ビジネスパーソンインタビュー
カリスマヒップホップアーティストに「マナー」についてきいた
「俺、机に足とか乗っけちゃうんだけどさ…」Zeebraが語る“マナーがいい大人”の定義
新R25編集部
ビジネスパーソンとして日々必要になる「気づかい」。仕事の場のみならず、飲み会や接待の場でも、多くの人がさまざまな「気づかい」をしています。
ただ、実際に気づかいを受ける側は「それはむしろ迷惑だ」なんて思うこともあるんだとか。
「だったら何が正解なんだ!」と思う読者のために、新R25は新連載「カリスマのマナー」を立ち上げました。
業界の大物たちに、「正しい気づかい」について、その答えをはっきりと聞いてきます!
【Zeebra】1971年生まれ、東京都出身。1993年に「キングギドラ」を結成。1997年にはソロ活動を開始、以降数々の楽曲をリリースする。2015年にスタートした番組『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日/AbemaTV)ではMCを務める。2020年2月からは、高校生たちが即興ラップを競う『ハイスクールダンジョン』のメインMC兼オーガナイザーに
今回、マナーについての考えを教えてくれるのは、伝説のヒップホップアーティスト・Zeebraさん。
ご存じ『フリースタイルダンジョン』や、2月からスタートした『ハイスクールダンジョン』でも、数多くの若手に囲まれています。
そんなZeebraさんが「必要ないと思うマナー」、そして「本当に必要なマナー」とは何…?
勝手にビビりまくりながら取材に行ったら、入った瞬間めちゃくちゃ優しく対応してくれて感激したところから取材スタートです!
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
超意外にも「めちゃくちゃ後輩に気をつかう人」だったZeebraさん
天野
“ヒップホップの人はマナーに厳しい”という勝手な偏見がありまして、今日はマナーのお話をおうかがいできればと。
Zeebraさんは、やっぱりたくさんの後輩に慕われてる立場だと思うんですが…
Zeebraさん
あー、俺、先輩は大好きなんだけど後輩って得意じゃないんですよね。
えっ!?
Zeebraさん
後輩と接してると、逆にこっちがすごく気をつかっちゃうんですよ。
天野
そうなんですか?
Zeebraさん
ちょうど昨日も、ヒップホップシーンの後輩と5人ぐらいでご飯に行ったんですけど、お店に入った瞬間にヤベッ、財布忘れた!ってなって。
財布を忘れたZeebraさん
Zeebraさん
でも、俺がその場で「ごめん、財布忘れた」って言ったら、後輩たちが「いいっすよ、払っておきますから」ってなるじゃないですか?
天野
食事代ぐらいならそうなりそうですね。
Zeebraさん
そうなるのも悪いな…と思って、こっそりお店を出て、事務所に財布を取りにいったんですよね。
天野
わざわざ!?
Zeebraさん
財布を取って、戻るときもこっそり店に入って「ふう、バレなかった…」みたいな(笑)。
天野
イメージと違いすぎる…!
気づかいの男、Zeebra
不要だと思うのは、「おごられるときあるある」な財布マナー…
天野
とはいえ、若手たちにいろいろ気をつかわれる立場だと思うんですが、「こういうマナーは不要だな」と思うことってありますか?
Zeebraさん
若手とご飯食べるときの話で言うと、ほら…いるじゃない?お会計のときに「あっ、払います」みたいな感じでお財布を出す素振りだけする人。
天野
やりますね。
Zeebraさん
あれ、俺は嫌いです(笑)。
またしてもけっこう庶民的(?)なエピソード
Zeebraさん
絶対おごってもらえるってわかってるのに、「出さないと怒られるのかな?」みたいな感じで…なんか、嘘のコミュニケーションって感じがするでしょ。
天野
たしかに、本気で思ってはないというか。
Zeebraさん
そんなことする必要ないよね。「だったら払えよ!!」って思っちゃう。
Zeebraさんに「だったら払えよ!!」って言われたらめちゃくちゃ怖いかもしれません…
Zeebraさん
そんなことするぐらいなら、満面の笑みで素直に「おいしかったです!」って言ってくれたほうが100倍うれしいですね。
あと、写真撮るときとかに、むりやりにでも俺を真ん中にしようとしてくるのも、「いらない」って思うなあ。
天野
めちゃくちゃありそうですね…
それは「偉そうに見られたくない」っていう気持ちがあるんですか?
Zeebraさん
そうだね、本当に偉いのと、「偉そう」は違うじゃないですか。
リアルにリスペクトされてるのと、「怖がられてとりあえず気つかわれてるだけ」っていうのは全然違うから、こっちからするとすぐわかる。やっぱり、コミュニケーションに嘘があるのが嫌いなんだよね。
怖がられても全然うれしくないもんだよ(笑)。
怖がられてもうれしくない…Zeebraさんのイメージが急激に変わってきました
Zeebraさんが話していて「一番バカだな」と思う若手ってどういう人?
天野
なるほど…ただ、“大物”と接すると、失礼があっちゃいけないと思ってビビっちゃう部分もあるんですよね。
どう接するのが正解なんでしょうか?
Zeebraさん
ビビっちゃう相手にこそ、自分のことをアピールしたほうがいいです。
KREVAなんかは完全にそうで、初対面でもグッ!とアピールしてきたもんね。
天野
KREVAさんが!
Zeebraさん
何のアピールもされないと、「こいつ何なんだっけ?」ってなる。
自分のアピールポイントや「言いたいことがある」って、すごい大事だと思います。
天野
アピールかあ…
Zeebraさん
喋ってて“残念だな”と思う若い子でよくいるのはさ…
たとえば社会や政治とかについて世間話してるとき、「政治家とか、バカばっかでしょ!」みたいに言って終わる子。
政治家をバカにして、それで何なんだ?って。「お前が一番バカだな」と思う。
天野
たしかに、ニュースで見て知ってはいても、とくに意見がないことって多いかも…
Zeebraさん
浅くてもいいから、世の中で起きていることや見聞きしたことに対して、自分なりのスタンスを持って、それをこっちに聞かせてほしい。
上の世代の人は、きっとそう思ってるはずですよ。
Zeebraさん、「いいお兄さん感」がすごい
Zeebraさん
コロコロコロコロ意見が変わる、人に合わせてばかりいる人も苦手だね。
何か話してて、「いや、こうなんじゃないの?」って言ったら「あ、そうですね!おっしゃる通り!」みたいな。どっちだよ!って。
天野
ああ…それも目上の人と意見が違ってたらイヤだなと思ってたまにやってしまいます…
Zeebraさん
そういう人は、話が盛り上がってるふうだけど実際にはそこまで面白くないし、「Zeebraはこうだったよ」みたいに、どっかでペラペラ噂されそうだなって思っちゃうんだよね。
そういうヤツって、不思議なことにまわりの人もなんとなく察知するんですよ。「アイツ、ちょっとアレだよね」「下品だよね」みたいにね。
「品がある大人」になるにはどうしたらいいの?
Zeebraさん
結局マナーって、「下品になるな」ってことなんですよね。大人になるほど品が大事になってくるから。
天野
品か…。どうやったら品のある大人になれますかね?
Zeebraさん
たとえば俺、態度がだらしないんですよ。こうやってさ…
ガタッ!
天野
えっ。
ドカーッ!!
Zeebraさん
ガーッて机の上とかに足乗っけちゃうし。
天野
それは下品じゃないんですか…?
Zeebraさん
だけど、こうやってテレビ局の楽屋にいて(※取材は『ハイスクールダンジョン』の収録前の楽屋で行われました)、誰かが来たら「あっ!おはようございます」ってすぐあいさつする。
天野
人にはすぐ頭を下げると。
Zeebraさん
ちょっとだらしないところとか、ダメなところがあるのは別にいいのよ。
だけど“対ヒト”っていうときに、どれだけ素直にリスペクトを払えるか。それが「人として下品かそうじゃないか」の差だと思うんだよねえ。
天野
1人ではだらしなくても、人には敬意を見せる…
Zeebraさん
俺、こうやって足上げたじゃないですか。
でも、靴を机の上に乗せたら、掃除してくれる人に失礼だと思うから乗せないもんね。
ホントだ! 乗せてない…! こんな人はじめて見ました
「“伝説的なアーティストが、死後言われること”には共通点がある」
Zeebraさん
マナーっていうことで言うと、2パックっていう伝説的なラッパーがいてさ。
※2パック(トゥーパック)=アメリカのヒップホップアーティスト。代表作に『All Eyezon Me』など。1996年、マイク・タイソンの試合を観戦後に銃撃され、25歳の若さで亡くなる
Zeebraさん
2パック以外でも、本当に伝説的なヒップホップアーティストっているんだけど。
そういう人が死後に共通して言われることがあるなと思っていて。何て言われてると思う?
天野
えっ…やっぱり「破天荒ですごかった」とかですかね…?
違うなこれは
Zeebraさん
いや………
伝説的なヒップホップアーティストは、亡くなってからみんな「あの人はすごく面白かった!」って言われてるんですよ。
「スタッフとかと一緒にいるときも、常に面白い話で人を笑わせてた」って。
天野
へえー!
Zeebraさん
銃撃事件のさなかにいたり、言ってしまえば凶悪犯みたいなヤツらばっかりなんだけど(笑)、それでも「いつでも面白い、楽しいヤツだった」って言われるんだよね。
Zeebraさん
だから、俺が“マナーがいい”と感じるのはこういう人。
「面白く、楽しく、品がある」。
天野
なるほど~!!
正直言うと、Zeebraさんの楽屋ってもっとピリピリした雰囲気を想像してたんです。でも、入った瞬間みんなが楽しそうにお喋りしてて、ビックリしました。
Zeebraさん
うん、やはりこう、場を明るくするっていうのは大事なマナーなんだよ。
さっき「怖がられたくない」って言ったけど、無駄にピリピリして、必要ないところで気をつかったりつかわれたりするのは、いいマナーとは言えないでしょう。
たとえば仕事現場でも楽しい空気にするとか、そういうこともひっくるめての姿勢が、「マナー」なのかなと思うよね。
いやこれはもうカッコよすぎでしょう…ありがとうございました!!
いきなり「後輩に気をつかっちゃう」という意外すぎる一面を見せてくれたZeebraさん。
その後も、ずっとこちらを笑わせるようなお話をしつづけてくれて…
まさに「面白く、楽しく、品がある」を体現している、カッコよすぎる大人でした。こうなりたい。
品のある大人を目指して、今日から、机に足は乗せても靴は乗せないようにしたいと思います!
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉
「嘘のコミュニケーションじゃなく、素直でいるほうがいい」というお話から「素直でいることがマナー」という一筆をしたためていただきました
『ハイスクールダンジョン』
そんなカッコよすぎるZeebraさんがメインMC&オーガナイザーを務めるのが、大人気『フリースタイルダンジョン』の高校生版『ハイスクールダンジョン』。
全国の高校生ラッパーたちが、マイク1本で5人の“ハイスクールモンスター”に挑みます。
ちなみにZeebraさん、「マナーの極意は、高校生でも変わらない」ともおっしゃっていました…!
若者たちの熱いバトルを、お見逃しなく!!
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「俺、机に足とか乗っけちゃうんだけどさ…」Zeebraが語る“マナーがいい大人”の定義
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