早速、営業アポの入れ方を改めました。
ターゲットを担当地域の中小企業の社長に絞り、
「早稲田大学で学生団体を主宰している者ですが、地域を盛り上げる活動にご協力していただけませんか?」
と、学生らしさを猛アピール。
すると、いきなり学生が飛び込み営業をしてきたのを面白がってくれて、次々にアポがとれました。
学生団体の話を皮切りに、次第に「地域の商店を盛り上げるためのITサービスの導入も手伝っています」と、営業をかけていったのです。
この作戦は見事に奏功し、半年後の僕はヘタな社会人よりもアポを獲得できる営業マンになっていました。
「使い方次第で“弱み”は“強み”に一変する」
「戦略によっては勝てないものでも勝てるようになる」
そう思い知った瞬間でした。
起業に失敗。「借金1000万円の大学生」が見つけた唯一の強み
営業代行で自信を得た僕は、起業の道を探し始めました。
そして創業したのが、 1社目の「アットファクトリーズ」という会社です。
ショート動画で飲食店をPRする「@mikke(アットミッケ)」というサービスを考えたのです。
しかし、結論から言うと、アットミッケは大失敗に終わります。
借金は雪だるま式に増えていき、気づいたときには僕は「借金1000万円の大学生」になっていました。
そもそものビジネスプランが自分の強みを活かしきれていなかったのです。
たとえるなら、リクルートのような大企業が新規事業として参入するサービスを、資金力も十分な開発リソースもない大学生の僕が始めてしまったわけです。
だからこそ、次の事業では学生という立場の強みをもっと活かそうと思いました。
それは、自分を含めて情報感度の高い若い人たち―
つまりトレンドに敏感な人材が周囲にたくさんいることです。
人気YouTuberの活躍による「VAZ」の成功と経営危機
そうして次の挑戦に選んだのが、VAZです。
2015年当時、動画配信サービスのYouTubeを通じて、自ら動画をアップすることで世間の注目を集める「YouTuber」が人気を獲得し始めていました。
そこで注目したのが、YouTuberとは対照的に、ショート動画を投稿していた「ショートムーバー」たちです。
人気を得ていた投稿者たちに声をかけ、UUUMとは一味違ったプロダクションを立ち上げようと思ったのです。
所属が決まったタレント全員に、事務所に入った報告を動画で一斉に告知してもらい、 話題を一気にかっさらおうと狙いました。
この試みは大成功し、たった4時間で動画の合計再生数が約16万回にのぼり、投稿のインプレッションが100万回を超えるなど、想像以上の結果になりました。
スタートダッシュに成功したVAZですが、創業1期目を終える前に、早速経営の危機に立たされることになります。
なんと、経営を支えてくれていたプラットフォーム・Vineがサービスを終了してしまったのです。
次の資金調達に向けて、新たな手を打つ必要がありました。
そこで注目したのが、にわかに人気を獲得しはじめていた「関西YouTuber」たちのスカウトです。
特に、人気YouTuber・ヒカルの存在がとても大きかった。
ヒカルは時代の変化に臆することなく、新しくて、冒険的なチャレンジをすることに興味を持っていました。
さらに
「俺が関西の人気YouTuberを集めてくるので、VAZの中に新しい事務所(レーベル)をつくりましょう」
と、提案までしてくれました。
そうして生まれたのが、ヒカル、ラファエル、禁断ボーイズで結成した「Next Stage」です。
前年度比1000%以上に成長するも、炎上騒動で売り上げ約8割減
2年目には社員数が一気に増えて、いつの間にか60人規模の会社に。
当時の売り上げは月次で1億5000万円を突破。
なんと前年度比1000%以上という、とてつもない成長ぶりでした。
ただ、「VAZは勢いがある」という世間の評判とは裏腹に、僕の胸中は不安でいっぱいでした。
現在の成長を来年も続けられるとは限らないし、何よりほんの数年前まで僕はひきこもりの大学生です。
「自分にそれほどの力があるのだろうか?」
と、ギャップを感じることが何度もありました。
そして、不安は少しずつ形になっていきます。
当時のVAZは絶好調という以外に表現のしようがない状態で、毎日のようにタイアップの依頼が来ていました。
それは、営業担当が努力をしなくても、契約が取れてしまうような状態です。
すると、いつしか傲慢になってしまうメンバーが出はじめます。
VAZは気づかぬ間に、僕も含めて勘違いした組織になっていました。
そこにはまともな制度や企業カルチャーが存在していなかったのです。
そんなある日、事件が発生します。
メディアでも大きく取り上げられた「VALU炎上騒動」です。
「ダメな自分」でも武器になる*VALU炎上騒動とは *
「VALU」は2017年に始まったビットコインを使って擬似的な株式(VA)を売買できるサービス。
YouTuber本人が特に告知することもなく所持していた全VAを自ら売りに出し、VAが暴落。
株主(VA保有者)のほとんどが損をするかたちになった。
取引先との契約は次々に切られ、炎上騒動後の数か月間でVAZは売り上げの約8割を失いました。
正直なところ、今でもあれほどの危機をどうやって乗り越えられたのかわかりません。
炎上騒動からしばらくの間、毎日のように自分の能力のなさを恥じました。
創業以来、最大の失敗を経験しましたが、それでもVAZは翌年に約14億円という過去最高の売り上げを達成しました。
これは営業努力もさることながら、炎上騒動を吹き消すくらいにYouTubeへの猛烈な追い風が吹いていたということでしょう。
得意なことだけに“全エネルギー”を注いだから成功した
大学生時代とVAZでの経験を通じて、僕のなかで自信をもって「得意なこと」と言えるのはたった3つだけです。
・フットワーク軽く「新しいもの」に挑めること
・「こんな事業なら儲かるのでは?」というビジネスプランを考えること
・「大きなビジョン」を語り、仲間や投資家を集めること
しかし、結局はこの「得意なこと」に全エネルギーを注いだからこそ、一定の成功を収められたのです。
改めて振り返っても、「他人よりも苦手なことが多い僕が社会で戦うには、これしかなかった」と断言できます。
苦手を“得意”に変換できる森さんの著書『「ダメな自分」でも武器になる』
人にはそれぞれ「〇〇は苦手だけど、〇〇は得意だ」という要素があり、苦手と得意は両方ともあなたに与えられた“ギフト”だと森さんは言います。
働く場所や付き合う相手を変えたことで「得意なこと」が深まり、引きこもりの大学生からアジアを代表する30歳以下のリーダー「Forbes Asia Under30」へ選出されるまでに昇りつめた森さん。
森さんの著書『「ダメな自分」でも武器になる』は、「なんでこんなにダメなんだろう…」と落ち込んでいる方や、自分の能力を最大限に引き出す思考法を知りたい方にオススメの一冊です!
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